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ぶんぶん

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「いたーきます!」



一息ついて、朝餉を食べ始める。

男の人は晴臣さん、少年は九郎さんというらしい。



「九郎さんは……」

「ふん、お前は特別に俺のこと九郎と呼んでいいぞ」

「あ、はい、九郎」

「その堅苦しい口調もいい!」

「……?」



堅苦しい口調とはどれの事を言っているのだろうか。そう思って何も言えずにいると、晴臣さんがこういった。



「九郎はお友達の君に敬語は要らないって言ってるんです」

「と、友達じゃねーし!弟分だし!!」

「この通り、友達一人もいなかったの子なので」

「違うもん!!!!!」



なる、ほど……?

力強くそう言っている九郎を見て俺は問いかけた。



「僕も友達いたことないんですが、大丈夫ですか?他の方にした方がいいと思いますが」

「! ふ、ふーん?まあお前がどうしてもって言うなら初めてのお友達になってやってもいいけど?」

「しちゃのともとはくちゃだけ!!くろちゃいなないお!」



小鉢に手を突っ込んで食べていた久遠がそう言ってきた。俺たちの会話が多少わかるようで、こうやって会話してくる。



「は、はあ!?お前に聞いてねーし!!」

「いーなーなーい!!」

「いななくない!」

「いーなー……っ!」



久遠が不自然に言葉を切ったかと思うとびくっと体を震わせてささっと俺の後ろに隠れた。それから叫ぶ。



「しちゃ!!ぶんぶん!!」

「え?」

「しちゃ!くろちゃぶんぶん!!」

「???」

「ぶんぶん!!」

「は、はあ?なんだよ突然」



ぶんぶんっと言って手をばたばたと動かす。俺はそれを見ながらこうか?っと九郎の前で手を振る。じっとその様子を見ていた久遠はにっこり笑顔になった。



「くろちゃ、よし!」

「よしって何だよ、何したんだよ!」

「よし!!しちゃ、こち、こち!」

「?????」



朝餉を食べ終わってもいないのに、久遠が俺の腕を引いて立てと促すので腰をあげようとする。

しかし、俺と久遠を晴臣さんが止めた。



「ご飯の最中ですよ、若君」

「いま!いーまー!!」

「だめです」



晴臣さんがそう言うが、久遠は諦められずいいぃまあ!と叫んでいる。

これはごねるよりも先に、久遠にご飯を食べさせた方がいいな。



「くーちゃん、あーん」

「あーん!」



ぱっとすぐにご飯に食いついた。もぐもぐ食べて、彼の様子を見ながら何度も口にご飯を運ぶ。

その間にも俺もバクバクご飯をかきこんだ。早食いは得意なので久遠よりも先に食べ終わった。

最後の一口も食べて、完食した久遠。



「ご馳走様でした」

「ごっそーさま!!」

「はいお粗末でした」



手を合わせて挨拶すると、同じようににこにこと挨拶をする久遠。それを晴臣さんが返して空になった膳を片付ける。俺も同じように片付けようとしたが、晴臣さんが大丈夫ですよっと言った。いやしかし、申し訳なくて手を出そうとすると久遠が「やあ!!」っとまたしても俺の後ろに隠れるように抱き着いてきた。



「しちゃしちゃあ!ぶんぶ、ぶんぶぅ!!」

「?」

「あっ!くろちゃ、め!!くろちゃこちこち!しちゃはやく、ぶんぶん!!」

「え。な、なんだよ、引っ張るなよ!!」

「え、えーっと、こう?」



同じようにまた手を九郎の前で振ると、久遠ははっとして庭の方に視線を向けた。



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