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第三章 君が考える最も美しい人の姿がこれなの?
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ウィルはとっても教師に向いていた。
「素晴らしいですアルカルド様!!」
「天才です、稀代の天才!!」
「このような才能をお持ちだったとは、教え甲斐があります!!」
凄い自己肯定感あげてくる。褒め上手だ。それのお陰で一月という日数だったがめきめきと礼儀作法にダンスなど舞踏会に必要な教養をたたき込み、どこにでても恥ずかしくない紳士となった。
「ウィル先生の指導が良かったからだよ」
「! あ、ありがとうございます!! 一生の思い出に致します!!」
そこまで重く考えないで良いよ。褒め言葉なんてこれから関わっていけば沢山言うんだし。
「それでは、最後の予行練習になります」
「はい」
「こちらですアルカルド様!!!」
ウィルがそういうと、控えていたコイヨンがさーっとハンガーラックワゴンを持ってきた。
今、ウィル達の家で、家主二人と俺の護衛二人、侍従一人が揃っている。というのも、今日は本番を想定して姿を変え服も舞踏会で着るもので一通り作法を行うというものだからだ。服の細かい調整も兼ねている。
俺はフラウにこの前の姿にして貰い、服もコイヨンが持ってきたものに腕を通した。髪もセットされ、装飾品が付け足される。いくらかかったんだろうとか考えないようにした。
俺の髪が明るいからか、服は夜空を連想させるような黒に近い青色だ。襟や袖には髪色に合わせた刺繍がされており、宝石類もその色に近いものをつけている。
「おお~」
俺は姿鏡を前に華麗に変身した自分の姿に思わず声が漏れる。前はこんなもの身につけることはなかった。いつも司祭の服だけだったのでおしゃれに無縁だった。いや、気にしてなかった。
こう見ると服って大事だな。もっとこの俺の顔が際立つ。
「お、お、お美しい! 舞踏会での主役はアルカルド様で間違いありません!! 早く写真撮って!!」
「任せろ!!」
メタモルフォーゼした俺をいろんな角度からウィリが写真を撮る。コイヨンが言っていたのだが、この服の宣伝に使いたいとデザイナーに言われたらしい。写真ぐらい沢山撮って貰って構わない。きっとそれも交渉材料に入れただろうから俺が拒否するわけにはいかない。
「はい、それではアルカルド様、フラウさんと一緒に入場してきたという想定でそこの扉から入ってきて下さい」
「うん」
フラウと一緒に外に出ようとするとフラウが自然と俺の手を取ってエスコートしてくれた。
流石だ。慣れてるんだろうな。俺も自然とフラウに身を任せながら扉を舞踏会会場のそれと見立てる。あそこの屋敷の構造はもう頭に入れている。万が一に備えてすぐに逃げられるようにとウィリが教えてくれた。あと招待客も。
ウィリは顔の利く記者のようでいろんな情報を俺に教えてくれたので注意人物とかは記憶した。兎に角、俺は新人で目を引くのでいろんな人が突っかかってくるだろうと予想して対策を練ってくれた。
そこら辺はどうでもいいんだよね。猊下守れれば良いから。まあフラウには迷惑かけてしまうけど、一夜の関係ということで……。
「アルカルド様、準備は良いですか?」
「うん、大丈夫」
俺がそういうとフラウが微笑んだ。それからこっそりと俺の耳元で囁く。
「とっても綺麗です。会場の誰よりも貴方に勝る者はいないでしょう」
「ふふ、ありがとうフラウ」
君は本当に人の口説き方を分かってるなぁ。クスクス笑って俺はその言葉を素直に受け止める。そして、フラウに手を引かれながら俺は一通り本番を想定しての予行をした。
終始褒められる俺、写真の嵐、賛美の声とフラウに対するヤジ。
「お前!! やっぱりそこ代われ!!」
「次私! 私と踊って下さい!!」
「俺も踊りたい!! 誰か俺の代わりに写真撮って!!」
「わ、私も、私も……」
結局その場にいた全員と二回ほど踊った。俺はもう疲れたよ。
***
「う、う、また何かあったら遠慮無く頼って下さい!!」
「俺も! いつでも力になります!!」
「ありがとう。教会にお祈りにくるからその時にまた」
「いつでもどうぞ!!」
一生の別れかのようにウィルに泣かれ、その涙に釣られて涙目になるウィリ。そんな二人にまた地下に行くのでと約束を取り付けると二人は見るからに顔を明るくした。元気になったようで良かった。
そうして彼らに手を振りながら、猊下が帰ってくるまでにこっそりと屋敷に戻る。三人が完璧に隠蔽しているので今のところ誰にもばれていない。凄すぎる。ロズリーのような屑も使えるが、この子達はその上をいく。正直、かなり使える。ちょっと良心が痛む。
ともあれ、もう舞踏会は明後日だ。明日は休んで体調を万全にして、猊下を守るぞー!
