狐の嫁入り〜推しキャラの嫁が来たので、全力でくっつけようと思う〜

紫鶴

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42、打倒安倍雪那!!

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全身が若干痛い。
びりびりして、視界が低い。ああ、まだ小さいままだったのか。というか生きてる。良かった。
そう思って目を開けるとひっと悲鳴が聞こえた。
ゆっくりと顔をあげると見たことのある顔がびくびくと震えながら俺を指さした。

「は、はん!今更喚いても遅いからな間抜けめ!」

そう言っている割には怯えているように見える。じいっと俺は彼を見つめてくわっと牙を見せた。

「ひっ!!」

びくっと体を震わせて彼は俺と距離を取った。
うーん。

「君誰?……あれ!?」

自然と声が出たので慌てて短い手足で喉をかきむしる。
いつの間にか声が出る!てことは力がっ!!
そう思って大きくなろうとしたらぐらっと彼が倒れた。ぎょっとして駆けよって気が付いた。

「俺君に使役の術かけられてる……?」
「う、くそっ!何したんだお前!!唯人の言う通りに使役の術をかけたっていうのに!!」

そう言って悔しそうにしていた。俺はそれを聞いて申し訳なさでいっぱいになる。きっと眉が垂れさがって今の俺は困り顔だろう。

使役、と一口に言っても誰でもどんな妖を無条件に使役できるわけではない。
というのも、力の関係が釣り合っているもしくはそれ以下でないと立場は逆転してしまうのだ。
うん。要は君より俺の方が強かったってことだよ。

その為彼の中の法力、術を使うための力が妖力に変換されて俺に供給されているから声が出るようになった。俺が大きくなろうとして具合悪くなったのは、極限まで吸い上げてしまったからである。ごめんよ。
すすっと近寄って具合の悪い彼の懐に入る。
一応BLゲームの世界だからセックスが一番効率的に力を与えられるんだけど流石に初対面の子とはハードル高いわ。
ぺろぺろと顔を舐めながら様子を見ると、ふーふーっと呼吸荒く立ち上がった。

「くそ!なんで俺がこんな目に……」
「何かごめんね?」
「煩い!!俺に使役された狐の癖に生意気だぞ!!」
「うんうんそうだね」

俺がそう言うと彼は顔を真っ赤にして、「ふざけるなっ!!」と叫んだ。
いや、ふざけてないんだけど。
そんな事を思って見つめるとじわっと彼の黒い瞳に涙がにじみ始めた。それからぺたんっと座り込んだ。

「なんで、なんでだよ!あいつに出来て俺にできないはずない!!こんな妖の使役だって簡単に……っ!!」

そう言ってひっくひっくとしゃくりあげながら泣き出した。俺は静かに彼に近寄って膝の上に乗っかる。

「使役されてるよ」
「う、嘘だ……っ!」
「嘘じゃないよ!だってほら、君のこと殺さないでしょう?」

そう言ってクルクル回ると、ひっくとしゃくりあげた彼がじっと俺を見つめた。それからこくんと頷く。

「た、確かに……」
「ね?」

俺がそう言うと、彼は納得したようだ。良かった。これで闇落ちなんてなったら今までの君春君の努力が水の泡になったところだった。
この目の前の男は、人の都での悪役、蘆屋君彦あしやきみひこである。
ちょっとメンタルが弱くて、優秀すぎる安倍軍団と弟に強い嫉妬をしている。
ゲーム内容的にはこの子も妖魔課に所属しているが、今はどうなのだろうか。ちょっとよく分からん。とはいえ、コンプレックスは強く抱いているようだ。メンタル弱いのも。
ぺろぺろと涙を舐めながら慰めるとぐっと唇を強く噛んで、ころんと寝転がる。それに応じて傍らによるとそっと遠慮気味に彼が手を伸ばして来た。
どうぞっと、身を任せて撫でられる。

「ふ、ふふ……、安倍のよりもモフモフで可愛い……」
「安倍……?」

まさかその名字が出てくるとは思わずにきょとんとすると、君彦君はかっと目を見開いた。

「ああそうだ!安倍雪那!あいつは、あいつは!俺をバカにしてる!!妖を使役しているのも自慢して!!みんなして口を開けば安倍の安倍がっ!お、俺だってできるのに!!」
「そっかぁ」

つまり、君はあの雪那に勝ちたいというわけだ。
ふむふむ成程!

「君の願いを叶えよう!!」
「……え?」

これでも俺、長生きしてるから知識だけはあるんだよね!それに君彦君のことは前世でよく知ってるから!

さあ!目指すは打倒安倍雪那!!

ガンバロー!おー!!
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