6 / 34
本編
危険区域 特級10
しおりを挟む
昨日あんなことがったが、新品の剣を貰い俺達は何事もなかったように朝ご飯もらって今回の主旨を聞いている。
先輩新人でチームを組んでこの森で3日過ごすという至ってシンプルな内容だ。俺はこれを聞きながら、確かに新人にはいい経験になるものだなっと呑気にそう考える。平民は分からないが貴族の子たちはほとんどそう言う経験をしたことないからいいんじゃないだろうか。
「いえーい!!この班を勝ち取りました!!どうぞよろしくお願いします~!!」
「おい馬鹿!!ちゃんと挨拶しろ!!よ、よろしくお願いします!ヴィアン様、アルフレッド様!!」
双子だ。第一班内でのグループ分けであれば当たる確率も高いのだが、よりにもよって双子と一緒だ。一人は整備の為錬金術師がいるとなればまあ、そうなるだろう。それにこの実力者二人となれば新人がもう一人入ってもおかしくない。
けど、俺の本性を知っている人物が三人もいると居心地悪い。
いえーいっと俺に抱き着こうとしたカノ君をルノ君が首根っこ掴んで慌てて頭を下げさせる。礼儀にはうるさいらしい。まあ普通か。
「よろしくお願いしますね」
「よろしく。僕らがいるから気楽にしてね」
「は、はい!よろしくお願いします!!」
きらきらきらっと尊敬の目を向けたルノ君にアルフレッドとヴィはにこにこと笑顔で答える。流石の対応だ。俺は彼の視界に少しでも入らないように端によるとカノ君が俺の腕に引っ付いてきた。反射的に手が出そうになったがぐっとこらえる。今の俺がやるべきものではない。
「どうしたんですか?カノさ……」
「ちょっとひび割れてるよ?直そうか?」
ネックレスのチェーンを指で伝いながら魔石の入っているそれを服の中から引っ張り出された。
俺はそれを聞いてまじかっとそれを見る。確かにひびが入っていた。いつもよりあんまり魔力を入れていないはずなんだけど……。
「ギルさんに聞いたんですけど、今回は銃剣なんでしょう?ちょっと余計なパーツがあるから壊れやすいって言ってたんだよね~」
そんな事全く書いてなかったんだけど。割れたらどうすんだよ。我が兄ながら適当だ。
俺はネックレスを気づかれないうちにササっと取って彼に渡す。すると彼はそれを手に取って俺からさっさと離れ、懐から出したルーペでまじまじとそれを見ている。もう俺に興味はなしだ。
それにほっとしていると、いつの間にか他の班員は森の中に入って行った。
てっきり、協力して~っとかの要請が来るかと思ったのに。だって、ヴィの班っていっつも人気だった。俺いつもヴィが心配だから遠征とかで、身バレしないように魔装具纏ってついていってるんだけどヴィの班にいつも一緒に~とか言ってくる班があるはずなんだけど?
うーん。俺がいるからかな?
「どうかした?」
「いいえ!それより行きましょう!!」
ヴィに顔をのぞき込まれてにっこりと笑顔で応対。流石に腕に引っ付くのはよくないと思い、一先ず手ぐらい繋いでおく。
勿論離せよ?っと目で訴えながら。
こんな場所でおてて繋いで歩くなんて言語道断である。ヴィはきょとんとした後に頷いた。
そしてぎゅっと手を強く握られた。
「任せて!」
この!俺好きすぎる婚約者め!!そういう意味で繋いだんじゃないよ!!君、俺がこういう演技していいかって聞いた時にめっちゃ頷いてたくせになんで協力的じゃないの!?
大きな声でちげえよ!といって振りほどきたいのをぐっとこらえてぎゅっと腕に引っ付いた。
「嬉しいです!」
流石にこれは離れるだろう。そう思ったが、ヴィはすごくすごーく嬉しそうな顔をする。腰を掴まれた。
頭を抱えたくなった。アルフレッドに助けを求める。アルフレッドは俺と見つめあった後にあっと声をあげて俺たちの前に立つ。
「どうぞ盾に……っ!」
「あー!早く行きましょう!!ね!遅れてますし!!」
ルノ君たちに見えないように膝裏を蹴っ飛ばしつつアルフレッドを急かす。カノ君は「はーいっ」と元気な声を出していたがルノ君は俺を攻め立てる視線を向けている。
そうそうそういうのだよ!!知り合いで構成されすぎんだよ、この班!!
