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おとうさまとおかあさまが、だいすき!
しおりを挟む庭園の長椅子に座り、あたたかな日差しの中で夫と一緒に絵本をひろげる。交代で読むのは、カルナスが大好きな物語だ。
「魔法使いがいいました。王子様、お母様との思い出の花の香水に、魔法をかけましょう。この香水をお母様にかけてごらんなさい」
慣れた様子で絵本を読むハロルドの声は、優しかった。
(思い出の花の香水……)
そういえば、前世の記憶が戻った日、カルナスは香水を突然かけてきた。
思えばあの香りは、エレオノーラとハロルドの思い出の花、虹色の国花メロロディアの香りではなかったか。
「魔法の香水は、奇跡をおこしてくれました。お母様の呪いは……解けたのです」
カルナスが元気いっぱいに頷いて、幸せそうな顔をする。
「ああ……わたくしの可愛い王子。あなたのおかげで、目が覚めました。いままで……」
母のセリフを読んで、声が詰まる。
まるで私のよう。カルナスのよう。
こみあげてくる熱い想いに、目が潤む。
「エレオノーラ」
「おかあさま」
大切な家族が愛情を感じさせる声で私を呼んで、心配してくれる。
私は涙をこらえて微笑んだ。
「今まで、ごめんなさい。……愛しているわ」
穏やかな家族の時間が過ぎていく。
ページをめくる指先が触れて、二人揃って頬を染めたり目をそらしたりする国王夫妻と、そんな父と母を嬉しそうに見る王子の姿は、この国の幸せの象徴として臣下の間で嬉しそうに語られることになる。
「ぼく、おとうさまとおかあさまが、だいすき!」
王と王妃に愛されて、可愛い王子は元気いっぱい!
――Happy End!
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