【完結】断罪された神子様は、前世養父だった冷徹公子に溺愛される。

紫鶴

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第一章 悪役神子様、改めラスボスです☆

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 そんな幕切れをした俺だが、二部の悪役として再び生命を得た!!

 第一部の数百年後の世界。俺という金の神子だけが使えた「奇跡」が「魔術」に変化して便利な世の中になったのである。

 そんな金の神子を倒したフレイは英雄として崇められ、後世に受け継がれている。それに比べて金の神子は悪魔として名を馳せ、金髪、金の瞳は忌むべきものとされていた。
 二部の悪役は、その二つを兼ねそろえてしまった可哀想な孤児である。恐らく、こんな容姿でなければ悪の道に進むことなくまっとうに生きられただろう。まあ、それが物語だから仕方ないよね。レオ主人公フレイメインヒーローをくっつける為だから!その犠牲が今回は俺なので喜んで死にますとも!!

 今回も、俺が悪役として殺されれば次の生を確約するとリィンが言っていた。だから俺はただ原作に忠実に行動すれば良いのだ。


「お前はどこかに行きなさい。その忌々しい容姿を間違ってもお貴族様に見せないようにね!!」
「はい、院長先生」


 俺は現在、孤児院で暮らしている。この容姿のせいで、寄付をしてくれる貴族の機嫌を損ねないようにと彼女はよく俺を孤児院から追い出す。そういう日は数日ほど経ってから戻らないといけない。だから俺は少し離れた場所にある寂れた教会に身を寄せる。雨風しのげる最高の場所だ。


 ああ、ちなみにこんな寂れた場所の教会だからか、それともリィンという神様を信仰する者がいないからか彼の声は聞こえない。前までは、色々アドバイスを貰っていたのだが、ここに来て自由になると大変困る。ひとまず、原作通りに行動しようとは思っているが、大丈夫だろうか。かなり不安だ。

 だから、早いとこリィンと交信するために色々考えている。とはいえ、大きな目標は変わらない。

 推しカプは俺が作る!!悪役はそうあるべき!!

 さて、目立つ容姿のままぐーすか寝ていたら騒ぎになるので「魔術」で茶髪と緑色の瞳にする。この時点で「魔術」を使えるということを院長先生にばれたら変なところに売られてしまうので絶対に隠さなければいけない。

 ここで軽く二部の悪役について整理しよう。一部とは少し役割が変わり、二部はなんとラスボスになる。

 容姿のせいで虐げられて、孤児院からも追い出された俺は路地裏でゴミをあさったり盗みを働いたりと必死に生きていた。そんなある日とある男に一緒に来ないかと誘われる。その男は国が指名手配をしている悪徳魔術師で、まんまと騙された俺は実験材料として捕らえられてしまう。しかし、後のラスボスなので内に秘める力でその魔術師を返り討ちに。
 そして、その力を使って同じように実験材料にされて死亡してしまったとある貴族の息子に成り代わる。
 貴族として生活していた最中に前世の記憶が蘇るのだ。そう、金の神子として殺されたことを。そして始まる復讐劇。しかしすべて主人公、レオ達に阻止されて最後は倒されてしまうのだ。

 一部でやらかしてる悪役だから読者はみんな爽快痛快で読み進める手が止まらなかったぜ。
 ただまあ、同情すべき点を上げるとすれば最後まで金の神子という言葉しか彼を表現するものはなかった。要するに、名前がなかったのだ。

 思い返してみれば、猊下に引き取られて名前を貰う前にでっかい教会に行ってそこでリィンが現れてしまったのだ。神様の登場に、神子様だー!!と騒ぎになったので結局聞いていない。

 そこまで考えて俺はぐっと胸元を押さえた。

 いかん。猊下のことを考えると胸がぎゅってなる。

 原因は分かっている。最後にあんなキスをされたからだ。あんな、あんな、瀕死状態の人間に舌まで入れるちゅうするかね普通!!

 うわああああっ!!と思いだして慌てて頭を振る。心頭滅却、悪役たるものこんなことで動じてはいけない。


「それに、もう会えないし……」


 主人公級の人物は前世を持つが、猊下はただ単に金の神子の養父としてしか出てこなかった。モブなのだ。だからあんなに美しい男だなんて夢にも思わなかったし、情熱的にキスされるなんて夢にも思わなかった。


「はっ!!」


 むにむにと無意識にカサカサで乾燥した唇を俺は触れていた。その行動を自覚して顔から火が出るようだ。恥ずかしい。誰も見てないけど恥ずかしい……。


「それもそこれも全部猊下のせいだー!!!」


 怒りのままにそう叫んで漸く一息つく。ひとまず彼のことは忘れて寝よう。うん。
 そう思って固い椅子に横たわる。前から二番目の席だ。寝ていればお腹もすかないし、喉も渇かない。娯楽のないこの世界ではコスパのいい暇つぶしだ。寝るの嫌いじゃないしね。

 ゆっくりと目を閉じて、今回はどれくらい間をあければ良いだろうかと考える。

 そして、いつの間にか俺は眠っていた。
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