33 / 75
第二章 やめてー!!俺の屑を連れて行かないでぇ!!!
10-4
しおりを挟む
「ひっ、か、髪だけでも持ち帰らないと!!」
「汚い手で触るなぁ!!!!」
「ひぃ……っ!!」
悪徳魔術師が小物感まるだしで悲鳴を上げた。そしてかつんかつんと不思議な音を立てながらそれが遠ざかっていく。
俺が!悲鳴を!上げたい!!
待って、待ってよねえ!!どこいくの!?お前のサンプルまるごと置いてってるよ!?ねえ待って!?え!?こんなことある!?猊下がこんなところに何でいるのぉ!?誰か教えてー!!
俺は遠ざかる悪徳魔術師の反応と近づいてくる猊下の反応に思わずそんな心の声が漏れる。そうこうしているうちに猊下が俺の体を確認する為に軽く手で触れていた。血が大分出ているし、倒れているからうかつに動かさないように慎重な手つきだ。うん。
このまま寝たふりをするべきか、なんか喧噪が聞こえて若干意識が戻ったふりをするべきか……。どうすれば、俺は一体!!
「る、ルド、ルド、し、しっかり、だ、大丈夫、大丈夫だから。こ、これぐらいは……っ」
あ、これ起きないとだめだ。
猊下の震える声と指先に俺はすぐさま薄く目を開けた。気分的にはかっ!てかっぴろげたかったけど俺は今、怪我人だから!
「お、にいちゃん……?」
「! ルド!!」
いかにも今目が覚めましたよ~といったようにかすれた声を出しながら体を仰向けにしようと身じろぎをするとすぐさま「動くな!!」と猊下が叫んだ。
「今お前は頭を強く殴られている。下手に動くと悪化してしまう可能性がある」
これぐらい、大丈夫です猊下。ええ、俺頑丈に作られてるんで。
なんて言えたら良いのだが、まあ言えるはずもなく大人しくうつ伏せ。地面が冷たい……。完全な自業自得なんだけども……。
「今治療をするから動くな。私が必ずお前の傷を治すから」
「うん」
「だから、もう少し頑張って、起きてるんだ」
「うん、分かった」
あー、俺再び猊下のトラウマを抉っておりませんか?そうですよね?まあ起きてるのとか余裕なんで大丈夫なんですけども、大体こう言うときって胸に抱かれて少しずつ意識が無くなっていく人を見送るみたいなシーンだよね。
猊下は冷静に、俺がまだ助かる見込みがあると思ってその場から動かさないで魔法をかけてくれてる。申し訳ない。俺が油断しなければ。というか、猊下の動向を把握していれば……。
俺はロズリーで手一杯で……あっ!!
「ロズリーは悪くないよ!!」
「……ルド、興奮しないで。傷に障る」
「ほんとに、ロズリーは関係ないから!!」
「ルド、良いから大人しく」
やべええええええええええええっ!!俺があほなミスをしたばかりにロズリーの立場が危ぶまれる!!ごめんごめん!!まじごめん!違うから!本当にマジでロズリー関係ないから!!
俺は大人しく猊下に傷を治されてようやく起き上がる。そのまま猊下に抱えられてしょんぼりと肩を落とした。
「あのね、本当にロズリーは……」
「分かった。今回のことは不問にする」
「! ありがとう!! あ、あと、助けてくれてありがとう、お兄ちゃん!」
いけないいけない。猊下に助けられたお礼も言ってなかった。傷も治して貰って、言わないわけがない。猊下の魔力結構好きなんだよね。温かくて~ほわほわする。
えへへっと笑いながらぎゅっと猊下に抱きついた。うん、これでごまかされてくれないかな。
マジでどうしよう。猊下がまさかここにいてこんなところを見られるなんて思わなかった。これで外出が難しくなったし、何よりロズリーが危ない。
ああ、今まで音沙汰がなかった悪徳魔術師がいきなり動き出したからってすぐに飛びつくんじゃなかった。こういう人が罠にかかるんだよなぁ。小説とかでよくある奴。気持ちは分かるよ。今まで何もなかったからさ、これを逃したらもうチャンスは来ないんじゃないかって思うよね。
猊下の治癒魔法のお陰か、それともいつもと違う猊下の香りのお陰が、うとうとと眠くなってきた。何だろうこの匂い。いつもの柑橘系の匂いじゃなくて、なんだろ、花の匂い、なの、かな……。
「汚い手で触るなぁ!!!!」
「ひぃ……っ!!」
悪徳魔術師が小物感まるだしで悲鳴を上げた。そしてかつんかつんと不思議な音を立てながらそれが遠ざかっていく。
俺が!悲鳴を!上げたい!!
待って、待ってよねえ!!どこいくの!?お前のサンプルまるごと置いてってるよ!?ねえ待って!?え!?こんなことある!?猊下がこんなところに何でいるのぉ!?誰か教えてー!!
俺は遠ざかる悪徳魔術師の反応と近づいてくる猊下の反応に思わずそんな心の声が漏れる。そうこうしているうちに猊下が俺の体を確認する為に軽く手で触れていた。血が大分出ているし、倒れているからうかつに動かさないように慎重な手つきだ。うん。
このまま寝たふりをするべきか、なんか喧噪が聞こえて若干意識が戻ったふりをするべきか……。どうすれば、俺は一体!!
「る、ルド、ルド、し、しっかり、だ、大丈夫、大丈夫だから。こ、これぐらいは……っ」
あ、これ起きないとだめだ。
猊下の震える声と指先に俺はすぐさま薄く目を開けた。気分的にはかっ!てかっぴろげたかったけど俺は今、怪我人だから!
