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19、勇者死亡、その後の話 1
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レイチェルを抱きしめたアシュレイの体が不自然に倒れこんだ。
「アーシュ……?」
次の瞬間レイチェルの体が光りだし、アシュレイの思惑通りレイチェルは転移するはずだったが、その前に何かの拒絶反応がそれより上回りぱきんっとアシュレイから貰ったネックレスが砕けた。その為、転移は失敗。その場にレイチェルは残ることとなるが、そんなレイチェルの様子には構ってられない状況であった。あの勇者アシュレイが倒れて、虫の息である。
あり得ないその状況に今彼らは直面していたのだ。
「そんな!殿下、起きてください!!」
必死で治癒をリナが冷たくなっていくアシュレイにかけ続ける。
「私町に行ってありったけの薬を持ってくるわ!」
「僕も行くよ!」
アリサとベンが転移で近くの町に薬を取りに行く。サイラスはリナの手伝いで蘇生術の手助けを、ルーファスは既に現状の報告の為国に一度戻り消えている。最後に残ったアデルはアシュレイから離れないレイチェルを捕獲し離れさせる。
「いやあああああ!離して、はなしてえええええっ!」
「落ち着いて!今殿下は危ない状態であのお姉さんが治してるから!」
「ううううううっ!」
ばたばたと暴れるレイチェルをどうにか抑え込み、アデルは興奮状態のレイチェルを宥める。獣のような唸り声をあげてレイチェルはアシュレイから目を離さずに兎に角、離せ離せと訴える。
ふと、ぴたりと動きを止めた。それからアシュレイを見ていたレイチェルの目がアシュレイの向こう側、正確に言うと魔神とやらを滅した後の更地を見つめる。
暗闇に覆われているその空間で何かが動いた。レイチェルはその何かがはっきりと見えていた。黒い塊に二つの青色の炎のようなものが見えた。
「なに……?やめて、こないで、あっち行って!!アーシュに近寄らないで!!」
「……!?」
レイチェルの叫び声にアデルとサイラスは素早くアシュレイの前に出る。レイチェルは解放されたことによりアシュレイに駆け寄ろうとするが、邪魔だと言わんばかりにリナににらまれてびくっと体を震わせその場で立ち尽くす。
そんなレイチェルに構っていられずに余裕のない二人は暗闇を睨みつけるように警戒しつつもたらりと額から冷や汗が流れる。
まさか、という気持であった。
まさか、彼の最強を誇る神の御業を借りたあの力でさえも仕留め損ねたなんて、考えたくもない最悪の展開である。
「リナ、一応聞きますが転移できますか?」
「無理よ!」
「だよねー。出来てたらやってるもんねー」
アデルが自前の盾を転移で呼び寄せて装備する。サイラスも杖を構えアデルに強化魔術を施す。
「ああ、くそ、損な役回りぃ!!」
「ええ、そうですね。でも殿下を守るのは家臣の義務ですから」
「全くよ!」
三人は軽口を叩く。
その何かは徐々に距離を詰め、ふっと消えた。その瞬間獣の唸り声と共に四足の狼が集団で現れた。
「はあ!?死の狼っ!?」
「何て厄介な!光よ!」
かっとサイラスの魔法で暗闇が照らされる。現れるのは魔物。ここらでは現れないはずの上級の魔物である。勇者一行である彼らには取るに足らないものではある、本来であれば。
陣形を組み、アシュレイという起爆装置一つで全滅必至。取りこぼしがあったとしても対処ができる。
「―――っ!こいつら俺らを素通りか!」
「狙いは殿下と分かりやすい!」
