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3章、メイドは死にました
73、その長い人生に、終幕を
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妹、ウォテアの記憶はぼんやりとしたものからハッキリしたものまで、たくさんある。
お母さんのお腹が大きくなって、耳をあててみたり、撫でてみたこと。
話しかけてみたこと。
産まれたばかりの赤ちゃんをおそるおそる覗き込んで、指に触れたこと。
指を握られた瞬間。心臓がどきんとして、指と一緒に心が掴まれた気がしたこと。
『マリン。お姉様になったのよ』
自分がその瞬間に「お姉様」という生き物になったのを、覚えている。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
火属性の魔力が渦巻いて、海水が減っていく。陸地に近い場所から順に水で覆われていた海底の地面が見えるようになっていく。
『おお、これは――まさに勇者と聖女の奇跡である……』
ファイアドラゴンは、大きく翼を上下させ、喜びの咆哮をとどろかせた。
【好奇心が満たされました】
「そう、それはよかった」
【お城は、すぐ近くにありますよ】
「今行くわ」
背中から箒に乗って飛び出し、海面すれすれを観察するように飛翔する私は、魔女の声に導かれるように海に入った。
魔女が行使していると思しき風の魔法が、私の周囲に空気の層を作ってくれる。
海の中は大きく全体がうねって揺れている感じがして、油断すると存在も何もかも飲み込まれてしまいそうだった。
上の方から太陽の光が差し込んでいて、下の方は得体の知れない暗闇が広がっている。
下へ、下へと進んでいくと、やがて大きな空気の層に包まれたお城があった。
尖塔が多い西洋建築のお城の地面に降り立つと、魔女の声がした。
【お姉様。お城の中にいる人たちは、解放してあげましょう】
魔女は何を考えているのだろう。
首をかしげる私の肩にいる耳長猫のルビィが愛らしく頬を寄せてくる。
「きゅう」
――可愛い。
「可愛いは正義とは、よく言ったものだわ」
ルビィを撫でているだけで、緊張が少し和らいだ。
「ありがと、ルビィーー、ん?」
感謝を告げた私は、無機質な城の通路にゆらゆらとした幻影が浮かぶのに気づいた。
「きゅ!」
「ルビィが見せてる? ……そんなことできる……? あれ?」
幻影には、マギライトお兄様が映っていた。
彼がパーニス殿下になり、魔王を討伐する映像が、まるで映画のように映された。
「きゅう。きゅう」
「……これは、なに? あ、お父様」
幻影は、水没期のマリンのお父様を映した。
水没期のアルワースを映し出した。
ウォテアを映し出した。
そして、彼らの戦いとその結果までを私に教えてくれた。
「……きゅい」
お父様の魂が転生川に流れていく。そこでお父様は、お母様に出会っていた。
死後の魂の状態で両親は川を流れながら夫婦喧嘩をしていた。
お父様は最終的に反省したようだった。
そして、2人は薄紅色と薄青色の輝きをまといながら転生していく――
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
「……あ」
幻影を鑑賞しながら歩いていた私は、気づけば大きな扉の前にいた。
ルビィがモフモフの尻尾を振り、全身をふんわりと薄紅色に光らせて、その姿を変えていく。
そして、私の手に長い剣の形で収まった。
薔薇をモチーフにした優美な装飾が凝らされていて、剣身が淡い薄紅色の光を帯びている、幻想的な剣だ。
「メルヘンなような、物騒なような」
扉を開けると、私が被っているのとよく似たデザインの魔女帽子をかぶった魔女がいた。
毛先が赤くて、根本に向けて色彩が抜けていくグラデーションの長い髪。
雪のように白い肌。
目元に泣きぼくろがあって、色っぽい印象。
唇は厚めで、艶のある紅色。
目が合うと、嬉しそうに微笑む。変なメイドで、可愛い妹だ。
「アンナ。ウォテア。気付いてあげられなくてごめんなさい」
「本当ですよ。アンナは悪いメイドですって、あんなに何度も言ってたのに」
そういえば、言っていた。
思い出して私は笑った。
「私、謎解きとかはあんまり得意じゃないの」
「謎も何も。答えを言ってたじゃないですか?」
「わからないわよ」
ウォテアは目をくりくりとさせて、私に近付いてきた。
敵意も何も感じさせない、静謐で親しみの感じられる気配だ。
でも、ちょっとひんやりと乾いていて、疲労の香りがする。
「マギライトお兄様は、パーニス殿下ですよ。お姉様」
「ルビィがさっき見せてくれたわ」
「ルビィ? ああ、あの使い魔が……」
妹は使い魔の正体を知らないのだ。私は少し迷ってから、耳打ちした。
「あのね、ウォテア。あなたが知らないことを教えてあげるね」
「なに、なあに?」
姉妹の温度感で、妹は私の背に両腕をまわしてしがみついた。
無防備だ。
「死んだ後の魂は、転生川って言うところに行って洗われながら流されて転生するの」
「わあ、なんですかそれ。楽しそう」
「マギライトお兄様が変な研究をして、記憶を失わずに転生できる方法ができてね」
「ああ、それで――お兄様のせいだったんですね」
妹の手が少しずつ下がって、私の手に触れる。
剣を握る手を包み込むようにして、上から握られる。
「……お父様は、お母様に叱られて、反省したみたい」
「うふふっ、いい気味。いっぱい反省してもらわなきゃ」
「――私たちの現実は、変だね」
時間もぐちゃぐちゃ。死んだ人がそこで終わりじゃなくて、世界に干渉できてしまった。
どこが発端だったのか考えるとキリがないくらい、異常なことが異常なことを産んで、世界が歪んでおかしくなっていった。
「これからも、いっぱい変になっていくことでしょう」
妹は天気予報でもするように唱えて、私の手を導いた。
剣の切っ先を彼女の胸にあてると、私の体の同じ場所が痛む気がする。
「お姉様」
甘やかに妹がおねだりする。――終わらせてほしいと。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
誰も気づかなかった。隠し通せてしまった。
生きている間、姉も兄も友人たちも、誰一人として真実に気が付かなかった。
アルワースは「言う通りにすれば全部上手くいく」とウォテアを励まし続けた。
だからウォテアは、彼の言う通りにしていた。そして、みんな死んでしまった……。
【どうして、こうなってしまったのだろう】
ブラウスのボタンをひとつ、うっかり掛け違えたような始まりだった気がする。
それも、自分にはどうしようもないような――親の暴走と、それを止めようとした結果の暴走だ。
【どうすればよかったというの?】
姉を見捨てる? いいえ。そんなのはあり得なかった。
【起きてしまったのは仕方ない。こうなってしまったのはどうしようもない。これからの事を考えなければ】
姉たちが死んだあと、ウォテアは魔女家当主になった。
心を通わせることのない相手との政略上の婚姻をして、子や孫が生まれ――呪いの通り、体は老いることがなかった。
ウォテアは最初の頃は姿を変え、普通の人間のふりをした。
けれど、子が孫を作り、年老いていく。夫が先立ち、数十年して子も逝くと、限界を悟った。
一族から距離を取り、名を変え姿を変えて人間社会に潜むようになった。
誰かと親しくなるたびに自分と相手との時間の差に苦しんだ。
守護大樹アルワースの存在や、時折現れる「転生者」という謎の存在は、生きるモチベーションをくれていた。
未知の事象、ほどけない混沌とした謎の編み糸は、気の遠くなるほど長い人生に刺激をくれた。
ウォテアは心をすり減らしながらも人の心を保てていた。
神様みたいに、なんでもわかってしまって不明なことがなにひとつなかったら、きっと瞬きするのも呼吸するのも苦痛になって発狂していたに違いない。
【ああ――】
【みんな死んでからどこにいっていたの?】
【転生するってどんな感じ?】
【なぜ転生するの?】
【別の世界ってどんな世界?】
【ずっと怒ってほしかったの】
【罪を犯したことを告白して裁かれたかったの】
【そういえば、愛を囁いたくせに、アルワースは私が夫に抱かれても嫉妬してくれなかったな……】
この世界はわからないことだらけで、私は世界の片隅にたまたま生きているだけの、無力で取るに足らない、小さな生き物。
……それがこんなに安心する。あとは、生き物らしく死ねたら。
生き物らしさを失う前に、人間としての尊厳を持って、私が私だったと言える心で――この長い人生に、終幕を。
お願い。
お願い。
どうか。
「……」
自分を拘束する枷を打ち砕く剣が、胸から背へと突き抜けている。
先端から赤い液体の滴を滴らせて、自由の気配を教えてくれる。このあとには、未知が待っている。無がある。
「ああ……」
ウォテアはうっとりと微笑んだ。
「ありがとう、お姉様。お嬢様。…………だいすき」
