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日常

一人-2-C-

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 身に着けていた衣服を脱ぎ捨て、ベッドの上で足を開く。行為の名残が見て取れるかも知れない、なんて考える余裕もなく。肌を這う唇や指の動きに吐息が零れる。
 触れた瞬間から柔らかく吸い付くような動きを見せたそこ、ルートヴィヒの指先は躊躇うような間を置いた後、ぐちゅりと差し込まれる。
「あっ、ア、あ……」
 蕩けた声が響く。
 狭いベッドの上で広げられるだけ足を広げ、腰をくねらせる。中を掻き混ぜる指の動きに合わせて下腹がひくつき、中の指を締め付けた。
「……んん、……も、…はやく、ほし……」
 自分の身体を気遣ってくれてのことだとは分かるが、自慰行為で十分に解れていたそこをこれ以上解さなくても──とまでは言えなかった。
 あっさりと飲み込まれた指と絡みつく肉壁の熱さにルートヴィヒは眼を細めたが、動きは止めない。どちらかと言えば、いつもよりもわざと音を立てるような動きで中を掻き混ぜた後、指を引き抜いていく。
「…は、……」
 代わりに押し当てられる熱。躊躇うような間を置いた後、両手で腰を掴まれて眼を瞬かせる。
「……ぇ、…あ、なに…───…ッ!」
 ず、と熱塊が押し入れられる。いつもなら慣れるまで待つ間を置かず、一息に奥まで押し込まれて、ベッドが大きく軋んだ。
「ア、あ、ぁァあ…ッ……」
 ばつん、と肌を打つ音。尻肉が形を変えて押し上げられる。深い場所へと埋め込まれたもの。包み込む肉壁は歓喜に震え、形を確かめるように絡みついては解けていく。
「……ふ、……」
 ルートヴィヒの唇から吐息とも笑みとも受け取れるものが零れ落ちる。続けてばつばつと腰を揺らされ、アルノシトの足がふらふらと揺れる。
「あっ、あ……は、ひ…ァ……」
 声が抑えられない。狭いベッドの上で逃げ場もない。肌を打つ音とベッドの軋む音。ぐちゅぐちゅと体液の混ざったものを掻き混ぜる音。

 何より──直接肌に触れる熱。そこにいるのだと存在を確かめる度、声にならない声が溢れた。

 自分でもどうしていいのか分からず、ただ熱を貪る。シーツを掴んで堪えようとすれば、引きはがすような勢いで熱を押し込まれ、顎が跳ねる。
 狭い部屋の中、室温が上がるのではないかと思う程に熱を帯びた肌。伝い落ちる汗も、零れる吐息も何もかもが熱い。
「……、だ、め……、も……、ァ……、……アァっ……」
 強すぎる快感に混乱して、腰を掴む手を掴んだ。離れようと体をくねらせるも、それ以上の強い力でさらに奥へと押し込まれて動きが止まる。
 中を掻き混ぜるように腰を揺らされ、堪え切れず達してしまう。きゅうと強く締め付ける肉壁にルートヴィヒも限界だったのか、どくりと吐き出される熱。
「ひぁ……、ぁ……は、あ」
 蕩け切った声と表情。身動ぎや呼吸でシーツが肌を掠めるだけでも大袈裟に震えてしまう。
「……アルノシト、……」
 少し掠れた声。ぼんやりと視線を向けると、そっと頬を撫でられた。
「……ただいま」
 触れるだけの口付け。熱を求めていた行為の激しさと真逆の優しい行為に蕩けた笑みが浮かぶ。
「おかえり…なさ、い……」
 頬や髪に触れる手の動きが優しい。うっとりと眼を細めて体の力を抜くが、少しの間を置いた後、力の抜けた足を抱え直され、アルノシトは眼を瞬かせる。
「…………もう一回……」
「え……?」
 ぐ、と腰を押し付けられた。びく、っと体が跳ねてベッドが軋む。
「ぁ、…な、んで……」
 そこでようやく気付く。腹の間で揺れていた自身の性器はまだ熱を吐き出していなかった。
 でも、さっき──
 軽い混乱にルートヴィヒを見上げると、安心させるように口付けられる。
「…ぅ、……」
 呼吸するだけ。身を捩るだけ。
 それだけで中に埋め込まれたままのルートヴィヒの熱を意識してしまう。ふわふわとした感覚の中、重ねていた唇が離れていくと下腹がひくついた。
「ぁっ、…また……」
 達する直前のような感覚。あ、あ、と短く声を上げながらもだえるアルノシトを見下ろすルートヴィヒの眼に熱が灯る。
「好きなだけ……達っていい。から……」

──もっと。

 ばちゅん、と肌を打ちつけられて、声にならない声が溢れる。大きく体を仰け反らせた時、達したように腰が震える。
「……や、も…わか、ない……ぁ、あ……」
 ろれつが怪しい。自分でも何を言っているのか分からなくなるくらい、頭が真っ白になった。
 ぎし、ぎし、と軋むベッドの音も埋め込まれた熱も。自分の身体が自分のものではないような感覚に眼を閉じる。
「アルノシト」
 名を呼ばれて視線を向けた。ほとんど無意識で腕を伸ばして抱きしめる。
「ル、ト……さ…、……」
 ふらふらと揺れていた足も絡みつかせてしがみつく。しっかりと抱きしめ返してくれる腕の力強さ。
 ──本物のルートヴィヒ。
 その事だけが確か。ぎゅ、と眼を閉じて己を抱く腕に全てを委ねて意識を手放した。
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