恋人の愛は少し……いや、かなり重いです。

アオハル

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日常

改めましての決まり事-2-B-

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 先日のリベンジ──
 と言うわけではないが。今日は酔い潰れることもなく、酒も肉も堪能して店を後にした。衣服に沁みついた肉の香りですら楽しいものに感じるのは、酔っぱらているせいかもしれない。
「は~~~……美味かった……」
 電車内。周囲に人がいないのをいいことに、表情を緩めて呟く。隣にいる佑も同意して頷いた。
「でも、店員さんに覚えられてるとは思わなかった」
 予約して店に行った際。あの時の──と、以前の事を覚えていてくれたのだ。
 無事でよかったと喜んでくれただけでなく、あの時楽しめなかった分まで今日は食べて行ってください、と前回注文したものを値引きまでしてくれたのだ。
「また行かなきゃね」
 距離が近すぎない接客も良かった。はー、ともう一度息を吐き出してから立ち上がる。次が下りる駅だ。
「だなぁ……」
 電車を降りた。マンションへと続く道を歩きながら、洋佑は機嫌良く即興の鼻歌を歌っている。
「……ご機嫌だね、洋佑さん」
 足取りも軽い。その場でくるりと回った後、洋佑はバランスを崩してよろめいた。
 慌てた佑が腕を伸ばして支えてくれる。はは、と微かに苦笑を浮かべた。
「ありがと……調子に乗ったらだめだな」
 制御できない程の量は飲んでいないが、それでも飲酒は飲酒。危ないことはしないようにする、と身体を起こした洋佑の手を佑がそっと握った。
「心配だから」
 指が絡められる。夜だし、人の通りも少ない。
 手を繋いで歩いていても悪目立ちすることもないだろう。

 何より──絡む指が嬉しい。

「……ん」
 一度ぐっと強く握った後、軽く揺らしてから歩き出す。
 時折すれ違う車以外に通る人も物もなく、静かな時間が流れる。
「~~♪」
 気づけばまた、良く分からない自作の鼻歌。それに気づいた佑が肩を揺らして笑った。
「洋佑さん……また歌ってる」
 そんなに楽しい?
 嬉しそうな響きの滲む問いかけに頷いて返す。
「美味い肉と美味い酒……それに好きな人が一緒だからな。機嫌良くもなるよ」
 佑は?
 何気なく尋ねた洋佑の指を佑が握り返した。
「……僕は──洋佑さんが楽しそうにしているのを見るだけで嬉しい……けど。好きだって言われると、もっと嬉しい」
 幸せだ。
 ぽつりとつぶやいた佑の声に洋佑は絡めた指をじゃれつかせる。
 傍から見れば、惚気あっているだけかも知れない。けれど──そんな他愛もない会話が、今はとても心地良かった。
「そっか。二人とも嬉しいなら一番だな」
 子供じみた動きで繋いだ手を揺らすのも、嫌そうな顔をせずに受け入れてくれる。
 そんな調子で歩いていれば、マンションについた。部屋に入ると、流石に酒と焼肉のにおいが鼻につく。
「風呂……入るか」
 佑を誘って一緒に風呂へ。シャワーだけでさっと済ませた後、そのままベッドへと向かう。
「そうだ……洋佑さん、今度家具見に行こう」
「家具?」
 定位置に収まりながら問いかける。するりと回される腕の心地良さについうとうとしてしまう。
「うん……新しいベッドとか。必要でしょ?」
「……ん?寝るのはここでいいんじゃないか……?」
 髪を梳かれて眼を閉じる。
「洋佑さんの部屋も用意しなきゃ──」
 俺の部屋?何のために?
 ぼんやりと浮かぶ疑問を口にする前に意識が落ちる。すぅ、と穏やかな寝息を立て始めた洋佑を見て、佑は静かに頬へと口付けてから眼を閉じた。
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