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戻った?
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頬に衝撃を覚えて地面に転がり込んだ。肘が擦りむいて、だらだらと血が垂れる。
「あれは壱ノ都からわざわざ取り寄せた工芸品だぞ!珍しい装飾がついてるものだったというのに壊すとは何事だ!!」
次に、腹に靴のつま先がめり込んで骨が軋む音がする。ごろごろとまたしても転がってあまりの痛みに体を動かすこともできずにげほごほと咳き込んで縮こまった。しかし、次には上から踏みつけるようにして蹴られる。
「このっ!この役立たずが!!」
こんなことをされた覚えがある。
掃除をしろと命じられ、その通りに掃除をしていたら弟がやってきて飾ってある壺を落としたのだ。
がしゃんと派手な音をたて割れてしまい、弟はやってきた父に俺が壊したと嘘をついたのだ。烈火のごとく怒り狂って顔を赤くしながら父は俺の体を庭に法術で投げてこんなことを言った気がする。
そして最後はーーー。
「外に捨てておけ!」
「かしこまりました」
そう言って使用人が俺を屋敷からぽいっと捨てた。
こうなれば一週間ほど屋敷に入れない。それぐらい経って門で立っているといつも弟が可哀想だからと言って中に入れる許可を貰える。
ぐうぐうお腹を鳴らして、異臭のする俺を笑いながら反省しましたか?お兄様。なんて言葉を投げかける。はいっと返事をしないと父から平手を受けるのでそう言って頷いた。
……あれ?なんで?
ぺたんと地面に座り込んでぼんやりとそんなことを考えて、自分の現状を改めてみる。
「手が、ちいさい……?」
手どころか視線も低いしまるで子供に戻ったようだ。
―――戻ったようだ?いや違う、子供になっている!
近くの水たまりをのぞき込んで自分の姿を確認するとかなり幼くなっている。
訳が分からない。俺はあの時死んだはずなのに!!
ぐにーっと自分の頬を引っ張ってみる。
痛い、と思う。多分。
現実であることを実感して、しばらくぼんやりとしていた。
しかし、はっと我に返る。
時間が巻き戻った。つまり、久遠にまた会えるかもしれない!!
そう思い、俺は立ち上がって都の外に向かった。
久遠。久遠!!
どうして自分が前の記憶を持ったまま巻き戻っているのかは分からないがきっと神様が俺にもう一度彼に会うための機会をくれたんだ。
話しかけるなんてことはしない。彼の姿がみれればそれでいい。彼がいるなら俺は、何度でも刀を手に取って久遠を守る。
まだ山にいるだろうか。もういないのだろうか。
あれ?久遠にはいつ頃あったかな?もっと後?早くちゃんと思い出したいけどその前に久遠に会いたいという気持ちが急いて、外に出た。
結界の外を出ると異様な空気が漂っている。俺は適当な木の棒と小石を袂に詰めて走った。
目の前にサルの妖魔が現れるが肩を木の枝で貫くとすぐに消える。今度は狼の妖魔が集団で走ってくるが小石をぶん投げて体を貫通させると同じように霧になった。
昼間なので、妖魔の活動は鈍い。日の光に弱いらしい。
妖魔の気配が遠くなっていき、追いかけるほどでもないとそう思い久遠と出会った場所に向かう。
「……あぁ」
まあ、いるわけがない。普通に考えて子供がこんなところうろうろしている訳が無いのに。
はあっとため息をついてふるりと頭を振る。
会えないならば仕方ない。
俺は久遠の為に力をつけるだけだ。
手始めに、あの大太刀だ。あれは持っていても両親に取り上げられることのなかった変わった刀だ。俺には上等な業物に見えたが、俺の審美眼はあまりあてにならないから……。
武器一つまともに買うお金もないし、どうにか生きることに必死だったからあの大太刀はありがたいものだった。
ただこの山中にまだあるかどうか……。
見つけた場所は覚えている。だからそこに向かおう。
こんな非力の身体じゃ久遠を守るのは難しい。少しでも、久遠を確実に守れるように鍛えなければ。
巻き戻ったのだから今度は俺の大事な久遠の為に全てを使いたい。
俺はそう思いながら、記憶を頼りにその場所に向かう。
「あれは壱ノ都からわざわざ取り寄せた工芸品だぞ!珍しい装飾がついてるものだったというのに壊すとは何事だ!!」
次に、腹に靴のつま先がめり込んで骨が軋む音がする。ごろごろとまたしても転がってあまりの痛みに体を動かすこともできずにげほごほと咳き込んで縮こまった。しかし、次には上から踏みつけるようにして蹴られる。
「このっ!この役立たずが!!」
こんなことをされた覚えがある。
掃除をしろと命じられ、その通りに掃除をしていたら弟がやってきて飾ってある壺を落としたのだ。
がしゃんと派手な音をたて割れてしまい、弟はやってきた父に俺が壊したと嘘をついたのだ。烈火のごとく怒り狂って顔を赤くしながら父は俺の体を庭に法術で投げてこんなことを言った気がする。
そして最後はーーー。
「外に捨てておけ!」
「かしこまりました」
そう言って使用人が俺を屋敷からぽいっと捨てた。
こうなれば一週間ほど屋敷に入れない。それぐらい経って門で立っているといつも弟が可哀想だからと言って中に入れる許可を貰える。
ぐうぐうお腹を鳴らして、異臭のする俺を笑いながら反省しましたか?お兄様。なんて言葉を投げかける。はいっと返事をしないと父から平手を受けるのでそう言って頷いた。
……あれ?なんで?
ぺたんと地面に座り込んでぼんやりとそんなことを考えて、自分の現状を改めてみる。
「手が、ちいさい……?」
手どころか視線も低いしまるで子供に戻ったようだ。
―――戻ったようだ?いや違う、子供になっている!
近くの水たまりをのぞき込んで自分の姿を確認するとかなり幼くなっている。
訳が分からない。俺はあの時死んだはずなのに!!
ぐにーっと自分の頬を引っ張ってみる。
痛い、と思う。多分。
現実であることを実感して、しばらくぼんやりとしていた。
しかし、はっと我に返る。
時間が巻き戻った。つまり、久遠にまた会えるかもしれない!!
そう思い、俺は立ち上がって都の外に向かった。
久遠。久遠!!
どうして自分が前の記憶を持ったまま巻き戻っているのかは分からないがきっと神様が俺にもう一度彼に会うための機会をくれたんだ。
話しかけるなんてことはしない。彼の姿がみれればそれでいい。彼がいるなら俺は、何度でも刀を手に取って久遠を守る。
まだ山にいるだろうか。もういないのだろうか。
あれ?久遠にはいつ頃あったかな?もっと後?早くちゃんと思い出したいけどその前に久遠に会いたいという気持ちが急いて、外に出た。
結界の外を出ると異様な空気が漂っている。俺は適当な木の棒と小石を袂に詰めて走った。
目の前にサルの妖魔が現れるが肩を木の枝で貫くとすぐに消える。今度は狼の妖魔が集団で走ってくるが小石をぶん投げて体を貫通させると同じように霧になった。
昼間なので、妖魔の活動は鈍い。日の光に弱いらしい。
妖魔の気配が遠くなっていき、追いかけるほどでもないとそう思い久遠と出会った場所に向かう。
「……あぁ」
まあ、いるわけがない。普通に考えて子供がこんなところうろうろしている訳が無いのに。
はあっとため息をついてふるりと頭を振る。
会えないならば仕方ない。
俺は久遠の為に力をつけるだけだ。
手始めに、あの大太刀だ。あれは持っていても両親に取り上げられることのなかった変わった刀だ。俺には上等な業物に見えたが、俺の審美眼はあまりあてにならないから……。
武器一つまともに買うお金もないし、どうにか生きることに必死だったからあの大太刀はありがたいものだった。
ただこの山中にまだあるかどうか……。
見つけた場所は覚えている。だからそこに向かおう。
こんな非力の身体じゃ久遠を守るのは難しい。少しでも、久遠を確実に守れるように鍛えなければ。
巻き戻ったのだから今度は俺の大事な久遠の為に全てを使いたい。
俺はそう思いながら、記憶を頼りにその場所に向かう。
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