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第四章 恐らく、人違いかと。
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大事になった。大事になってしまった。流石に皇太子を強靱扱いさせるのは良くないと思い、誰でも俺が見えるようにはした。
まあそれでもだ。突然帰ってきた皇太子、に抱えられている子供。そしてつくや否や医者を呼べと叫ぶ皇太子……。皇宮は大騒ぎで、俺は居心地悪く今皇宮医に手を診て貰っている。
「これはひどい……」
「治るよな!?」
「ええ、大丈夫ですが、時間が掛かります。こんな小さな体に魔法を使うのはリスクが……」
「あ、俺13歳なので大丈夫かと……」
「じゅう、さん……?」
見た目よりもずっと大人である事を伝えるために年齢を話すと皇宮医は目をぱちくりさせてそう言った。俺はその言葉に深く頷く。
「今すぐ保護するべきです。こんな小さいからだで13歳? ありえません!! 精密検査を行う必要があります!!」
「せ、成長がただ人より遅いだけ何で大丈夫です!!」
皇宮医がそう進言をするので俺は慌ててそう言った。確かに俺の体は未だに小さいが日々ちょっとずつ大きくなっているのだ。多分。今のところ支障が無いから放置してるだけだけどそういうことだから!!ね!!
「お前、家で虐待でもされてんのか?」
「されてないです!! 今の家族は俺を引き取ってくれた良い人だから誤解を招くような言葉はやめて欲しい!!」
お人好し一家だぞ!!猊下の家族を悪く言う奴は許さん!!
じろっと皇太子殿下を睨みつけると、じーっと暫く見つめ合い彼はそうかと言って視線をそらした。
「なら、引き取られる前って事か?」
「……過去のことは忘れました」
「この、髪と瞳のせいか?」
「え……」
……あ!俺そういえばこの髪と瞳の色を変えてない!!猊下と悪人を倒すことに注視しすぎて何もしてなかったわ!!あほすぎるー!!
今更隠すのも変だと思い黙ったままで、ぷいっとそっぽを向く。
「金の悪魔……くだらねえ言い伝えだな」
おいおい、その国の王子様がそんなこと言って良いのか?
「その人のせいで魔法が使えなかったんでしょ?」
「それが本当である事実はない。何の根拠もないだろ」
あれか。言い伝えを信じないタイプか君。
俺はそれ以上言っても無駄だと思いそーですかっと適当に返事をした。
そうこうしているうちに処置は終わった。魔法を使ってすぐに治すのは身体に影響があるかもしれないので少しずつ治療していく必要があるらしい。その何日かの治療をする前に俺の手は元通りになるだろうが、まあ言わなくても良いか。
「ありがとうございました」
「いえ、それよりもこんな傷、とっても痛かったでしょう? 我慢強くて良い子ですね」
「う、うん、いたかったけど、がまんできたよ」
皇宮医によしよしと頭を撫でられた。俺は目をそらしそう言葉にする。多分一般的な子供であれば泣きわめくレベルだと思うけど、怪しまれずに済んで良かった。
「暫く手を使用は控えて下さい」
「ああ、はい」
暫くすれば治るので皇宮医の言葉に何も考えずにそう返事をする。
仮に手を使えなくても物の方を浮かしたり動かしたりすればいい話だ。簡単なことである。
「ご家族に連絡と説明をしたいのですが、お名前を伺っても……」
「こ、困ります! 約束もなしにこのようなことをされては……っ!!」
「どけ!!」
何やら外が騒がしいと思ったその瞬間、荒々しく扉が開かれた。驚いて扉の方を見ると何故かそこには猊下がいた。
「え!?」
「ルド!!」
猊下は皇宮の警備兵を押し切って強引に中に入ってくる。そして俺を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。
「な、なんでここに……っ!?」
「お前が皇太子殿下に連れ去れたのを見てすぐに来た。何かされていないか?」
「だ、大丈夫」
そーっと俺は手の包帯に気付かれないように後ろに回そうとした。しかし、ルドっと猊下にもう一度名前を呼ばれてしまう。
「その手は?」
「……ちょ、ちょっと怪我しただけ……」
「重度の火傷で暫く手が使えないそうだ」
余計なこと言わないで!!
