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第二章 やめてー!!俺の屑を連れて行かないでぇ!!!
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不意に、ぴしりっと何かひびが入るような音がした。その音と共に空間に裂け目が出来る。はじめに見えたのは無骨なハルバードだ。装飾類が一切無く、ぎらりと研ぎ澄まされた刃が怪しく光る。
「ひぃっ!!」
「うわ!?」
小心者で臆病な悪徳魔術師はそれが見えただけでどんっと俺を前におした。いやいやお前!簡単に手放しすぎ!!いくら自分の命の方が大事だからってこれは酷い!!だからお前!ほとんど語られることなく終わる三下悪役なんだぞ!!
同じ悪役として恥ずかしいと俺は思いながら前方によろけるとすぐさま腕が伸びて俺を目の前の人物が支えてくれた。嗅いだことのある匂いと見たことのある服。
恐る恐る見上げるとそこには、表情を無くした猊下がいた。
ひ、とてつもなくお怒り!!
「お、おにい……」
「後ろに」
短くそれだけ話した猊下はすっと俺の前に立つとその手に持っているハルバードを構えた。
あー不味い!!悪徳魔術師が俺じゃなくて猊下の手で殺されてしまうぅ!!
またしても細かいところで筋書きが変わってしまうと頭を抱えそうになる。そんな風に頭をなたませていたら、猊下が素早くハルバードを下にして面と平行になるように俺の真横にそれを構えた。がきんっと何かがぶつかる音がして火花が散ると彼は力一杯それを真横に振る。
宙に舞ったのは小さなナイフを手にした子供だ。猊下の力業に押し返されて体勢を崩している。その大きな隙を猊下が逃すはずもなく、ハルバードで心臓めがけて突き刺そうと手を返した。
「殺さないで!!」
ただその子は正気を失っているだけで、ここで死ぬ必要は無い。そう思って思わず叫ぶと、その切っ先は子供の胸を軽くかすりながら肩にずれた。ほぼ心臓にめがけた軌道だったが、俺の言葉一つですぐに変えられるなんて凄すぎる!!
しかもそのあと、猊下は素早く肘で子供の顔を強打した後に柄の方で側頭部を攻撃。気絶させていたのだ。おおっと思わず声が出る。
「あ、ありが……」
「ルド!」
「へ?」
お礼を言おうとしたら猊下が焦った声を出した。横を見ると反対側に違う子供が。ちゃきっとその手に不釣り合いなナイフが収まっており目はうつろ。こんな子供にやられるほど俺は弱くないので軽―く躱そうとして、その子供の横から足が伸びる。その足は迷い無く子供の腹を蹴り上げて、子供の体は離れていった。
一体誰だとそちらを見ると、なんとそこにはコイヨンがいた。嘘。俺まだ魔法といてないのに!なんで起きてるんだこの子!
「よくも、よくもよくもよくも!! この御方を傷つけようとしたな貴様あぁっ!!!」
ひぇ……。
コイヨンの叫び声に俺は、どうしてそんなに興奮しているのか分からず縮こまる。やだぁ、魔法かけたの怒られたらどうしよう……。後の祭りとはこういうことかと未来の俺に運命を委ねると、悪徳魔術師の周りに数人の子供が固まっていた。彼の戦力はまだあると言うことだろう。子供に守って貰うなんて情けない……。
大して俺は、青年達に守られている。ちょっとあまり絵面が変わらないかもしれない。ここは、この場で年長さんな俺も参戦せねば!!
「動くな。絶対にお前を守る」
「大丈夫です。必ず傷一つつけさせません」
「あ、うん……」
猊下に言われると弱いと言うのもあるが、俺コイヨンの時折感じる強い意志に負ける……。兎に角どちらも俺の弱いところを的確についてきて俺は大人しく後ろに控えているしかない。いざとなったら勿論助けるけど、多分その心配も無いだろうし。
「い、い、いけ!! たった二人だ!!」
普通はそうなんだろうけど、そのたった二人と君の戦力じゃあ無理だよ。
勝敗は簡単についた。赤子の手をひねるよりも簡単というものだろう。次々に襲いかかってくる子供達を二人は難なく戦闘不能にさせる。驚くことにそこから一歩も動いていないという。猊下のハルバードとそれを邪魔しないコイヨンの投擲。遠距離と中距離でここまで近づいてくる者はいない。圧倒的力の差だ。
思わずご愁傷様と合掌してしまう。
「な、なんだ、なんなんだお前ら!!」
分かる。こんなチート級のキャラそこら辺にいて欲しくないよね。俺も思う。マジで君は運が悪かったよ……。
「大人しくしていろ」
「捕縛します」
「ひっ! く、くるな!!」
悪徳魔術師がかつかつと杖を動かしながら逃げようとする。しかし、足が悪いため逃げられそうにない。コイヨンは武器の代わりに縄を取り出して悪徳魔術師を捕まえようとしていた。コイヨンの懐には一体どんなものが入っているのか……。
一応俺も周りに子供が残っていないかとか、悪徳魔術師が武器を隠し持っていないかとか確認しようとして、ぱんっと破裂音が聞こえた。
「ひぃっ!!」
「うわ!?」
小心者で臆病な悪徳魔術師はそれが見えただけでどんっと俺を前におした。いやいやお前!簡単に手放しすぎ!!いくら自分の命の方が大事だからってこれは酷い!!だからお前!ほとんど語られることなく終わる三下悪役なんだぞ!!
