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3、パンをくわえて走っているフローラを見たとき、あなたはどうするの?
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学園に入学する一週間前、アマンダ様は私の部屋を訪れた。
ソファに座ってふんぞり返るアマンダ様は、「テストをするわよ!」と言って私の令嬢としての振る舞いをチェックして、及第点をくれた。
そして、乙女ゲームの主要人物や展開について教えてくれた。
姿絵付きなのが親切だ。
「まず、第一王子パーシヴァル殿下は、御年17歳で、生徒会長様。博愛主義者で女性に優しい紳士……と見せかけて、女性嫌い。王子という立場もあって警戒心が強く、本音を誰にも見せないタイプの腹黒ニコニコマンよ!」
「は、腹黒ニコニコマン……」
「自分の美貌を自覚していて、幼少期から女性にちやほやされまくってきて襲われそうになったりもしたせいで、外見にうっとりする女性への嫌悪が強いの」
姿絵を見ると、白金の髪にアクアマリンの瞳をしていて、鼻筋がすっと通った顔立ちは優しげだ。
男性なのにどこか女性的な優美さのある、綺麗な王子様だ。
「美形の殿方も大変なのですね」
「そうね」
アマンダ様は、ヒロインの姿絵を見せてくれた。
ピンクの髪にオレンジの目をしたヒロインは、……可愛い!
「ヒロインのフローラ・マニュエス男爵令嬢は、平民出身。二年前に男爵家の養子になったの。わたくしたちと一緒に入学する新入生よ」
私とは養子という境遇が同じだ。ちょっと親近感が湧くかも?
「フローラさんは貴族令嬢らしくない自由な振る舞いをするので、品行方正な貴族たちに眉を顰められるわ。でも、一緒になって眉を顰めていると悪役になるから距離を取るのがいいわね」
アマンダ様は「一応、他の攻略キャラも紹介しておくわね」と追加で数人の男性の姿絵とプロフィールを教えてくれて、自分が身に着けていたクリスタルのペンダントを外し、私の首にさげてくれた。
「あなたはお兄様にも気に入られたし、短期間でぐっと令嬢らしくなったわ。お父様やお母様も、ノアとあなたを我が家の一員だと認めてくださってるし」
「そうなのですか?」
「考えてみれば、エリスは公爵家の名を背負っているのだから、悪役にならないのが一番よね。断罪されることになったら、家の名誉も落ちるもの」
アマンダ様はツンとした声で言った。
その眼差しに心配するような光があるので、私は眼を瞬かせた。
「もしかして、私が不幸にならない方がいいって思ってくださっているのですか?」
「そうよ……家族だもの?」
アマンダ様は照れたように目を伏せた。
頬を赤らめたその表情に、グッとくる。
「わ、私を家族だと思ってくださるのですか!」
「養子になって同じ屋敷で生活しているのだもの。思うとかではなくて、ただの事実でしかないわ」
アマンダ様はそう言って、話を変えるように問題を出した。
「ふん、この話はもういいでしょう。さあ、次は実戦に向けた予行練習。いくわよエリスっ! 第一問。パンをくわえて走っているフローラを見たとき、あなたはどうするの?」
「関わらないように距離を取ります」
「第二問! パーシヴァル殿下が格好つけポーズをしてるわよ!」
「急いで目を逸らして、その場を離れます」
アマンダ様が私を家族扱いしてくれて、不幸にならない方がいいと仰ってくださったので、私は嬉しくなって令嬢教育を頑張った。
――そして、入学の日がやってきた。
ソファに座ってふんぞり返るアマンダ様は、「テストをするわよ!」と言って私の令嬢としての振る舞いをチェックして、及第点をくれた。
そして、乙女ゲームの主要人物や展開について教えてくれた。
姿絵付きなのが親切だ。
「まず、第一王子パーシヴァル殿下は、御年17歳で、生徒会長様。博愛主義者で女性に優しい紳士……と見せかけて、女性嫌い。王子という立場もあって警戒心が強く、本音を誰にも見せないタイプの腹黒ニコニコマンよ!」
「は、腹黒ニコニコマン……」
「自分の美貌を自覚していて、幼少期から女性にちやほやされまくってきて襲われそうになったりもしたせいで、外見にうっとりする女性への嫌悪が強いの」
姿絵を見ると、白金の髪にアクアマリンの瞳をしていて、鼻筋がすっと通った顔立ちは優しげだ。
男性なのにどこか女性的な優美さのある、綺麗な王子様だ。
「美形の殿方も大変なのですね」
「そうね」
アマンダ様は、ヒロインの姿絵を見せてくれた。
ピンクの髪にオレンジの目をしたヒロインは、……可愛い!
「ヒロインのフローラ・マニュエス男爵令嬢は、平民出身。二年前に男爵家の養子になったの。わたくしたちと一緒に入学する新入生よ」
私とは養子という境遇が同じだ。ちょっと親近感が湧くかも?
「フローラさんは貴族令嬢らしくない自由な振る舞いをするので、品行方正な貴族たちに眉を顰められるわ。でも、一緒になって眉を顰めていると悪役になるから距離を取るのがいいわね」
アマンダ様は「一応、他の攻略キャラも紹介しておくわね」と追加で数人の男性の姿絵とプロフィールを教えてくれて、自分が身に着けていたクリスタルのペンダントを外し、私の首にさげてくれた。
「あなたはお兄様にも気に入られたし、短期間でぐっと令嬢らしくなったわ。お父様やお母様も、ノアとあなたを我が家の一員だと認めてくださってるし」
「そうなのですか?」
「考えてみれば、エリスは公爵家の名を背負っているのだから、悪役にならないのが一番よね。断罪されることになったら、家の名誉も落ちるもの」
アマンダ様はツンとした声で言った。
その眼差しに心配するような光があるので、私は眼を瞬かせた。
「もしかして、私が不幸にならない方がいいって思ってくださっているのですか?」
「そうよ……家族だもの?」
アマンダ様は照れたように目を伏せた。
頬を赤らめたその表情に、グッとくる。
「わ、私を家族だと思ってくださるのですか!」
「養子になって同じ屋敷で生活しているのだもの。思うとかではなくて、ただの事実でしかないわ」
アマンダ様はそう言って、話を変えるように問題を出した。
「ふん、この話はもういいでしょう。さあ、次は実戦に向けた予行練習。いくわよエリスっ! 第一問。パンをくわえて走っているフローラを見たとき、あなたはどうするの?」
「関わらないように距離を取ります」
「第二問! パーシヴァル殿下が格好つけポーズをしてるわよ!」
「急いで目を逸らして、その場を離れます」
アマンダ様が私を家族扱いしてくれて、不幸にならない方がいいと仰ってくださったので、私は嬉しくなって令嬢教育を頑張った。
――そして、入学の日がやってきた。
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