皇太子殿下を睨みつけるが、彼は全く俺を見ていなかった。何故か、猊下を親の敵のような目で睨みつけている。
な、なんでそんなに猊下を見つめているんだろう。その強い視線から猊下を遮りたくてもぞもぞと体を動かすとぐわっと視界が高くなった。
猊下が俺を抱えて立ち上がったようだ。
「帰ります」
「待てよ。誰のせいでそうなったのか分かってないのか?」
「……」
瞬間、空気が急速に冷えた。俺は冷や汗を流す。全面的に俺が悪いのだ。だからそれをつつくような真似をしないで欲しい!!
「お、俺が悪いの!」
「お前は悪くない」
「ルドは何も悪くない」
何故そこで息ぴったりになるんだ君ら!!
結局のところ、猊下と皇太子殿下の押し問答になったが俺がぽつりとおうちに帰りたいと言ったことにより収束した。猊下はとても得意げな顔をして皇太子殿下を嘲笑していた。皇太子は苦笑いをしながらも最後にわしゃわしゃと俺の頭をかき回した。
「仕方ねえ、今は引く」
最後にそう言って俺を見送った。なんか知らんが高級な薬を貰ったが帰って早々猊下が全部捨てた。俺はそんなことして良いのかと悲鳴を上げたが、あいつと私は友達だから大丈夫だと言われた。
とも、だち?本当に友達なの?
猊下をあまり疑いたくはないがあまりにも似合わない関係性な気がして思わず変な顔をしてしまう。
とはいえ追求する勇気も持ち合わせていないのでそのまま有耶無耶になった。
なんだか皇室に縁がある人物が三人に増えてしまった。しかも最後の一人は王族って……。まあこれ以上会うこともないだろうと俺はその時思っていた。
猊下の腕の中でぬくぬく眠りにつきながら次の日、俺はとんでもない騒動に巻き込まれてしまう。
まあそれでもだ。突然帰ってきた皇太子、に抱えられている子供。そしてつくや否や医者を呼べと叫ぶ皇太子……。皇宮は大騒ぎで、俺は居心地悪く今皇宮医に手を診て貰っている。
「これはひどい……」
「治るよな!?」
「ええ、大丈夫ですが、時間が掛かります。こんな小さな体に魔法を使うのはリスクが……」
「あ、俺13歳なので大丈夫かと……」
「じゅう、さん……?」
見た目よりもずっと大人である事を伝えるために年齢を話すと皇宮医は目をぱちくりさせてそう言った。俺はその言葉に深く頷く。
「今すぐ保護するべきです。こんな小さいからだで13歳? ありえません!! 精密検査を行う必要があります!!」
「せ、成長がただ人より遅いだけ何で大丈夫です!!」
皇宮医がそう進言をするので俺は慌ててそう言った。確かに俺の体は未だに小さいが日々ちょっとずつ大きくなっているのだ。多分。今のところ支障が無いから放置してるだけだけどそういうことだから!!ね!!
「お前、家で虐待でもされてんのか?」
「されてないです!! 今の家族は俺を引き取ってくれた良い人だから誤解を招くような言葉はやめて欲しい!!」
お人好し一家だぞ!!猊下の家族を悪く言う奴は許さん!!
じろっと皇太子殿下を睨みつけると、じーっと暫く見つめ合い彼はそうかと言って視線をそらした。
「なら、引き取られる前って事か?」
「……過去のことは忘れました」
「この、髪と瞳のせいか?」
「え……」
……あ!俺そういえばこの髪と瞳の色を変えてない!!猊下と悪人を倒すことに注視しすぎて何もしてなかったわ!!あほすぎるー!!