アルフレッドを先頭に中衛に双子、後衛に俺達という隊列で森の中に入る。方々から剣戟や叫び声が聞こえるが、この醍醐味である。
アルフレッドがそれを聞き期待した目で振り返るが、俺は、はよいけっと視線で促す。
第一班の遠征実習先は危険な魔獣が生息している危険区域での滞在となるので、その時によって判断し休憩、仮眠、場合によっては三日寝ずに行動しなければならないのでかなり過酷だ。
その危険区域は、予め国の魔術師によってドーム型の結界を張って外に危険な魔獣が出ないようにしている。だから、そこに入れば一定レベル以上の魔獣しかいないのである。
結界型のドームは遠くからでも見える巨大なもので、この森で言えば中央付近がそうである。森に限った話ではないので、迷宮や町中でもそれがあったりする。
危険区域は等級化されており0~10で数字が少ない程危険であり、0等級は世界でも限られた者しか入れない伝説級の者たちしか踏み入ることは許されない場所である。
因みにここは10等級。危険区域の中では比較的安全な場所である。
そのドームの前でアルフレッドはいったん立ち止まった。
「ここからは危険区域となるから気を付けてくださいね」
「「は、はい!」」
ここできゃーこわーいと言えば良かったが、カノ君とルノ君が思いのほか緊張しているので刺激するのはやめておく。これで吐き出しちゃうかもしれないし。
第一班に入れる実力だ。中に入る前から分かるのだろう。中にどんなものがいるかというのを。
「一応復唱しますね。はぐれた場合はその場に止まらずにこの結界の外に出る事。それから支給されている信号弾を打つこと。逃げられる状況でなかった場合は、増援が向かうまで持ちこたえること。生きていれば助けられるけど死んだらどうしようもないから、気合で生き残ること。宜しいですね?」
「「はい!」」
「あ、はい」
カノ君たちに遅れて思わず返事をしてしまった。でも俺信号弾貰ってねえんだけど。それもあの集団のせいか~。まあいいんだけど。
アルフレッドはにっこりと笑って「それじゃあ行くよ~」っと言って中に入った。
双子も続き、俺達も一緒に入る。
まあ、狩場だから俺はよく行ってるんだけど、ここって時々人型もいて知能あるからめんどくさいんだよね。相手するのが。
歩きずらくなってきたのでヴィから一先ず離れると、近辺で魔獣に苦戦している班を見つける。というか、新人が張り切ってミスしたみたいな雰囲気。可哀そう。
俺はかがんで小石を手にしてぴんっと小石を弾き飛ばす。四本脚の獅子、先ほどの大蛇の二倍以上ある大きさの目を貫いた。体勢が崩れて一気に先輩騎士が畳みかける。あれはもう大丈夫だ。元々5等級危険区域まで行ける実力のあるものばかりなのでこんなのでは苦戦しないが、心配なので暫くその体勢で様子を見ようとするとぐいっと腕を引っ張られた。
「おい!!こんなところで座り込んでるんじゃねーよ!!」
ルノ君にそう言われて思わず立ち上がってしまった。
まさか、俺なんかを気にかけるとは。普通置いて行ってもいい位愚かな行為をしたんだけど今。
「疲れたんです~。だってここ空気重いしぃ、さっきから鳴き声がうるさいしぃ」
「はあ!?お前本当なんでこんなところにいんだよ!信じらんねー!!」
「だって、だって~……」
涙目になるとひょいっとヴィが俺を抱えた。
え?っともう少しヘイト稼ごうと思っていたのに予想外の行動をされてきょとんとしているとヴィは真剣な表情で俺を見た。
「大丈夫。彼は僕が世話するから気にしないで」
「そんなこと……っ!!」
「いいから。離れるからとっとと歩く。今は周りの班が他の魔獣と戦ってるから出会ってないけどそろそろ鉢合わせてもおかしくないから」
「~~~~っ!!」
ルノ君はすごくすごーく不本意そうな顔をして俺を睨みつけてアルフレッドたちのところに走って向かう。
「ベルちゃん。ここだと結構新人君たちが極限になるから、それ今は禁止してくれる?」
「……ごめん、俺が浅はかだった」
そうだよね。初めての子は怖くないはずがないんだ。思いやりがなかった。流石にここで新人を亡くす事になるのは目覚めが悪いというもの。
しゅんっと彼の腕の中で反省するがちゅっとキスをされた。
「ヴィ、流石にここでは……」
「だから、他人を助けちゃだめだよ。今回は僕だけ守って」
「え、う、うん……」
そんな事言ってもいつも俺はヴィを守ってるつもりだけど。俺の中で小さい頃のヴィが印象的っていうのもあるけどさ~。