「お、にいちゃん……?」
「! ルド!!」
いかにも今目が覚めましたよ~といったようにかすれた声を出しながら体を仰向けにしようと身じろぎをするとすぐさま「動くな!!」と猊下が叫んだ。
「今お前は頭を強く殴られている。下手に動くと悪化してしまう可能性がある」
これぐらい、大丈夫です猊下。ええ、俺頑丈に作られてるんで。
なんて言えたら良いのだが、まあ言えるはずもなく大人しくうつ伏せ。地面が冷たい……。完全な自業自得なんだけども……。
「今治療をするから動くな。私が必ずお前の傷を治すから」
「うん」
「だから、もう少し頑張って、起きてるんだ」
「うん、分かった」
あー、俺再び猊下のトラウマを抉っておりませんか?そうですよね?まあ起きてるのとか余裕なんで大丈夫なんですけども、大体こう言うときって胸に抱かれて少しずつ意識が無くなっていく人を見送るみたいなシーンだよね。
猊下は冷静に、俺がまだ助かる見込みがあると思ってその場から動かさないで魔法をかけてくれてる。申し訳ない。俺が油断しなければ。というか、猊下の動向を把握していれば……。
俺はロズリーで手一杯で……あっ!!
「ロズリーは悪くないよ!!」
「……ルド、興奮しないで。傷に障る」
「ほんとに、ロズリーは関係ないから!!」
「ルド、良いから大人しく」
やべええええええええええええっ!!俺があほなミスをしたばかりにロズリーの立場が危ぶまれる!!ごめんごめん!!まじごめん!違うから!本当にマジでロズリー関係ないから!!
俺は大人しく猊下に傷を治されてようやく起き上がる。そのまま猊下に抱えられてしょんぼりと肩を落とした。
「あのね、本当にロズリーは……」
「分かった。今回のことは不問にする」
「! ありがとう!! あ、あと、助けてくれてありがとう、お兄ちゃん!」
いけないいけない。猊下に助けられたお礼も言ってなかった。傷も治して貰って、言わないわけがない。猊下の魔力結構好きなんだよね。温かくて~ほわほわする。
えへへっと笑いながらぎゅっと猊下に抱きついた。うん、これでごまかされてくれないかな。
マジでどうしよう。猊下がまさかここにいてこんなところを見られるなんて思わなかった。これで外出が難しくなったし、何よりロズリーが危ない。
ああ、今まで音沙汰がなかった悪徳魔術師がいきなり動き出したからってすぐに飛びつくんじゃなかった。こういう人が罠にかかるんだよなぁ。小説とかでよくある奴。気持ちは分かるよ。今まで何もなかったからさ、これを逃したらもうチャンスは来ないんじゃないかって思うよね。
猊下の治癒魔法のお陰か、それともいつもと違う猊下の香りのお陰が、うとうとと眠くなってきた。何だろうこの匂い。いつもの柑橘系の匂いじゃなくて、なんだろ、花の匂い、なの、かな……。
39
お気に入りに追加
1,471
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
【第1章完結】悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼第2章2025年1月18日より投稿予定
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
幼い精霊を預けられたので、俺と主様が育ての父母になった件
雪玉 円記
BL
ハイマー辺境領主のグルシエス家に仕える、ディラン・サヘンドラ。
主である辺境伯グルシエス家三男、クリストファーと共に王立学園を卒業し、ハイマー領へと戻る。
その数日後、魔獣討伐のために騎士団と共に出撃したところ、幼い見た目の言葉を話せない子供を拾う。
リアンと名付けたその子供は、クリストファーの思惑でディランと彼を父母と認識してしまった。
個性豊かなグルシエス家、仕える面々、不思議な生き物たちに囲まれ、リアンはのびのびと暮らす。
ある日、世界的宗教であるマナ・ユリエ教の教団騎士であるエイギルがリアンを訪ねてきた。
リアンは次代の世界樹の精霊である。そのため、次のシンボルとして教団に居を移してほしい、と告げるエイギル。
だがリアンはそれを拒否する。リアンが嫌なら、と二人も支持する。
その判断が教皇アーシスの怒髪天をついてしまった。
数週間後、教団騎士団がハイマー辺境領邸を襲撃した。
ディランはリアンとクリストファーを守るため、リアンを迎えにきたエイギルと対峙する。
だが実力の差は大きく、ディランは斬り伏せられ、死の淵を彷徨う。
次に目が覚めた時、ディランはユグドラシルの元にいた。
ユグドラシルが用意したアフタヌーンティーを前に、意識が途絶えたあとのこと、自分とクリストファーの状態、リアンの決断、そして、何故自分とクリストファーがリアンの養親に選ばれたのかを聞かされる。
ユグドラシルに送り出され、意識が戻ったのは襲撃から数日後だった。
後日、リアンが拾ってきた不思議な生き物たちが実は四大元素の精霊たちであると知らされる。
彼らとグルシエス家中の協力を得て、ディランとクリストファーは鍛錬に励む。
一ヶ月後、ディランとクリスは四大精霊を伴い、教団本部がある隣国にいた。
ユグドラシルとリアンの意思を叶えるために。
そして、自分達を圧倒的戦闘力でねじ伏せたエイギルへのリベンジを果たすために──……。
※一部に流血を含む戦闘シーン、R-15程度のイチャイチャが含まれます。
※現在、改稿したものを順次投稿中です。
詳しくは最新の近況ボードをご覧ください。
麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る
黒木 鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる