36 / 59
35、第一部隊隊長、蘆屋です!
しおりを挟む
一先ず、黒の様子を見に行った。すすっと小さく襖を開けると横になっていた黒と目が合った。
「琥珀!?」
そして布団から起き上がった黒は慌てて俺のところに駆け寄った。そんな彼に俺がぎょっとして同じように距離を詰める。
君腹斬られたんだから安静にしてて!?
「良かった!無事だったんだね!こっちに来てたんだ!皆いなくなった琥珀を探してたよ?」
こくこくと頷きつつ彼の背中を押して、布団に戻す。戻された黒はきょとんとして黙っている俺に首を傾げる。
「どうしたの?喋らないけど……」
「……ぁ」
「え……?え、うそ、え……?こ、声奪われたの!?」
布団に戻ったはずの黒が再び状態を起こした。俺は声を奪われたわけではないのでちょっとどう反応しようと困る。一先ず黒の手を取って掌に事情をかく。
川に落ちて、ここに来たら瘴気だらけで払ってもらっている最中。瘴気のせいで声が出なくなった、と。
「川……あ、あれ!?でもどう考えても自業自得なのに俺は平気で琥珀がこうなるなんておかしい!!もう!もうううううっ!!」
「???」
ぎゅうっと正面から抱き着かれた。
黒はあれが何なのか分かるのかな?主人公凄いな。そういうのもフィーリングで分かっちゃうのかな!?
とりあえずぎゅーっと抱きしめ返すとその瞬間叫び声が聞こえた。
「琥珀がいない!!!」
雪那の声だ。
君仕事じゃないの?いや、帰ってきたのかな……?
「どこ!?どこにいるの!?いやだ!!やだやだお兄ちゃんを置いてかないで!!」
どたどたという足音とすぱーんっと襖を勢いよく開く音が聞こえる。その音はどんどんこちらに近づいてきてパーンっと襖が開いた。
「琥珀!!」
「うわっ!?」
固まっている黒を無理に引きはがして雪那は俺を抱えてぎゅうっと抱きしめた。黒は驚いて声をあげ、べしゃっと床に転がってしまう。
ちょっと!
結構きつめに雪那の肩を叩くが雪那は俺の名前を何度も言う。壊れた玩具のようだ。後抱きしめる力が強くて痛い。ミシミシいってるんだけど?俺じゃなかったら骨折してるよ?分かってます?
うぐうっと苦しくなってくると黒が控えめに声を出す。
「あ、あのぅ……。琥珀が苦しそうなんですが……」
「煩い!!俺より先に会ってるからって調子乗んじゃねーぞクソガキ!!」
「う、え、えっと……お、俺も最近思い出したので、そのぅ……」
「うるせえ!!」
「す、すみません!!」
黒に当たりが強すぎる!ぽかぽかと軽く殴るが彼にはまるでダメージがない。なので今度はぐいぐい顔を押しのけようとしているが平気なのか微動だにしない。なんだこいつ!?なにこいつ!!??
ぷくうっと頬を膨らませて分かりやすく不機嫌アピールをするとはっと雪那は息をのんだ。
「可愛い!見て!可愛い!!」
「あ、はい」
「ふざけんじゃねーぞ!その薄い反応は!!」
「と、とても可愛らしいです!お兄さんに似て聡明で天才な弟さんです!!」
「そうだろう、そうだろう!俺の弟は可愛くて聡明で天才なんだ!!」
「はい!!」
何この会話。
あと俺別にお前の弟じゃないから。でも、かなり恥ずかしいんだけど。
「雪那さん!見つかりましたか?あ!こんばんは~」
「兄上。彼が苦しそうにしています。少し緩めたらどうです?」
双熾とさっきいた子がいた。俺と雪那さんを見てそう冷静に言っている。先ほどまでの暴れっぷりは普通なの?
二人の声に雪那は力を緩め一旦床に置いた。それにほっとするが次の瞬間雪那は俺を姫抱っこしてきた。え!?
