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本編

危険区域 特級10

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昨日あんなことがったが、新品の剣を貰い俺達は何事もなかったように朝ご飯もらって今回の主旨を聞いている。

先輩新人でチームを組んでこの森で3日過ごすという至ってシンプルな内容だ。俺はこれを聞きながら、確かに新人にはいい経験になるものだなっと呑気にそう考える。平民は分からないが貴族の子たちはほとんどそう言う経験をしたことないからいいんじゃないだろうか。



「いえーい!!この班を勝ち取りました!!どうぞよろしくお願いします~!!」

「おい馬鹿!!ちゃんと挨拶しろ!!よ、よろしくお願いします!ヴィアン様、アルフレッド様!!」



双子だ。第一班内でのグループ分けであれば当たる確率も高いのだが、よりにもよって双子と一緒だ。一人は整備の為錬金術師がいるとなればまあ、そうなるだろう。それにこの実力者二人となれば新人がもう一人入ってもおかしくない。

けど、俺の本性を知っている人物が三人もいると居心地悪い。

いえーいっと俺に抱き着こうとしたカノ君をルノ君が首根っこ掴んで慌てて頭を下げさせる。礼儀にはうるさいらしい。まあ普通か。



「よろしくお願いしますね」

「よろしく。僕らがいるから気楽にしてね」

「は、はい!よろしくお願いします!!」



きらきらきらっと尊敬の目を向けたルノ君にアルフレッドとヴィはにこにこと笑顔で答える。流石の対応だ。俺は彼の視界に少しでも入らないように端によるとカノ君が俺の腕に引っ付いてきた。反射的に手が出そうになったがぐっとこらえる。今の俺がやるべきものではない。



「どうしたんですか?カノさ……」

「ちょっとひび割れてるよ?直そうか?」



ネックレスのチェーンを指で伝いながら魔石の入っているそれを服の中から引っ張り出された。

俺はそれを聞いてまじかっとそれを見る。確かにひびが入っていた。いつもよりあんまり魔力を入れていないはずなんだけど……。



「ギルさんに聞いたんですけど、今回は銃剣なんでしょう?ちょっと余計なパーツがあるから壊れやすいって言ってたんだよね~」



そんな事全く書いてなかったんだけど。割れたらどうすんだよ。我が兄ながら適当だ。

俺はネックレスを気づかれないうちにササっと取って彼に渡す。すると彼はそれを手に取って俺からさっさと離れ、懐から出したルーペでまじまじとそれを見ている。もう俺に興味はなしだ。

それにほっとしていると、いつの間にか他の班員は森の中に入って行った。



てっきり、協力して~っとかの要請が来るかと思ったのに。だって、ヴィの班っていっつも人気だった。俺いつもヴィが心配だから遠征とかで、身バレしないように魔装具纏ってついていってるんだけどヴィの班にいつも一緒に~とか言ってくる班があるはずなんだけど?



うーん。俺がいるからかな?



「どうかした?」

「いいえ!それより行きましょう!!」



ヴィに顔をのぞき込まれてにっこりと笑顔で応対。流石に腕に引っ付くのはよくないと思い、一先ず手ぐらい繋いでおく。



勿論離せよ?っと目で訴えながら。

こんな場所でおてて繋いで歩くなんて言語道断である。ヴィはきょとんとした後に頷いた。

そしてぎゅっと手を強く握られた。



「任せて!」



この!俺好きすぎる婚約者め!!そういう意味で繋いだんじゃないよ!!君、俺がこういう演技していいかって聞いた時にめっちゃ頷いてたくせになんで協力的じゃないの!?



大きな声でちげえよ!といって振りほどきたいのをぐっとこらえてぎゅっと腕に引っ付いた。



「嬉しいです!」



流石にこれは離れるだろう。そう思ったが、ヴィはすごくすごーく嬉しそうな顔をする。腰を掴まれた。

頭を抱えたくなった。アルフレッドに助けを求める。アルフレッドは俺と見つめあった後にあっと声をあげて俺たちの前に立つ。



「どうぞ盾に……っ!」

「あー!早く行きましょう!!ね!遅れてますし!!」



ルノ君たちに見えないように膝裏を蹴っ飛ばしつつアルフレッドを急かす。カノ君は「はーいっ」と元気な声を出していたがルノ君は俺を攻め立てる視線を向けている。



そうそうそういうのだよ!!知り合いで構成されすぎんだよ、この班!!



アルフレッドを先頭に中衛に双子、後衛に俺達という隊列で森の中に入る。方々から剣戟や叫び声が聞こえるが、この醍醐味である。

アルフレッドがそれを聞き期待した目で振り返るが、俺は、はよいけっと視線で促す。



第一班の遠征実習先は危険な魔獣が生息している危険区域での滞在となるので、その時によって判断し休憩、仮眠、場合によっては三日寝ずに行動しなければならないのでかなり過酷だ。



その危険区域は、予め国の魔術師によってドーム型の結界を張って外に危険な魔獣が出ないようにしている。だから、そこに入れば一定レベル以上の魔獣しかいないのである。

結界型のドームは遠くからでも見える巨大なもので、この森で言えば中央付近がそうである。森に限った話ではないので、迷宮や町中でもそれがあったりする。



危険区域は等級化されており0~10で数字が少ない程危険であり、0等級は世界でも限られた者しか入れない伝説級の者たちしか踏み入ることは許されない場所である。



因みにここは10等級。危険区域の中では比較的安全な場所である。



そのドームの前でアルフレッドはいったん立ち止まった。



「ここからは危険区域となるから気を付けてくださいね」

「「は、はい!」」



ここできゃーこわーいと言えば良かったが、カノ君とルノ君が思いのほか緊張しているので刺激するのはやめておく。これで吐き出しちゃうかもしれないし。



第一班に入れる実力だ。中に入る前から分かるのだろう。中にどんなものがいるかというのを。



「一応復唱しますね。はぐれた場合はその場に止まらずにこの結界の外に出る事。それから支給されている信号弾を打つこと。逃げられる状況でなかった場合は、増援が向かうまで持ちこたえること。生きていれば助けられるけど死んだらどうしようもないから、気合で生き残ること。宜しいですね?」

「「はい!」」

「あ、はい」



カノ君たちに遅れて思わず返事をしてしまった。でも俺信号弾貰ってねえんだけど。それもあの集団のせいか~。まあいいんだけど。

アルフレッドはにっこりと笑って「それじゃあ行くよ~」っと言って中に入った。

双子も続き、俺達も一緒に入る。



まあ、狩場だから俺はよく行ってるんだけど、ここって時々人型もいて知能あるからめんどくさいんだよね。相手するのが。



歩きずらくなってきたのでヴィから一先ず離れると、近辺で魔獣に苦戦している班を見つける。というか、新人が張り切ってミスしたみたいな雰囲気。可哀そう。



俺はかがんで小石を手にしてぴんっと小石を弾き飛ばす。四本脚の獅子、先ほどの大蛇の二倍以上ある大きさの目を貫いた。体勢が崩れて一気に先輩騎士が畳みかける。あれはもう大丈夫だ。元々5等級危険区域まで行ける実力のあるものばかりなのでこんなのでは苦戦しないが、心配なので暫くその体勢で様子を見ようとするとぐいっと腕を引っ張られた。



「おい!!こんなところで座り込んでるんじゃねーよ!!」



ルノ君にそう言われて思わず立ち上がってしまった。

まさか、俺なんかを気にかけるとは。普通置いて行ってもいい位愚かな行為をしたんだけど今。



「疲れたんです~。だってここ空気重いしぃ、さっきから鳴き声がうるさいしぃ」

「はあ!?お前本当なんでこんなところにいんだよ!信じらんねー!!」

「だって、だって~……」



涙目になるとひょいっとヴィが俺を抱えた。

え?っともう少しヘイト稼ごうと思っていたのに予想外の行動をされてきょとんとしているとヴィは真剣な表情で俺を見た。



「大丈夫。彼は僕が世話するから気にしないで」

「そんなこと……っ!!」

「いいから。離れるからとっとと歩く。今は周りの班が他の魔獣と戦ってるから出会ってないけどそろそろ鉢合わせてもおかしくないから」

「~~~~っ!!」



ルノ君はすごくすごーく不本意そうな顔をして俺を睨みつけてアルフレッドたちのところに走って向かう。



「ベルちゃん。ここだと結構新人君たちが極限になるから、それ今は禁止してくれる?」

「……ごめん、俺が浅はかだった」



そうだよね。初めての子は怖くないはずがないんだ。思いやりがなかった。流石にここで新人を亡くす事になるのは目覚めが悪いというもの。



しゅんっと彼の腕の中で反省するがちゅっとキスをされた。



「ヴィ、流石にここでは……」

「だから、他人を助けちゃだめだよ。今回は僕だけ守って」

「え、う、うん……」



そんな事言ってもいつも俺はヴィを守ってるつもりだけど。俺の中で小さい頃のヴィが印象的っていうのもあるけどさ~。



まあ、さっきのもやめてっていう事だと思う。俺がいつでも助けられるわけでもないし、確かにやめた方が良いかも。どうにもヴィの遠征についていくと目に入っちゃうから手助けしちゃうんだよね。

本人の成長にならないよね。確かに。ここらで新人騎士は洗礼を受けるべきか。



「分かった。下ろして」

「絶対だよ?」

「うん」



そう言うとヴィが下ろしてくれた。そのまま俺たちは彼らについていくとアルフレッドが止まれの合図をする。一応騎士団内での合図はある。喋っただけで気づかれるってこともあるしね。



そのままサインで前方に魔獣がいる事を伝える。それから自分とヴィを指さした後に右と左をさす。

これは二人が魔獣を囲んで、俺達が最初に仕掛けるということである。カノ君は基本的に非戦闘員扱いなのでここで待機。行動早く二人は素早く右翼と左翼に展開する。



魔獣は危険区域基準でも小さめの体型であるが人型で鎧を纏っている。持っているのはハルバートだ。人型だと魔獣よりも駆逐難易度はグーンと上がり、他の班に迷惑が掛からないように退路を塞ぐのが定石だ。本当は四方囲みたいのだが、ここには一応新人が二人なので比較的安全なファーストアタックが当たり前だ。



「お前はここにいろ。邪魔だ」

「分かった」

「……ちっ」



舌打ちされたけどそれがストレスにならないならここにいるよ。タイミングは、ルノ君に任せられ俺たちは彼の動向を見守る。



すると、ぐいっと服の裾を掴まれた。



「だ、大丈夫だよね?」

「大丈夫だよ」

「だよね~」



カノ君の声は震えている。平坦に普通に答えるといつものような陽気の声を出す。



これぐらいでビビってたら遠征できないよ君達。これは洗礼だから揉まれてくればいいよ。先輩騎士の中でも強いから確実に死なないと思うよ。



ファイト!!!

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