21 / 77
1章、王太子は悪です
19、出してー。(4回目)
しおりを挟む
場所は、魔塔の高層階、幾重もの結界に守られた区域。
私たちが通された部屋は、生活感のしない真っ白な部屋だった。
片側の壁は、無地のカーテンに覆われている。
質素なテーブルと椅子が置かれていて、座るよう促される。
案内係がコーヒーを配ってくれたタイミングで、部屋にパンダのぬいぐるみが運ばれてきた。
人間くらいの大きさのパンダのぬいぐるみは、喋った。
おっとり、雅やかな青年の声だ。
「待たせたのう、ガキども。わしが賢者家の当主カリストである。わしの貴重すぎる時間は貴様らには正直1秒も割きたくないので、5分で話を終わらせようぞ」
上品でゆっくりした喋り方は耳ざわりがいいけど、内容はぜんぜん友好的じゃない。
それに――パンダのカリスト様が両手を動かすと、壁を覆っていた無地のカーテンがシャッと音を立てて左右に開いた。
カーテンに隠されていたのは、魔法結界で防護された透明なガラス窓と隣の部屋につながる扉だった。大きな窓からは、隣の部屋が見えた。
「ミディールは救えない。力尽きて自然に死ぬのを待つだけじゃ。以上」
隣の部屋は、燃えていた。煙を発生させることなく、真っ赤な炎が燃えている。
火属性の魔法使いであるミディー先生が炎の中心だ。
全身が炎に包まれた先生は、何もない部屋の中央で座っていた。
炎の塊みたいになっていて、表情は見えない。
「正気を失って魔力を暴走させている。そのうち燃え尽きる」
カリスト様は教えてくれた。
心を病み、引き篭もっていたミディー先生は、ある日、暴走した。
「後継ぎでもなし。とびぬけた才能がある人材でもなし。無理して救う必要……なし。隔離しておけば力尽きると思って放置しているが、意外としぶとくてのう」
カリスト様の声は冷たかった。
「そんな……そんな言い方、あまりにも冷たくないですか?」
エリナが声をあげている。いい子だ。
私はそれを聞きながら、ミディー先生を見た。
「何日くらいあの状態なんですか?」
気になったことは、聞いてみよう。だってカリスト様は答えを持っているわけだから。
「ふむ。報告書だと、不登校宣言の翌日からじゃったかのう。魔女家が手伝いを求めてきた日じゃったかのう。まあ、見舞いに来てくれたから見せたが、トラウマを負ったなどとクレームするなよ。では、わしは忙しいので。茶くらいは出させるので、飲んだら帰れ。以上」
案内係がパンダのぬいぐるみを抱きかかえて退室する。
冷たいパンダ~~!
取り付く島もない様子のカリスト様に、パーニス殿下とエリナが「待ってください」と追いかけていく。
「『五果の三枝』5月3日くらいから? ずっと飲まず食わずで暴走してるの?」
普通の人間だったら、とっくに力尽きている。
変じゃない?
私は試しに隣の部屋につながる扉の取っ手をまわしてみた。
カチャリ。
扉はあっけなく開いた。
「あ、開くんだ」
鍵、かかってないんだ?