「夕飯だって!行こう?」
な、成程!?でも俺抱えられなくても大丈夫だよ!?自分で歩けます!っと抗議するために指を動かすが、何処に書けばいいのか……。指を彷徨わせていたらいつの間にか居間にいた。
あ、あれ?
すとんっと座布団の上に下ろされて隣は雪那が陣取る。机の上には筑前煮やサバの塩焼き、里芋の煮っ転がし、菜の花の和え物、鶏のから揚げ、肉じゃが、豚の生姜焼き、白米、油揚げと豆腐のお味噌汁。
美味しそうだが、おかずの数多くない?好きなものだらけで嬉しいけど。
「俺が作ったんだよ?好きなものがあると良いんだけど……」
「ぜんぶだいすき。ありがとう」
「本当!?嬉しいなぁ!!」
雪那が嬉しそうににこにこ笑う。目の前には黒、その隣には双熾。そして双熾と雪那の間のお誕生席にあの男の人が座っている。気になってたんだけど貴方誰ですか?
じっと見つめていると彼が気づいたのかびしっと背筋を伸ばした頭を下げる。
「申し遅れました!蘆屋君春です!一応第一部隊隊長をしております!琥珀さん、でよろしいでしょうか?」
君春くんがそう言ってきたのでこくんと頷いた。
蘆屋って有名なところだな。凄い人がいるんだけど、俺大丈夫かな……?
「琥珀!?」
そして布団から起き上がった黒は慌てて俺のところに駆け寄った。そんな彼に俺がぎょっとして同じように距離を詰める。
君腹斬られたんだから安静にしてて!?
「良かった!無事だったんだね!こっちに来てたんだ!皆いなくなった琥珀を探してたよ?」
こくこくと頷きつつ彼の背中を押して、布団に戻す。戻された黒はきょとんとして黙っている俺に首を傾げる。
「どうしたの?喋らないけど……」
「……ぁ」
「え……?え、うそ、え……?こ、声奪われたの!?」
布団に戻ったはずの黒が再び状態を起こした。俺は声を奪われたわけではないのでちょっとどう反応しようと困る。一先ず黒の手を取って掌に事情をかく。
川に落ちて、ここに来たら瘴気だらけで払ってもらっている最中。瘴気のせいで声が出なくなった、と。
「川……あ、あれ!?でもどう考えても自業自得なのに俺は平気で琥珀がこうなるなんておかしい!!もう!もうううううっ!!」
「???」
ぎゅうっと正面から抱き着かれた。
黒はあれが何なのか分かるのかな?主人公凄いな。そういうのもフィーリングで分かっちゃうのかな!?
とりあえずぎゅーっと抱きしめ返すとその瞬間叫び声が聞こえた。
「琥珀がいない!!!」
雪那の声だ。
君仕事じゃないの?いや、帰ってきたのかな……?
「どこ!?どこにいるの!?いやだ!!やだやだお兄ちゃんを置いてかないで!!」
どたどたという足音とすぱーんっと襖を勢いよく開く音が聞こえる。その音はどんどんこちらに近づいてきてパーンっと襖が開いた。
「琥珀!!」
「うわっ!?」
固まっている黒を無理に引きはがして雪那は俺を抱えてぎゅうっと抱きしめた。黒は驚いて声をあげ、べしゃっと床に転がってしまう。
ちょっと!
結構きつめに雪那の肩を叩くが雪那は俺の名前を何度も言う。壊れた玩具のようだ。後抱きしめる力が強くて痛い。ミシミシいってるんだけど?俺じゃなかったら骨折してるよ?分かってます?
うぐうっと苦しくなってくると黒が控えめに声を出す。
「あ、あのぅ……。琥珀が苦しそうなんですが……」
「煩い!!俺より先に会ってるからって調子乗んじゃねーぞクソガキ!!」
「う、え、えっと……お、俺も最近思い出したので、そのぅ……」
「うるせえ!!」
「す、すみません!!」
黒に当たりが強すぎる!ぽかぽかと軽く殴るが彼にはまるでダメージがない。なので今度はぐいぐい顔を押しのけようとしているが平気なのか微動だにしない。なんだこいつ!?なにこいつ!!??