死は穏やかで、幸福な香りがして、姉が自分を抱きしめて泣いてくれるから、ウォテアは童女のように無邪気に笑い、その人生に幕を下ろした。
お母さんのお腹が大きくなって、耳をあててみたり、撫でてみたこと。
話しかけてみたこと。
産まれたばかりの赤ちゃんをおそるおそる覗き込んで、指に触れたこと。
指を握られた瞬間。心臓がどきんとして、指と一緒に心が掴まれた気がしたこと。
『マリン。お姉様になったのよ』
自分がその瞬間に「お姉様」という生き物になったのを、覚えている。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
火属性の魔力が渦巻いて、海水が減っていく。陸地に近い場所から順に水で覆われていた海底の地面が見えるようになっていく。
『おお、これは――まさに勇者と聖女の奇跡である……』
ファイアドラゴンは、大きく翼を上下させ、喜びの咆哮をとどろかせた。
【好奇心が満たされました】
「そう、それはよかった」
【お城は、すぐ近くにありますよ】
「今行くわ」
背中から箒に乗って飛び出し、海面すれすれを観察するように飛翔する私は、魔女の声に導かれるように海に入った。
魔女が行使していると思しき風の魔法が、私の周囲に空気の層を作ってくれる。
海の中は大きく全体がうねって揺れている感じがして、油断すると存在も何もかも飲み込まれてしまいそうだった。
上の方から太陽の光が差し込んでいて、下の方は得体の知れない暗闇が広がっている。
下へ、下へと進んでいくと、やがて大きな空気の層に包まれたお城があった。
尖塔が多い西洋建築のお城の地面に降り立つと、魔女の声がした。
【お姉様。お城の中にいる人たちは、解放してあげましょう】
魔女は何を考えているのだろう。
首をかしげる私の肩にいる耳長猫のルビィが愛らしく頬を寄せてくる。
「きゅう」
――可愛い。
「可愛いは正義とは、よく言ったものだわ」
ルビィを撫でているだけで、緊張が少し和らいだ。
「ありがと、ルビィーー、ん?」
感謝を告げた私は、無機質な城の通路にゆらゆらとした幻影が浮かぶのに気づいた。
「きゅ!」
「ルビィが見せてる? ……そんなことできる……? あれ?」
幻影には、マギライトお兄様が映っていた。
彼がパーニス殿下になり、魔王を討伐する映像が、まるで映画のように映された。
「きゅう。きゅう」
「……これは、なに? あ、お父様」
幻影は、水没期のマリンのお父様を映した。
水没期のアルワースを映し出した。
ウォテアを映し出した。
そして、彼らの戦いとその結果までを私に教えてくれた。
「……きゅい」
お父様の魂が転生川に流れていく。そこでお父様は、お母様に出会っていた。
死後の魂の状態で両親は川を流れながら夫婦喧嘩をしていた。
お父様は最終的に反省したようだった。
そして、2人は薄紅色と薄青色の輝きをまといながら転生していく――
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
「……あ」
幻影を鑑賞しながら歩いていた私は、気づけば大きな扉の前にいた。
ルビィがモフモフの尻尾を振り、全身をふんわりと薄紅色に光らせて、その姿を変えていく。
そして、私の手に長い剣の形で収まった。
薔薇をモチーフにした優美な装飾が凝らされていて、剣身が淡い薄紅色の光を帯びている、幻想的な剣だ。
「メルヘンなような、物騒なような」
扉を開けると、私が被っているのとよく似たデザインの魔女帽子をかぶった魔女がいた。
毛先が赤くて、根本に向けて色彩が抜けていくグラデーションの長い髪。
雪のように白い肌。
目元に泣きぼくろがあって、色っぽい印象。
唇は厚めで、艶のある紅色。
目が合うと、嬉しそうに微笑む。変なメイドで、可愛い妹だ。
「アンナ。ウォテア。気付いてあげられなくてごめんなさい」
「本当ですよ。アンナは悪いメイドですって、あんなに何度も言ってたのに」
そういえば、言っていた。
思い出して私は笑った。
「私、謎解きとかはあんまり得意じゃないの」
「謎も何も。答えを言ってたじゃないですか?」
「わからないわよ」
ウォテアは目をくりくりとさせて、私に近付いてきた。
敵意も何も感じさせない、静謐で親しみの感じられる気配だ。
でも、ちょっとひんやりと乾いていて、疲労の香りがする。
「マギライトお兄様は、パーニス殿下ですよ。お姉様」
「ルビィがさっき見せてくれたわ」
「ルビィ? ああ、あの使い魔が……」
