恋人の愛は少し……いや、かなり重いです。

アオハル

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日常

今まで出来なかったことと、これからは出来ることと-5-C-

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 ばつ、と肌を打つ音が響く。
 つま先立ちするほどに勢いよく押し上げられて、洋佑は悲鳴じみた声を上げた。
「ぅあッ……──、ぁ……ふ」
 壁に縋りつくように凭れかかってしまう。佑が腰を掴んで支えてくれていなければ、その場でずるずると崩れてしまうかも知れない。
「……まだ、きつ…ぃ、ね……」
 舌で少し解しただけの肉壁は強すぎる刺激を受けて、排出しようとする動きで佑の性器を締め付ける。
 待ち望んでいた熱を思うように受け止められず、洋佑は内腿を震わせた。
「アッ、は……!……ぅ、…」
 ばちゅん、と再び奥まで突き上げられて体が浮くような感覚に洋佑は思わず壁に指を立てようと力をこめた。
 かつ、と爪が当たる音に佑が顔の向きを変えて後ろから指を食んでくる。
「……だめ」
 指へと絡みつく舌の熱さ。そんなこと言われても、と恨みがましい眼で見つめると、ちら、と自分を見る佑の眼と視線がぶつかった。
「……洋佑さん、に…怪我はして欲しく、ない、から」
 片方の手が腰から外れる。壁へと押し当てた洋佑の掌の下へと自分の手を差し込むと同時に腰を揺らめかせる。
「あァッ、…」
 反射的に力を込めた指先。先程の冷たい壁と違って、柔らかい肌の感触と温もり。手の甲側から佑の手を握り締めるよう指が絡むと、壁に直接指が触れないよう、佑は自分の指を折り曲げて握りこぶしに似た形へと変えて、壁との間に空間をつくる。
 そのおかげで洋佑の指は壁に当たる事なく、ただ強く佑の手を握り締めるかたちになった。
「……いいこ」
 満足げな吐息交じりの囁き。ふ、と息を吹きかけた後も耳から離れず、ねとりと舌が耳の輪郭を辿り、耳朶まで這わされて行く。
「ぁっ、あ、」
 もう片方の手も同じように洋佑の手の下へと。壁との距離が更になくなり、突き上げられる度に胸の突起が壁との間に挟み込まれて押しつぶされる。
 つま先が浮かび上がりそうな程に深く突き上げられると、限界に近いくらい大きく顎を仰け反らせた。
「あ、んん、……は、ぁん……」
 姿勢の苦しさと快感の大きさとに眼の端に涙が滲む。肌を打つ音、中を掻き混ぜる水音。互いの呼吸音。
 何より──直接繋げた身体の熱さ。中を広げる佑の熱が──
「──、い、……き、もちい……も、と」
 ひくりと佑のものを受け入れた縁が震えた。きゅう、と締め付ける動きに佑の動きが一瞬止まる。
「ようすけさん……ッ……」
 今まで以上に強く。壁に押し付けるような勢いで突き上げられて一瞬つま先が浮き上がった。同時に壁に押しつけられた性器が外からの刺激に堪えていたものを吐き出していく。
「ひぁ……!ぅ、あ…アぁああ……──」
 頭の中が真っ白になる。吐き出した白濁が肌だけでなく、壁や床を汚しながら下へと伝い落ちていく感覚。
 達した直後の震える身体の更に奥を求めるよう、洋佑が達した後も佑は動きを止めない。
「う、ぅぁ……も、無理……っ、……、む、り……」
「ごめ、……もう、ちょっとだけ……」
 ぐ、と腰を押し付けられた。同時に中へと吐き出される熱を感じて、洋佑は体を震わせた。ぐちゅ、と結合部からも溢れるものにもう一度指を強く握りしめる。
 達した後も、佑は腰を揺らすのを止めない。ぐ、ぐ、と吐き出すもの全てを押し込むように何度か腰を押し付けた後で漸く離れていく。
「──は、…ようすけ、さん……」
 壁についた手を持ち上げられると、自然と体が浮く。後ろの佑に凭れかかるようにくたりと身体のバランスを崩すと、佑もその場にずるずると座り込むようにして崩れてしまう。
「…………ごめ、…僕も──ちから、はいらな……くて」
 乱れた呼吸のまま。洋佑の身体を支えながら、佑が申し訳なさそうに呟く。
「…ん、は……だい、じょうぶ…じゃない、けど……だい、じょぶ……」
 ふわふわとした意識が中々はっきりしない。床に崩れたまま、ただ荒い呼吸を繰り返すだけの時間が過ぎていく。
「…………ん。洋佑さん。大丈夫?」
 少し落ち着いたのか、佑が声をかけてくる。大丈夫、と頷いて返すと、ほっと表情を緩めた。
「よかった……シャワー…するから、ちょっと待ってね」
 疲れたような口調と掠れた声。洋佑も手伝おうと気持ちは動くのだが、身体が全く思うように動かない。
 結局、バスチェアに座らされ、身体を流してもらうまで全て佑にしてもらった。
「……もう、大丈夫……ありがと」
 シャワーをとめた佑の手を取り立ち上がる。お互いにふらふらしながらベッドに辿り着くと、ほぼ同時に倒れ込むようにして身体を預けた後、ほぼ同時に顔の向きを変えて視線がぶつかった。
 ふ、とお互いに表情を緩めて体を寄せ合う。
「時間……何時だっけ……」
「夕方まで…、のやつにしたから。少し寝てから出よ」
 そっか、と身体の力を抜いた。と、自分の身体に伸ばされた佑の指を見て、あ、と声を上げる。
「お前、指……」
 手の甲と指に引っ掻いたような跡と、赤くなった肌。何が──と言いかけて、思い出す。
「……俺のせいか。……ごめんな。痛いだろ?」
「ううん。僕は痕がついても困らないから……洋佑さんの指に残らなくてよかった」
 それより、と抱き寄せられて顔を上げる。
「少しは落ち着いた?」
 問われて眼を瞬かせる。そもそも、ここに入る切欠は────
 思い返すと顔が熱くなる。頷きながら自分からも腕を回して顔を伏せた。
「……ありがと」
 返事の代わりに髪を撫でられた。やっぱりこうして佑の体温を感じていると安心して眠くなってしまう。
「……佑」
 名前を呼ばれて髪を撫でる手の動きが止まる。続きを待つ沈黙。
「あの、さ……また、一緒に散歩……行きたい」
「……うん。また、歩こ」
 髪を撫でていた手が背中に回る。いつもの温もりに自然と力が抜けた。
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