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本編
無能の騎士はジョブチェンジしました。
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げほっとまたしても何かを吐き出すように咳き込む。頭がきしむように痛い。先ほどの奴はあれだ。小さい頃の記憶だ。
確かに俺は秋以外の漂流者を保護したことがあった。因みに彼のほかにもいたがどこかに行ってしまい、騎士に相談したところ死体が上がったそうだ。まー、あんなに大胆に逃げればそうだよね。漂流者のほとんどは戦闘能力を持たない人達なんだし。
まあ、まだそれは良い。
というか、漂流者に殺されかけたなんて夢にまで思わない。あんなに過剰であったのも分かる。
でも、それよりもだ。
俺ってヴィのこと相当好きだったんだ!?
その事を自覚してすごく恥ずかしい。凄く。ええ、ものすごく!!
いや、好きは好きでも兄さんと同じくらいの好きだと思ってたし。そもそもここまで俺が鈍いとは思わなかった!!そ、そうか、俺好きだからこんなに嫌な気分になったんだ。う、うう。これはまじで恥ずかしいし、なんで忘れてたの!?その時に伝えてたらまだここまで羞恥に耐えるようなことなかったのに!!
「ベルちゃん!!」
「うっ!」
今一番聞きたくない声に俺は思いっきり血を吐いた。いや状況が状況だから仕方ないんだけど。
「もう大丈夫だからね!?ああ、こんなに傷ついて!早く治せよアルフレッド!!」
ここは一体どこなのか、と確認する前に眼前にヴィの顔が広がって反射的に目をつぶってしまう。う、いつも以上にヴィの顔が眩しい!!
「今やってます!内臓もドロドロに溶けて構成中なんですから少し待ってください!」
アルフレッドの声だ。不穏な言葉が聞こえたけど聞こえないふりをした。
「こ、こ……」
「ああ、しゃべらないで!ベルちゃんに危害を加えた男はきっちり制裁してきたからね?もう安心していいよ」
え?あれ王子様でしょ?大丈夫なの?
そんな事を思ったが、俺はあまりの痛みに意識を飛ばした。
結論から行くと合同調査で言った危険区域はランディール王国の王族が作り上げたものだと世間に公表されて信用を無くした彼の国はあれよあれよという間にこの国のとなった属国となった。そもそもあの王子様が今までいろいろやらかしていたようで修復不可能なところまで落ち、人質という名の引き渡しで兄弟セットでやってきた。
問題起こした弟だけじゃ価値がないと判断されたようだ。ちょっとかわいそう。
あの王子様は相変わらずおかしなことを言っているようで、厳重に監禁されている。二度と俺に近づかないようにとしているという。迷惑をかけます……。
それから、完全に恥ずかしい話なのだが、本当の本当に恥ずかしい話で、時間があったために兄さんに諸々のことを相談したら黒衣の騎士が明らかになった。
「いや、それベルのことでしょ?」
「え?」
「全身真っ黒ってベルのことじゃん」
「えええ!!???」
兄の言葉は絶大だ。淡々と質問されてしどろもどろに答えているとほらやっぱりという顔をされる。いやでも、ほら。騎士団長さんも行ってたみたいだし……?と困惑しながらそう言うと、そっちは確実にベルのストーカーだと断言された。
「それで?婚約破棄するなら手伝うよ?」
「それは嫌!」
「ふーん?」
俺がそう強く言うと兄さんはにこにこ笑顔である。
う、な、なんだよその顔は!!
「別に、ようやく気付いたか~とか思ってないよ?」
「思ってるでしょ!?」
むっとした顔でもういいっと乱暴に兄を追い出す。最後に、こんなことになる前に相談しろときつく念押しされた。それは分かっている。
二度とこんなことにならないようにと十分に気を付けている。ええ、勿論。
でも兄さん?なんでその話をヴィに言ったの?
「あの……ヴィアン様?」
「どうしたの?ベルちゃん。いつもみたいにヴィって呼んでよ」
「いや、その、あの……」
俺はこれほど居心地が悪い場所を知らない!!
ヴィは、公私混同しないようにと今まで俺の茶番に付き合っていたが俺が気にするならばと四六時中俺のことを甘やかし始めた。やめて。視線が痛い。
「いつも家だと膝に乗ってくれるのにどうしてそこに座ってるの?」
「仕事だから」
「いつもやってないでしょ?」
「……その通りでございます」
「ね?」
いや、ね?じゃないし。
誰か助けてっと周りを見渡した。すると一斉にさっと目を逸らされる。どうして!!
い、今までヴィにべたべた触ってたじゃんか!?なんで今更そんなに距離取ってるのさ!?
おかしい、おかしいよねこれ!あと、過酷な任務振られるようになったのも納得いかないんだけど!?
「ベルちゃんは僕のこと好きじゃないの?」
「すっ!すき、だけど……」
あと自分の気持ちを自覚したからかその言葉を言うのがとてつもなく恥ずかしい!!
あああああ!!どうしてこうなった!!俺は無能なままの性格悪いっていう評価でいいんだけどおお!?これだと俺、いや俺達ただのバカップルじゃんかあああああっ!!!
確かに俺は秋以外の漂流者を保護したことがあった。因みに彼のほかにもいたがどこかに行ってしまい、騎士に相談したところ死体が上がったそうだ。まー、あんなに大胆に逃げればそうだよね。漂流者のほとんどは戦闘能力を持たない人達なんだし。
まあ、まだそれは良い。
というか、漂流者に殺されかけたなんて夢にまで思わない。あんなに過剰であったのも分かる。
でも、それよりもだ。
俺ってヴィのこと相当好きだったんだ!?
その事を自覚してすごく恥ずかしい。凄く。ええ、ものすごく!!
いや、好きは好きでも兄さんと同じくらいの好きだと思ってたし。そもそもここまで俺が鈍いとは思わなかった!!そ、そうか、俺好きだからこんなに嫌な気分になったんだ。う、うう。これはまじで恥ずかしいし、なんで忘れてたの!?その時に伝えてたらまだここまで羞恥に耐えるようなことなかったのに!!
「ベルちゃん!!」
「うっ!」
今一番聞きたくない声に俺は思いっきり血を吐いた。いや状況が状況だから仕方ないんだけど。
「もう大丈夫だからね!?ああ、こんなに傷ついて!早く治せよアルフレッド!!」
ここは一体どこなのか、と確認する前に眼前にヴィの顔が広がって反射的に目をつぶってしまう。う、いつも以上にヴィの顔が眩しい!!
「今やってます!内臓もドロドロに溶けて構成中なんですから少し待ってください!」
アルフレッドの声だ。不穏な言葉が聞こえたけど聞こえないふりをした。
「こ、こ……」
「ああ、しゃべらないで!ベルちゃんに危害を加えた男はきっちり制裁してきたからね?もう安心していいよ」
え?あれ王子様でしょ?大丈夫なの?
そんな事を思ったが、俺はあまりの痛みに意識を飛ばした。
結論から行くと合同調査で言った危険区域はランディール王国の王族が作り上げたものだと世間に公表されて信用を無くした彼の国はあれよあれよという間にこの国のとなった属国となった。そもそもあの王子様が今までいろいろやらかしていたようで修復不可能なところまで落ち、人質という名の引き渡しで兄弟セットでやってきた。
問題起こした弟だけじゃ価値がないと判断されたようだ。ちょっとかわいそう。
あの王子様は相変わらずおかしなことを言っているようで、厳重に監禁されている。二度と俺に近づかないようにとしているという。迷惑をかけます……。
それから、完全に恥ずかしい話なのだが、本当の本当に恥ずかしい話で、時間があったために兄さんに諸々のことを相談したら黒衣の騎士が明らかになった。
「いや、それベルのことでしょ?」
「え?」
「全身真っ黒ってベルのことじゃん」
「えええ!!???」
兄の言葉は絶大だ。淡々と質問されてしどろもどろに答えているとほらやっぱりという顔をされる。いやでも、ほら。騎士団長さんも行ってたみたいだし……?と困惑しながらそう言うと、そっちは確実にベルのストーカーだと断言された。
「それで?婚約破棄するなら手伝うよ?」
「それは嫌!」
「ふーん?」
俺がそう強く言うと兄さんはにこにこ笑顔である。
う、な、なんだよその顔は!!
「別に、ようやく気付いたか~とか思ってないよ?」
「思ってるでしょ!?」
むっとした顔でもういいっと乱暴に兄を追い出す。最後に、こんなことになる前に相談しろときつく念押しされた。それは分かっている。
二度とこんなことにならないようにと十分に気を付けている。ええ、勿論。
でも兄さん?なんでその話をヴィに言ったの?
「あの……ヴィアン様?」
「どうしたの?ベルちゃん。いつもみたいにヴィって呼んでよ」
「いや、その、あの……」
俺はこれほど居心地が悪い場所を知らない!!
ヴィは、公私混同しないようにと今まで俺の茶番に付き合っていたが俺が気にするならばと四六時中俺のことを甘やかし始めた。やめて。視線が痛い。
「いつも家だと膝に乗ってくれるのにどうしてそこに座ってるの?」
「仕事だから」
「いつもやってないでしょ?」
「……その通りでございます」
「ね?」
いや、ね?じゃないし。
誰か助けてっと周りを見渡した。すると一斉にさっと目を逸らされる。どうして!!
い、今までヴィにべたべた触ってたじゃんか!?なんで今更そんなに距離取ってるのさ!?
おかしい、おかしいよねこれ!あと、過酷な任務振られるようになったのも納得いかないんだけど!?
「ベルちゃんは僕のこと好きじゃないの?」
「すっ!すき、だけど……」
あと自分の気持ちを自覚したからかその言葉を言うのがとてつもなく恥ずかしい!!
あああああ!!どうしてこうなった!!俺は無能なままの性格悪いっていう評価でいいんだけどおお!?これだと俺、いや俺達ただのバカップルじゃんかあああああっ!!!
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