そのまま部屋の中に入ると、魔法の炎が発する熱がむんむんと肌に感じられる。
乾燥していて、暑い。熱い。そんな部屋だ。
私は風魔法で自分の周囲に風を起こしてみた。
うん、熱風だ。あちあち。熱いことに変わりはない……。
ちょっと辛いかも、この部屋。長居すると暑気当たりしちゃいそう。
「先生、先生……」
勇気を振り絞ってミディー先生に近寄る私の背後でパタンと扉が閉まった。
そして、炎の塊みたいになっているミディー先生からは、拒絶するように炎が飛んできた。
ゲームでは『ファイアーボール』とか呼ばれるような、攻撃のための魔法だ。
ファンタジーだなー、と心のどこかが無感動に感想を覚えながら、風魔法か火魔法で防ごうとした瞬間。
「ひゃっ?」
「マリンベリーお嬢様!」
私は後ろから誰かに押し倒されて床に倒れ込んだ。炎の玉は、一瞬前まで私の上半身があった空間を走り抜けていった。
「――え?」
自分を押し倒した相手を見上げて、私は固まった。
漆黒の髪に、褐色の肌。がっちりとした筋肉質な体付き。
伏せる形の狼耳。心配そうな深紅の瞳……。あっ、犬歯だ。
「セバスチャン?」
「マリンベリーお嬢様。先ほど確認しましたが、この部屋、内側からは外に出られないようです」
前世を思い出してから、どうも私はよく閉じ込められる。
出してー。
「……殿下やエリナが戻ってきたら、あっちの部屋から開けてくれるよね。とりあえず、近づくと攻撃してくるみたいだから距離を取ろうか――あっ、ルビィ! 危ないよ」
ルビィが「きゅい!」と鳴いてミディー先生に近付いていく。
すると、炎が弱まった。おや?
「きゅい」
「ぴぃぃ」
ピンク色の耳長猫ルビィが向かい合っているのは、水色の耳長猫だった。ミディー先生の近くには、水色の耳長猫がいたのだ。おそらく、……ずっと?
水色の耳長猫は、ミディー先生に生命力を注いでいるように見えた。『死にそうな先生を、生かしている』――私は、そう思った。
「……耳長猫が、もう一匹?」
「…………うぅっ……」
疑問を口にして一歩近づくと、炎が消えて、ミディー先生が倒れ込んだ。苦しそうな声が、弱々しい。でも、まだ生きている。
「ぴい」
水色の耳長猫は愛らしく鳴いて、ちらりとミディー先生に視線をやってから、空気に溶けるように消えた。
「今のは……?」
「なんだったのでしょうね」
セバスチャンが支えてくれるので、私はミディー先生に近付いた。
手を伸ばして触れかけると、再び炎が湧く。拒絶の気配。
……まだ暴走している。またさっきみたいに燃え上がってしまう?
「先生。力尽きて、死ぬまでずっと燃えているつもりですか?」
「……」
『闇属性自体は、希少であるものの、邪悪ではありません。使い方によっては心に安らぎをもたらしたりできるのですよ』
私はイージス殿下が教えてくれた言葉を思い出した。
同時に、元暗殺者セバスチャンの隠し属性も。
点と点がつながって、私の中で解法を導いた。
「セバスチャン、闇魔法を使える?」
暗殺者だった頃に、セバスチャンは標的がいる現場に暗闇の帳を下ろしたり、標的の護衛者たちの意識を闇魔法で落としたりしていたんだ。
セバスチャンの顔を見上げると、深紅の瞳が驚愕していた。
闇属性は希少で、しかも不吉とか邪悪とか言われているから、「自分は闇属性の魔法が使えます」って他人に教える人はめったにいないんだよね。
闇属性の魔法使いは、希少な才能を汚点だと思って隠して生きているんだ。
「……! オレは、魔法が苦手で……」
「闇属性の魔法は、邪悪ではない。ある人がそう教えてくれたの。使い方によっては心に安らぎをもたらしたりできるって。あなたができる魔法で、暴走は止められる。暴走が止まれば、先生が救えるかも……」