同じ悪役として恥ずかしいと俺は思いながら前方によろけるとすぐさま腕が伸びて俺を目の前の人物が支えてくれた。嗅いだことのある匂いと見たことのある服。
恐る恐る見上げるとそこには、表情を無くした猊下がいた。
ひ、とてつもなくお怒り!!
「お、おにい……」
「後ろに」
短くそれだけ話した猊下はすっと俺の前に立つとその手に持っているハルバードを構えた。
あー不味い!!悪徳魔術師が俺じゃなくて猊下の手で殺されてしまうぅ!!
またしても細かいところで筋書きが変わってしまうと頭を抱えそうになる。そんな風に頭をなたませていたら、猊下が素早くハルバードを下にして面と平行になるように俺の真横にそれを構えた。がきんっと何かがぶつかる音がして火花が散ると彼は力一杯それを真横に振る。
宙に舞ったのは小さなナイフを手にした子供だ。猊下の力業に押し返されて体勢を崩している。その大きな隙を猊下が逃すはずもなく、ハルバードで心臓めがけて突き刺そうと手を返した。
「殺さないで!!」
ただその子は正気を失っているだけで、ここで死ぬ必要は無い。そう思って思わず叫ぶと、その切っ先は子供の胸を軽くかすりながら肩にずれた。ほぼ心臓にめがけた軌道だったが、俺の言葉一つですぐに変えられるなんて凄すぎる!!
しかもそのあと、猊下は素早く肘で子供の顔を強打した後に柄の方で側頭部を攻撃。気絶させていたのだ。おおっと思わず声が出る。
「あ、ありが……」
「ルド!」
「へ?」
お礼を言おうとしたら猊下が焦った声を出した。横を見ると反対側に違う子供が。ちゃきっとその手に不釣り合いなナイフが収まっており目はうつろ。こんな子供にやられるほど俺は弱くないので軽―く躱そうとして、その子供の横から足が伸びる。その足は迷い無く子供の腹を蹴り上げて、子供の体は離れていった。
一体誰だとそちらを見ると、なんとそこにはコイヨンがいた。嘘。俺まだ魔法といてないのに!なんで起きてるんだこの子!
「よくも、よくもよくもよくも!! この御方を傷つけようとしたな貴様あぁっ!!!」
ひぇ……。
コイヨンの叫び声に俺は、どうしてそんなに興奮しているのか分からず縮こまる。やだぁ、魔法かけたの怒られたらどうしよう……。後の祭りとはこういうことかと未来の俺に運命を委ねると、悪徳魔術師の周りに数人の子供が固まっていた。彼の戦力はまだあると言うことだろう。子供に守って貰うなんて情けない……。
大して俺は、青年達に守られている。ちょっとあまり絵面が変わらないかもしれない。ここは、この場で年長さんな俺も参戦せねば!!
「動くな。絶対にお前を守る」
「大丈夫です。必ず傷一つつけさせません」
「あ、うん……」
猊下に言われると弱いと言うのもあるが、俺コイヨンの時折感じる強い意志に負ける……。兎に角どちらも俺の弱いところを的確についてきて俺は大人しく後ろに控えているしかない。いざとなったら勿論助けるけど、多分その心配も無いだろうし。
「い、い、いけ!! たった二人だ!!」
普通はそうなんだろうけど、そのたった二人と君の戦力じゃあ無理だよ。
勝敗は簡単についた。赤子の手をひねるよりも簡単というものだろう。次々に襲いかかってくる子供達を二人は難なく戦闘不能にさせる。驚くことにそこから一歩も動いていないという。猊下のハルバードとそれを邪魔しないコイヨンの投擲。遠距離と中距離でここまで近づいてくる者はいない。圧倒的力の差だ。
思わずご愁傷様と合掌してしまう。
「な、なんだ、なんなんだお前ら!!」
分かる。こんなチート級のキャラそこら辺にいて欲しくないよね。俺も思う。マジで君は運が悪かったよ……。
「大人しくしていろ」
「捕縛します」
「ひっ! く、くるな!!」
悪徳魔術師がかつかつと杖を動かしながら逃げようとする。しかし、足が悪いため逃げられそうにない。コイヨンは武器の代わりに縄を取り出して悪徳魔術師を捕まえようとしていた。コイヨンの懐には一体どんなものが入っているのか……。
一応俺も周りに子供が残っていないかとか、悪徳魔術師が武器を隠し持っていないかとか確認しようとして、ぱんっと破裂音が聞こえた。
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