アデルは剣を構え、盾で蹴散らし、魔物をアシュレイに近寄らせないようにする。その後ろでサイラスは纏まったそれを範囲炎魔術で消し炭にしつつ、アシュレイと自分たちの間に防御壁を張り突撃を防ぐ。数が多く、狙いが虫の息のアシュレイである為、彼らは苦戦していた。一匹一匹は大したことなくても数が集まれば脅威である。それを今彼らは痛感していた。
「お待たせ!って何よあれ!!」
「か、加勢します!」
「ベン、後ろっ!」
アリサとベンも大量の薬を抱えて現れ、この惨状に目を疑う。ベンがすぐに矢じりを構えると、待っていましたかのように背後から魔物が現れた。アリサの声にベンはぐるんっと方向を一気に変え放たれた弓から無数の矢が飛び、それらを射抜く。
アリサはすかさず防御壁を張り侵入を防いだ。
「あーもー何なのっ!?こいつら急に現れて!」
「分かんない!何かいたんだけどそれが消えたら突然……」
「はあ!?役に立たないタンクね!」
「面目ねえ!」
「衝撃に備えてください!」
ベンが腰からダイナマイトを取り出し火をつけて投げ入れる。ぼんっ!っと爆発音と煙が立ち、火薬の匂いが漂う。ベンが休むことなくそのダイナマイトを放り投げるので慌てて皆防御壁の中に入る。
「やべえ、ゴミのように散ってく……」
「一番手っ取り早いじゃないですか。街中じゃないし」
「そうよ!街中じゃないからいいじゃない!貸しなさい、私も投げるわ!」
そう言ってアリサもベンからダイナマイトをもらい受けて同じように投げる。その様子を怖い……っと呟いたアデルだったが、にこやかにベンからダイナマイトを持たされてしまい火をつけて同じく投げる。
「リナ、殿下の容体は……」
「ごめんなさい、話しかけないで」
サイラスがそう聞くとリナがそう言って薬品をかけたり治癒をかけたりと未だによくならないアシュレイに処置を施す。その間も襲撃は止まずに兎に角防御壁に向かって襲い掛かっており、元勇者一行は兎に角爆薬を投げ入れる。
「アーシュ……」
レイチェルは泣きそうな顔でアシュレイを見つめる。手は急速に冷えていき、瞼は開かない。今にも呼吸が止まってしまいそうだった。レイチェルはそれが気が気ではない。ぎゅうっとアシュレイの手を掴み、レイチェルは祈った。
誰か、誰でもいいからアーシュを助けて!
しかし、その祈りは届かず次の瞬間何かがレイチェルの横をよぎった。その感覚を他の者たちも感じ、それに目を向ける。しかし、既にそれは内側に入りアシュレイの中に潜り込んだ。
「っ、きゃあっ!!」
「リナ!!」
「―――っ!?」
「はーはっはっはっ!勇者の体乗っ取ったりぃ!!」
リナが突然動いたアシュレイに驚き悲鳴を上げる。それにいち早く反応したサイラスが動いたそれに杖を振るうが軽々と避けられてしまう。あまつさえ、それはレイチェルを抱えて狼の群れの中へとそれはひらりと降り立った。狼はその目的のものが自ら突っ込んできたことにより一気にそれに襲い掛かるが、パンっと音がして風船のように破裂した。もれなくすべて。
ざっと四人は獲物を構えてアシュレイにそれを向ける。はっとその四人を鼻で笑い、アシュレイは嘲笑した。
「俺は魔王、改め、魔神であーる!勇者の体はもう俺の物。返してほしくば勇者を出しな!」
「その子を離せ!」
「やだねー。あの子を釣る為の餌だもん」
アデルがそういうがバッサリとアシュレイはそう言った。よっこいせっとレイチェルを抱えなおし、アシュレイは術を唱える。すると地面が揺れ始め、アシュレイの立っているそこが割れた。そこからは白い壁の四角い塔が地面の割れ目から現れて伸び始める。
四人は慌ててその場から離れた。
そして、その場所に白い塔が現れた。それは見上げるほど大きく、暫くすると霧で覆われ見えなくなる。
「最上階で待ってるよー!」
