恋人の愛は少し……いや、かなり重いです。

アオハル

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日常

逢いたいのメールから始まる「お試し」の一ヶ月-2-A-

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 実は大富豪の息子だった。
 大企業の社長の御曹司だった。
 大穴として石油王の養子だった。

 なんて色々考えた洋佑の予想はどれも外れ。
 正解は子供の頃からの投資で稼いだお金だった。未成年でも投資が出来るのか、と無知の自分を恥じると同時、こんなマンションを一括で購入出来る程儲かるものなのか、と多少の欲が洋佑の中に沸き上がる。
「……僕はたまたま運が良かっただけだから。10万を一ヶ月で100万円に、とかは出来ないよ」
 多分今まで同じような事を何度も聞かれたのだろう。先に釘を刺されて、だよなぁ、と洋佑は肩を落とす。
「ああいうのって、毎日コツコツが基本だよなぁ。俺には向いてないや」
 そういえば以前新聞を読んでいた事を思い出した。情報源は新聞だけではなく、例えば街を歩く人の服装だったり、小物だったりを見て計画を立てるらしい。
 ますます無理だな、と早々に諦めた。
「……じゃぁなんでうちの会社に?」
 素朴な疑問。働かなくても投資の利益だけで生活できるなら、わざわざ会社員になることはないのでは?
「一度くらいは会社で働いて世間の事を勉強した方がいいって」
 両親に言われて、就職したらしい。もっとも、すぐに退職してしまったから、勉強になったかは分からない、と肩を竦めた。
「……あ、でも。漫画やドラマの話だと思っていた嫌がらせが本当にあるんだな、とは思った」
「そういう勉強は出来たらしたくなかったよなぁ」
 思い出して申し訳なさに目を伏せるが、佑はゆっくり首を左右に振った。
「ううん。そういうのも含めて勉強だったと思う。それに……会社に行かなかったら、洋佑さんに出会えなかったし」
 両親にもあの会社にも感謝している。
 なんて控えめに笑った後、佑は表情を改めると真っ直ぐに洋佑を見た。
「そういう訳だから。お金に関しては気にしないで欲しい」
「いや……それはそれとして、だ。管理費?だっけか。そういうのは俺も払わせて欲しい」
 水道代や電気代、ガス代なんかも。
 一緒に生活するなら、負い目や引け目を感じる関係にはしたくない。
 洋佑の話に佑は神妙な顔で頷いた。
「分かった……でも、今月いくら使った、なんて毎回計算して請求するのも大変だから……先月と今月の平均した金額を今後専用の口座に入れてもらう、でいい?」
 確かに毎月計算して今月はいくら──なんて面倒だろう。それでいい、と洋佑も頷く。
 その後、代金引き落とし専用の口座のカードを貰ったり──佑自身はインターネット上で手続きを済ませるから、カードは実質使わないらしい──色々と話し合っていたら、外が暗くなっていた。
「……あ、もうこんな時間か。着替え、取りに行かないと」
 まさかこんな話になると思っていなかったから、生活用品等何も持ってきていない。とりあえずは数日分の着替えは持ってきた方がいいだろう。
 腰を浮かせると佑も立ち上がる。
「僕もいく。荷物……運ぶの手伝うよ」
 ついでに晩御飯も。家で作るか、外で食べるか。どちらでもいい、と言われて少し考える。
「それじゃ今日は俺の家の近くで食べよう。明日から、こっちのマンションの周辺、案内してくれたら嬉しい」
 食べてから着替えを取りに行けば効率もいいだろうし。靴を履きながら振り返る。
「えっと。とりあえず一ヶ月……一緒に暮らしてみて。続けていけそうだったらちゃんと引っ越す、でいいな?」
 もう一度確認。佑はそれでいいと頷いた。佑のことばかり心配していたが、もしかしたら自分の方が佑に我慢できなくなることもあるかもしれない。
 今のマンションの解約はまだしないでおいて、週に一回くらい水回りだけ通しに行けば大丈夫だろう。
「でも、もし。我慢できなくなったら、一ヶ月より前でも言ってね」
「お前も。ちゃんと言えよ?」
 そんなことを話しながら、佑のマンションを後にした。
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