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第二章 やめてー!!俺の屑を連れて行かないでぇ!!!
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やはり彼は期待を裏切らなかった!!
「それじゃあ学院に行ってくる」
「うん! 行ってらっしゃいお兄ちゃん!!」
「行ってらっしゃいませ、カロシェーン様。アルカルド様は僕に任せてください!!」
「ああ、頼んだぞ」
俺とロズリーのお見送りで猊下は学院に向かった。今俺たちが住んでいる場所は王都に建てらた屋敷だ。領地の屋敷よりもこじんまりとしていると猊下は言っていたが俺みたいな凡人には分からない感覚だ。貴族の言うことは違う。
「それじゃあ、アルカルド様、お部屋に戻りましょうか」
「うん、分かった」
侍従らしからぬ進言である。主の行動を制限する発言だ。俺は部屋に戻りたいとも何も言っていないのに、勝手にそんなことを言うなんて教育がなっていない。その上ぎゅっと手まで強くつながれて逃げることも出来ない。俺でなければたかが侍従の分際で生意気な口をきくと思われて当然の態度だ。期待を裏切らない屑だ。歓迎するよ!!
道すがら、ロズリーはいろんな使用人に声をかけられていた。その間、俺の存在はまるで無視。成る程、今までほとんど部屋から出てなかったし使用人と出会うこともなかったから俺がどんな評価をされているのか知らなかったがこれは相当だ。というか、これが普通の反応。髪色ぐらいは変えるべきだったかと思っていると、彼は足を止めた。ぱっとそちらを見ると猊下の部屋ではない。ちらりと彼を見て首を傾げる。
「ここは?」
「お前の部屋だよ。カロシェーン様がいないのにあの方の部屋を使えるわけないでしょ。馬鹿なの?」
君、まだここ廊下だから言葉を慎みなよ。化けの皮剥がれるの早いよ……。思わず俺が近くにエイモンドと家族がいないか確認しちゃったじゃないか。いなくて良かったね。
「へー、そっかぁ。ここ俺の部屋なんだね」
「そう。図々しくカロシェーン様に媚びへつらってほんと、卑しい身分の者は困るよね。優しさと同情にあぐらかいていられるのも今のうちだよ? 僕がカロシェーン様の恋人になったらお前なんてすぐに追い出してやる」
どこからそんな話が……。それからここまだ廊下だから静かにしようよ。君は俺の都合の良い屑なんだから今別の侍従に変えられたら非常に困るんだよぉ。
俺は何を言われているか分からない、見た目と同じ年齢のふりをしながら「え?」ともう一度首を傾げるとちっと舌打ちされて乱暴に中に入れられる。扉が閉まっていてどんな部屋か分からなかったが、ここ物置じゃない!?
「頭悪い奴と話す気にもならない。僕が戻るまでここでじっとしててよね。問題起こさないでよ」
そう言って、扉を閉めて鍵が閉まる音がした。物置だから外から鍵がかかるみたいだ。初日からこんなことして、俺が猊下に告げ口したらどうするんだ……?いやあの自信から見ると、猊下とあの子は深い仲、なのか?
俺にキスまでしたくせに?
一瞬そんな考えが頭をよぎって地面に額を打ち付けた。俺の馬鹿。前世は前世じゃないか。そもそも覚えていない記憶を何度も思い出すな。無駄だ無駄。
「それより、この時間を有効に使わなければ!」
そうそう。俺がするべき事は原作の行いをすること!悪徳魔術師に接触して、実験材料にして貰わなければ!!そう思いその悪徳魔術師を探すために力を使う。周りの様子が全て見えるようになるのだ。いわゆる千里眼である。
これはかなり便利。これのお陰で困っている人もすぐに見つけられて……。
『はあ、またロズリーさんどこか行っちゃった……。しかも、なんであの人また――』
……。
不意に聞こえてきた声に俺はすっと容姿を魔術で変えてその人物が見える場所まで瞬間移動する。この使用人の好かれ具合からして彼に虐められている子はいないかもと思っていたが、違うようだ。そう思案してその人物を見て納得した。
確かに、今まで見た使用人の中で若くて、恐らくロズリーよりも年下の男の子だ。ロズリーは、恐らく猊下の年齢に近いが、こっちはどちらかというと俺に近いように思える。力を使えば詳しいことは分かるがそこまでする必要はないだろう。
彼の様子を遠くから伺うと、どうやら倉庫の片付けをしているようだった。よいしょっと重いものを運び、種類ごとに分けて在庫の確認をしている。これ一人でやってるのか……?いや、ロズリーと二人でと任されて一人でやってるんだ彼。こう言うのって二重確認をしないと不正を疑われちゃうのに……。なんでやらされてるのか分かってないんだろうなぁ。
彼が良くやる手口だ。二人でと任されているものなのに片方に全てを押しつける。俺があれこれ手を回さなければ大問題になっていただろう。やれやれっと俺は肩をすくめる。堪えきれずに告発でもされたら便利な駒がいなくなる。
それはひっじょーに困るので、俺はこの屋敷の使用人の格好をして容姿を変える。背も高くしてこの子と同じくらいに見えるように変化させ、くるりと自分の姿を確認した。うん、完璧。
こんなに広い屋敷なんだから、知らない使用人の一人二人いるだろう。怪しまれたら、新しく雇われたとでも言えば良い。今までそれで疑われたのは最初の方だけなので回数を重ねれば大丈夫。あ、ロズリーがどこにいるのか常に把握しておきつつ……何で町に出てるんだこの子……?彼の行動に首を傾げつつ、こんこんっと目の前の扉を叩く。
すると中から返事が聞こえて扉が開いた。
「それじゃあ学院に行ってくる」
「うん! 行ってらっしゃいお兄ちゃん!!」
「行ってらっしゃいませ、カロシェーン様。アルカルド様は僕に任せてください!!」
「ああ、頼んだぞ」
俺とロズリーのお見送りで猊下は学院に向かった。今俺たちが住んでいる場所は王都に建てらた屋敷だ。領地の屋敷よりもこじんまりとしていると猊下は言っていたが俺みたいな凡人には分からない感覚だ。貴族の言うことは違う。
「それじゃあ、アルカルド様、お部屋に戻りましょうか」
「うん、分かった」
侍従らしからぬ進言である。主の行動を制限する発言だ。俺は部屋に戻りたいとも何も言っていないのに、勝手にそんなことを言うなんて教育がなっていない。その上ぎゅっと手まで強くつながれて逃げることも出来ない。俺でなければたかが侍従の分際で生意気な口をきくと思われて当然の態度だ。期待を裏切らない屑だ。歓迎するよ!!
