【完結】断罪された神子様は、前世養父だった冷徹公子に溺愛される。

紫鶴

文字の大きさ
上 下
44 / 75
第三章 君が考える最も美しい人の姿がこれなの?

4

しおりを挟む
 ウィルはとっても教師に向いていた。


「素晴らしいですアルカルド様!!」
「天才です、稀代の天才!!」
「このような才能をお持ちだったとは、教え甲斐があります!!」


 凄い自己肯定感あげてくる。褒め上手だ。それのお陰で一月という日数だったがめきめきと礼儀作法にダンスなど舞踏会に必要な教養をたたき込み、どこにでても恥ずかしくない紳士となった。


「ウィル先生の指導が良かったからだよ」
「! あ、ありがとうございます!! 一生の思い出に致します!!」


 そこまで重く考えないで良いよ。褒め言葉なんてこれから関わっていけば沢山言うんだし。


「それでは、最後の予行練習になります」
「はい」
「こちらですアルカルド様!!!」


 ウィルがそういうと、控えていたコイヨンがさーっとハンガーラックワゴンを持ってきた。


 今、ウィル達の家で、家主二人と俺の護衛二人、侍従一人が揃っている。というのも、今日は本番を想定して姿を変え服も舞踏会で着るもので一通り作法を行うというものだからだ。服の細かい調整も兼ねている。


 俺はフラウにこの前の姿にして貰い、服もコイヨンが持ってきたものに腕を通した。髪もセットされ、装飾品が付け足される。いくらかかったんだろうとか考えないようにした。


 俺の髪が明るいからか、服は夜空を連想させるような黒に近い青色だ。襟や袖には髪色に合わせた刺繍がされており、宝石類もその色に近いものをつけている。


「おお~」


 俺は姿鏡を前に華麗に変身した自分の姿に思わず声が漏れる。前はこんなもの身につけることはなかった。いつも司祭の服だけだったのでおしゃれに無縁だった。いや、気にしてなかった。


 こう見ると服って大事だな。もっとこの俺の顔が際立つ。


「お、お、お美しい! 舞踏会での主役はアルカルド様で間違いありません!! 早く写真撮って!!」
「任せろ!!」


 メタモルフォーゼした俺をいろんな角度からウィリが写真を撮る。コイヨンが言っていたのだが、この服の宣伝に使いたいとデザイナーに言われたらしい。写真ぐらい沢山撮って貰って構わない。きっとそれも交渉材料に入れただろうから俺が拒否するわけにはいかない。


「はい、それではアルカルド様、フラウさんと一緒に入場してきたという想定でそこの扉から入ってきて下さい」
「うん」


 フラウと一緒に外に出ようとするとフラウが自然と俺の手を取ってエスコートしてくれた。


 流石だ。慣れてるんだろうな。俺も自然とフラウに身を任せながら扉を舞踏会会場のそれと見立てる。あそこの屋敷の構造はもう頭に入れている。万が一に備えてすぐに逃げられるようにとウィリが教えてくれた。あと招待客も。


 ウィリは顔の利く記者のようでいろんな情報を俺に教えてくれたので注意人物とかは記憶した。兎に角、俺は新人で目を引くのでいろんな人が突っかかってくるだろうと予想して対策を練ってくれた。


 そこら辺はどうでもいいんだよね。猊下守れれば良いから。まあフラウには迷惑かけてしまうけど、一夜の関係ということで……。


「アルカルド様、準備は良いですか?」
「うん、大丈夫」


 俺がそういうとフラウが微笑んだ。それからこっそりと俺の耳元で囁く。


「とっても綺麗です。会場の誰よりも貴方に勝る者はいないでしょう」
「ふふ、ありがとうフラウ」


 君は本当に人の口説き方を分かってるなぁ。クスクス笑って俺はその言葉を素直に受け止める。そして、フラウに手を引かれながら俺は一通り本番を想定しての予行をした。


 終始褒められる俺、写真の嵐、賛美の声とフラウに対するヤジ。


「お前!! やっぱりそこ代われ!!」
「次私! 私と踊って下さい!!」
「俺も踊りたい!! 誰か俺の代わりに写真撮って!!」
「わ、私も、私も……」


 結局その場にいた全員と二回ほど踊った。俺はもう疲れたよ。

***

「う、う、また何かあったら遠慮無く頼って下さい!!」
「俺も! いつでも力になります!!」
「ありがとう。教会にお祈りにくるからその時にまた」
「いつでもどうぞ!!」


 一生の別れかのようにウィルに泣かれ、その涙に釣られて涙目になるウィリ。そんな二人にまた地下に行くのでと約束を取り付けると二人は見るからに顔を明るくした。元気になったようで良かった。


 そうして彼らに手を振りながら、猊下が帰ってくるまでにこっそりと屋敷に戻る。三人が完璧に隠蔽しているので今のところ誰にもばれていない。凄すぎる。ロズリーのような屑も使えるが、この子達はその上をいく。正直、かなり使える。ちょっと良心が痛む。


 ともあれ、もう舞踏会は明後日だ。明日は休んで体調を万全にして、猊下を守るぞー!
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

推しの為なら悪役令息になるのは大歓迎です!

こうらい ゆあ
BL
「モブレッド・アテウーマ、貴様との婚約を破棄する!」王太子の宣言で始まった待ちに待った断罪イベント!悪役令息であるモブレッドはこの日を心待ちにしていた。すべては推しである主人公ユレイユの幸せのため!推しの幸せを願い、日夜フラグを必死に回収していくモブレッド。ところが、予想外の展開が待っていて…?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

処理中です...