私は手作りの短杖を取り出した。
火竜の杖だ。
「この杖、私が作ったの。火属性の杖だけど、魔法が使いやすいと思う」
「オ、オレの魔法で人が救える、など……」
セバスチャンの大きな手を取り、火竜の杖を握らせると、セバスチャンの喉ぼとけがゴクリと上下する。
数秒、迷う気配がして。
「かしこまりました、マリンベリーお嬢様」
セバスチャンは、魔法を使ってくれた。
火竜の杖から暗闇が噴き出して、部屋中が真っ黒に塗りつぶされていく。
暗闇は、熱気も何もかもを包み込んで冷やしていくようだった。
炎が燃え盛る部屋が暑くて、熱かったからだろうか。
ひんやりとした暗闇は私に安らぎを感じさせてくれて、ぜんぜん怖くなかった。
私たちが通された部屋は、生活感のしない真っ白な部屋だった。
片側の壁は、無地のカーテンに覆われている。
質素なテーブルと椅子が置かれていて、座るよう促される。
案内係がコーヒーを配ってくれたタイミングで、部屋にパンダのぬいぐるみが運ばれてきた。
人間くらいの大きさのパンダのぬいぐるみは、喋った。
おっとり、雅やかな青年の声だ。
「待たせたのう、ガキども。わしが賢者家の当主カリストである。わしの貴重すぎる時間は貴様らには正直1秒も割きたくないので、5分で話を終わらせようぞ」
上品でゆっくりした喋り方は耳ざわりがいいけど、内容はぜんぜん友好的じゃない。
それに――パンダのカリスト様が両手を動かすと、壁を覆っていた無地のカーテンがシャッと音を立てて左右に開いた。
カーテンに隠されていたのは、魔法結界で防護された透明なガラス窓と隣の部屋につながる扉だった。大きな窓からは、隣の部屋が見えた。
「ミディールは救えない。力尽きて自然に死ぬのを待つだけじゃ。以上」
隣の部屋は、燃えていた。煙を発生させることなく、真っ赤な炎が燃えている。
火属性の魔法使いであるミディー先生が炎の中心だ。
全身が炎に包まれた先生は、何もない部屋の中央で座っていた。
炎の塊みたいになっていて、表情は見えない。
「正気を失って魔力を暴走させている。そのうち燃え尽きる」
カリスト様は教えてくれた。
心を病み、引き篭もっていたミディー先生は、ある日、暴走した。
「後継ぎでもなし。とびぬけた才能がある人材でもなし。無理して救う必要……なし。隔離しておけば力尽きると思って放置しているが、意外としぶとくてのう」
カリスト様の声は冷たかった。
「そんな……そんな言い方、あまりにも冷たくないですか?」
エリナが声をあげている。いい子だ。
私はそれを聞きながら、ミディー先生を見た。
「何日くらいあの状態なんですか?」
気になったことは、聞いてみよう。だってカリスト様は答えを持っているわけだから。
「ふむ。報告書だと、不登校宣言の翌日からじゃったかのう。魔女家が手伝いを求めてきた日じゃったかのう。まあ、見舞いに来てくれたから見せたが、トラウマを負ったなどとクレームするなよ。では、わしは忙しいので。茶くらいは出させるので、飲んだら帰れ。以上」
案内係がパンダのぬいぐるみを抱きかかえて退室する。
冷たいパンダ~~!
取り付く島もない様子のカリスト様に、パーニス殿下とエリナが「待ってください」と追いかけていく。
「『五果の三枝』5月3日くらいから? ずっと飲まず食わずで暴走してるの?」
普通の人間だったら、とっくに力尽きている。
変じゃない?
私は試しに隣の部屋につながる扉の取っ手をまわしてみた。
カチャリ。
扉はあっけなく開いた。
「あ、開くんだ」
鍵、かかってないんだ?
そのまま部屋の中に入ると、魔法の炎が発する熱がむんむんと肌に感じられる。
乾燥していて、暑い。熱い。そんな部屋だ。
私は風魔法で自分の周囲に風を起こしてみた。
うん、熱風だ。あちあち。熱いことに変わりはない……。
ちょっと辛いかも、この部屋。長居すると暑気当たりしちゃいそう。
「先生、先生……」
勇気を振り絞ってミディー先生に近寄る私の背後でパタンと扉が閉まった。
そして、炎の塊みたいになっているミディー先生からは、拒絶するように炎が飛んできた。
ゲームでは『ファイアーボール』とか呼ばれるような、攻撃のための魔法だ。
ファンタジーだなー、と心のどこかが無感動に感想を覚えながら、風魔法か火魔法で防ごうとした瞬間。
「ひゃっ?」
「マリンベリーお嬢様!」
私は後ろから誰かに押し倒されて床に倒れ込んだ。炎の玉は、一瞬前まで私の上半身があった空間を走り抜けていった。
「――え?」
自分を押し倒した相手を見上げて、私は固まった。
漆黒の髪に、褐色の肌。がっちりとした筋肉質な体付き。
伏せる形の狼耳。心配そうな深紅の瞳……。あっ、犬歯だ。
「セバスチャン?」
「マリンベリーお嬢様。先ほど確認しましたが、この部屋、内側からは外に出られないようです」
前世を思い出してから、どうも私はよく閉じ込められる。
出してー。
「……殿下やエリナが戻ってきたら、あっちの部屋から開けてくれるよね。とりあえず、近づくと攻撃してくるみたいだから距離を取ろうか――あっ、ルビィ! 危ないよ」
ルビィが「きゅい!」と鳴いてミディー先生に近付いていく。
すると、炎が弱まった。おや?
「きゅい」
「ぴぃぃ」
ピンク色の耳長猫ルビィが向かい合っているのは、水色の耳長猫だった。ミディー先生の近くには、水色の耳長猫がいたのだ。おそらく、……ずっと?
水色の耳長猫は、ミディー先生に生命力を注いでいるように見えた。『死にそうな先生を、生かしている』――私は、そう思った。
「……耳長猫が、もう一匹?」
「…………うぅっ……」
疑問を口にして一歩近づくと、炎が消えて、ミディー先生が倒れ込んだ。苦しそうな声が、弱々しい。でも、まだ生きている。
「ぴい」
水色の耳長猫は愛らしく鳴いて、ちらりとミディー先生に視線をやってから、空気に溶けるように消えた。
「今のは……?」
「なんだったのでしょうね」
セバスチャンが支えてくれるので、私はミディー先生に近付いた。
手を伸ばして触れかけると、再び炎が湧く。拒絶の気配。
……まだ暴走している。またさっきみたいに燃え上がってしまう?
「先生。力尽きて、死ぬまでずっと燃えているつもりですか?」
「……」
『闇属性自体は、希少であるものの、邪悪ではありません。使い方によっては心に安らぎをもたらしたりできるのですよ』
私はイージス殿下が教えてくれた言葉を思い出した。
同時に、元暗殺者セバスチャンの隠し属性も。
点と点がつながって、私の中で解法を導いた。
「セバスチャン、闇魔法を使える?」
暗殺者だった頃に、セバスチャンは標的がいる現場に暗闇の帳を下ろしたり、標的の護衛者たちの意識を闇魔法で落としたりしていたんだ。
セバスチャンの顔を見上げると、深紅の瞳が驚愕していた。
闇属性は希少で、しかも不吉とか邪悪とか言われているから、「自分は闇属性の魔法が使えます」って他人に教える人はめったにいないんだよね。
闇属性の魔法使いは、希少な才能を汚点だと思って隠して生きているんだ。
「……! オレは、魔法が苦手で……」
「闇属性の魔法は、邪悪ではない。ある人がそう教えてくれたの。使い方によっては心に安らぎをもたらしたりできるって。あなたができる魔法で、暴走は止められる。暴走が止まれば、先生が救えるかも……」
私は手作りの短杖を取り出した。
火竜の杖だ。
「この杖、私が作ったの。火属性の杖だけど、魔法が使いやすいと思う」
「オ、オレの魔法で人が救える、など……」
セバスチャンの大きな手を取り、火竜の杖を握らせると、セバスチャンの喉ぼとけがゴクリと上下する。
数秒、迷う気配がして。
「かしこまりました、マリンベリーお嬢様」
セバスチャンは、魔法を使ってくれた。
火竜の杖から暗闇が噴き出して、部屋中が真っ黒に塗りつぶされていく。
暗闇は、熱気も何もかもを包み込んで冷やしていくようだった。
炎が燃え盛る部屋が暑くて、熱かったからだろうか。
ひんやりとした暗闇は私に安らぎを感じさせてくれて、ぜんぜん怖くなかった。
11
お気に入りに追加
203
あなたにおすすめの小説

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました
かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中!
そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……?
可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです!
そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!?
イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!!
毎日17時と19時に更新します。
全12話完結+番外編
「小説家になろう」でも掲載しています。
【完結】悪役令嬢は婚約者を差し上げたい
三谷朱花
恋愛
アリス・デッセ侯爵令嬢と婚約者であるハース・マーヴィン侯爵令息の出会いは最悪だった。
そして、学園の食堂で、アリスは、「ハース様を解放して欲しい」というメルル・アーディン侯爵令嬢の言葉に、頷こうとした。

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

気だるげの公爵令息が変わった理由。
三月べに
恋愛
乙女ゲーの悪役令嬢に転生したリーンティア。王子の婚約者にはまだなっていない。避けたいけれど、貴族の義務だから縁談は避けきれないと、一応見合いのお茶会に参加し続けた。乙女ゲーのシナリオでは、その見合いお茶会の中で、王子に恋をしたから父に強くお願いして、王家も承諾して成立した婚約だったはず。
王子以外に婚約者を選ぶかどうかはさておき、他の見合い相手を見極めておこう。相性次第でしょ。
そう思っていた私の本日の見合い相手は、気だるげの公爵令息。面倒くさがり屋の無気力なキャラクターは、子どもの頃からもう気だるげだったのか。
「生きる楽しみを教えてくれ」
ドンと言い放つ少年に、何があったかと尋ねたくなった。別に暗い過去なかったよね、このキャラ。
「あなたのことは知らないので、私が楽しいと思った日々のことを挙げてみますね」
つらつらと楽しみを挙げたら、ぐったりした様子の公爵令息は、目を輝かせた。
そんな彼と、婚約が確定。彼も、変わった。私の隣に立てば、生き生きした笑みを浮かべる。
学園に入って、乙女ゲーのヒロインが立ちはだかった。
「アンタも転生者でしょ! ゲームシナリオを崩壊させてサイテー!! アンタが王子の婚約者じゃないから、フラグも立たないじゃない!!」
知っちゃこっちゃない。スルーしたが、腕を掴まれた。
「無視してんじゃないわよ!」
「頭をおかしくしたように喚く知らない人を見て見ぬふりしたいのは当然では」
「なんですって!? 推しだか何だか知らないけど! なんで無気力公爵令息があんなに変わっちゃったのよ!! どうでもいいから婚約破棄して、王子の婚約者になりなさい!! 軌道修正して!!」
そんなことで今更軌道修正するわけがなかろう……頭おかしい人だな、怖い。
「婚約破棄? ふざけるな。王子の婚約者になれって言うのも不敬罪だ」
ふわっと抱き上げてくれたのは、婚約者の公爵令息イサークだった。
(なろうにも、掲載)

【完結】その令嬢は号泣しただけ~泣き虫令嬢に悪役は無理でした~
春風由実
恋愛
お城の庭園で大泣きしてしまった十二歳の私。
かつての記憶を取り戻し、自分が物語の序盤で早々に退場する悪しき公爵令嬢であることを思い出します。
私は目立たず密やかに穏やかに、そして出来るだけ長く生きたいのです。
それにこんなに泣き虫だから、王太子殿下の婚約者だなんて重たい役目は無理、無理、無理。
だから早々に逃げ出そうと決めていたのに。
どうして目の前にこの方が座っているのでしょうか?
※本編十七話、番外編四話の短いお話です。
※こちらはさっと完結します。(2022.11.8完結)
※カクヨムにも掲載しています。

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
21時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる