19 / 75
第二章 やめてー!!俺の屑を連れて行かないでぇ!!!
1-2
しおりを挟む
「ついてるぞ」
「んむ……っ」
ロズリーがいなくなり、もごもごと食事を再開すると猊下が口元についていた食べかすを拭って口に放り投げた。まだついてるかとずいっと口をそちらに向けるとすっと猊下が顔を近づけてくる。
いつもなら、ないとかあるとかいって指だけが近づいてくるだけなので油断した。体を硬くして呼吸が止まりそうだ。吐息がかかるほど近くまでやってきて恥ずかしくて目をそらすとぺろりと口の端っこが舐められた。
「~~~~っ!!??」
「少し、妬ける……」
「え、へ、え……っ!?」
そう言ってむすっとした表情を浮かべた猊下。彼の言葉の意味がよく分からず、またあまりの衝撃に混乱して俺は変な声しか出せなかった。
キスされるのかと思った、なんて少しでも考えていた自分に徐々に羞恥が襲ってきた。自分でも分かるくらいに顔が真っ赤になる。
「近い!!」
「すまない」
その気恥ずかしさを悟られないようにぐいぐい猊下から離れて膝から降りる。それから猊下の座っている椅子の後ろに回って小さくなった。
熱い。顔から火が出ているようだ。少しでもその頬を冷やそうと手で風を送ると「ルド」と上から声がした。
「もう御飯は要らないか?」
「要る……けど、顔が熱いの」
「ふ、ふふ、そうか。冷やそうか?」
「大丈夫!!」
少し経てばこの熱も引くはずだ。だから俺は必死でその頬を冷やそうとしたが、ぴたりと冷たい何かが触れた。
「どうだ?」
「!」
それが猊下の冷えた手である事に気づいてまたしても俺の頬に熱が集まる。
誰のせいで!誰のせいで今こうなっているとお思いでぇっ!?
俺はじろりと真っ赤になった顔で彼を睨みつけぺいっとその手を軽く弾く。
「いーらーなーいー!!」
「あはははははっ!!」
俺のゆでだこのような顔が大変面白かったらしい。猊下は耐えきれずに大声で笑い出した。それが気に入らなくて俺はぶすっと不機嫌になりこのこのっと精一杯猊下を突っつく。俺の不満が分かって必死で耐えようとするが、また堪えきれずに吹き出した。もうやめよう。彼には笑わせておけば良いんだ。貴重な大笑いが見られて良かったとそう思うことにしよう。
俺は完全に諦めて、猊下の前のソファに座った。すると、猊下が慌てて機嫌を直してくれとばかりに隣に座って様子を伺う。
「悪かった。お前が可愛くてつい……」
猊下。それは恋人同士とか好き同士の人が言うような言葉です。確かに俺は今子供で可愛いですが……。
何も言わない俺に猊下はさらりと俺の髪を撫で優しく耳にかける。その表情はビクビク怯えて震える子ウサギのようだ。別にもう怒っている訳じゃないけど、今猊下の膝に乗ったら邪魔かなと思っただけで……。申し訳なさを感じながらも、さっきまで散々笑われたので、勘違いしてくれているようなら利用させて貰おうかな。
「抱っこ」
「! ああ、おいで」
両手を広げて要求すると簡単に猊下はその腕に俺を抱えた。そして残りの御飯を平らげる。終始、猊下は俺の頭を撫でてもう怒っていないかとそわそわしていた。これ以上意地悪するのも可哀想だ。最後の一口までお腹に収め俺はにこっと猊下に笑顔を見せる。
「ごめんなさい。もう怒ってないよ」
「本当か?」
「うん」
俺がそう言うと猊下はほっと胸をなで下ろした。そこまで気にしてたのか。ちょっと猊下をからかいすぎたな。俺はそう思って体の向きを変えてぎゅーっと猊下を抱きしめる。
本当、今までの猊下とは違うから少しびっくりするな。こんなことしても前の猊下だったらそうか、それで?とあしらっていただろうから。良い変化なのではないだろうか。俺は今の猊下の方が親しみやすくて好きだもの。
「んむ……っ」
ロズリーがいなくなり、もごもごと食事を再開すると猊下が口元についていた食べかすを拭って口に放り投げた。まだついてるかとずいっと口をそちらに向けるとすっと猊下が顔を近づけてくる。
いつもなら、ないとかあるとかいって指だけが近づいてくるだけなので油断した。体を硬くして呼吸が止まりそうだ。吐息がかかるほど近くまでやってきて恥ずかしくて目をそらすとぺろりと口の端っこが舐められた。
「~~~~っ!!??」
「少し、妬ける……」
「え、へ、え……っ!?」
そう言ってむすっとした表情を浮かべた猊下。彼の言葉の意味がよく分からず、またあまりの衝撃に混乱して俺は変な声しか出せなかった。
キスされるのかと思った、なんて少しでも考えていた自分に徐々に羞恥が襲ってきた。自分でも分かるくらいに顔が真っ赤になる。
「近い!!」
「すまない」
その気恥ずかしさを悟られないようにぐいぐい猊下から離れて膝から降りる。それから猊下の座っている椅子の後ろに回って小さくなった。
熱い。顔から火が出ているようだ。少しでもその頬を冷やそうと手で風を送ると「ルド」と上から声がした。
「もう御飯は要らないか?」
「要る……けど、顔が熱いの」
「ふ、ふふ、そうか。冷やそうか?」
「大丈夫!!」
少し経てばこの熱も引くはずだ。だから俺は必死でその頬を冷やそうとしたが、ぴたりと冷たい何かが触れた。
「どうだ?」
「!」
それが猊下の冷えた手である事に気づいてまたしても俺の頬に熱が集まる。
誰のせいで!誰のせいで今こうなっているとお思いでぇっ!?
俺はじろりと真っ赤になった顔で彼を睨みつけぺいっとその手を軽く弾く。
「いーらーなーいー!!」
「あはははははっ!!」
俺のゆでだこのような顔が大変面白かったらしい。猊下は耐えきれずに大声で笑い出した。それが気に入らなくて俺はぶすっと不機嫌になりこのこのっと精一杯猊下を突っつく。俺の不満が分かって必死で耐えようとするが、また堪えきれずに吹き出した。もうやめよう。彼には笑わせておけば良いんだ。貴重な大笑いが見られて良かったとそう思うことにしよう。
俺は完全に諦めて、猊下の前のソファに座った。すると、猊下が慌てて機嫌を直してくれとばかりに隣に座って様子を伺う。
「悪かった。お前が可愛くてつい……」
猊下。それは恋人同士とか好き同士の人が言うような言葉です。確かに俺は今子供で可愛いですが……。
何も言わない俺に猊下はさらりと俺の髪を撫で優しく耳にかける。その表情はビクビク怯えて震える子ウサギのようだ。別にもう怒っている訳じゃないけど、今猊下の膝に乗ったら邪魔かなと思っただけで……。申し訳なさを感じながらも、さっきまで散々笑われたので、勘違いしてくれているようなら利用させて貰おうかな。
「抱っこ」
「! ああ、おいで」
両手を広げて要求すると簡単に猊下はその腕に俺を抱えた。そして残りの御飯を平らげる。終始、猊下は俺の頭を撫でてもう怒っていないかとそわそわしていた。これ以上意地悪するのも可哀想だ。最後の一口までお腹に収め俺はにこっと猊下に笑顔を見せる。
「ごめんなさい。もう怒ってないよ」
「本当か?」
「うん」
俺がそう言うと猊下はほっと胸をなで下ろした。そこまで気にしてたのか。ちょっと猊下をからかいすぎたな。俺はそう思って体の向きを変えてぎゅーっと猊下を抱きしめる。
本当、今までの猊下とは違うから少しびっくりするな。こんなことしても前の猊下だったらそうか、それで?とあしらっていただろうから。良い変化なのではないだろうか。俺は今の猊下の方が親しみやすくて好きだもの。
37
お気に入りに追加
1,471
あなたにおすすめの小説
傷だらけの僕は空をみる
猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。
生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。
諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。
身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。
ハッピーエンドです。
若干の胸くそが出てきます。
ちょっと痛い表現出てくるかもです。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
幼い精霊を預けられたので、俺と主様が育ての父母になった件
雪玉 円記
BL
ハイマー辺境領主のグルシエス家に仕える、ディラン・サヘンドラ。
主である辺境伯グルシエス家三男、クリストファーと共に王立学園を卒業し、ハイマー領へと戻る。
その数日後、魔獣討伐のために騎士団と共に出撃したところ、幼い見た目の言葉を話せない子供を拾う。
リアンと名付けたその子供は、クリストファーの思惑でディランと彼を父母と認識してしまった。
個性豊かなグルシエス家、仕える面々、不思議な生き物たちに囲まれ、リアンはのびのびと暮らす。
ある日、世界的宗教であるマナ・ユリエ教の教団騎士であるエイギルがリアンを訪ねてきた。
リアンは次代の世界樹の精霊である。そのため、次のシンボルとして教団に居を移してほしい、と告げるエイギル。
だがリアンはそれを拒否する。リアンが嫌なら、と二人も支持する。
その判断が教皇アーシスの怒髪天をついてしまった。
数週間後、教団騎士団がハイマー辺境領邸を襲撃した。
ディランはリアンとクリストファーを守るため、リアンを迎えにきたエイギルと対峙する。
だが実力の差は大きく、ディランは斬り伏せられ、死の淵を彷徨う。
次に目が覚めた時、ディランはユグドラシルの元にいた。
ユグドラシルが用意したアフタヌーンティーを前に、意識が途絶えたあとのこと、自分とクリストファーの状態、リアンの決断、そして、何故自分とクリストファーがリアンの養親に選ばれたのかを聞かされる。
ユグドラシルに送り出され、意識が戻ったのは襲撃から数日後だった。
後日、リアンが拾ってきた不思議な生き物たちが実は四大元素の精霊たちであると知らされる。
彼らとグルシエス家中の協力を得て、ディランとクリストファーは鍛錬に励む。
一ヶ月後、ディランとクリスは四大精霊を伴い、教団本部がある隣国にいた。
ユグドラシルとリアンの意思を叶えるために。
そして、自分達を圧倒的戦闘力でねじ伏せたエイギルへのリベンジを果たすために──……。
※一部に流血を含む戦闘シーン、R-15程度のイチャイチャが含まれます。
※現在、改稿したものを順次投稿中です。
詳しくは最新の近況ボードをご覧ください。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺
福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。
目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。
でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい…
……あれ…?
…やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ…
前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。
1万2000字前後です。
攻めのキャラがブレるし若干変態です。
無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形)
おまけ完結済み
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる