【完結】断罪された神子様は、前世養父だった冷徹公子に溺愛される。

紫鶴

文字の大きさ
上 下
41 / 75
第三章 君が考える最も美しい人の姿がこれなの?

1

しおりを挟む
 ベイカー家での舞踏会までたった一ヶ月!


 この事件は、確かベイカー家で招待された犯人の家族を狙った犯行であった。残念なことにそこら辺の名前は出てこない。恐らく貴族だから情報規制がかかったのだろう。そのとばっちりになったベイカー家は本当に可哀想。


 そんな犯人が何故家族に復讐をしたのかというと至ってシンプル。


 貴族として育ち、美しい顔に恵まれたその男は幼い頃からちやほやされていた。しかし、親戚の家に行っていたときに火事に遭い、酷い火傷を負って、美しいといわれていた顔が一変して醜くなってしまう。そんな彼の容姿を化け物のようだと家族は遠ざけてしまうのだ。その男の美しい容姿で玉の輿を狙っていた家族達にとって、彼は価値がなくなってしまったのだ。悲しい話だ。


 そうして成人になる頃には、無理矢理辺境地の騎士団に入団されてしまい、縁を切られる。その場所で醜いと罵られ虐められた彼は復讐を誓い、手始めにその辺境で虐めを行っていた騎士達を殺し、王都に戻ってきたのである。いやあ、執念って怖い。


 まあでもその事件以降、全く現れないからその事件で死んだかあるいは復讐を遂げて満足したのか、どちらにしても俺に関わらない取るに足らない三流だ。話の流れが終わるので阻止することはしないが、猊下を守ることだけはさせて貰う。


「侵入はたやすいけど……」
「アルカルド様、その招待状俺も持ってるんでいきたいなら一緒に行きますか?」
「おわー!!!」


 猊下が学院に行っている間に作戦を練ろうとしたら声に出ていたらしい。コイヨン、フラウ、ジエンが控えている中うかつなことは言わないようにと思っていたのだが。そう思って慌てて口を押さえるが、フラウが興味深いことをいった。


「持ってるの?」
「はい。知り合いなんで」
「顔広いですからこいつ」


 フラウナイス!後別に敬語良いっていってるのにこの二人全く治さなくて困る。最初に会った時普通だったじゃん!!そう訴えるが、立場がありますのでと頑ななので放置した。


「パートナーとしていけば入れるはずです」
「でも、俺子供だから参加できないって……」
「そんなの魔法でどうにかなります」
「え、警備とかそういうのに引っかかるんじゃ……」
「そこは、コイヨンが細工します」
「お任せ下さい。あの伯爵家にはツテがありますのでご命令下さればすぐにでも」
「お、おお……」


 コイヨンはどっかのエージェントかな?俺の侍従になるより良い給金の仕事についた方が良いんじゃない?でもそんなことをして良いのかとちょっと葛藤して、いや、猊下の命には代えられないとすぐに切り替えた。


「では、大人のアルカルド様に合わせて服を新調しましょう! あ、一度魔法をかけてもよろしいですか?」
「いいよ」
「どのようなお姿をご所望でしょうか」
「君がこの世で一番美しいと思う顔」


 フラウみたいな美人が美しいと思うならばきっとこの世の者とは思えないほどの造形美だろう。
 火傷を負ったことで美しい人を憎むようになった犯人なので、出来れば猊下の美しさが霞むぐらい……は無理だろうが、目につく位だったらいけるだろう!!これで少しでも猊下の危険を減らす!!


 俺はそう思ってフラウに任せるとフラウは分かりましたと頷いて俺に魔法をかける。身長も伸ばし、顔も変わり、髪の色と瞳が変化する。


 腰まで伸びたクリーム色の髪だ。金とまではいかないが、似たような色で少し親近感を覚える。そう思って、全容を見ようと鏡を探すとすぐにコイヨンがそれを持ってきて俺の顔を見せてくれた。


 そして固まった。


「……君が考える最も美しい人の姿がこれなの?」
「はい」
「まあ、確かに美人だ」
「そうでしょう!? 私はこの美しさに勝るものはこの世に無いと自負しています!!」


 それはないと否定したいが、フラウの価値を否定することにもなるのでその言葉は飲み込んだ。


 でも、仕方ないだろう。だってその鏡に映っていたのは断罪された神子様、つまり前世の俺だから。


 髪色と瞳だけ違うだけで後は全部まんま神子。もしかして、俺の姿だけはどっかの書物に残ってた?それとも偶々彼の理想がこれだったのかな?


 久しぶりの姿に少しそわそわするが、今世でこの姿を覚えているのは主人公達だけだ。その舞踏会には未成年であるレオは参加しないし、仮に見られたとしても一夜限りの姿だ、どうにでもなる。


 寧ろ警戒させるのは良いかもしれない。ちょっと良いな、チラ見せするラスボス。


 最終的にもう一度殺されれば良いのだから。


「では早速! 準備にかかりましょう!! お任せ下さい! 最高級のものをご用意致します!!」
「え? いやいいよ。君たちの貸してくれればそれで……」
「いけません!! こんな美味しい機会を逃すなんてそんな勿体ないこと!! 資金の心配はありません!! 我々は、この日のために稼いでますから!!」
「わ、分かった、分かったから好きにして!!」
「はい!!」


 コイヨンの嬉しそうな声と表情と圧力に俺は負けた。彼は嬉々としてサイズを測った後に素早く部屋を出て行くコイヨンを見送って、ふうっと一息つく。


「とりあえず、これでいいとして、フラウ。君に言いたいことがある」
「はい」
「助けて欲しい」


 言っておくが、俺はパーティの作法など全く知らない。前の神子のときだって、一応宗教組織だからこういう風にきらびやかな会には軽く顔を出すだけだったのだ。だから、超不安!!


「フラウのパートナーとして、恥じない働きをしたいんだけど……」
「そんなもの気になさる必要はありません……と、私は思っておりますがアルカルド様がお望みであれば一月で、それを可能に致します」
「うん! 頑張るよ!」


 一ヶ月で最低限なんてハードスケジュールだろうけど、俺の無理のお願いを聞いてくれたんだしこれぐらいは!!
しおりを挟む
感想 24

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】第三王子は、自由に踊りたい。〜豹の獣人と、第一王子に言い寄られてますが、僕は一体どうすればいいでしょうか?〜

N2O
BL
気弱で不憫属性の第三王子が、二人の男から寵愛を受けるはなし。 表紙絵 ⇨元素 様 X(@10loveeeyy) ※独自設定、ご都合主義です。 ※ハーレム要素を予定しています。

推しの為なら悪役令息になるのは大歓迎です!

こうらい ゆあ
BL
「モブレッド・アテウーマ、貴様との婚約を破棄する!」王太子の宣言で始まった待ちに待った断罪イベント!悪役令息であるモブレッドはこの日を心待ちにしていた。すべては推しである主人公ユレイユの幸せのため!推しの幸せを願い、日夜フラグを必死に回収していくモブレッド。ところが、予想外の展開が待っていて…?

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました

楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。 ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。 喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。   「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」 契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。 エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。 ⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました

乙女ゲームが俺のせいでバグだらけになった件について

はかまる
BL
異世界転生配属係の神様に間違えて何の関係もない乙女ゲームの悪役令状ポジションに転生させられた元男子高校生が、世界がバグだらけになった世界で頑張る話。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー! 他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

処理中です...