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2章、第二王子は魔王ではありません
47、私の不幸せな死亡
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これは、水没期のマリン――私が死んだ話である。
長い話になるが、ひとことで表すとしたら『不幸せな死亡』だ。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
私は、マギライトお兄様と一緒にたくさんの船をつなぎ合わせた巨大な連環船団『マギア・ウィンブルム』に帰還した。
「それにしても、どうも夢が気になるのよね。お兄様が魔王になってたし……」
「何をぶつぶつ独り言を……そんなに疲れたのか」
連環船団にいる人たちは、人類の生き残りだ。
流れ着いた人々が合流したり、生存者がいないか捜索したりして、助け合って生きている。
陸地を失った人間たちは、魔法使いたちとカラクリ技術者たちが手を取り合い、疑似陸地を創ろうとしている。
小さな船よりも、たくさんの船をつなぎ合わせた連環船団の方が揺れも小さく、安心感がある。
「無事に帰ってこれてよかった」
ホッとひと息ついた私の手に、マギライトお兄様は小さな袋を持たせてくれた。
中身は「いかにも魔法でつくりました」という雰囲気で淡く発光するグミだ。
「錬金術で試しに作った魔法グミだ。毒見は済んでいる。お前にやろう」
「貴重なお菓子じゃないですか。これ、魔法で作れるんですか?」
「動物の骨や皮に多く含まれる螺旋状の細長いクラーゲン・エレメントと海水から抽出できるアクア・エレメント、さらに海草が貯蔵するスクロース・エレメント。これらを合成し……」
「レシピをメモします!」
錬金術は面白い。なんでも作り出せる可能性に、わくわくする。
今、世界には海水が増えすぎているけれど、海水を陸地に還られれば世界は元通りになるんじゃないだろうか。そんなに単純にはいかないのだろうけど。
私がお兄様から錬金術のレシピを教わっていると、妹のウォテアがやってきた。
「お姉様、アークライト様が寝込んでおられます。お姉様が顔を見せて差し上げたら喜ぶと思いますわ」
「アークライト様は、ご体調がずっと不安定ね……お兄様、私はお見舞いに行きますが、お兄様はいかがなさいますか? 一緒に行きますか?」
「絶対に行かない」
アークライト様は沈んだ王国『マギア・ウィンブルム』の王族で、生存した人類の中では今のところ一番身分が高い。
船団暮らしで体調を崩す人は多いけど、彼もそのタイプで、体調を崩しがちなのが心配だ。
ちなみに、マギライトお兄様とは不仲。
同じ空間にいるとお兄様は不機嫌に黙り込んで、親しく会話している姿を誰も見たことがないくらいである。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
連環船団の中心に位置する区画に、彼の仮住まいである大きな白い天幕がある。
「アークライト様は中で……」
警備兵の言葉に、中から聞こえてくる女性の声が重なる。
「わたくしより、ウィッチドールの小娘がいいと仰いますの!」
「当然だろ……さっさと出ていけよ。俺は不必要な会話を楽しむほど暇じゃねえんだ」
「~~っ! お茶は飲んでくださいねっ!?」
天幕から女性が走って出てくる。サラという名前で、貴族令嬢だ。
令嬢ながら剣術の嗜みがあり、騎士団の試験は受けるたびに落ちているけど「わたくしはそのへんの女とは違いますの!」とふんぞり返っていることが多い人だった。
一瞬だけ見えた顔は、激情に歪んでいた。
サラを追い出したアークライト様の声は驚くほど冷たかった。
いつもは凄く優しくて穏やかなのに。
「ん……もう来ていたのか。じゃない――来ていたんですね、マリン」
呆然としていると、アークライト様が出迎えてくれた。
長いラベンダー色の髪をひとつに結わえていて、瞳は美しい白銀。成人済の美男子であるアークライト様は、思っていたよりお元気そうだった。
「本日帰還しまして、お見舞いに来たんです。ご多忙で、ご不調なところをすみません」
「おかえりなさい。マリン」
私の頭をぽんと撫でて中に誘ってくれるのは、いつも通りの優しいアークライト様だ。
「さっきの令嬢は……」
「ああ。自分を妃にしろと迫ってくるのですが、俺――私はマリンを妃にするつもりですよ、と言ったんです」
「なっ、なぜそんなことを」
私とアークライト様は幼馴染で親しくはあるが、特別な恋愛感情はお互いに持っていない。
最近できた兄マギライトよりも家族感が強いくらいで、異性というよりは「兄」なのだ。
「私がそうしたいと思ったから? 妃になりたいでしょう、身分が高いのですよ。偉いのですよ。王様の妻は誰からも尊重されて、守ってもらえますよ」
なんだか幼稚な物言いだ。
アークライト様ってこんな人だったっけ。違和感を覚えつつ、私は部屋の中に置かれていた茶缶に目を留めた。
マギア・アップルティ―。魔力を含んだ高級茶葉だ。
「……お茶を淹れましょうか」
彼はアップルティーが好物だった。
なのに、今日は「私はいりませんが、飲みたければご自由に」と言う。
「貴族って変なもんばっか飲むよな」
とアークライト様がつぶやくのが聞こえた。
聞き間違いかな?
「アークライト様。今、なんて仰いました?」
「なんでもありませんよ、マリン」
「でも……――」
その直後、私の体の内側で魔力が膨張し、爆発した。
「ア゛ッ――……!?」
耳にあった耳飾りが弾けて、魔力が噴き出す。
抑えきれない。扱い切れない膨大な魔力の奔流、魔力の持ち主である私の意思に反した、肉体の限界を越える暴走――これは、麻薬だ。
強化劇薬と呼ばれる種類の麻薬で、魔法使いの魔力を一時的に強化し、興奮させる薬。
魔法使いは数が少ない。
彼らは滅亡に瀕した水没世界では、食料を創り出したり居住地を建築・維持するために絶大な貢献力を持つ。
当然、少ない魔法使いは引く手あまた。あれもしてくれ、これもしてくれと要求されて過労に次ぐ過労で、へとへとだ。人類の存亡がかかっているし、それをしないと人が死んでしまうという差し迫った状況も多いので、基本、無理をする。
強化劇薬はそんな魔法使いに限界を越えて働いてもらうために服用させることがあった薬だ。
魔力量を一時的に倍増させ、疲労感を忘れさせ、「これ以上は無理」と平常時に自分を制止する理性を薄れさせる。どう考えても『イケナイ薬』である。
そんな「明らかにダメでしょ!」な身を滅ぼしてしまう危険な薬だが、船が今にも沈みそうとか、明日の食糧がないとか、差し迫った状況では本人が覚悟の上で服用したり、周囲が無理やり飲ませたことが実際にあった。
その一度切りの投与で危機を乗り越えて「結果オーライ、もう飲まないでおこう」で終われたパターンもあるが、多くの魔法使いには悲劇が待っていた。
なにせ危機は続いているので、常用するようになって体を壊したり。
それならまだ可愛いもので、飲む量を増やした結果、身に余る魔力量を溢れさせ、それを処理できずに暴走して周囲を破壊しつくしたり、肉体が物理的にボンッと弾けたりする悲惨すぎる事故が多発したのだ。
悲劇が多発したことで、「この薬は禁止する」と布告も出ていたはず。
「マリン……!? こ、これは――――」
「ぐ、ぅ……ッッ」
灼熱感と激痛が全身を駆け巡る。
魔力が渦巻き、持ち主の意思に反して暴れ出す。
その日、私は暴走して、結果だけ言うと死んだ。
長い話になるが、ひとことで表すとしたら『不幸せな死亡』だ。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
私は、マギライトお兄様と一緒にたくさんの船をつなぎ合わせた巨大な連環船団『マギア・ウィンブルム』に帰還した。
「それにしても、どうも夢が気になるのよね。お兄様が魔王になってたし……」
「何をぶつぶつ独り言を……そんなに疲れたのか」
連環船団にいる人たちは、人類の生き残りだ。
流れ着いた人々が合流したり、生存者がいないか捜索したりして、助け合って生きている。
陸地を失った人間たちは、魔法使いたちとカラクリ技術者たちが手を取り合い、疑似陸地を創ろうとしている。
小さな船よりも、たくさんの船をつなぎ合わせた連環船団の方が揺れも小さく、安心感がある。
「無事に帰ってこれてよかった」
ホッとひと息ついた私の手に、マギライトお兄様は小さな袋を持たせてくれた。
中身は「いかにも魔法でつくりました」という雰囲気で淡く発光するグミだ。
「錬金術で試しに作った魔法グミだ。毒見は済んでいる。お前にやろう」
「貴重なお菓子じゃないですか。これ、魔法で作れるんですか?」
「動物の骨や皮に多く含まれる螺旋状の細長いクラーゲン・エレメントと海水から抽出できるアクア・エレメント、さらに海草が貯蔵するスクロース・エレメント。これらを合成し……」
「レシピをメモします!」
錬金術は面白い。なんでも作り出せる可能性に、わくわくする。
今、世界には海水が増えすぎているけれど、海水を陸地に還られれば世界は元通りになるんじゃないだろうか。そんなに単純にはいかないのだろうけど。
私がお兄様から錬金術のレシピを教わっていると、妹のウォテアがやってきた。
「お姉様、アークライト様が寝込んでおられます。お姉様が顔を見せて差し上げたら喜ぶと思いますわ」
「アークライト様は、ご体調がずっと不安定ね……お兄様、私はお見舞いに行きますが、お兄様はいかがなさいますか? 一緒に行きますか?」
「絶対に行かない」
アークライト様は沈んだ王国『マギア・ウィンブルム』の王族で、生存した人類の中では今のところ一番身分が高い。
船団暮らしで体調を崩す人は多いけど、彼もそのタイプで、体調を崩しがちなのが心配だ。
ちなみに、マギライトお兄様とは不仲。
同じ空間にいるとお兄様は不機嫌に黙り込んで、親しく会話している姿を誰も見たことがないくらいである。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
