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15、それはとある世界の話
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アシュレイは夢を見た。
多分、夢だ。アシュレイの中にはそんな記憶は全くないからそのはずだ。
その夢には二人の登場人物が出てきた。
始め、白い壁白い天井、白い床の中央に椅子とテーブルが置かれている。その一番端には円盤が床についていた。テーブルの上には紙の束とペンとインク。その椅子には紫色の髪の男が座っていて眠そうにしながら紙のそれを眺めている。
「―――」
暫くすると円盤から子供が現れる。背丈は男の腰にも満たない身長で薄いピンク色の髪の男の子で三つ編みで束ねている。その男の子はパタパタと走って男に近づいた。
すると男が顔をあげその男の子に気が付くともう一つの椅子を出す。
「やあやあ、よく来たね!」
「熱烈な歓迎どーも。長居するつもりはないから」
「えー?そんなこと言わずに、お茶でもしない?」
ばさっと紙の束を投げてすいっと指を動かすとテーブルの上の紙の束、インク、ペンが壁から現れた白い棚の中に吸い込まれ壁の中にそれらが消えた。するとティーポットとお菓子の並べられた皿がどこからともなく現れてその綺麗になったテーブルの上に並べられる。男の子は出された席に座りながら苦笑を漏らした。
「……相変わらず、物がないね」
「そう?」
「ソファとかベッドとかそういうのは要らないの?」
「なんていう食べ物それ」
「物の話してるのにどうして食べ物の話になってんの」
呆れた顔で男の子がそういうと、確かにっと納得して男は必要性を感じないねっと答えた。
「俺ら寝ないし、花の世話とかめんどいし、椅子あるし?」
「食べものも必要ないでしょ?」
「俺は腹減るから必要ですが?」
「嘘つけ」
クッキーを取り頬張った男はそう言い切ると男の子が即座に突っ込む。
「美味しい食べ物は世界を救うんだよ。飢餓状態は一番不幸」
「それはお前の持論だろうが」
もぐもぐばくばく男は男の子に気にすることなくクッキーからパウンドケーキ、マドレーヌと皿の上のお菓子をその胃の中に吸い込んでいく。適当なところでポットからお茶を淹れた。
男の子もクッキーを一つ手に取り口の中に放り込む。
「今日はドライフルーツ入りクッキーだよ。美味しい?」
「まあまあ」
「厳しすぎね?」
そういうが男は気分を害した様子はなくにこにこと笑っている。男の子もそうは言うもののお菓子に伸びる手は止まない。
ふと、ぐらっとその場が動いた。その揺れは大きくなるので男は慌ててお菓子の乗った皿を持ちあげた。男の子は揺れなど気にしないようでティーカップの紅茶をすすっている。
この空間には椅子とテーブルだけで天井に照明などもないのでテーブルが倒れティーポットが壊れるくらいで危ないものはない。
暫くしてその揺れがおさまるとふうっとため息をつく。
「まぁた、どこかのバカが暴れたか……」
「そうみたいだね。手伝う?」
「要らない。また来てね」
壊れたティーカップや倒れたテーブルを戻し、お菓子の皿をそこに置く。それから男は立ち上がり、男の子の頭をなでた。そしてローブを脱いで椅子に掛けると円盤のところに立って消えた。
男の子はそれを見送った後、ふと自分の体を見る。
「また、小さくなってたな」
ぼそりとそう呟いて、そっと男のローブを手に取り抱きしめる。
「このまま―――」
男の子は泣きそうな声であった。それ以上の言葉は聞こえずに、そして、アシュレイは夢から覚めた。
――――
蓮ゆうまさん、りんごさん、Elleさん感想ありがとうございましたー!
更新は遅めになりますが気長にお待ちください。
多分、夢だ。アシュレイの中にはそんな記憶は全くないからそのはずだ。
その夢には二人の登場人物が出てきた。
始め、白い壁白い天井、白い床の中央に椅子とテーブルが置かれている。その一番端には円盤が床についていた。テーブルの上には紙の束とペンとインク。その椅子には紫色の髪の男が座っていて眠そうにしながら紙のそれを眺めている。
「―――」
暫くすると円盤から子供が現れる。背丈は男の腰にも満たない身長で薄いピンク色の髪の男の子で三つ編みで束ねている。その男の子はパタパタと走って男に近づいた。
すると男が顔をあげその男の子に気が付くともう一つの椅子を出す。
「やあやあ、よく来たね!」
「熱烈な歓迎どーも。長居するつもりはないから」
「えー?そんなこと言わずに、お茶でもしない?」
ばさっと紙の束を投げてすいっと指を動かすとテーブルの上の紙の束、インク、ペンが壁から現れた白い棚の中に吸い込まれ壁の中にそれらが消えた。するとティーポットとお菓子の並べられた皿がどこからともなく現れてその綺麗になったテーブルの上に並べられる。男の子は出された席に座りながら苦笑を漏らした。
「……相変わらず、物がないね」
「そう?」
「ソファとかベッドとかそういうのは要らないの?」
「なんていう食べ物それ」
「物の話してるのにどうして食べ物の話になってんの」
呆れた顔で男の子がそういうと、確かにっと納得して男は必要性を感じないねっと答えた。
「俺ら寝ないし、花の世話とかめんどいし、椅子あるし?」
「食べものも必要ないでしょ?」
「俺は腹減るから必要ですが?」
「嘘つけ」
クッキーを取り頬張った男はそう言い切ると男の子が即座に突っ込む。
「美味しい食べ物は世界を救うんだよ。飢餓状態は一番不幸」
「それはお前の持論だろうが」
もぐもぐばくばく男は男の子に気にすることなくクッキーからパウンドケーキ、マドレーヌと皿の上のお菓子をその胃の中に吸い込んでいく。適当なところでポットからお茶を淹れた。
男の子もクッキーを一つ手に取り口の中に放り込む。
「今日はドライフルーツ入りクッキーだよ。美味しい?」
「まあまあ」
「厳しすぎね?」
そういうが男は気分を害した様子はなくにこにこと笑っている。男の子もそうは言うもののお菓子に伸びる手は止まない。
ふと、ぐらっとその場が動いた。その揺れは大きくなるので男は慌ててお菓子の乗った皿を持ちあげた。男の子は揺れなど気にしないようでティーカップの紅茶をすすっている。
この空間には椅子とテーブルだけで天井に照明などもないのでテーブルが倒れティーポットが壊れるくらいで危ないものはない。
暫くしてその揺れがおさまるとふうっとため息をつく。
「まぁた、どこかのバカが暴れたか……」
「そうみたいだね。手伝う?」
「要らない。また来てね」
壊れたティーカップや倒れたテーブルを戻し、お菓子の皿をそこに置く。それから男は立ち上がり、男の子の頭をなでた。そしてローブを脱いで椅子に掛けると円盤のところに立って消えた。
男の子はそれを見送った後、ふと自分の体を見る。
「また、小さくなってたな」
ぼそりとそう呟いて、そっと男のローブを手に取り抱きしめる。
「このまま―――」
男の子は泣きそうな声であった。それ以上の言葉は聞こえずに、そして、アシュレイは夢から覚めた。
――――
蓮ゆうまさん、りんごさん、Elleさん感想ありがとうございましたー!
更新は遅めになりますが気長にお待ちください。
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