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『カエシテ!!!!!!』
僕達はどうも、触れてはいけないものに触れてしまったようだ。
おずおずと後ろを振り向くと、いつのまにか校庭には誰もいなくなっていた。気持ち悪い程の赤オレンジの空と茶色の地面の真ん中に、ただ1人、少女がこちらを見据えて立っている。
「せ、先ぱ」
今まで見たことのないほどに深刻そうな顔をした先輩に、本気でヤバいと本能が危険信号を出す。チビりそうになるのを堪えて、対処法を考える。
少女はびちゃびちゃに腐臭を振りまいている。灰色の肌が爛れて、原型もやっと少女とわかる程度だ。垂れた長い黒髪の間から、充血した大きい目玉がこちらを一点に見つめている。
「あちゃー……うん、だよなぁ」
先輩が焦りながらも我を取り戻し、笑みを浮かべていた。
「笑う状況じゃないすよ……なんすか……アレ……」
声が震えてまともに脳が働かない。
『カエシテ』
先輩が立ち上がり、少女にゆっくり近づいていく。
「せ、先輩……!」
「はい」
「??!」
先輩が少女に箱を手渡しした。
『ゥ……ウウウウウウウグアァァァァァァォァアアアアアイアアイアア』
その瞬間、少女の形相が変化し、般若のような顔になる。少女の口が頭の半分ほどまで大きく開き、そこから血に濡れた無数の子供の手腕のようなものがうじゃうじゃと出てくる。
「う、うわああ!!!」
先輩は微動だにしない。
腕のようなモノが先輩を襲う。
「せん……」
熱風を顔に感じる。
「……ぱい……?」
先輩はその場に立っていた。少女は真っ赤な炎に包まれ、灰に姿を変えていた。
炎は徐々に青くなる。
先輩が両手を横に広げると御札が綺麗な列をなし、先輩の目の前に並ぶ。
右手を十二時の方向に、左手を六時の方向に弧を描くと、無数の御札が綺麗な立方体を描き炎を囲む。
徐々に両の手の距離を縮めると、立方体が小さくなり、やがてサイコロのような白い立方体が生まれる。
先輩の両手にそれが転がり落ちると、校庭の上の空はまだ青く、運動部が賑やかに活動している頃にもどっていた。
先輩がこちらを振り向く。
「僕の名は“焔”そう、炎の使い手だよ」
いつもの陽気さはどこにもなく、どこまでも冷たい表情で僕を見てそう言った。
僕が言葉を失っていると、さ、行こっか!と笑顔で僕に近づき、僕の手にサイコロを握らせる。
先輩の後ろ姿を見送るころ、我を取り戻した僕は手に握らされたサイコロをみる。赤い字でびっしりもじが書かれているソレを見て、再びゾッとし、鼻歌を歌っている先輩を追いかける。
「先輩!こんなもの渡さないでください!」
「あはは」
いつもの陽気な先輩に戻っている。先程までの光景は夢だったかのようだ。
僕達はまたいつものように部室に戻るのだった。
僕達はどうも、触れてはいけないものに触れてしまったようだ。
おずおずと後ろを振り向くと、いつのまにか校庭には誰もいなくなっていた。気持ち悪い程の赤オレンジの空と茶色の地面の真ん中に、ただ1人、少女がこちらを見据えて立っている。
「せ、先ぱ」
今まで見たことのないほどに深刻そうな顔をした先輩に、本気でヤバいと本能が危険信号を出す。チビりそうになるのを堪えて、対処法を考える。
少女はびちゃびちゃに腐臭を振りまいている。灰色の肌が爛れて、原型もやっと少女とわかる程度だ。垂れた長い黒髪の間から、充血した大きい目玉がこちらを一点に見つめている。
「あちゃー……うん、だよなぁ」
先輩が焦りながらも我を取り戻し、笑みを浮かべていた。
「笑う状況じゃないすよ……なんすか……アレ……」
声が震えてまともに脳が働かない。
『カエシテ』
先輩が立ち上がり、少女にゆっくり近づいていく。
「せ、先輩……!」
「はい」
「??!」
先輩が少女に箱を手渡しした。
『ゥ……ウウウウウウウグアァァァァァァォァアアアアアイアアイアア』
その瞬間、少女の形相が変化し、般若のような顔になる。少女の口が頭の半分ほどまで大きく開き、そこから血に濡れた無数の子供の手腕のようなものがうじゃうじゃと出てくる。
「う、うわああ!!!」
先輩は微動だにしない。
腕のようなモノが先輩を襲う。
「せん……」
熱風を顔に感じる。
「……ぱい……?」
先輩はその場に立っていた。少女は真っ赤な炎に包まれ、灰に姿を変えていた。
炎は徐々に青くなる。
先輩が両手を横に広げると御札が綺麗な列をなし、先輩の目の前に並ぶ。
右手を十二時の方向に、左手を六時の方向に弧を描くと、無数の御札が綺麗な立方体を描き炎を囲む。
徐々に両の手の距離を縮めると、立方体が小さくなり、やがてサイコロのような白い立方体が生まれる。
先輩の両手にそれが転がり落ちると、校庭の上の空はまだ青く、運動部が賑やかに活動している頃にもどっていた。
先輩がこちらを振り向く。
「僕の名は“焔”そう、炎の使い手だよ」
いつもの陽気さはどこにもなく、どこまでも冷たい表情で僕を見てそう言った。
僕が言葉を失っていると、さ、行こっか!と笑顔で僕に近づき、僕の手にサイコロを握らせる。
先輩の後ろ姿を見送るころ、我を取り戻した僕は手に握らされたサイコロをみる。赤い字でびっしりもじが書かれているソレを見て、再びゾッとし、鼻歌を歌っている先輩を追いかける。
「先輩!こんなもの渡さないでください!」
「あはは」
いつもの陽気な先輩に戻っている。先程までの光景は夢だったかのようだ。
僕達はまたいつものように部室に戻るのだった。
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