道すがら、ロズリーはいろんな使用人に声をかけられていた。その間、俺の存在はまるで無視。成る程、今までほとんど部屋から出てなかったし使用人と出会うこともなかったから俺がどんな評価をされているのか知らなかったがこれは相当だ。というか、これが普通の反応。髪色ぐらいは変えるべきだったかと思っていると、彼は足を止めた。ぱっとそちらを見ると猊下の部屋ではない。ちらりと彼を見て首を傾げる。
「ここは?」
「お前の部屋だよ。カロシェーン様がいないのにあの方の部屋を使えるわけないでしょ。馬鹿なの?」
君、まだここ廊下だから言葉を慎みなよ。化けの皮剥がれるの早いよ……。思わず俺が近くにエイモンドと家族がいないか確認しちゃったじゃないか。いなくて良かったね。
「へー、そっかぁ。ここ俺の部屋なんだね」
「そう。図々しくカロシェーン様に媚びへつらってほんと、卑しい身分の者は困るよね。優しさと同情にあぐらかいていられるのも今のうちだよ? 僕がカロシェーン様の恋人になったらお前なんてすぐに追い出してやる」
どこからそんな話が……。それからここまだ廊下だから静かにしようよ。君は俺の都合の良い屑なんだから今別の侍従に変えられたら非常に困るんだよぉ。
俺は何を言われているか分からない、見た目と同じ年齢のふりをしながら「え?」ともう一度首を傾げるとちっと舌打ちされて乱暴に中に入れられる。扉が閉まっていてどんな部屋か分からなかったが、ここ物置じゃない!?
「頭悪い奴と話す気にもならない。僕が戻るまでここでじっとしててよね。問題起こさないでよ」
そう言って、扉を閉めて鍵が閉まる音がした。物置だから外から鍵がかかるみたいだ。初日からこんなことして、俺が猊下に告げ口したらどうするんだ……?いやあの自信から見ると、猊下とあの子は深い仲、なのか?
俺にキスまでしたくせに?
一瞬そんな考えが頭をよぎって地面に額を打ち付けた。俺の馬鹿。前世は前世じゃないか。そもそも覚えていない記憶を何度も思い出すな。無駄だ無駄。
「それより、この時間を有効に使わなければ!」
そうそう。俺がするべき事は原作の行いをすること!悪徳魔術師に接触して、実験材料にして貰わなければ!!そう思いその悪徳魔術師を探すために力を使う。周りの様子が全て見えるようになるのだ。いわゆる千里眼である。
これはかなり便利。これのお陰で困っている人もすぐに見つけられて……。
『はあ、またロズリーさんどこか行っちゃった……。しかも、なんであの人また――』
……。
不意に聞こえてきた声に俺はすっと容姿を魔術で変えてその人物が見える場所まで瞬間移動する。この使用人の好かれ具合からして彼に虐められている子はいないかもと思っていたが、違うようだ。そう思案してその人物を見て納得した。
確かに、今まで見た使用人の中で若くて、恐らくロズリーよりも年下の男の子だ。ロズリーは、恐らく猊下の年齢に近いが、こっちはどちらかというと俺に近いように思える。力を使えば詳しいことは分かるがそこまでする必要はないだろう。
彼の様子を遠くから伺うと、どうやら倉庫の片付けをしているようだった。よいしょっと重いものを運び、種類ごとに分けて在庫の確認をしている。これ一人でやってるのか……?いや、ロズリーと二人でと任されて一人でやってるんだ彼。こう言うのって二重確認をしないと不正を疑われちゃうのに……。なんでやらされてるのか分かってないんだろうなぁ。
彼が良くやる手口だ。二人でと任されているものなのに片方に全てを押しつける。俺があれこれ手を回さなければ大問題になっていただろう。やれやれっと俺は肩をすくめる。堪えきれずに告発でもされたら便利な駒がいなくなる。
それはひっじょーに困るので、俺はこの屋敷の使用人の格好をして容姿を変える。背も高くしてこの子と同じくらいに見えるように変化させ、くるりと自分の姿を確認した。うん、完璧。
こんなに広い屋敷なんだから、知らない使用人の一人二人いるだろう。怪しまれたら、新しく雇われたとでも言えば良い。今までそれで疑われたのは最初の方だけなので回数を重ねれば大丈夫。あ、ロズリーがどこにいるのか常に把握しておきつつ……何で町に出てるんだこの子……?彼の行動に首を傾げつつ、こんこんっと目の前の扉を叩く。
すると中から返事が聞こえて扉が開いた。
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