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出会い編
切欠は些細な事から-5-C-
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は、と息が上がる。肌を滑る唇の動きに体が仰け反れば、ベッドが軋んで嫌な音を立てる。
「ん、……、ゆ、うき……、ちょっと…まって」
途切れ途切れの懇願に佑は動きを止める。荒い呼吸を繰り返す洋佑の髪を優しく撫でた。
「……洋佑さん、苦しい?」
苦しいかどうか、で答えるならば「違う」になる。だからゆっくり首を左右に振った。
「良かった……僕、こういうの慣れてないから……」
ほっとしたように髪を撫で続ける。
ソファで繰り返し口づけられた後、ベッドへと運ばれた。羽織っていたバスローブは完全に前が開かれ、下着も脱がされて隠すものは何もない。
丁寧な愛撫のせいか、緩く熱を帯びているのを知られていることも羞恥に拍車をかける。
あの後、混乱と羞恥とで固まっている洋佑を横に、佑は露になった肌へと唇を寄せて丁寧に舌を這わせてきた。
恐怖や嫌悪感はなかったが、ただただ恥ずかしい。
首筋から鎖骨、胸。埋もれたままの突起を掘り起こすように舌先で突かれると、背筋を這い上るものに体をくねらせて声を上げる。
快感なのか、それとも不快感か。自分でも分からぬまま、佑のなすがままになってしまっていた。
「……ん……」
ベッドが軋んだ。佑の手が躊躇うように洋佑の性器へと伸ばされた。不意の刺激に大きく体が跳ねてしまう。
「……っ、ぁ……」
まだ余裕のある表皮の中にある芯を包むように指が絡む。遠慮がちな刺激にもどかしさを感じて体を揺らすと、意図を察したのか、指がしっかりと絡みついてきた。
直接の刺激にすぐに熱を帯び、脈を浮かせた先端へと小さな雫が滲む。佑の指先がそれを掬いとり、擦り付けられると、くちゅりと小さな水音。
自分の指が確実に快感を与えていると実感出来たのか、性器へと絡みついた指の動きが大胆になっていく。どんどんと溢れてくる先走りに水音が大きくなり、溜まらず体をくねらせる。
「……洋佑さん…、気持ちよさそう……」
嬉しそうな佑の声。同性だからか、「いい」と感じる場所を的確に探り当ててくる。ぐちゅぐちゅと音を大きくしながら、激しく扱かれ、ただ声を上げて体を揺らす。
「あ、……ぁ、あ…ッ、…も、でる、……から……」
吐き出すものに白いものが混ざり始めた。水音と触れる手から得る感触の変化に佑は動きを止めない。
「……気持ちよくなって……いっぱい出して……、……」
ぐ、と弱い個所を強く刺激され、堪え切れず手の中に溜めていた欲を吐き出した。佑の手へと自分の性器を押し付けるように腰を突き上げてしまう。
「ア、っ、……アッ……!」
びくびくと震える身体。取り繕う余裕もなく声を上げて腰を揺らしながら、性器を扱く佑の手から溢れる程に欲を吐き出してしまった。
くたりとベッドに体を沈めても、熱が引かない。羞恥からか、肉欲の熱か、判断が出来ずに視線を彷徨わせる。
はー、はー、と荒い呼吸を繰り返す口端へと佑は柔らかく口づけてくる。
「……ど、しよ…洋佑さん……僕、……」
興奮しているのを隠す余裕もないらしい。震える手が洋佑の太腿を押し上げ、大きく足を開かせると、ぐりぐりと腰を押し付けてくる。
下着越しの濡れと熱を感じる程に昂ったものを陰嚢の下へと押し付けられると、下腹がひくつく。
自慰にも似た行為で熱を押し付けながらも、無理に先へ進めようとはしない。達したばかりの洋佑の身体を気遣っての行為だと気づくと、太腿を抑える佑の手へと自分の指を伸ばす。
「……い、いいよ…だいじょうぶ、だから……」
びくり、と佑の指が震えるのが伝わる。驚いたような泣き出しそうな。複雑な表情のままこちらを覗き込んできた。
「……だ、め……だって、キス…じゃない、から」
今更?
妙なところで生真面目な佑の言葉に思わず笑みが浮かぶ。笑ったつもりだが、不意に腰を摺り寄せられて笑みが喘ぎに変わる。
「んぁ……、ふ……た、すく」
結城ではなく。名前を呼ぶと、佑が目を見開いた。
「……佑がしたい、ならいい」
「あ、…え……、……でも、でも……」
相当びっくりしたのだろう。肉欲よりも驚きの方が勝り、狼狽えている佑の腕を引っ張ると、自分の胸の中へと抱きしめるようにして引き寄せた。
「……、正直、…俺は、まだ……よく……わからない、けど。佑が……俺のこと、気遣ってくれているのはわかった、し」
震えている背中をゆっくりと撫でる。時折、軽く叩いたりして落ち着かせながら言葉を続ける。
「……ずるい、言い方……かも知れないけど。……上手く、できなくても。また…飯とか…食ったりしたい、と思ってるからさ」
だから大丈夫。
そうやってなだめていると、恐る恐る佑が抱きしめ返してきた。
一度強く抱きしめた後、腕を緩めて顔を上げる。
「……洋佑さん。…僕……やっぱり、今はだめ…です」
シーツへとついた手が握りしめられる。悲痛な色はなく、どこか晴れ晴れとしたようにも見える表情に、洋佑はただじっと見つめた。
「今……は。やっぱり、僕の一方通行だから……、…ちゃんと。好きになってもらってから…したい、です」
だから。また一緒にご飯を食べて欲しい。
ささやか過ぎる願い事。いいよ、と頷くと、佑は本当に嬉しそうに笑った。
「………あ、…あの、でも。洋佑さん、って呼んでもいいですか?」
いつの間にか敬語に戻ってしまっている。遠慮がちな口調に、いいよ、と頷いて返した。
「……」
熱が引いたのか、すっかりいつも通りの佑に戻っているようだ。おろおろと視線を彷徨わせている佑を避けて体を起こす。
「……俺ももう一度シャワー浴びてくるから」
ベッドの隅に追いやられていた下着を手にするとバスルームへと。後ろでばたばたとトイレの方へ向かう足音が聞こえて微かに笑う。
ぐちゃぐちゃになったバスローブを脱いでシャワーのハンドルを捻り、湯温を調節しながら、自分の胸や腹に残る痕跡を指で辿る。
────……もし。あのまま。佑が止めなかったら──
自分は彼に抱かれていたのだろうか。もしかしたら、怖くなって逃げ出したかも知れないが、その先のことがどうしても思い描けなくて眉を寄せる。
先程、散々に嬲られていた乳首へと指を伸ばして触れてみる。気持ちよくも悪くもない。慣れない違和感のようなものはあるのだが。
「…………」
嫌悪感がなかったのは本当のこと。だが、それがすぐに恋愛感情──になると思う程、夢見がちな人生を送ってきたわけではなかった。
恋人と呼べる存在が長くいなかったから、久し振りに性欲が発散出来るかもしれない、なんて打算があったのかも知れない。
いずれにしても──
「ちゃんと……考えないと」
断るか受け入れるか──の前に。そういう対象として佑のことを見られるのか、という事から考えなければ。
シャワーを終えて部屋に戻ると、佑が先に戻っていた。
「あ、あの。ベッド……洋佑さんが使ってください」
先程まで行為に及んでいたベッドとは逆の方を指し示す。汚れた方は自分が使うから、とかなんとかごにょごにょ言っていたが、いいから、と腕を掴む。
「広いから、端っこ同士で寝れば大丈夫だろ。……ほら」
言ってからベッドの中へ潜り込んだ。色々あったせいか、気が緩んだせいか、急に眠気を覚えてうとうととしてしまう。
「……朝…落ちてても恨みっこなしな……」
お休み、と言い終わると寝息を立て始める。
一人残された佑はベッドを交互に見た後、洋佑の身体をそっと中央へと寄せて落ちないように場所を変えた。
「……」
一緒の部屋に居るだけで多分眠れそうにもないのに。同じベッドで、なんて身が持たない。
こわごわと指を伸ばすと半乾きの髪にそっと触れた。
何度か唇を開いて閉じて──を繰り返した後、一言だけ。
「………おやすみなさい」
言いたいことも告げたい思いも。眠っている時ではなくて、起きている時に伝えなければ意味がない。
だから──朝起きたら。きちんとやり直そう。
佑はベッドから離れてソファの方へと移動する。今日は眠れないかも知れない。
背凭れに体重を預け眼を閉じた。洋佑に対して何から伝えようか──なんて考えながら。
「ん、……、ゆ、うき……、ちょっと…まって」
途切れ途切れの懇願に佑は動きを止める。荒い呼吸を繰り返す洋佑の髪を優しく撫でた。
「……洋佑さん、苦しい?」
苦しいかどうか、で答えるならば「違う」になる。だからゆっくり首を左右に振った。
「良かった……僕、こういうの慣れてないから……」
ほっとしたように髪を撫で続ける。
ソファで繰り返し口づけられた後、ベッドへと運ばれた。羽織っていたバスローブは完全に前が開かれ、下着も脱がされて隠すものは何もない。
丁寧な愛撫のせいか、緩く熱を帯びているのを知られていることも羞恥に拍車をかける。
あの後、混乱と羞恥とで固まっている洋佑を横に、佑は露になった肌へと唇を寄せて丁寧に舌を這わせてきた。
恐怖や嫌悪感はなかったが、ただただ恥ずかしい。
首筋から鎖骨、胸。埋もれたままの突起を掘り起こすように舌先で突かれると、背筋を這い上るものに体をくねらせて声を上げる。
快感なのか、それとも不快感か。自分でも分からぬまま、佑のなすがままになってしまっていた。
「……ん……」
ベッドが軋んだ。佑の手が躊躇うように洋佑の性器へと伸ばされた。不意の刺激に大きく体が跳ねてしまう。
「……っ、ぁ……」
まだ余裕のある表皮の中にある芯を包むように指が絡む。遠慮がちな刺激にもどかしさを感じて体を揺らすと、意図を察したのか、指がしっかりと絡みついてきた。
直接の刺激にすぐに熱を帯び、脈を浮かせた先端へと小さな雫が滲む。佑の指先がそれを掬いとり、擦り付けられると、くちゅりと小さな水音。
自分の指が確実に快感を与えていると実感出来たのか、性器へと絡みついた指の動きが大胆になっていく。どんどんと溢れてくる先走りに水音が大きくなり、溜まらず体をくねらせる。
「……洋佑さん…、気持ちよさそう……」
嬉しそうな佑の声。同性だからか、「いい」と感じる場所を的確に探り当ててくる。ぐちゅぐちゅと音を大きくしながら、激しく扱かれ、ただ声を上げて体を揺らす。
「あ、……ぁ、あ…ッ、…も、でる、……から……」
吐き出すものに白いものが混ざり始めた。水音と触れる手から得る感触の変化に佑は動きを止めない。
「……気持ちよくなって……いっぱい出して……、……」
ぐ、と弱い個所を強く刺激され、堪え切れず手の中に溜めていた欲を吐き出した。佑の手へと自分の性器を押し付けるように腰を突き上げてしまう。
「ア、っ、……アッ……!」
びくびくと震える身体。取り繕う余裕もなく声を上げて腰を揺らしながら、性器を扱く佑の手から溢れる程に欲を吐き出してしまった。
くたりとベッドに体を沈めても、熱が引かない。羞恥からか、肉欲の熱か、判断が出来ずに視線を彷徨わせる。
はー、はー、と荒い呼吸を繰り返す口端へと佑は柔らかく口づけてくる。
「……ど、しよ…洋佑さん……僕、……」
興奮しているのを隠す余裕もないらしい。震える手が洋佑の太腿を押し上げ、大きく足を開かせると、ぐりぐりと腰を押し付けてくる。
下着越しの濡れと熱を感じる程に昂ったものを陰嚢の下へと押し付けられると、下腹がひくつく。
自慰にも似た行為で熱を押し付けながらも、無理に先へ進めようとはしない。達したばかりの洋佑の身体を気遣っての行為だと気づくと、太腿を抑える佑の手へと自分の指を伸ばす。
「……い、いいよ…だいじょうぶ、だから……」
びくり、と佑の指が震えるのが伝わる。驚いたような泣き出しそうな。複雑な表情のままこちらを覗き込んできた。
「……だ、め……だって、キス…じゃない、から」
今更?
妙なところで生真面目な佑の言葉に思わず笑みが浮かぶ。笑ったつもりだが、不意に腰を摺り寄せられて笑みが喘ぎに変わる。
「んぁ……、ふ……た、すく」
結城ではなく。名前を呼ぶと、佑が目を見開いた。
「……佑がしたい、ならいい」
「あ、…え……、……でも、でも……」
相当びっくりしたのだろう。肉欲よりも驚きの方が勝り、狼狽えている佑の腕を引っ張ると、自分の胸の中へと抱きしめるようにして引き寄せた。
「……、正直、…俺は、まだ……よく……わからない、けど。佑が……俺のこと、気遣ってくれているのはわかった、し」
震えている背中をゆっくりと撫でる。時折、軽く叩いたりして落ち着かせながら言葉を続ける。
「……ずるい、言い方……かも知れないけど。……上手く、できなくても。また…飯とか…食ったりしたい、と思ってるからさ」
だから大丈夫。
そうやってなだめていると、恐る恐る佑が抱きしめ返してきた。
一度強く抱きしめた後、腕を緩めて顔を上げる。
「……洋佑さん。…僕……やっぱり、今はだめ…です」
シーツへとついた手が握りしめられる。悲痛な色はなく、どこか晴れ晴れとしたようにも見える表情に、洋佑はただじっと見つめた。
「今……は。やっぱり、僕の一方通行だから……、…ちゃんと。好きになってもらってから…したい、です」
だから。また一緒にご飯を食べて欲しい。
ささやか過ぎる願い事。いいよ、と頷くと、佑は本当に嬉しそうに笑った。
「………あ、…あの、でも。洋佑さん、って呼んでもいいですか?」
いつの間にか敬語に戻ってしまっている。遠慮がちな口調に、いいよ、と頷いて返した。
「……」
熱が引いたのか、すっかりいつも通りの佑に戻っているようだ。おろおろと視線を彷徨わせている佑を避けて体を起こす。
「……俺ももう一度シャワー浴びてくるから」
ベッドの隅に追いやられていた下着を手にするとバスルームへと。後ろでばたばたとトイレの方へ向かう足音が聞こえて微かに笑う。
ぐちゃぐちゃになったバスローブを脱いでシャワーのハンドルを捻り、湯温を調節しながら、自分の胸や腹に残る痕跡を指で辿る。
────……もし。あのまま。佑が止めなかったら──
自分は彼に抱かれていたのだろうか。もしかしたら、怖くなって逃げ出したかも知れないが、その先のことがどうしても思い描けなくて眉を寄せる。
先程、散々に嬲られていた乳首へと指を伸ばして触れてみる。気持ちよくも悪くもない。慣れない違和感のようなものはあるのだが。
「…………」
嫌悪感がなかったのは本当のこと。だが、それがすぐに恋愛感情──になると思う程、夢見がちな人生を送ってきたわけではなかった。
恋人と呼べる存在が長くいなかったから、久し振りに性欲が発散出来るかもしれない、なんて打算があったのかも知れない。
いずれにしても──
「ちゃんと……考えないと」
断るか受け入れるか──の前に。そういう対象として佑のことを見られるのか、という事から考えなければ。
シャワーを終えて部屋に戻ると、佑が先に戻っていた。
「あ、あの。ベッド……洋佑さんが使ってください」
先程まで行為に及んでいたベッドとは逆の方を指し示す。汚れた方は自分が使うから、とかなんとかごにょごにょ言っていたが、いいから、と腕を掴む。
「広いから、端っこ同士で寝れば大丈夫だろ。……ほら」
言ってからベッドの中へ潜り込んだ。色々あったせいか、気が緩んだせいか、急に眠気を覚えてうとうととしてしまう。
「……朝…落ちてても恨みっこなしな……」
お休み、と言い終わると寝息を立て始める。
一人残された佑はベッドを交互に見た後、洋佑の身体をそっと中央へと寄せて落ちないように場所を変えた。
「……」
一緒の部屋に居るだけで多分眠れそうにもないのに。同じベッドで、なんて身が持たない。
こわごわと指を伸ばすと半乾きの髪にそっと触れた。
何度か唇を開いて閉じて──を繰り返した後、一言だけ。
「………おやすみなさい」
言いたいことも告げたい思いも。眠っている時ではなくて、起きている時に伝えなければ意味がない。
だから──朝起きたら。きちんとやり直そう。
佑はベッドから離れてソファの方へと移動する。今日は眠れないかも知れない。
背凭れに体重を預け眼を閉じた。洋佑に対して何から伝えようか──なんて考えながら。
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