連環船団の中心に位置する区画に、彼の仮住まいである大きな白い天幕がある。
「アークライト様は中で……」
警備兵の言葉に、中から聞こえてくる女性の声が重なる。
「わたくしより、ウィッチドールの小娘がいいと仰いますの!」
「当然だろ……さっさと出ていけよ。俺は不必要な会話を楽しむほど暇じゃねえんだ」
「~~っ! お茶は飲んでくださいねっ!?」
天幕から女性が走って出てくる。サラという名前で、貴族令嬢だ。
令嬢ながら剣術の嗜みがあり、騎士団の試験は受けるたびに落ちているけど「わたくしはそのへんの女とは違いますの!」とふんぞり返っていることが多い人だった。
一瞬だけ見えた顔は、激情に歪んでいた。
サラを追い出したアークライト様の声は驚くほど冷たかった。
いつもは凄く優しくて穏やかなのに。
「ん……もう来ていたのか。じゃない――来ていたんですね、マリン」
呆然としていると、アークライト様が出迎えてくれた。
長いラベンダー色の髪をひとつに結わえていて、瞳は美しい白銀。成人済の美男子であるアークライト様は、思っていたよりお元気そうだった。
「本日帰還しまして、お見舞いに来たんです。ご多忙で、ご不調なところをすみません」
「おかえりなさい。マリン」
私の頭をぽんと撫でて中に誘ってくれるのは、いつも通りの優しいアークライト様だ。
「さっきの令嬢は……」
「ああ。自分を妃にしろと迫ってくるのですが、俺――私はマリンを妃にするつもりですよ、と言ったんです」
「なっ、なぜそんなことを」
私とアークライト様は幼馴染で親しくはあるが、特別な恋愛感情はお互いに持っていない。
最近できた兄マギライトよりも家族感が強いくらいで、異性というよりは「兄」なのだ。
「私がそうしたいと思ったから? 妃になりたいでしょう、身分が高いのですよ。偉いのですよ。王様の妻は誰からも尊重されて、守ってもらえますよ」
なんだか幼稚な物言いだ。
アークライト様ってこんな人だったっけ。違和感を覚えつつ、私は部屋の中に置かれていた茶缶に目を留めた。
マギア・アップルティ―。魔力を含んだ高級茶葉だ。
「……お茶を淹れましょうか」
彼はアップルティーが好物だった。
なのに、今日は「私はいりませんが、飲みたければご自由に」と言う。
「貴族って変なもんばっか飲むよな」
とアークライト様がつぶやくのが聞こえた。
聞き間違いかな?
「アークライト様。今、なんて仰いました?」
「なんでもありませんよ、マリン」
「でも……――」
その直後、私の体の内側で魔力が膨張し、爆発した。
「ア゛ッ――……!?」
耳にあった耳飾りが弾けて、魔力が噴き出す。
抑えきれない。扱い切れない膨大な魔力の奔流、魔力の持ち主である私の意思に反した、肉体の限界を越える暴走――これは、麻薬だ。
強化劇薬と呼ばれる種類の麻薬で、魔法使いの魔力を一時的に強化し、興奮させる薬。
魔法使いは数が少ない。
彼らは滅亡に瀕した水没世界では、食料を創り出したり居住地を建築・維持するために絶大な貢献力を持つ。
当然、少ない魔法使いは引く手あまた。あれもしてくれ、これもしてくれと要求されて過労に次ぐ過労で、へとへとだ。人類の存亡がかかっているし、それをしないと人が死んでしまうという差し迫った状況も多いので、基本、無理をする。
強化劇薬はそんな魔法使いに限界を越えて働いてもらうために服用させることがあった薬だ。
魔力量を一時的に倍増させ、疲労感を忘れさせ、「これ以上は無理」と平常時に自分を制止する理性を薄れさせる。どう考えても『イケナイ薬』である。
そんな「明らかにダメでしょ!」な身を滅ぼしてしまう危険な薬だが、船が今にも沈みそうとか、明日の食糧がないとか、差し迫った状況では本人が覚悟の上で服用したり、周囲が無理やり飲ませたことが実際にあった。
その一度切りの投与で危機を乗り越えて「結果オーライ、もう飲まないでおこう」で終われたパターンもあるが、多くの魔法使いには悲劇が待っていた。
なにせ危機は続いているので、常用するようになって体を壊したり。
それならまだ可愛いもので、飲む量を増やした結果、身に余る魔力量を溢れさせ、それを処理できずに暴走して周囲を破壊しつくしたり、肉体が物理的にボンッと弾けたりする悲惨すぎる事故が多発したのだ。
悲劇が多発したことで、「この薬は禁止する」と布告も出ていたはず。
「マリン……!? こ、これは――――」
「ぐ、ぅ……ッッ」
灼熱感と激痛が全身を駆け巡る。
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