狐の嫁入り〜推しキャラの嫁が来たので、全力でくっつけようと思う〜

紫鶴

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20、木蘭様って……

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お菓子も食べ終わったので早々にお暇しようと思っていると不意にがん、がんっ!っと扉に何かの衝撃が加わって吹っ飛んだ。

「おいゴラァっ!!うちの銀ちゃんに何してんだてめぇ!!」
「え!?」

すると扉を吹っ飛ばしたのは父さんだった。ゆらっと体を動かしながら剣呑に瞳を光らせて御館様を睨む。

「何もしてませんよ?お菓子を食べてただけです」
「うんそうだよ父さん!」

お菓子食べてただけだし!
そう思ったが、先ほどエクレアを手ずから食べていたことを思い出して、今更ながらに恥ずかしくなってきた。思わずかっと赤くなった顔を隠してしまう。流石にここで顔赤くしたら父さんに誤解されちゃうし!
そう思った配慮だったが、一瞬空気が固まった。

「俺の息子に何したぁああああああっ!!」
「どうでしょう?私は特に何もしてませんよ?」

叫ぶ父に、クールに御館様が答える。しまった!赤くなった顔をどうにか引っ込めながら父を見ると父が御館様の胸ぐらをつかんでいた。父さん!何してるんですか!?

「父さん!!」
「吐け!この子に何した!!」
「だから何もしてませんよ。ねー、琥珀」
「うん!だからとうさんやめて!!」

俺が必死に父さんにしがみつくと父さんがちっと舌打ちをして今度は俺をぎゅっと抱きしめて抱えた。
ちょっと!いい年して父さんに抱っこしてもらいたくないんだけど!?そんな事を思って抗議しようと口を開くが、ぎろっと父さんに睨まれて閉口するしかない。

「何をしてるんだ黄金!それにそいつはまだ用事を終わらせていないだろう!?」

ついで木蘭様が現れた。壊れた扉を見てぎろっと父さんを睨みつける。そんな木蘭様に父さんはプイっとそっぽを向く。

「知らない!!」
「あ、木蘭様。先ほど黒橡に会いましたので用事は終わりました」
「え!?」

俺がさらっとそう言うと、木蘭様が彼らしからぬ素っ頓狂な声をあげた。父さんは俺のそれを聞いてキラキラと輝かしい笑顔を振りまく。

「帰ろう銀ちゃん!!」
「う、ぐぅ……っ!おい、茶菓子があるぞ!」
「銀ちゃん沢山食べたもんね?もうお腹いっぱいだよね?」
「あ、うん……」
「……っ!!」

木蘭様が顔を歪ませた。もしや、茶菓子を無駄にした俺に怒ってる!?ならまだお腹の余裕あるし食べられる!

「あ、あの……」
「銀ちゃん、仏心を出さなくていいから。帰るよ?黒君にも報告しないといけないでしょ?」
そうだった!早くそう言われて俺は父さんの腕の中で申し訳なく思いながら木蘭様に頭を下げる。
「木蘭様申し訳ありません」
「全くだ。今度の茶会では許さないからな!!」
「はい!」

はい?
今度の茶会ってそんなのあった?

「銀ちゃんは作法とか分かんないので無理でーす」
「ふん。そんなのたしなみだろう。まあ、別に身内だけだから獣でも気にすることは無い」
「はー?銀ちゃんの狐姿を見たいってしつこいんだけど!!」
「ち、違う!獣は獣らしく振舞えと……っ!」
「だから、獣姿の銀ちゃんが見たいんでしょ?」
「ち、が、う!!もういい!とっとと帰れ!!」

え?何、そういう事?いつも俺の事獣っていうから獣畜生がって意味だと思ってたんだけど……。嫌でも父さんって時々おかしいからな。木蘭様めっちゃ怒ってるし……。

……でも後で聞いてみようかな。御館様に。

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