「素晴らしいですアルカルド様!!」
「天才です、稀代の天才!!」
「このような才能をお持ちだったとは、教え甲斐があります!!」
凄い自己肯定感あげてくる。褒め上手だ。それのお陰で一月という日数だったがめきめきと礼儀作法にダンスなど舞踏会に必要な教養をたたき込み、どこにでても恥ずかしくない紳士となった。
「ウィル先生の指導が良かったからだよ」
「! あ、ありがとうございます!! 一生の思い出に致します!!」
そこまで重く考えないで良いよ。褒め言葉なんてこれから関わっていけば沢山言うんだし。
「それでは、最後の予行練習になります」
「はい」
「こちらですアルカルド様!!!」
ウィルがそういうと、控えていたコイヨンがさーっとハンガーラックワゴンを持ってきた。
今、ウィル達の家で、家主二人と俺の護衛二人、侍従一人が揃っている。というのも、今日は本番を想定して姿を変え服も舞踏会で着るもので一通り作法を行うというものだからだ。服の細かい調整も兼ねている。
俺はフラウにこの前の姿にして貰い、服もコイヨンが持ってきたものに腕を通した。髪もセットされ、装飾品が付け足される。いくらかかったんだろうとか考えないようにした。
俺の髪が明るいからか、服は夜空を連想させるような黒に近い青色だ。襟や袖には髪色に合わせた刺繍がされており、宝石類もその色に近いものをつけている。
「おお~」
俺は姿鏡を前に華麗に変身した自分の姿に思わず声が漏れる。前はこんなもの身につけることはなかった。いつも司祭の服だけだったのでおしゃれに無縁だった。いや、気にしてなかった。
こう見ると服って大事だな。もっとこの俺の顔が際立つ。
「お、お、お美しい! 舞踏会での主役はアルカルド様で間違いありません!! 早く写真撮って!!」
「任せろ!!」
メタモルフォーゼした俺をいろんな角度からウィリが写真を撮る。コイヨンが言っていたのだが、この服の宣伝に使いたいとデザイナーに言われたらしい。写真ぐらい沢山撮って貰って構わない。きっとそれも交渉材料に入れただろうから俺が拒否するわけにはいかない。
「はい、それではアルカルド様、フラウさんと一緒に入場してきたという想定でそこの扉から入ってきて下さい」
「うん」
フラウと一緒に外に出ようとするとフラウが自然と俺の手を取ってエスコートしてくれた。
流石だ。慣れてるんだろうな。俺も自然とフラウに身を任せながら扉を舞踏会会場のそれと見立てる。あそこの屋敷の構造はもう頭に入れている。万が一に備えてすぐに逃げられるようにとウィリが教えてくれた。あと招待客も。
ウィリは顔の利く記者のようでいろんな情報を俺に教えてくれたので注意人物とかは記憶した。兎に角、俺は新人で目を引くのでいろんな人が突っかかってくるだろうと予想して対策を練ってくれた。
そこら辺はどうでもいいんだよね。猊下守れれば良いから。まあフラウには迷惑かけてしまうけど、一夜の関係ということで……。
「アルカルド様、準備は良いですか?」
「うん、大丈夫」
俺がそういうとフラウが微笑んだ。それからこっそりと俺の耳元で囁く。
「とっても綺麗です。会場の誰よりも貴方に勝る者はいないでしょう」
「ふふ、ありがとうフラウ」
君は本当に人の口説き方を分かってるなぁ。クスクス笑って俺はその言葉を素直に受け止める。そして、フラウに手を引かれながら俺は一通り本番を想定しての予行をした。
終始褒められる俺、写真の嵐、賛美の声とフラウに対するヤジ。
「お前!! やっぱりそこ代われ!!」
「次私! 私と踊って下さい!!」
「俺も踊りたい!! 誰か俺の代わりに写真撮って!!」
「わ、私も、私も……」
結局その場にいた全員と二回ほど踊った。俺はもう疲れたよ。
***
「う、う、また何かあったら遠慮無く頼って下さい!!」
「俺も! いつでも力になります!!」
「ありがとう。教会にお祈りにくるからその時にまた」
「いつでもどうぞ!!」
一生の別れかのようにウィルに泣かれ、その涙に釣られて涙目になるウィリ。そんな二人にまた地下に行くのでと約束を取り付けると二人は見るからに顔を明るくした。元気になったようで良かった。
そうして彼らに手を振りながら、猊下が帰ってくるまでにこっそりと屋敷に戻る。三人が完璧に隠蔽しているので今のところ誰にもばれていない。凄すぎる。ロズリーのような屑も使えるが、この子達はその上をいく。正直、かなり使える。ちょっと良心が痛む。
ともあれ、もう舞踏会は明後日だ。明日は休んで体調を万全にして、猊下を守るぞー!
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