狐の嫁入り〜推しキャラの嫁が来たので、全力でくっつけようと思う〜

紫鶴

文字の大きさ
上 下
15 / 59

14、そうだ!失踪しよう!

しおりを挟む
母と父は8本なのに俺は初のひとつ尾。実はどこからか生まれた妖で本当の子ではないのではないかと、前まで屋敷の使用人だった者たちはそう言っていた。他にも外にいる狐たちも妬みと蔑みからひとつ尾の俺を両親への攻撃対象として噂し喜んでいた。
そして俺は真に受けてしまった。
今に思えば、例え血の繋がりが無くても家族だと思えるのだが子供だったため、そうか、二人の子供じゃないなら俺いない方が良いのでは?と本気で思って、渡りと一緒に人の都でふらふら旅をしていた。年数的に言えば100年ほど。

何故そんな長い間ふらふらできたのかというと、川を渡るには特別な船が必要で渡りはそれを人の都に通じる門がある方の岸に繋げたまま俺と人の都をぐーるぐる散策したのだ。日本以外にも行った。
さて、ではなんで100年で終わったのかというと父が迎えに来たのだ。聞けば、川の中に飛び込んだとか。確かに川の中に入ればこっち来れるけど、今にして思えば父が凄すぎた。
その為、人の都で俺を探し歩いていた彼は俺と渡りを見ると渡りに飛びかかって攻撃した。誘拐犯だと思ったと証言し、違うといったのだが、未だに父さんは渡りを警戒している。因みに父に攻撃されぽーんっと首が吹っ飛んだ渡りを見て俺は「渡りいいいいっ!?」と叫んだのを覚えている。渡りは呑気に「あぁれぇええ」なんて言っていた気がする。衝撃すぎて良く覚えていない。父は、渡りがそれで死なないのをわかっているのか再生を遅らせるために体を刻もうと構えるので慌てて止めに入った。止められ無かったらバラバラにして内臓も引き出してから箱の中に入れて永遠に火にくべようとしていたらしい。怖い。

父の迎えからの渡りと一緒にお家に帰って、そこで屋敷が一掃されていたことに気付いたのだ。前までいた使用人は誰一人いないうえに人の都で保護した知り合いばっか。戸惑っていると母さんが抱きしめてきて、それから部屋に入れられて外から鍵かけられた。窓は嵌め殺しで光を入れるだけの機能しかない。

「か、金糸雀?流石にそれは……」
「なんだ?何か文句あるのか?」
「ナ、ナンデモナイデス」

それから母さんが俺のお世話をした。お風呂も一緒、ご飯も自分で食べさせてくれない。ちょっと、一人でやろうとする母さんが普段見せない笑顔になるのでごめんなさいって涙声で震えた。それが多分100年くらい。仕事でいない間は若葉と織部が世話してくれてた。これで俺の世話される癖が出来たんだと思う。
そして、ある日のこと。

「いいか、銀」
「うん、なぁに母さん」

もぐもぐと、デザートを母さんの手ずから食べていた俺は母さんの言葉に呑気にそう答えた。母さんは俺の口についた食べかすを拭いながらこう続ける。

「お前は正真正銘俺と黄金の子だ。誰が何と言おうとその事実は変わらない。分かったか?」
「うん」
「でももし、またお前にそんな事を言うやつがいたら母さんに言うんだよ?俺が何とかしてやるから」
「わ、分かった」

何とかって何だろう。
俺はそう疑問に思ったが聞き返したらまずい気がして頷くしかなかった。母さんは綺麗な笑顔で俺の頭を撫でていい子っと言ってくれる。子供ながらに、母さんの本気怖いっと思った。
ただ、その次の日から監禁部屋ではなく俺の部屋でご飯も食堂で食べられるようになり、俺をひとつ尾と呼ぶものは木蘭様ぐらいだ。とはいえ、木蘭様も母さんや父さんの前では言わない。いや、言おうとしたら二人が睨んでた。でも木蘭様は今でも相変わらずそういうのだ。もう俺は気にしてないから大丈夫だけど。若葉に報告されてないかな?大丈夫かな。

木蘭様は尻尾が9本だし、気品があるからひとつ尾の俺が御館様の付き人で名前も貰ったのが気に入らないのだろう。そういうのって仕方ないよね?
それに、ひとつ尾って言われるのが嫌だったわけじゃなくて両親の子供じゃないかもしれないっていう言葉にショックを受けてただけなので、そのワードにはあまり傷つかない。だって弱いということは、守ってもらえるということだ。罪悪感なく!俺弱いからぁって!え?俺図々しい?
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

【完結】『ルカ』

瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。 倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。 クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。 そんなある日、クロを知る青年が現れ……? 貴族の青年×記憶喪失の青年です。 ※自サイトでも掲載しています。 2021年6月28日 本編完結

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。

みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。 男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。 メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。 奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。 pixivでは既に最終回まで投稿しています。

第十王子は天然侍従には敵わない。

きっせつ
BL
「婚約破棄させて頂きます。」 学園の卒業パーティーで始まった九人の令嬢による兄王子達の断罪を頭が痛くなる思いで第十王子ツェーンは見ていた。突如、その断罪により九人の王子が失脚し、ツェーンは王太子へと位が引き上げになったが……。どうしても王になりたくない王子とそんな王子を慕うド天然ワンコな侍従の偽装婚約から始まる勘違いとすれ違い(考え方の)のボーイズラブコメディ…の予定。※R 15。本番なし。

新しい道を歩み始めた貴方へ

mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。 そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。 その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。 あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。 あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……? ※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

処理中です...