ぷくうっと頬を膨らませて分かりやすく不機嫌アピールをするとはっと雪那は息をのんだ。
「可愛い!見て!可愛い!!」
「あ、はい」
「ふざけんじゃねーぞ!その薄い反応は!!」
「と、とても可愛らしいです!お兄さんに似て聡明で天才な弟さんです!!」
「そうだろう、そうだろう!俺の弟は可愛くて聡明で天才なんだ!!」
「はい!!」
何この会話。
あと俺別にお前の弟じゃないから。でも、かなり恥ずかしいんだけど。
「雪那さん!見つかりましたか?あ!こんばんは~」
「兄上。彼が苦しそうにしています。少し緩めたらどうです?」
双熾とさっきいた子がいた。俺と雪那さんを見てそう冷静に言っている。先ほどまでの暴れっぷりは普通なの?
二人の声に雪那は力を緩め一旦床に置いた。それにほっとするが次の瞬間雪那は俺を姫抱っこしてきた。え!?
「夕飯だって!行こう?」
な、成程!?でも俺抱えられなくても大丈夫だよ!?自分で歩けます!っと抗議するために指を動かすが、何処に書けばいいのか……。指を彷徨わせていたらいつの間にか居間にいた。
あ、あれ?
すとんっと座布団の上に下ろされて隣は雪那が陣取る。机の上には筑前煮やサバの塩焼き、里芋の煮っ転がし、菜の花の和え物、鶏のから揚げ、肉じゃが、豚の生姜焼き、白米、油揚げと豆腐のお味噌汁。
美味しそうだが、おかずの数多くない?好きなものだらけで嬉しいけど。
「俺が作ったんだよ?好きなものがあると良いんだけど……」
「ぜんぶだいすき。ありがとう」
「本当!?嬉しいなぁ!!」
雪那が嬉しそうににこにこ笑う。目の前には黒、その隣には双熾。そして双熾と雪那の間のお誕生席にあの男の人が座っている。気になってたんだけど貴方誰ですか?
じっと見つめていると彼が気づいたのかびしっと背筋を伸ばした頭を下げる。
「申し遅れました!蘆屋君春です!一応第一部隊隊長をしております!琥珀さん、でよろしいでしょうか?」
君春くんがそう言ってきたのでこくんと頷いた。
蘆屋って有名なところだな。凄い人がいるんだけど、俺大丈夫かな……?
3
お気に入りに追加
1,652
あなたにおすすめの小説
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。
みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。
男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。
メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。
奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。
pixivでは既に最終回まで投稿しています。


第十王子は天然侍従には敵わない。
きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」
学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま

弱すぎると勇者パーティーを追放されたハズなんですが……なんで追いかけてきてんだよ勇者ァ!
灯璃
BL
「あなたは弱すぎる! お荷物なのよ! よって、一刻も早くこのパーティーを抜けてちょうだい!」
そう言われ、勇者パーティーから追放された冒険者のメルク。
リーダーの勇者アレスが戻る前に、元仲間たちに追い立てられるようにパーティーを抜けた。
だが数日後、何故か勇者がメルクを探しているという噂を酒場で聞く。が、既に故郷に帰ってスローライフを送ろうとしていたメルクは、絶対に見つからないと決意した。
みたいな追放ものの皮を被った、頭おかしい執着攻めもの。
追いかけてくるまで説明ハイリマァス
※完結致しました!お読みいただきありがとうございました!
※11/20 短編(いちまんじ)新しく書きました!
※12/14 どうしてもIF話書きたくなったので、書きました!これにて本当にお終いにします。ありがとうございました!
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

王命で第二王子と婚姻だそうです(王子目線追加)
かのこkanoko
BL
第二王子と婚姻せよ。
はい?
自分、末端貴族の冴えない魔法使いですが?
しかも、男なんですが?
BL初挑戦!
ヌルイです。
王子目線追加しました。
沢山の方に読んでいただき、感謝します!!
6月3日、BL部門日間1位になりました。
ありがとうございます!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる