俺が想うよりも溺愛されているようです。

アオハル

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日常

日付が変わった後で-2-C-

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 水を出すためにキッチンへ。ルートヴィヒの屋敷では、いつでも冷えた水が出てきたが、設備のないキッチンではぬるい水を差しだすのが精いっぱい。
 少しばかり申し訳なくもあるが、ルートヴィヒは気にする様子もなく一息に飲み干した後、有難う、と表情を緩めた。
「……」
 かつん、とコップをテーブルに置く音が響く。少しの間の沈黙の後、椅子に座ったままのルートヴィヒが両手を広げた。
「?」
 お代わり、ではないだろう。どうしたのかと首を傾げたアルノシトに、ルートヴィヒは微かな笑みを浮かべる。
「傍に」
 あ、と声はなくアルノシトの口が動く。おずおずと腕を広げたルートヴィヒの前に立つと、そっと頭を抱え込むように腕を回す。
 自分の身体に回されるルートヴィヒの腕の動きを感じながら、ゆっくりと眼を閉じる。特に何をするでもなく。ただ伝わってくる体温に何とも言えない安堵を感じて体の力を抜いた。
 暫くの間、そうしてじっとしていたが、不意にルートヴィヒが腰を浮かせた。立ち上がる動きに従い、アルノシトは数歩後ろへと下がり、回していた腕の位置も頭から胴体へと滑り落ちる。
 見上げる位置になったルートヴィヒの顔へと視線を向けていると、そっと頬へと手を添えられた。
「アルノシト」
 親指で唇をなぞられ、小さく肩が跳ねた。返事の代わりに眼を閉じて顔を傾けると、すぐに柔らかい感触。
 緩々と食む動きに合わせ、背中に回した指が時折服を掴んでしまう。暫くの間、そうして触れるだけの口付けを交わしていたが、少しずつ触れ合わせる時間が長くなり、舌で唇を割られ、口腔内を探る動きに変わっていく。
「ん、……ふ……」
 酒のせいか、普段よりも熱を帯びた舌で触れられると力が抜けていく。くちくちと小さな水音が響く。合間に互いの吐息が混ざり、触れ合わせた肌が熱を帯びる頃、漸く舌を解いて距離を開く。
「……ぁ……」
 離れてしまった熱に何とも言えない寂しさに声が零れた。熱くなった頬を撫でた後、濡れたままの唇を拭うようにルートヴィヒの指が滑る。
「……」
 先程から言葉はない。ただ愛し気な視線と指の動きだけ。それでも十分に伝わってくるものにアルノシトは柔らかく眼を細めた。
「ルートヴィヒさん」
 名前を呼ぶ。重なる視線で続きを促されて、ゆっくりと眼を瞬かせた後、笑みを浮かべた。
「逢いに来てくれてありがとうございます……すごく……嬉しい」
 です。
 と続くはずの言葉が飲み込まれた。不意に強く抱きしめられたから。酒の匂いに混じって、香水の匂いやパーティー会場で出た料理の匂いだろうか。
 様々な匂いが混ざった中から、ルートヴィヒの匂いを探すよう顔を押し付ける。
「アルノシト」
 名前を呼ばれて顔を上げる。熱を帯びた青い眼にじっと見つめられると、それだけで身体の奥が熱くなる気がする。
「もっと触れても?」
 問いかけながらも軽く口付けられる。自分からも顔を寄せて食み返した後、腕を緩める。寝室へと戻った後、互いに服を脱ぎ捨ててベッドへと上がった。
 先に腰を下ろしたルートヴィヒの上に跨るようにして腰を下ろす。伸びてきた指が背中から尻へと滑り落ちていく動きに小さく体が震えた。
「……ぁ」
 尻肉の合間を滑る指先が奥へと触れる。堪え切れずに零れる声と跳ねる腰にルートヴィヒはもう片方の手でアルノシトの身体を抱き寄せる。
「……ん、っぁ…ルートヴィヒ、さん……」
 縋りつくように肩に載せた指が震える。返事をしながら耳を食まれると、びくびくと全身が震えた。
「こ、え……出ちゃうから……ゆっくり」
 正確な時間は不明だが深夜といって間違いはない時間。いつものホテルとは違って近隣の住人の迷惑になっては、と周囲を気にするアルノシトの背中をルートヴィヒの手が静かに撫でる。
「私の肩を噛むといい」
 そんなこと、と反論する前に動き出す指。擽るように襞を撫でられ、溜まらず鼻先をルートヴィヒの首筋へと埋めた。丁寧すぎる程の優しい動きで指先を埋められ、溢れそうになる声にしがみつく指が震える。
「……──っ、……」
 噛んでいい、とは言われたが歯を立てることは憚られて、ただ顔を押し付けるだけ。くぐもった声と零れる呼気。ぎし、と大きくベッドが軋むと同時、己の性器をルートヴィヒの腹に押し付けるように腰が揺れた。
「……ふ、……ぅ」
 入り込んでくる指と腹に押し付けた性器から得る感覚。ぎし、ぎし、とベッドが軋む音に合わせて、声とも息とも言えないものを吐き出しながら、アルノシトの身体が震える。
 根元まで埋めた指先で肉壁を掻き混ぜる音が混ざり、聴覚からも責め立てられてアルノシトの肌は色づき汗が滲んだ。
「……、ぁ、……ルートヴィヒ、さ……」
 名前を呼ばれて動きが止まる。同時に指を締め付けてしまい、羞恥にアルノシトの顔が更に赤く染まる。
「きついか?」
 ぐ、と指腹に中を押され、思わず声をあげそうになってしがみついた。ぎゅうと絡みつく肉の動きをなだめるように、中で動きを変える指の動きに翻弄されて、アルノシトは言葉を紡げず顔を首筋に押し付ける。
「~~~~……、ぁ……そ、じゃなくて」
 ぎしりとベッドが軋んだ。アルノシトが片手を抜いて、腹の間で震えているルートヴィヒの性器へとそっと触れる。
「……ほしい、です」
 自ら腰を浮かせた。触れた手で支えるようにしながら、位置を合わせてゆっくりと腰を下ろす。ひくつく縁へと触れる肉塊の熱さに肉へと絡めた指が震える。
 一瞬、あっけにとられたように動きを止めたルートヴィヒが指を抜いた。代わりに押し込まれる熱に震える腰を掴んで支える。
「……は、……──……」
 ルートヴィヒの支えに礼を言う余裕もなく。中を割り開く熱に恍惚とした吐息を零したのはどちらか。互いに急く気持ちを抑えながらの行為に、肩を掴むアルノシトの手にも、腰を掴むルートヴィヒの指にも自然と力が入ってしまう。
「ふ、ぁ……はい、った……」
 大きく息を吐き出すとうねる腹の動きにびく、と中の熱が跳ねる。ぁ、と嬉しそうに表情を緩めると、腰を支えていたルートヴィヒの手を取り己の腹へと指先を導く。
 ぴく、と腹の中の熱が跳ねる感触を確かめながら笑う。
「ルートヴィヒさんの……熱い……」
 すり、と握り取ったルートヴィヒの指先で己の腹を撫でるように。重ねた手に絡める震える指を今度はルートヴィヒの方から握り返す。
「……アルノシトも」
 うん、と頷き返した後、握られた指をじゃれつかせる。最後に持ち上げ、指先へと口付けた後、改めてルートヴィヒへと視線を向けて緩い笑みを浮かべた。
「動いて……いい、ですか?」
 返事を聞く前に首筋へと顔を埋める。改めて己の身体に巻き付く腕を感じながら、ゆっくりと腰を浮かせて揺らめかせる。
 腹の奥、熱を感じる度に小刻みに震えてしまう。
「……ん、、ん…っ、ふ……」
 ぎし、ぎし、と軋むベッドの音が不規則に大きくなる。ルートヴィヒにしがみついたまま、彼の腹へと自身の性器を擦り付けるように密着させると、ぬちりと粘着質な音と感触。
 ルートヴィヒはアルノシトのしたいようにさせてくれる。動きの妨げにならぬ程度に肌に触れ、髪や耳元へと口付けを落としては声にならない吐息を零す。
 それが妙に嬉しく思えて、身体を揺らす動きが大胆になった。
「……ぁ、……、」
 ぴくん、と腹の間で自身の性器が跳ねる。震える先端が開き、ルートヴィヒのものを咥え込んだ縁が一瞬強く締まるのに、ルートヴィヒの口元に笑みが浮かんだ。
 アルノシトの頭を己の項へと押し付けるように。強く抱きしめたかと思うと、ぐ、と深い場所を突き上げられ、アルノシトの全身が強張った。
 跳ねる性器の先から白濁が溢れ、生々しい臭いが立ち込める。びくびくと達した余韻に震える背中を緩く撫でられる度に、きゅう、と中に埋め込まれた熱を締め付けてしまう。
「…ん、ぅ…ルートヴィヒ、さ……」
 僅かに顔を上げる。気を抜くと声を上げてしまいそうで、震える声でとぎれとぎれに名を呼ぶと、ぽんぽん、と軽く頭を撫でられた。
「……噛んでもいいから」
 問い返す前にぐ、と中を押し上げられる。反射的にしがみつくとより強く顔を首筋へと押し付けて耐える。
 先程までとは違い、自分では予測できない動きで追い上げられていくことに体が震える。上がりそうになる声を堪えようと一層強く顔を押し付ける。
 不意に動きが止まる。己の中に埋め込まれた熱はまだ果てていない。どうしたのかと静かに顔を上げようとすると、後頭部に手が添えられた。
「……?!……、ふ、……」
 予告もなく深く口づけられて動きが止まる。同時に今までよりも深い場所へと熱を埋め込まれ、反射的に眼を閉じてしまう。
 吐息を零す隙間もないほど、深く強く重ねられて強張った体から力が抜けていく。
「───っ、は……」
 解放されると同時に大きく息を吸い込んだ。呆けたように目を瞬かせているのにもかかわらず、ルートヴィヒは顔中に口付けてくる。
 行為を返す余裕もなく、なすがまま。繰り返し啄まれる肌と自分を包む腕の温もりの心地良さにアルノシトは眼を閉じて全てを委ねた。
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