妹は使い魔の正体を知らないのだ。私は少し迷ってから、耳打ちした。
「あのね、ウォテア。あなたが知らないことを教えてあげるね」
「なに、なあに?」
姉妹の温度感で、妹は私の背に両腕をまわしてしがみついた。
無防備だ。
「死んだ後の魂は、転生川って言うところに行って洗われながら流されて転生するの」
「わあ、なんですかそれ。楽しそう」
「マギライトお兄様が変な研究をして、記憶を失わずに転生できる方法ができてね」
「ああ、それで――お兄様のせいだったんですね」
妹の手が少しずつ下がって、私の手に触れる。
剣を握る手を包み込むようにして、上から握られる。
「……お父様は、お母様に叱られて、反省したみたい」
「うふふっ、いい気味。いっぱい反省してもらわなきゃ」
「――私たちの現実は、変だね」
時間もぐちゃぐちゃ。死んだ人がそこで終わりじゃなくて、世界に干渉できてしまった。
どこが発端だったのか考えるとキリがないくらい、異常なことが異常なことを産んで、世界が歪んでおかしくなっていった。
「これからも、いっぱい変になっていくことでしょう」
妹は天気予報でもするように唱えて、私の手を導いた。
剣の切っ先を彼女の胸にあてると、私の体の同じ場所が痛む気がする。
「お姉様」
甘やかに妹がおねだりする。――終わらせてほしいと。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
誰も気づかなかった。隠し通せてしまった。
生きている間、姉も兄も友人たちも、誰一人として真実に気が付かなかった。
アルワースは「言う通りにすれば全部上手くいく」とウォテアを励まし続けた。
だからウォテアは、彼の言う通りにしていた。そして、みんな死んでしまった……。
【どうして、こうなってしまったのだろう】
ブラウスのボタンをひとつ、うっかり掛け違えたような始まりだった気がする。
それも、自分にはどうしようもないような――親の暴走と、それを止めようとした結果の暴走だ。
【どうすればよかったというの?】
姉を見捨てる? いいえ。そんなのはあり得なかった。
【起きてしまったのは仕方ない。こうなってしまったのはどうしようもない。これからの事を考えなければ】
姉たちが死んだあと、ウォテアは魔女家当主になった。
心を通わせることのない相手との政略上の婚姻をして、子や孫が生まれ――呪いの通り、体は老いることがなかった。
ウォテアは最初の頃は姿を変え、普通の人間のふりをした。
けれど、子が孫を作り、年老いていく。夫が先立ち、数十年して子も逝くと、限界を悟った。
一族から距離を取り、名を変え姿を変えて人間社会に潜むようになった。
誰かと親しくなるたびに自分と相手との時間の差に苦しんだ。
守護大樹アルワースの存在や、時折現れる「転生者」という謎の存在は、生きるモチベーションをくれていた。
未知の事象、ほどけない混沌とした謎の編み糸は、気の遠くなるほど長い人生に刺激をくれた。
ウォテアは心をすり減らしながらも人の心を保てていた。
神様みたいに、なんでもわかってしまって不明なことがなにひとつなかったら、きっと瞬きするのも呼吸するのも苦痛になって発狂していたに違いない。
【ああ――】
【みんな死んでからどこにいっていたの?】
【転生するってどんな感じ?】
【なぜ転生するの?】
【別の世界ってどんな世界?】
【ずっと怒ってほしかったの】
【罪を犯したことを告白して裁かれたかったの】
【そういえば、愛を囁いたくせに、アルワースは私が夫に抱かれても嫉妬してくれなかったな……】
この世界はわからないことだらけで、私は世界の片隅にたまたま生きているだけの、無力で取るに足らない、小さな生き物。
……それがこんなに安心する。あとは、生き物らしく死ねたら。
生き物らしさを失う前に、人間としての尊厳を持って、私が私だったと言える心で――この長い人生に、終幕を。
お願い。
お願い。
どうか。
「……」
自分を拘束する枷を打ち砕く剣が、胸から背へと突き抜けている。
先端から赤い液体の滴を滴らせて、自由の気配を教えてくれる。このあとには、未知が待っている。無がある。
「ああ……」
ウォテアはうっとりと微笑んだ。
「ありがとう、お姉様。お嬢様。…………だいすき」
死は穏やかで、幸福な香りがして、姉が自分を抱きしめて泣いてくれるから、ウォテアは童女のように無邪気に笑い、その人生に幕を下ろした。
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