まあ、さっきのもやめてっていう事だと思う。俺がいつでも助けられるわけでもないし、確かにやめた方が良いかも。どうにもヴィの遠征についていくと目に入っちゃうから手助けしちゃうんだよね。
本人の成長にならないよね。確かに。ここらで新人騎士は洗礼を受けるべきか。
「分かった。下ろして」
「絶対だよ?」
「うん」
そう言うとヴィが下ろしてくれた。そのまま俺たちは彼らについていくとアルフレッドが止まれの合図をする。一応騎士団内での合図はある。喋っただけで気づかれるってこともあるしね。
そのままサインで前方に魔獣がいる事を伝える。それから自分とヴィを指さした後に右と左をさす。
これは二人が魔獣を囲んで、俺達が最初に仕掛けるということである。カノ君は基本的に非戦闘員扱いなのでここで待機。行動早く二人は素早く右翼と左翼に展開する。
魔獣は危険区域基準でも小さめの体型であるが人型で鎧を纏っている。持っているのはハルバートだ。人型だと魔獣よりも駆逐難易度はグーンと上がり、他の班に迷惑が掛からないように退路を塞ぐのが定石だ。本当は四方囲みたいのだが、ここには一応新人が二人なので比較的安全なファーストアタックが当たり前だ。
「お前はここにいろ。邪魔だ」
「分かった」
「……ちっ」
舌打ちされたけどそれがストレスにならないならここにいるよ。タイミングは、ルノ君に任せられ俺たちは彼の動向を見守る。
すると、ぐいっと服の裾を掴まれた。
「だ、大丈夫だよね?」
「大丈夫だよ」
「だよね~」
カノ君の声は震えている。平坦に普通に答えるといつものような陽気の声を出す。
これぐらいでビビってたら遠征できないよ君達。これは洗礼だから揉まれてくればいいよ。先輩騎士の中でも強いから確実に死なないと思うよ。
ファイト!!!
先輩新人でチームを組んでこの森で3日過ごすという至ってシンプルな内容だ。俺はこれを聞きながら、確かに新人にはいい経験になるものだなっと呑気にそう考える。平民は分からないが貴族の子たちはほとんどそう言う経験をしたことないからいいんじゃないだろうか。
「いえーい!!この班を勝ち取りました!!どうぞよろしくお願いします~!!」
「おい馬鹿!!ちゃんと挨拶しろ!!よ、よろしくお願いします!ヴィアン様、アルフレッド様!!」
双子だ。第一班内でのグループ分けであれば当たる確率も高いのだが、よりにもよって双子と一緒だ。一人は整備の為錬金術師がいるとなればまあ、そうなるだろう。それにこの実力者二人となれば新人がもう一人入ってもおかしくない。
けど、俺の本性を知っている人物が三人もいると居心地悪い。
いえーいっと俺に抱き着こうとしたカノ君をルノ君が首根っこ掴んで慌てて頭を下げさせる。礼儀にはうるさいらしい。まあ普通か。
「よろしくお願いしますね」
「よろしく。僕らがいるから気楽にしてね」
「は、はい!よろしくお願いします!!」
きらきらきらっと尊敬の目を向けたルノ君にアルフレッドとヴィはにこにこと笑顔で答える。流石の対応だ。俺は彼の視界に少しでも入らないように端によるとカノ君が俺の腕に引っ付いてきた。反射的に手が出そうになったがぐっとこらえる。今の俺がやるべきものではない。
「どうしたんですか?カノさ……」
「ちょっとひび割れてるよ?直そうか?」
ネックレスのチェーンを指で伝いながら魔石の入っているそれを服の中から引っ張り出された。
俺はそれを聞いてまじかっとそれを見る。確かにひびが入っていた。いつもよりあんまり魔力を入れていないはずなんだけど……。
「ギルさんに聞いたんですけど、今回は銃剣なんでしょう?ちょっと余計なパーツがあるから壊れやすいって言ってたんだよね~」
そんな事全く書いてなかったんだけど。割れたらどうすんだよ。我が兄ながら適当だ。
俺はネックレスを気づかれないうちにササっと取って彼に渡す。すると彼はそれを手に取って俺からさっさと離れ、懐から出したルーペでまじまじとそれを見ている。もう俺に興味はなしだ。
それにほっとしていると、いつの間にか他の班員は森の中に入って行った。
てっきり、協力して~っとかの要請が来るかと思ったのに。だって、ヴィの班っていっつも人気だった。俺いつもヴィが心配だから遠征とかで、身バレしないように魔装具纏ってついていってるんだけどヴィの班にいつも一緒に~とか言ってくる班があるはずなんだけど?
