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1章、王太子は悪です
28、あ~~っ!
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『五果の二十二枝』……5月22日。17時00分。
私、マリンベリーは困っていた。
ぐんぐんと水位が上がってきたダンジョンの中、脱出口を目指して箒で飛んでいたところ、溺れかけの魔物が箒にしがみついてきたのだ。
パンダのぬいぐるみの姿をした魔物は、藁に縋る気持ちだったのだろう。
手で振り払おうとしたところ、魔物はなんと指にムギュッとしがみついてきた。
運悪くその指には婚約指輪が填められていて、指輪は指から抜けてしまった。ぽちゃんっ、という嫌な音が聞こえて、私は悲鳴をあげた。
『あ~~っ!』
なんてこと!
指輪を水に落とし、ついでに自分もバランスを崩して水の中に落ちて、ひとしきり水流の揉まれたあとでなんとか水面に顔を出したものの。
「他のみんなとはぐれちゃったし、指輪もどっかいっちゃった……」
それにしても、水位がどんどん上がってくる。これ、大事故なのでは?
箒も流れていってしまった。泳いで出口まで行くか……と両手で水を掻いたとき、声がかけられた。
「マリンベリーは泳ぎも上手いな」
「へっ」
パーニス殿下の声だ。
顔をあげると同時に、腕が掴まれて引き上げられる。
気付けば私は箒に乗ったパーニス殿下に抱きかかえられていた。私も全身ずぶ濡れだけど、パーニス殿下もびしょ濡れだ。
「パーニス殿下、ご無事でしたか」
「他の生徒も無事だぞ。集団で箒に乗って脱出させている」
「どうしてこんなに水浸しになっちゃったんですか? 殿下」
「カップルが派手に喧嘩した。それも、将来は宮廷魔法使いと目されている2人だった」
話しているうちに、水面に怖いものが見えた。
特徴的な背ビレ。透明度の高い水面に見える全身像――サメ!
「サ、サメがいたんですねっ!?」
水の中、とっても危険だった!
さすがにゾッとしてパーニス殿下にしがみつくと、ポンポンと背中を叩いて落ち着かせてくれる。
「怪我がなくてよかった」
「お互いに。あ、指輪は落としてしまったのですが……すみません」
「指輪よりもお前の方が大事だ。俺がこの状況で指輪を落としたことを責める男だと思っているのか?」
「いえ。ただ、言わないより謝っておくべきかと思いまして」
「……マリンベリーは泳ぎが達者だったが、溺れたりはしなかったのだな」
「意外に思われるかもしれませんが、私は水泳が得意なのです」
脱出口が見えてくる。よかった。
「これは学校側の責任問題になったりしないんでしょうか」
「そうだな。責任を問われるとしたら学校側だろうな」
外に出ると、ワッと会場が湧いた。
会場は、空席が目立つ。魔女家当主のキルケ様も見当たらないし、司会進行役だったミディー先生と賢者家当主のカリスト様もいない。
魔法使いたちが慌ただしく走り回っているので、事態の収拾に動いているのかも。
「このままゴールテープを切るか」
集団でゴールテープを切り、地面に降りるとイージス班のメンバーと医療班が走ってきた。
イージス殿下とアルティナだ。あれ? イアンディールは?
「よかった、マリンベリーさん。探していたのですよ……!」
「怪我人はいませんか?」
イージス殿下は真っ青な顔だった。
本気で心配してくれていたのが伝わってくる。
腕を伸ばして私に触れようとして、パーニス殿下に威嚇されている……。
「兄上。彼女は無事なので」
「ああ、パーニスが助けてくれたのですね。ありがとうございます。よかった……でも、触るくらいいいじゃないですか、減るものじゃなし」
「減ります」
放置しておくと兄弟喧嘩に発展しそうな気配。私は慌てて口を挟んだ。
「はぐれてしまってすみませんでした、殿下」
「謝ることはありませんよ」
それにしてもこの事態、大会の順位はどうなるのだろう。
アクシデントで中止?
乙女ゲームにはこの大会が中止になるルートなんてなかったけど。
「ポイントは計算されているので、順位が……」
順位表が出ている。
『アクアリウム・シーダンジョン』の攻略タイムの欄にイージス班とパーニス班が同着となっているのは、もしかしなくても私が原因だろうか。
ダンジョン攻略のゴールタイムは、班の全員がゴールした瞬間に計測される。
私がパーニス殿下と一緒にゴールしたので、攻略タイムが2班同着になったんだ。
「パーニス殿下。魔物をいっぱい討伐なさったのですね?」
イージス班もポイントを稼いでいたつもりだったけど、討伐ポイントで差がついてパーニス班が1位になっている。
「そうだな。俺たちは賑やかだったから魔物が寄ってきたし、他の連中が戦闘より水槽に意識を向けていたので、自然と討伐担当になっていた気がする」
パーニス殿下は順位表に目を細めてから、「ところで、兄上の班はひとり欠けているようだが」と確認した。そうそう、私も気になっていたんだ。
2人揃って視線を向けると、イージス殿下は眉尻を下げた。
「イアンディールが脚を怪我したのです。軽傷といわれていますが」
「えっ」
途中の過程は違うけど、「狩猟大会でイアンディールが脚を怪我する」というのは原作の乙女ゲームのバッドエンドにつながるエピソードを連想させた。
でも、軽傷なら違うのかな? 偶然かな?
「あの、障がいが残ったりはしないですよね? 歩けなくなったりする恐れは……」
「それはないようです。立って歩けますし、数日で治るらしいですよ」
……大丈夫みたい。よかった。
安堵していると、ミディー先生のアナウンスが響いた。
「みなさん! ご安心ください。生徒たちは全員脱出を完了しました。軽傷者はいますが、重傷者はいません」
先生も「重傷者なし」と言っているので、私は胸をなでおろした。
「本日はアクシデントの収集のため、これにて狩猟大会をいったん終わりにしたいと思います。順位は出ていますので、明日の夜には予定通り表彰パーティを行いたいと思います……以上~」
ざわざわとした会場は、当分落ち着かないだろうと思われた。
「パーニス殿下のご活躍を見たか、生徒たちをリードして……」
「ああ。それに、魔法と剣の腕も素晴らしかった」
観客がパーニス殿下に視線を注いで噂をしている。大活躍だったみたいだ。さすが殿下。
1位にもなったし、名声もアップしたみたいだし、ちょっとアクシデントはあったけど「狩猟大会は乙女ゲーム攻略的には成功!」と言えるのではないだろうか。
……よかった、と思ってもいいかな?
「酷い目に遭ったのにご機嫌だな、マリンベリー?」
「パーニス殿下が勝ってくださったので」
素直に告げると、パーニス殿下は眉をあげた。
「俺の勝利を喜んでくれるのか。ありがとう」
「ライバル班でしたが、私は最初から『このイベントで勝ってください』と言ってませんでしたっけ?」
「そうだな。ついでに『勝ったらキスしてもいい』と言っていた気がする」
「それは嘘!」
その後、パーニス殿下を除く生徒たちは全員、宿泊施設へと引き上げた。パーニス殿下は「ちょっとした用事がある」と言っていた。
何をするのかな? 気になったけど、「大したことではない」と言われたので、私は気にしないことにした。
夕陽がゆっくりと世界を茜色に染めて沈んでいく。
海辺の会場だったこともあり、沈む陽が海の表面を照らしている景色はとても綺麗だった。
私、マリンベリーは困っていた。
ぐんぐんと水位が上がってきたダンジョンの中、脱出口を目指して箒で飛んでいたところ、溺れかけの魔物が箒にしがみついてきたのだ。
パンダのぬいぐるみの姿をした魔物は、藁に縋る気持ちだったのだろう。
手で振り払おうとしたところ、魔物はなんと指にムギュッとしがみついてきた。
運悪くその指には婚約指輪が填められていて、指輪は指から抜けてしまった。ぽちゃんっ、という嫌な音が聞こえて、私は悲鳴をあげた。
『あ~~っ!』
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指輪を水に落とし、ついでに自分もバランスを崩して水の中に落ちて、ひとしきり水流の揉まれたあとでなんとか水面に顔を出したものの。
「他のみんなとはぐれちゃったし、指輪もどっかいっちゃった……」
それにしても、水位がどんどん上がってくる。これ、大事故なのでは?
箒も流れていってしまった。泳いで出口まで行くか……と両手で水を掻いたとき、声がかけられた。
「マリンベリーは泳ぎも上手いな」
「へっ」
パーニス殿下の声だ。
顔をあげると同時に、腕が掴まれて引き上げられる。
気付けば私は箒に乗ったパーニス殿下に抱きかかえられていた。私も全身ずぶ濡れだけど、パーニス殿下もびしょ濡れだ。
「パーニス殿下、ご無事でしたか」
「他の生徒も無事だぞ。集団で箒に乗って脱出させている」
「どうしてこんなに水浸しになっちゃったんですか? 殿下」
「カップルが派手に喧嘩した。それも、将来は宮廷魔法使いと目されている2人だった」
話しているうちに、水面に怖いものが見えた。
特徴的な背ビレ。透明度の高い水面に見える全身像――サメ!
「サ、サメがいたんですねっ!?」
水の中、とっても危険だった!
さすがにゾッとしてパーニス殿下にしがみつくと、ポンポンと背中を叩いて落ち着かせてくれる。
「怪我がなくてよかった」
「お互いに。あ、指輪は落としてしまったのですが……すみません」
「指輪よりもお前の方が大事だ。俺がこの状況で指輪を落としたことを責める男だと思っているのか?」
「いえ。ただ、言わないより謝っておくべきかと思いまして」
「……マリンベリーは泳ぎが達者だったが、溺れたりはしなかったのだな」
「意外に思われるかもしれませんが、私は水泳が得意なのです」
脱出口が見えてくる。よかった。
「これは学校側の責任問題になったりしないんでしょうか」
「そうだな。責任を問われるとしたら学校側だろうな」
外に出ると、ワッと会場が湧いた。
会場は、空席が目立つ。魔女家当主のキルケ様も見当たらないし、司会進行役だったミディー先生と賢者家当主のカリスト様もいない。
魔法使いたちが慌ただしく走り回っているので、事態の収拾に動いているのかも。
「このままゴールテープを切るか」
集団でゴールテープを切り、地面に降りるとイージス班のメンバーと医療班が走ってきた。
イージス殿下とアルティナだ。あれ? イアンディールは?
「よかった、マリンベリーさん。探していたのですよ……!」
「怪我人はいませんか?」
イージス殿下は真っ青な顔だった。
本気で心配してくれていたのが伝わってくる。
腕を伸ばして私に触れようとして、パーニス殿下に威嚇されている……。
「兄上。彼女は無事なので」
「ああ、パーニスが助けてくれたのですね。ありがとうございます。よかった……でも、触るくらいいいじゃないですか、減るものじゃなし」
「減ります」
放置しておくと兄弟喧嘩に発展しそうな気配。私は慌てて口を挟んだ。
「はぐれてしまってすみませんでした、殿下」
「謝ることはありませんよ」
それにしてもこの事態、大会の順位はどうなるのだろう。
アクシデントで中止?
乙女ゲームにはこの大会が中止になるルートなんてなかったけど。
「ポイントは計算されているので、順位が……」
順位表が出ている。
『アクアリウム・シーダンジョン』の攻略タイムの欄にイージス班とパーニス班が同着となっているのは、もしかしなくても私が原因だろうか。
ダンジョン攻略のゴールタイムは、班の全員がゴールした瞬間に計測される。
私がパーニス殿下と一緒にゴールしたので、攻略タイムが2班同着になったんだ。
「パーニス殿下。魔物をいっぱい討伐なさったのですね?」
イージス班もポイントを稼いでいたつもりだったけど、討伐ポイントで差がついてパーニス班が1位になっている。
「そうだな。俺たちは賑やかだったから魔物が寄ってきたし、他の連中が戦闘より水槽に意識を向けていたので、自然と討伐担当になっていた気がする」
パーニス殿下は順位表に目を細めてから、「ところで、兄上の班はひとり欠けているようだが」と確認した。そうそう、私も気になっていたんだ。
2人揃って視線を向けると、イージス殿下は眉尻を下げた。
「イアンディールが脚を怪我したのです。軽傷といわれていますが」
「えっ」
途中の過程は違うけど、「狩猟大会でイアンディールが脚を怪我する」というのは原作の乙女ゲームのバッドエンドにつながるエピソードを連想させた。
でも、軽傷なら違うのかな? 偶然かな?
「あの、障がいが残ったりはしないですよね? 歩けなくなったりする恐れは……」
「それはないようです。立って歩けますし、数日で治るらしいですよ」
……大丈夫みたい。よかった。
安堵していると、ミディー先生のアナウンスが響いた。
「みなさん! ご安心ください。生徒たちは全員脱出を完了しました。軽傷者はいますが、重傷者はいません」
先生も「重傷者なし」と言っているので、私は胸をなでおろした。
「本日はアクシデントの収集のため、これにて狩猟大会をいったん終わりにしたいと思います。順位は出ていますので、明日の夜には予定通り表彰パーティを行いたいと思います……以上~」
ざわざわとした会場は、当分落ち着かないだろうと思われた。
「パーニス殿下のご活躍を見たか、生徒たちをリードして……」
「ああ。それに、魔法と剣の腕も素晴らしかった」
観客がパーニス殿下に視線を注いで噂をしている。大活躍だったみたいだ。さすが殿下。
1位にもなったし、名声もアップしたみたいだし、ちょっとアクシデントはあったけど「狩猟大会は乙女ゲーム攻略的には成功!」と言えるのではないだろうか。
……よかった、と思ってもいいかな?
「酷い目に遭ったのにご機嫌だな、マリンベリー?」
「パーニス殿下が勝ってくださったので」
素直に告げると、パーニス殿下は眉をあげた。
「俺の勝利を喜んでくれるのか。ありがとう」
「ライバル班でしたが、私は最初から『このイベントで勝ってください』と言ってませんでしたっけ?」
「そうだな。ついでに『勝ったらキスしてもいい』と言っていた気がする」
「それは嘘!」
その後、パーニス殿下を除く生徒たちは全員、宿泊施設へと引き上げた。パーニス殿下は「ちょっとした用事がある」と言っていた。
何をするのかな? 気になったけど、「大したことではない」と言われたので、私は気にしないことにした。
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