最後に高笑いを残し、そして魔王、いや魔神復活が確認された。今のところ特に被害はないがしかし、塔の中に入ったが最後五体満足で帰還は出来ずに魔神にたどり着いた者はいない。
「アーシュ……?」
次の瞬間レイチェルの体が光りだし、アシュレイの思惑通りレイチェルは転移するはずだったが、その前に何かの拒絶反応がそれより上回りぱきんっとアシュレイから貰ったネックレスが砕けた。その為、転移は失敗。その場にレイチェルは残ることとなるが、そんなレイチェルの様子には構ってられない状況であった。あの勇者アシュレイが倒れて、虫の息である。
あり得ないその状況に今彼らは直面していたのだ。
「そんな!殿下、起きてください!!」
必死で治癒をリナが冷たくなっていくアシュレイにかけ続ける。
「私町に行ってありったけの薬を持ってくるわ!」
「僕も行くよ!」
アリサとベンが転移で近くの町に薬を取りに行く。サイラスはリナの手伝いで蘇生術の手助けを、ルーファスは既に現状の報告の為国に一度戻り消えている。最後に残ったアデルはアシュレイから離れないレイチェルを捕獲し離れさせる。
「いやあああああ!離して、はなしてえええええっ!」
「落ち着いて!今殿下は危ない状態であのお姉さんが治してるから!」
「ううううううっ!」
ばたばたと暴れるレイチェルをどうにか抑え込み、アデルは興奮状態のレイチェルを宥める。獣のような唸り声をあげてレイチェルはアシュレイから目を離さずに兎に角、離せ離せと訴える。
ふと、ぴたりと動きを止めた。それからアシュレイを見ていたレイチェルの目がアシュレイの向こう側、正確に言うと魔神とやらを滅した後の更地を見つめる。
暗闇に覆われているその空間で何かが動いた。レイチェルはその何かがはっきりと見えていた。黒い塊に二つの青色の炎のようなものが見えた。
「なに……?やめて、こないで、あっち行って!!アーシュに近寄らないで!!」
「……!?」
レイチェルの叫び声にアデルとサイラスは素早くアシュレイの前に出る。レイチェルは解放されたことによりアシュレイに駆け寄ろうとするが、邪魔だと言わんばかりにリナににらまれてびくっと体を震わせその場で立ち尽くす。
そんなレイチェルに構っていられずに余裕のない二人は暗闇を睨みつけるように警戒しつつもたらりと額から冷や汗が流れる。
まさか、という気持であった。
まさか、彼の最強を誇る神の御業を借りたあの力でさえも仕留め損ねたなんて、考えたくもない最悪の展開である。
「リナ、一応聞きますが転移できますか?」
「無理よ!」
「だよねー。出来てたらやってるもんねー」
アデルが自前の盾を転移で呼び寄せて装備する。サイラスも杖を構えアデルに強化魔術を施す。
「ああ、くそ、損な役回りぃ!!」
「ええ、そうですね。でも殿下を守るのは家臣の義務ですから」
「全くよ!」
三人は軽口を叩く。
その何かは徐々に距離を詰め、ふっと消えた。その瞬間獣の唸り声と共に四足の狼が集団で現れた。
「はあ!?死の狼っ!?」
「何て厄介な!光よ!」
かっとサイラスの魔法で暗闇が照らされる。現れるのは魔物。ここらでは現れないはずの上級の魔物である。勇者一行である彼らには取るに足らないものではある、本来であれば。
陣形を組み、アシュレイという起爆装置一つで全滅必至。取りこぼしがあったとしても対処ができる。
「―――っ!こいつら俺らを素通りか!」
「狙いは殿下と分かりやすい!」
アデルは剣を構え、盾で蹴散らし、魔物をアシュレイに近寄らせないようにする。その後ろでサイラスは纏まったそれを範囲炎魔術で消し炭にしつつ、アシュレイと自分たちの間に防御壁を張り突撃を防ぐ。数が多く、狙いが虫の息のアシュレイである為、彼らは苦戦していた。一匹一匹は大したことなくても数が集まれば脅威である。それを今彼らは痛感していた。
「お待たせ!って何よあれ!!」
「か、加勢します!」
「ベン、後ろっ!」
アリサとベンも大量の薬を抱えて現れ、この惨状に目を疑う。ベンがすぐに矢じりを構えると、待っていましたかのように背後から魔物が現れた。アリサの声にベンはぐるんっと方向を一気に変え放たれた弓から無数の矢が飛び、それらを射抜く。
アリサはすかさず防御壁を張り侵入を防いだ。
「あーもー何なのっ!?こいつら急に現れて!」
「分かんない!何かいたんだけどそれが消えたら突然……」
「はあ!?役に立たないタンクね!」
「面目ねえ!」
「衝撃に備えてください!」
ベンが腰からダイナマイトを取り出し火をつけて投げ入れる。ぼんっ!っと爆発音と煙が立ち、火薬の匂いが漂う。ベンが休むことなくそのダイナマイトを放り投げるので慌てて皆防御壁の中に入る。
「やべえ、ゴミのように散ってく……」
「一番手っ取り早いじゃないですか。街中じゃないし」
「そうよ!街中じゃないからいいじゃない!貸しなさい、私も投げるわ!」
そう言ってアリサもベンからダイナマイトをもらい受けて同じように投げる。その様子を怖い……っと呟いたアデルだったが、にこやかにベンからダイナマイトを持たされてしまい火をつけて同じく投げる。
「リナ、殿下の容体は……」
「ごめんなさい、話しかけないで」
サイラスがそう聞くとリナがそう言って薬品をかけたり治癒をかけたりと未だによくならないアシュレイに処置を施す。その間も襲撃は止まずに兎に角防御壁に向かって襲い掛かっており、元勇者一行は兎に角爆薬を投げ入れる。
「アーシュ……」
レイチェルは泣きそうな顔でアシュレイを見つめる。手は急速に冷えていき、瞼は開かない。今にも呼吸が止まってしまいそうだった。レイチェルはそれが気が気ではない。ぎゅうっとアシュレイの手を掴み、レイチェルは祈った。
誰か、誰でもいいからアーシュを助けて!
しかし、その祈りは届かず次の瞬間何かがレイチェルの横をよぎった。その感覚を他の者たちも感じ、それに目を向ける。しかし、既にそれは内側に入りアシュレイの中に潜り込んだ。
「っ、きゃあっ!!」
「リナ!!」
「―――っ!?」
「はーはっはっはっ!勇者の体乗っ取ったりぃ!!」
リナが突然動いたアシュレイに驚き悲鳴を上げる。それにいち早く反応したサイラスが動いたそれに杖を振るうが軽々と避けられてしまう。あまつさえ、それはレイチェルを抱えて狼の群れの中へとそれはひらりと降り立った。狼はその目的のものが自ら突っ込んできたことにより一気にそれに襲い掛かるが、パンっと音がして風船のように破裂した。もれなくすべて。
ざっと四人は獲物を構えてアシュレイにそれを向ける。はっとその四人を鼻で笑い、アシュレイは嘲笑した。
「俺は魔王、改め、魔神であーる!勇者の体はもう俺の物。返してほしくば勇者を出しな!」
「その子を離せ!」
「やだねー。あの子を釣る為の餌だもん」
アデルがそういうがバッサリとアシュレイはそう言った。よっこいせっとレイチェルを抱えなおし、アシュレイは術を唱える。すると地面が揺れ始め、アシュレイの立っているそこが割れた。そこからは白い壁の四角い塔が地面の割れ目から現れて伸び始める。
四人は慌ててその場から離れた。
そして、その場所に白い塔が現れた。それは見上げるほど大きく、暫くすると霧で覆われ見えなくなる。
「最上階で待ってるよー!」
最後に高笑いを残し、そして魔王、いや魔神復活が確認された。今のところ特に被害はないがしかし、塔の中に入ったが最後五体満足で帰還は出来ずに魔神にたどり着いた者はいない。
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