うーん。俺がいるからかな?
「どうかした?」
「いいえ!それより行きましょう!!」
ヴィに顔をのぞき込まれてにっこりと笑顔で応対。流石に腕に引っ付くのはよくないと思い、一先ず手ぐらい繋いでおく。
勿論離せよ?っと目で訴えながら。
こんな場所でおてて繋いで歩くなんて言語道断である。ヴィはきょとんとした後に頷いた。
そしてぎゅっと手を強く握られた。
「任せて!」
この!俺好きすぎる婚約者め!!そういう意味で繋いだんじゃないよ!!君、俺がこういう演技していいかって聞いた時にめっちゃ頷いてたくせになんで協力的じゃないの!?
大きな声でちげえよ!といって振りほどきたいのをぐっとこらえてぎゅっと腕に引っ付いた。
「嬉しいです!」
流石にこれは離れるだろう。そう思ったが、ヴィはすごくすごーく嬉しそうな顔をする。腰を掴まれた。
頭を抱えたくなった。アルフレッドに助けを求める。アルフレッドは俺と見つめあった後にあっと声をあげて俺たちの前に立つ。
「どうぞ盾に……っ!」
「あー!早く行きましょう!!ね!遅れてますし!!」
ルノ君たちに見えないように膝裏を蹴っ飛ばしつつアルフレッドを急かす。カノ君は「はーいっ」と元気な声を出していたがルノ君は俺を攻め立てる視線を向けている。
そうそうそういうのだよ!!知り合いで構成されすぎんだよ、この班!!
アルフレッドを先頭に中衛に双子、後衛に俺達という隊列で森の中に入る。方々から剣戟や叫び声が聞こえるが、この醍醐味である。
アルフレッドがそれを聞き期待した目で振り返るが、俺は、はよいけっと視線で促す。
第一班の遠征実習先は危険な魔獣が生息している危険区域での滞在となるので、その時によって判断し休憩、仮眠、場合によっては三日寝ずに行動しなければならないのでかなり過酷だ。
その危険区域は、予め国の魔術師によってドーム型の結界を張って外に危険な魔獣が出ないようにしている。だから、そこに入れば一定レベル以上の魔獣しかいないのである。
結界型のドームは遠くからでも見える巨大なもので、この森で言えば中央付近がそうである。森に限った話ではないので、迷宮や町中でもそれがあったりする。
危険区域は等級化されており0~10で数字が少ない程危険であり、0等級は世界でも限られた者しか入れない伝説級の者たちしか踏み入ることは許されない場所である。
因みにここは10等級。危険区域の中では比較的安全な場所である。
そのドームの前でアルフレッドはいったん立ち止まった。
「ここからは危険区域となるから気を付けてくださいね」
「「は、はい!」」
ここできゃーこわーいと言えば良かったが、カノ君とルノ君が思いのほか緊張しているので刺激するのはやめておく。これで吐き出しちゃうかもしれないし。
第一班に入れる実力だ。中に入る前から分かるのだろう。中にどんなものがいるかというのを。
「一応復唱しますね。はぐれた場合はその場に止まらずにこの結界の外に出る事。それから支給されている信号弾を打つこと。逃げられる状況でなかった場合は、増援が向かうまで持ちこたえること。生きていれば助けられるけど死んだらどうしようもないから、気合で生き残ること。宜しいですね?」
「「はい!」」
「あ、はい」
カノ君たちに遅れて思わず返事をしてしまった。でも俺信号弾貰ってねえんだけど。それもあの集団のせいか~。まあいいんだけど。
アルフレッドはにっこりと笑って「それじゃあ行くよ~」っと言って中に入った。
双子も続き、俺達も一緒に入る。
まあ、狩場だから俺はよく行ってるんだけど、ここって時々人型もいて知能あるからめんどくさいんだよね。相手するのが。
歩きずらくなってきたのでヴィから一先ず離れると、近辺で魔獣に苦戦している班を見つける。というか、新人が張り切ってミスしたみたいな雰囲気。可哀そう。
俺はかがんで小石を手にしてぴんっと小石を弾き飛ばす。四本脚の獅子、先ほどの大蛇の二倍以上ある大きさの目を貫いた。体勢が崩れて一気に先輩騎士が畳みかける。あれはもう大丈夫だ。元々5等級危険区域まで行ける実力のあるものばかりなのでこんなのでは苦戦しないが、心配なので暫くその体勢で様子を見ようとするとぐいっと腕を引っ張られた。
「おい!!こんなところで座り込んでるんじゃねーよ!!」
ルノ君にそう言われて思わず立ち上がってしまった。
まさか、俺なんかを気にかけるとは。普通置いて行ってもいい位愚かな行為をしたんだけど今。
「疲れたんです~。だってここ空気重いしぃ、さっきから鳴き声がうるさいしぃ」
「はあ!?お前本当なんでこんなところにいんだよ!信じらんねー!!」
「だって、だって~……」
涙目になるとひょいっとヴィが俺を抱えた。
え?っともう少しヘイト稼ごうと思っていたのに予想外の行動をされてきょとんとしているとヴィは真剣な表情で俺を見た。
「大丈夫。彼は僕が世話するから気にしないで」
「そんなこと……っ!!」
「いいから。離れるからとっとと歩く。今は周りの班が他の魔獣と戦ってるから出会ってないけどそろそろ鉢合わせてもおかしくないから」
「~~~~っ!!」
ルノ君はすごくすごーく不本意そうな顔をして俺を睨みつけてアルフレッドたちのところに走って向かう。
「ベルちゃん。ここだと結構新人君たちが極限になるから、それ今は禁止してくれる?」
「……ごめん、俺が浅はかだった」
そうだよね。初めての子は怖くないはずがないんだ。思いやりがなかった。流石にここで新人を亡くす事になるのは目覚めが悪いというもの。
しゅんっと彼の腕の中で反省するがちゅっとキスをされた。
「ヴィ、流石にここでは……」
「だから、他人を助けちゃだめだよ。今回は僕だけ守って」
「え、う、うん……」
そんな事言ってもいつも俺はヴィを守ってるつもりだけど。俺の中で小さい頃のヴィが印象的っていうのもあるけどさ~。
まあ、さっきのもやめてっていう事だと思う。俺がいつでも助けられるわけでもないし、確かにやめた方が良いかも。どうにもヴィの遠征についていくと目に入っちゃうから手助けしちゃうんだよね。
本人の成長にならないよね。確かに。ここらで新人騎士は洗礼を受けるべきか。
「分かった。下ろして」
「絶対だよ?」
「うん」
そう言うとヴィが下ろしてくれた。そのまま俺たちは彼らについていくとアルフレッドが止まれの合図をする。一応騎士団内での合図はある。喋っただけで気づかれるってこともあるしね。
そのままサインで前方に魔獣がいる事を伝える。それから自分とヴィを指さした後に右と左をさす。
これは二人が魔獣を囲んで、俺達が最初に仕掛けるということである。カノ君は基本的に非戦闘員扱いなのでここで待機。行動早く二人は素早く右翼と左翼に展開する。
魔獣は危険区域基準でも小さめの体型であるが人型で鎧を纏っている。持っているのはハルバートだ。人型だと魔獣よりも駆逐難易度はグーンと上がり、他の班に迷惑が掛からないように退路を塞ぐのが定石だ。本当は四方囲みたいのだが、ここには一応新人が二人なので比較的安全なファーストアタックが当たり前だ。
「お前はここにいろ。邪魔だ」
「分かった」
「……ちっ」
舌打ちされたけどそれがストレスにならないならここにいるよ。タイミングは、ルノ君に任せられ俺たちは彼の動向を見守る。
すると、ぐいっと服の裾を掴まれた。
「だ、大丈夫だよね?」
「大丈夫だよ」
「だよね~」
カノ君の声は震えている。平坦に普通に答えるといつものような陽気の声を出す。
これぐらいでビビってたら遠征できないよ君達。これは洗礼だから揉まれてくればいいよ。先輩騎士の中でも強いから確実に死なないと思うよ。
ファイト!!!