今更隠すのも変だと思い黙ったままで、ぷいっとそっぽを向く。
「金の悪魔……くだらねえ言い伝えだな」
おいおい、その国の王子様がそんなこと言って良いのか?
「その人のせいで魔法が使えなかったんでしょ?」
「それが本当である事実はない。何の根拠もないだろ」
あれか。言い伝えを信じないタイプか君。
俺はそれ以上言っても無駄だと思いそーですかっと適当に返事をした。
そうこうしているうちに処置は終わった。魔法を使ってすぐに治すのは身体に影響があるかもしれないので少しずつ治療していく必要があるらしい。その何日かの治療をする前に俺の手は元通りになるだろうが、まあ言わなくても良いか。
「ありがとうございました」
「いえ、それよりもこんな傷、とっても痛かったでしょう? 我慢強くて良い子ですね」
「う、うん、いたかったけど、がまんできたよ」
皇宮医によしよしと頭を撫でられた。俺は目をそらしそう言葉にする。多分一般的な子供であれば泣きわめくレベルだと思うけど、怪しまれずに済んで良かった。
「暫く手を使用は控えて下さい」
「ああ、はい」
暫くすれば治るので皇宮医の言葉に何も考えずにそう返事をする。
仮に手を使えなくても物の方を浮かしたり動かしたりすればいい話だ。簡単なことである。
「ご家族に連絡と説明をしたいのですが、お名前を伺っても……」
「こ、困ります! 約束もなしにこのようなことをされては……っ!!」
「どけ!!」
何やら外が騒がしいと思ったその瞬間、荒々しく扉が開かれた。驚いて扉の方を見ると何故かそこには猊下がいた。
「え!?」
「ルド!!」
猊下は皇宮の警備兵を押し切って強引に中に入ってくる。そして俺を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。
「な、なんでここに……っ!?」
「お前が皇太子殿下に連れ去れたのを見てすぐに来た。何かされていないか?」
「だ、大丈夫」
そーっと俺は手の包帯に気付かれないように後ろに回そうとした。しかし、ルドっと猊下にもう一度名前を呼ばれてしまう。
「その手は?」
「……ちょ、ちょっと怪我しただけ……」
「重度の火傷で暫く手が使えないそうだ」
余計なこと言わないで!!
皇太子殿下を睨みつけるが、彼は全く俺を見ていなかった。何故か、猊下を親の敵のような目で睨みつけている。
な、なんでそんなに猊下を見つめているんだろう。その強い視線から猊下を遮りたくてもぞもぞと体を動かすとぐわっと視界が高くなった。
猊下が俺を抱えて立ち上がったようだ。
「帰ります」
「待てよ。誰のせいでそうなったのか分かってないのか?」
「……」
瞬間、空気が急速に冷えた。俺は冷や汗を流す。全面的に俺が悪いのだ。だからそれをつつくような真似をしないで欲しい!!
「お、俺が悪いの!」
「お前は悪くない」
「ルドは何も悪くない」
何故そこで息ぴったりになるんだ君ら!!
結局のところ、猊下と皇太子殿下の押し問答になったが俺がぽつりとおうちに帰りたいと言ったことにより収束した。猊下はとても得意げな顔をして皇太子殿下を嘲笑していた。皇太子は苦笑いをしながらも最後にわしゃわしゃと俺の頭をかき回した。
「仕方ねえ、今は引く」
最後にそう言って俺を見送った。なんか知らんが高級な薬を貰ったが帰って早々猊下が全部捨てた。俺はそんなことして良いのかと悲鳴を上げたが、あいつと私は友達だから大丈夫だと言われた。
とも、だち?本当に友達なの?
猊下をあまり疑いたくはないがあまりにも似合わない関係性な気がして思わず変な顔をしてしまう。
とはいえ追求する勇気も持ち合わせていないのでそのまま有耶無耶になった。
なんだか皇室に縁がある人物が三人に増えてしまった。しかも最後の一人は王族って……。まあこれ以上会うこともないだろうと俺はその時思っていた。
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