【完結】断罪された神子様は、前世養父だった冷徹公子に溺愛される。

紫鶴

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第二章 やめてー!!俺の屑を連れて行かないでぇ!!!

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「ひっ、か、髪だけでも持ち帰らないと!!」
「汚い手で触るなぁ!!!!」
「ひぃ……っ!!」


 悪徳魔術師が小物感まるだしで悲鳴を上げた。そしてかつんかつんと不思議な音を立てながらそれが遠ざかっていく。

 俺が!悲鳴を!上げたい!!

 待って、待ってよねえ!!どこいくの!?お前のサンプルまるごと置いてってるよ!?ねえ待って!?え!?こんなことある!?猊下がこんなところに何でいるのぉ!?誰か教えてー!!

 俺は遠ざかる悪徳魔術師の反応と近づいてくる猊下の反応に思わずそんな心の声が漏れる。そうこうしているうちに猊下が俺の体を確認する為に軽く手で触れていた。血が大分出ているし、倒れているからうかつに動かさないように慎重な手つきだ。うん。

 このまま寝たふりをするべきか、なんか喧噪が聞こえて若干意識が戻ったふりをするべきか……。どうすれば、俺は一体!!


「る、ルド、ルド、し、しっかり、だ、大丈夫、大丈夫だから。こ、これぐらいは……っ」


 あ、これ起きないとだめだ。

 猊下の震える声と指先に俺はすぐさま薄く目を開けた。気分的にはかっ!てかっぴろげたかったけど俺は今、怪我人だから!


「お、にいちゃん……?」
「! ルド!!」


 いかにも今目が覚めましたよ~といったようにかすれた声を出しながら体を仰向けにしようと身じろぎをするとすぐさま「動くな!!」と猊下が叫んだ。


「今お前は頭を強く殴られている。下手に動くと悪化してしまう可能性がある」


 これぐらい、大丈夫です猊下。ええ、俺頑丈に作られてるんで。

 なんて言えたら良いのだが、まあ言えるはずもなく大人しくうつ伏せ。地面が冷たい……。完全な自業自得なんだけども……。


「今治療をするから動くな。私が必ずお前の傷を治すから」
「うん」
「だから、もう少し頑張って、起きてるんだ」
「うん、分かった」


 あー、俺再び猊下のトラウマを抉っておりませんか?そうですよね?まあ起きてるのとか余裕なんで大丈夫なんですけども、大体こう言うときって胸に抱かれて少しずつ意識が無くなっていく人を見送るみたいなシーンだよね。

 猊下は冷静に、俺がまだ助かる見込みがあると思ってその場から動かさないで魔法をかけてくれてる。申し訳ない。俺が油断しなければ。というか、猊下の動向を把握していれば……。

 俺はロズリーで手一杯で……あっ!!

「ロズリーは悪くないよ!!」
「……ルド、興奮しないで。傷に障る」
「ほんとに、ロズリーは関係ないから!!」
「ルド、良いから大人しく」


 やべええええええええええええっ!!俺があほなミスをしたばかりにロズリーの立場が危ぶまれる!!ごめんごめん!!まじごめん!違うから!本当にマジでロズリー関係ないから!!

 俺は大人しく猊下に傷を治されてようやく起き上がる。そのまま猊下に抱えられてしょんぼりと肩を落とした。


「あのね、本当にロズリーは……」
「分かった。今回のことは不問にする」
「! ありがとう!! あ、あと、助けてくれてありがとう、お兄ちゃん!」


 いけないいけない。猊下に助けられたお礼も言ってなかった。傷も治して貰って、言わないわけがない。猊下の魔力結構好きなんだよね。温かくて~ほわほわする。

 えへへっと笑いながらぎゅっと猊下に抱きついた。うん、これでごまかされてくれないかな。

 マジでどうしよう。猊下がまさかここにいてこんなところを見られるなんて思わなかった。これで外出が難しくなったし、何よりロズリーが危ない。

 ああ、今まで音沙汰がなかった悪徳魔術師がいきなり動き出したからってすぐに飛びつくんじゃなかった。こういう人が罠にかかるんだよなぁ。小説とかでよくある奴。気持ちは分かるよ。今まで何もなかったからさ、これを逃したらもうチャンスは来ないんじゃないかって思うよね。

 猊下の治癒魔法のお陰か、それともいつもと違う猊下の香りのお陰が、うとうとと眠くなってきた。何だろうこの匂い。いつもの柑橘系の匂いじゃなくて、なんだろ、花の匂い、なの、かな……。

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