狐の嫁入り〜推しキャラの嫁が来たので、全力でくっつけようと思う〜

紫鶴

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26、青とお昼寝

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褒められちゃった~っと俺は上機嫌で中央の廊下を歩く。くるくると回るとしゃらしゃらと帯についている飾りが動く。からんからんと下駄を鳴らしながらふらふらと少しバランス悪く歩く。いつもより厚底だからかなり不安定だ。

「よう、誰かと思えば琥珀じゃねーか」
「やっほー檳榔びんろう!」
「おう」

ばっさぁっと黒い羽根を動かす、黒髪で黒目の男がいる。烏天狗の檳榔びんろう様だ。烏天狗の頭で偉―い妖。その隣には桃がいるので御館様に案内でもしている途中なのだろう。彼は不敵に笑って、俺を上から下までじっと観察する。

「何だよ~。今日は随分おめかししてんじゃねーか。どこか行くのか?」
「何処にもいかないよ?似合ってる?」
「おーおー、似合ってんぞ~。いつもよりましに見えるぞ~」
「そこは似合ってるだけで良いんだよ」

檳榔は一言多いんだよな~。ましなんて言わなくていいのに。
俺がそう言うと檳榔はカラカラ笑ってぐしゃぐしゃと俺の頭をなでる。セットが崩れる!!

「で、今日は休みか?」
「そ。今日だけじゃなくて暫く」
「そりゃまたなんで」
「人の都に行くからだよ~」
「ほーん?ま、よく分かんねーが頑張れよ~」

檳榔はそう言って俺の肩を叩いた後に御館様の部屋に向かった。御館様に用があるようだ。俺は檳榔と桃の後姿を見ながら、そういえばっと思い出した。
檳榔は何考えてるか分からないが、まあ、この妖。俺を利用して御館様になりたがっている。なんだったか、御館様よりも相応しい妖はいる!とか、どうして殺した!!なんてセリフを聞いた気がする。どんなシナリオだったか忘れたけれど。
まあ、どうでもいいかな!彼らは恋心を自覚して初めての共同作業の時にやられる敵だから。
お互い頑張ろうぜ!!
敬礼をしてから見送るとぐらっと体が傾いた。

「おっとっと!」
「おいっ!!」

横から手が伸びて抱きしめてくれた。あっと顔をあげるとそこには医務室の亡霊と化している青がいる。珍しい。日の光に浴びても大丈夫なのかい君。

「どうしたの?」
「それはこっちのセリフだ」

よいしょっと青が俺を立たせて離れる。彼からは相変わらず薬品の匂いがする。雪男なのでアイスを作らせると天下一品だ。

「そんな恰好でお出かけか?」
「いや?人の都にはこの格好で行くから慣れるために」
「ふーん?わざわざ動きにくい格好をするのか?」
「そーそー。警戒されないことが第一だからね。どう?似合う?」
「似合ってる」
「ありがとう!」

青はこんな顔してるが素直に言ってくれる。先ほどの烏天狗とは大違いだ!
ぎゅっと抱き着くとふわあっと欠伸をされた。君そこは淡白だね。

「君は?外出るなんて珍しいね」
「薬草の採取だ」
「ああ!手伝おうか?」
「……いや結構だ」
「なんで?いいよ?」
「その着物汚す気か?」

あ。青に言われて気が付いた。確かにこの綺麗な着物を土で汚すのは気が引ける。

「気持ちだけ貰っておく。後ついでにこの薬飲んでくれ」
「ごめんね~。いただきまーす」

いつも持ち歩いているのかすっと懐から懐紙の中から薬包紙を取り出し、器用に氷のコップに中に水を満たしたそれら二つを渡された。ざらざらと紫色の粉を口に含んで水で流す。
うーん、舌がピリピリする。

「ひと舐めでもしたら死に至る毒薬をブレンドした毒薬だ。どうだ?」
「舌がちょっとピリピリする」
「……そうか。お腹痛かったり頭痛かったりしないか?」
「いや?」
「そうかー」

青は残念そうな顔をした。君のお陰でだいぶ毒耐性が付いたからね~。当初はひどいもんだったよ。死にはしなかったけど動けなくなるわ、吐き気は止まらないわ凄かった。

「慣れてきたという事か。うーむ。もっと強い毒を作ろう」
「いやいやそんなのより、もっと役に立つことをしてよ~」
「役立っているだろう?俺のお陰で薬物はほとんど効かないじゃないか」
「俺だけじゃなくて色んな人に分け隔てなく役立つものを作ってほしい」
「興味ない。大体、下等種の俺がそんなことしたって誰も見向きもしない」
「そんなことない!青の研究はすごいよ!!」

作物とかの肥料を作ったり、病気のワクチン作ったり!分野が全く違うのに色んな薬を作るんだもの!万能研究者と言えば君のことだよ!
自信もってっと手を握るが青は眉間にしわを寄せたままだ。もー!君ってばいっつもそう!

「お前が認めてくれれば別にいい」
「ダメだよ!」

俺に依存しちゃダメ!それはだめな妖まっしぐらです!
むっと少し不満げな顔をしている青にデコピンをしてだめっ!と言っておく。青は不満なのか小さくなって俺の腰ぐらいの背になった後ぎゅっと正面から抱き着いてきた。俺は彼の頭を撫でながらこういう。

「御館様だって君のことは認めてるじゃないか」
「……あの狐には嫌われてる」
「え、なんで?御館様優しいでしょう?」
「俺がゴミ屑劣等種だからってマウント取られる」
「そんな事言ってないし思ってないよ?」
「思ってる」
「思ってない」
「……思ってる」
「もー」

ひょいっと抱えてうりうりと頬ずりすると子供特有のもちもちほっぺにありつける。青はまだ俺の言葉に不満なのか唇を尖らせて不満を表している。俺は適当な縁側に腰かけて青の靴を回収しつつ、膝の上に乗せる。

「眠くないか?」
「いや?」
「なぜ?」
「え?十分に睡眠を得たからかな?」
「む」

あ、小さくなっちゃって力使い切ったわけね。薬草取りに来たって言ってたのに、力尽きるか普通。

「お昼寝は後でね」
「今がいい」
「薬草は良いの?」
「いい」
「じゃあ戻るね」
「抱っこ」

青が手を広げるので抱え、片手では靴を持つ。青ははむはむと俺の頬をはみながらぎゅうっと抱きしめる。医務室に連れて行くと、なんだかよく分からない実験道具が所狭しと並んでいる。それからいつも仮眠しているベッドのカーテンを開けると、銀色の狐のぬいぐるみがベッドを覆いつくしている。俺は下に靴を置いてからベッドに青を下ろした。青はもぞもぞとぬいぐるみを落とさないように器用に布団に潜り込んで顔をあげた。俺は彼の頭を撫でた。

「いい子はお休み」
「ん」
「おっと」

きゅっと袖を握られてぐいぐい自分の胸もとに持っていく。それからじっと俺を見た。じいいっと黙って俺を見つめるので俺は苦笑して、ぬいぐるみをどけながらベッドに潜り込む。

「狐にならないのか?」
「君もモフモフマニアだね」
「まにあ?」
「モフモフが好きってこと」
「ん」

要望に応えて狐になる。気のせいか、少し寒くなってきた。もぞもぞと着物ではなく俺を抱いて寝ろっと青の腕の中にねじ込む。青は雪男だが体温は温かい。青はそして目を閉じて寝息を立てた。俺は仕方ないと同じように目を閉じて、寝た。
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