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そして、ピカピカに磨かれた俺の誕生。
えっぐえぐっと泣きながら、ご褒美に出されたパンケーキを頬張る。チョコレートと生クリームと果物たっぷりの美味しい奴。目の前にはコーヒーを飲んで、ため息をついているお兄様が。
「お前いくつだ?」
「千はくだらないかと……」
「いつまでこうやってお世話されている?」
「一生、かな?」
「成程、そんなにテュエルの実験材料になりたいのか?」
「あー! なんだかやる気出てきたなー!!!」
呼んだ~?と二番目の兄が脳内で顔を出して来た。
呼んでない。呼んでないです。お呼びじゃない!!
二番目のお兄様はよく人間界に行っては人を連れさり、実験動物にしている。その行程を見たことあるけどそれはそれは恐ろしい光景だ。
助けてくれ、もうしない!といって泣いて懇願している人間にそんな事言われても~。君だって同じことしたんでしょ~?と間延びした声で彼はそう言うのである。そして悲鳴が響き渡る。怖い……。
あの光景をおもいだすと夜も眠れない……。
「呼んだぁ~?」
「きゃあああああああっ!!!!」
「呼んだが呼んでない」
ひょこっと扉から顔を出した二番目のお兄様。彼はにっこにこ笑顔で近づくとぽすんっと俺の横に座った。そしてこてんと俺の肩に頭を乗せる。
「今日もかわいいねぇ、僕の子羊ちゃん」
この二番目のお兄様は俺のことをいつもそう言ってところ構わずちゅっちゅっとキスをしてくる。スキンシップが激しいが、でろでろに甘やかしてくれるので大好きだ。ただ、その、何というか……。
「何食べてるの~?」
「パンケーキです……」
「わあ、可愛い~。さっき人間がはいたげろみたい~」
感性がひどい。
彼自身、本気でゲロ吐いて命乞いをしている人間が可愛いと思っているので最大限の褒め言葉ではある。しかし、それは一般的な価値観ではない。
「もう、おなかいっぱいかな……?」
「え~? 食べないの~? お兄様は、子羊ちゃんが食べてるところもっと見たいのに~。まだいけるでしょ~? ほらほらぁ」
ぐさっと思い切りフォークをパンケーキに刺してぐいぐい俺に追いつけてくるテュエル兄様。俺は助けを求めるように目の前の兄を見るがすっと視線をそらされた。
ひどい!俺のこと見捨てやがった!!
俺はテュエル兄様にあーんされながらどうにかパンケーキを食べ終える。最後に口元も拭かれていい子いい子された。
「それで~? 何の話をしてるの~?」
「こいつを人間と契約させるために人間界に送る話をしている」
「ふぅん? まあ一人ぐらいはいた方がいいかもね~」
「テュエル兄様までそんなこというの!!!」
テュエル兄様だったら反対してくれると思ったのにぃ!!!!
テュエル兄様は、俺がそう言うとん~と少し考え込むようなそぶりを見せる。
「僕は、どうでもいいんだけど~」
「どうでもいいんじゃんか!!!」
「数が減るとこっちの作業が増えるんだよねぇ~」
「いきなり話が飛んだね」
なに、何の数が減るの?脈絡なさすぎて何が何だかわからないよ?貴方の可愛い子羊ちゃんは!
ちらっとクリュエル兄様を見る。彼はカップを持って紅茶を優雅に飲んでいた。
なに。もしかして二人してわかる話?俺だけ仲間はずれ……?
「まあ、どうでもいいけど行きたくないです~~~~っ!!!! 人間界には祓魔師とかいう怖い人いるんでしょう!? 俺が死んだらどうするの!!」
「慰めてあげる」
「生き返らせる手配はしておく」
「俺が死ぬ前提!!!」
いやだ~っとテュエル兄様縋りつく。しかし、クリュエル兄様にぐっと首根っこを掴まれてずるずると引きずられた。これはあれだ。そのまま人間界に投げ入れる気だ!
「ちょ、ちょ、ちょっと! 心の準備を……っ!!」
「人間と契約を結ぶまで戻ってくるな」
「様子見に行くから頑張ってねリュカ君」
「に、兄様たちのばか~~~~~っ!!!」
そうして、俺は人間界に送られたのである。
えっぐえぐっと泣きながら、ご褒美に出されたパンケーキを頬張る。チョコレートと生クリームと果物たっぷりの美味しい奴。目の前にはコーヒーを飲んで、ため息をついているお兄様が。
「お前いくつだ?」
「千はくだらないかと……」
「いつまでこうやってお世話されている?」
「一生、かな?」
「成程、そんなにテュエルの実験材料になりたいのか?」
「あー! なんだかやる気出てきたなー!!!」
呼んだ~?と二番目の兄が脳内で顔を出して来た。
呼んでない。呼んでないです。お呼びじゃない!!
二番目のお兄様はよく人間界に行っては人を連れさり、実験動物にしている。その行程を見たことあるけどそれはそれは恐ろしい光景だ。
助けてくれ、もうしない!といって泣いて懇願している人間にそんな事言われても~。君だって同じことしたんでしょ~?と間延びした声で彼はそう言うのである。そして悲鳴が響き渡る。怖い……。
あの光景をおもいだすと夜も眠れない……。
「呼んだぁ~?」
「きゃあああああああっ!!!!」
「呼んだが呼んでない」
ひょこっと扉から顔を出した二番目のお兄様。彼はにっこにこ笑顔で近づくとぽすんっと俺の横に座った。そしてこてんと俺の肩に頭を乗せる。
「今日もかわいいねぇ、僕の子羊ちゃん」
この二番目のお兄様は俺のことをいつもそう言ってところ構わずちゅっちゅっとキスをしてくる。スキンシップが激しいが、でろでろに甘やかしてくれるので大好きだ。ただ、その、何というか……。
「何食べてるの~?」
「パンケーキです……」
「わあ、可愛い~。さっき人間がはいたげろみたい~」
感性がひどい。
彼自身、本気でゲロ吐いて命乞いをしている人間が可愛いと思っているので最大限の褒め言葉ではある。しかし、それは一般的な価値観ではない。
「もう、おなかいっぱいかな……?」
「え~? 食べないの~? お兄様は、子羊ちゃんが食べてるところもっと見たいのに~。まだいけるでしょ~? ほらほらぁ」
ぐさっと思い切りフォークをパンケーキに刺してぐいぐい俺に追いつけてくるテュエル兄様。俺は助けを求めるように目の前の兄を見るがすっと視線をそらされた。
ひどい!俺のこと見捨てやがった!!
俺はテュエル兄様にあーんされながらどうにかパンケーキを食べ終える。最後に口元も拭かれていい子いい子された。
「それで~? 何の話をしてるの~?」
「こいつを人間と契約させるために人間界に送る話をしている」
「ふぅん? まあ一人ぐらいはいた方がいいかもね~」
「テュエル兄様までそんなこというの!!!」
テュエル兄様だったら反対してくれると思ったのにぃ!!!!
テュエル兄様は、俺がそう言うとん~と少し考え込むようなそぶりを見せる。
「僕は、どうでもいいんだけど~」
「どうでもいいんじゃんか!!!」
「数が減るとこっちの作業が増えるんだよねぇ~」
「いきなり話が飛んだね」
なに、何の数が減るの?脈絡なさすぎて何が何だかわからないよ?貴方の可愛い子羊ちゃんは!
ちらっとクリュエル兄様を見る。彼はカップを持って紅茶を優雅に飲んでいた。
なに。もしかして二人してわかる話?俺だけ仲間はずれ……?
「まあ、どうでもいいけど行きたくないです~~~~っ!!!! 人間界には祓魔師とかいう怖い人いるんでしょう!? 俺が死んだらどうするの!!」
「慰めてあげる」
「生き返らせる手配はしておく」
「俺が死ぬ前提!!!」
いやだ~っとテュエル兄様縋りつく。しかし、クリュエル兄様にぐっと首根っこを掴まれてずるずると引きずられた。これはあれだ。そのまま人間界に投げ入れる気だ!
「ちょ、ちょ、ちょっと! 心の準備を……っ!!」
「人間と契約を結ぶまで戻ってくるな」
「様子見に行くから頑張ってねリュカ君」
「に、兄様たちのばか~~~~~っ!!!」
そうして、俺は人間界に送られたのである。
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