42
お気に入りに追加
1,353
あなたにおすすめの小説
奴隷商人は紛れ込んだ皇太子に溺愛される。
拍羅
BL
転生したら奴隷商人?!いや、いやそんなことしたらダメでしょ
親の跡を継いで奴隷商人にはなったけど、両親のような残虐な行いはしません!俺は皆んなが行きたい家族の元へと送り出します。
え、新しく来た彼が全く理想の家族像を教えてくれないんだけど…。ちょっと、待ってその貴族の格好した人たち誰でしょうか
※独自の世界線
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
甥っ子と異世界に召喚された俺、元の世界へ戻るために奮闘してたら何故か王子に捕らわれました?
秋野 なずな
BL
ある日突然、甥っ子の蒼葉と異世界に召喚されてしまった冬斗。
蒼葉は精霊の愛し子であり、精霊を回復できる力があると告げられその力でこの国を助けて欲しいと頼まれる。しかし同時に役目を終えても元の世界には帰すことが出来ないと言われてしまう。
絶対に帰れる方法はあるはずだと協力を断り、せめて蒼葉だけでも元の世界に帰すための方法を探して孤軍奮闘するも、誰が敵で誰が味方かも分からない見知らぬ地で、1人の限界を感じていたときその手は差し出された
「僕と手を組まない?」
その手をとったことがすべての始まり。
気づいた頃にはもう、その手を離すことが出来なくなっていた。
王子×大学生
―――――――――
※男性も妊娠できる世界となっています
乙女ゲームのモブに転生したようですが、何故かBLの世界になってます~逆ハーなんて狙ってないのに攻略対象達が僕を溺愛してきます
syouki
BL
学校の階段から落ちていく瞬間、走馬灯のように僕の知らない記憶が流れ込んできた。そして、ここが乙女ゲーム「ハイスクールメモリー~あなたと過ごすスクールライフ」通称「ハイメモ」の世界だということに気が付いた。前世の僕は、色々なゲームの攻略を紹介する会社に勤めていてこの「ハイメモ」を攻略中だったが、帰宅途中で事故に遇い、はやりの異世界転生をしてしまったようだ。と言っても、僕は攻略対象でもなければ、対象者とは何の接点も無い一般人。いわゆるモブキャラだ。なので、ヒロインと攻略対象の恋愛を見届けようとしていたのだが、何故か攻略対象が僕に絡んでくる。待って!ここって乙女ゲームの世界ですよね???
※設定はゆるゆるです。
※主人公は流されやすいです。
※R15は念のため
※不定期更新です。
※BL小説大賞エントリーしてます。よろしくお願いしますm(_ _)m
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
Switch!〜僕とイケメンな地獄の裁判官様の溺愛異世界冒険記〜
天咲 琴葉
BL
幼い頃から精霊や神々の姿が見えていた悠理。
彼は美しい神社で、家族や仲間達に愛され、幸せに暮らしていた。
しかし、ある日、『燃える様な真紅の瞳』をした男と出逢ったことで、彼の運命は大きく変化していく。
幾重にも襲い掛かる運命の荒波の果て、悠理は一度解けてしまった絆を結び直せるのか――。
運命に翻弄されても尚、出逢い続ける――宿命と絆の和風ファンタジー。
完結【BL】紅き月の宴~Ωの悪役令息は、αの騎士に愛される。
梅花
BL
俺、アーデルハイド伯爵家次男のルーカス・アーデルハイドは悪役令息だった。
悪役令息と気付いたのは、断罪前々日の夜に激しい頭痛に襲われ倒れた後。
目を覚ました俺はこの世界が妹がプレイしていたBL18禁ゲーム『紅き月の宴』の世界に良く似ていると思い出したのだ。
この世界には男性しかいない。それを分ける性別であるα、β、Ωがあり、Ωが子供を孕む。
何処かで聞いた設定だ。
貴族社会では大半をαとβが占める中で、ルーカスは貴族には希なΩでそのせいか王子の婚約者になったのだ。
だが、ある日その王子からゲームの通り婚約破棄をされてしまう。
【完結】前世は魔王の妻でしたが転生したら人間の王子になったので元旦那と戦います
ほしふり
BL
ーーーーー魔王の妻、常闇の魔女リアーネは死んだ。
それから五百年の時を経てリアーネの魂は転生したものの、生まれた場所は人間の王国であり、第三王子リグレットは忌み子として恐れられていた。
王族とは思えない隠遁生活を送る中、前世の夫である魔王ベルグラに関して不穏な噂を耳にする。
いったいこの五百年の間、元夫に何があったのだろうか…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる