恋人の愛は少し……いや、かなり重いです。

アオハル

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日常

嫉妬-4-C-

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 指の比ではない圧迫感に声も出ない。顔を埋めた枕を押しつぶすくらいに強く押し付けてしまい、息苦しさに顔を横へと向けた。
「ハッ、……は……」
 尻肉が更に左右に開かされる。まだ入ってない──反射的に逃げ出そうとして腰が引けた。
「……辛い?」
 心配そうな声をかけられて動きが止まる。のろのろと姿勢を戻すと、大きく息を吐いた。
「大丈夫……、……ちょっと、怖いけど……」
 怖いことは正直に答えるが、辛くはない。こうして佑を受け入れることが出来ないことは辛いのだが。
 もう一度、と改めて押し当てられた熱。指を挿入した時を思い出して、深呼吸を繰り返す。
 ゆっくりとした呼吸に合わせて、ぐ、と腰が押し付けられた。
「────ッ──、」
 広がった後孔を更に開かせるよう、佑の手に力が籠る。
 思わず眼を閉じて枕を噛んだ。ぶちゅぶちゅと音を立てて潤滑剤が押し出され、内腿を伝いシーツへと落ちていく。
 圧迫感と同時に感じる熱。自分の中に佑が入って──
「ぁ……、は……」
 噛んでいた枕を開放した。は、は、と短い呼吸を繰り返し、何度も枕を握っては離し、を繰り返す。
「……後、もうちょっと……だけ……」
 ぬちりと音が鳴る。もう無理だと思ったと同時に、中を割り開かされる感覚。きゅう、と下腹が強く締まる。尻肉を掴んでいた佑の指が離れ、伸びきった皺を撫でる。
「ひぁ、っ、……あ、…た、すく……?」
 不意打ちに高く声を上げてしまう。中に埋め込まれた熱を感じるものの、先程よりは圧迫感が幾分和らいでいるように思える。
「……一番、きついとこ……入ったから──、……」
 ふー、と佑が息を吐くのを感じた。その動きが僅かに身体を揺らし、刺激になって腰が震えてしまう。
「……、ほ、んとうに……俺のなか、はいった?」
「うん……洋佑さんの中、入った」
 ず、と少しだけ腰を押し上げられた。先程指で掻かれた肉壁に、指とは違う刺激を受けて、声が上がった。快感というよりは困惑の方が大きい。

 本当に──自分の中に?

「ん、……すごく、きつい……けど」
 ちゃんと入ってる。
 どこか浮ついたような佑の口調。改めて尻を掴まれ、腰を押し付けられると、ぐりぐりと中を抉られるような感覚。
「うぁ……、」
 閉じた内壁を無理矢理開かされていく。締め付けの強さに、時々動きを止めたりしながらも、佑は少しずつ奥へ奥へと入り込んでくる。
 呼吸をする度に腹の中に埋められたものを感じる。ず、ず、と少しずつその位置が移動していくのを感じながら、洋佑は何もできず、ただ深呼吸を繰り返すだけだった。
 やがて、ぱつん、と肌が触れ合った。自分の尻に佑の肌が当たっている。
「……全部…入った、よ。洋佑さん」
 分かる?と下腹を撫でられて全身が震える。腹の中、確かにある熱。指で薄い肌を刺激されて、びく、と体が跳ねた。
「……は、ぁ……」
 漸く出来た──じわりと眼の端に滲むのは、嬉しさからか苦しさからか。自分でも分からなかったが、とにかく、今、佑が自分の中にいるのだ。
 佑が呼吸をする度に中で脈打つ熱。正直、少しでも身動ぎをされると圧迫感で顔を歪めてしまうのだが、それでも漸くに受け入れることが出来た気持ちの方が大きい。
「……、……ちょっとでも動いたら、すぐいっちゃいそう」
 佑の呟きに眼を瞬かせる。後ろを見ようと身じろぐが、上手く動けず横を向いただけにとどまる。
「ん、……抜くね」
 え、と問いかける間もなく。押し込まれた時と同じ慎重さでゆっくりと引き抜かれて行く。
 抜いて欲しくない、と思う心と裏腹に割り開かされていた肉壁が閉じていく何とも言えぬ感覚に内腿を震わせた。
「…ッ、……ふぁ……」
 ずる、と引き抜かれた熱。喪失感に声を上げるが、同時に安堵の感情も沸き起こる。一度離れた熱が再び押し当てられて、反射的に腰が跳ねる。
「……洋佑さんのここ……すごい、ひくひくしてる」
 先程まで自分の中に入っていた熱を感じて、後孔が収縮を繰り返している。もう一度と望むのか、もう嫌だと拒否しているのか、自分でも分からなくて、ただ眼を瞬かせる。
「さっき……言ったでしょ。10日もある、って」
 改めて手を尻に置かれる。尻肉の間に佑の性器を挟むようにして、姿勢を整えてから緩々と腰が動き出す。
 こちらの行為には覚えがある。というか、昨日も──
「ッ、ぁ……あ、……」
 尻の間を行き来する熱。伝わる脈と与えられる刺激に声を上げて自分からも腰を揺らしてしまう。ぎ、ぎ、と規則正しく軋むベッドの音に混じって、佑が小さく笑った。
「…こっち、の方が……洋佑さん、気持ちよさそう……」

 今日はこっちにしとこう。

 なんて優しく諭すように言われると声だけで反応してしまいそうになる。いや、実際しているのかも知れない。
 我知らず腰の位置が低くなり、シーツに己の性器の先端を擦り付けるように腰を揺らめかせてしまう。
 自分と違う動きの刺激が気持ちいいのか、佑の唇からも吐息が零れた。ぐ、と尻肉を掴む手に力が籠ると同時、背中に感じる熱。
 ぽた、ぽた、と背中を通ってシーツを伝い落ちていくそれに緩み切った表情を晒した。
「……は、……」
 びく、と小さく体を震わせた佑が静かに身体を引いていく。背中に吐き出したものを塗り広げるよう触れた指先が、つ、と背筋を這い上る。
「んんっ、……」
「うん……やっぱり、とろとろになった洋佑さんが好き」
 背筋を這い上った指が胸の方へと回る。抱き起されると、佑の胸に背を預けるような恰好に変えられて、抱き締め直される。
「僕のを欲しがってくれる洋佑さんも大好きだから安心して」
「~~~~……おま、え……な、そういうとこ、だぞ」
 行為の余韻だけでない熱に肌が染まる。ごめん、と笑み交じりの詫びの言葉に目を伏せるが、本気で怒っている訳ではないから、肌に触れる動きを拒否することはない。
「……ちゃんと入るから、ね。明日も明後日もあるんだし。今日は気持ちいいまま寝よ?」
 自分勝手なようで、自分の不安を見抜いて安心させようとしてくれる。その言葉に素直に甘えて頷いた。
「……なぁ佑」
「うん?」
 汚れた身体を簡単に拭った後、横になる。少し間を置いた後、目を伏せる。
「その……さっきの本当?」
 突然の質問過ぎて答えられないかも知れない。分からなければ分からなくていい。
 そう思っての問いかけだったのだが、佑はゆっくり頷いた。
「もちろん」
 するりと伸びた腕。腰を抱いた手がそのまま下へと滑り、窄まった場所へと指先が触れる。
「ぁ……」
「明日もここ。ゆっくり慣らそうね」
 ほんの少しだけ指先を埋めてすぐに抜いた。それだけで身体の奥が熱くなるような感覚。佑の指はそれ以上の刺激は与えず、いつもの位置へと戻っていく。
「お休み」
 眼を閉じる。その顔を暫く見つめた後、おずおずと胸に額を押し付けた。
「……お休み」
 自分も目を閉じる。すぐにうとうとと眠気が襲ってくる。
 明日はもう少しうまく出来たらいい。そう思いながら眠りについた。
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