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1章、王太子は悪です
10、????/????
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――『????』
風に乗って、食欲を刺激する匂いが運ばれてくる。
パン屋の娘を殺した日から、魔女家令嬢マリンベリーの様子がおかしい。
パン屋の娘を殺した日、自分がマリンベリーに抱いたのは親近感と憐憫だった。パン屋の娘が教えてくれたのだ。マリンベリーは自分と同じく「不幸になる」運命なのだと。
マリンベリーを自分が幸せにしてあげたい。
そう思うように、なったのだ。
――『????』
風に乗って、食欲を刺激する匂いが運ばれてくる。
パン屋の娘を殺された日から、魔女家令嬢マリンベリーの様子がおかしい。
パン屋の娘が殺された日、自分がマリンベリーに抱いたのは罪悪感と責任感だった。自分が約束を守らなかったから、彼女はショックで倒れてしまった。自分のせいだ。
マリンベリーを自分が幸せにしてあげたい。
そう思うように、なったのだ。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
「お嬢様は、急に変わってしまったのです」
配下が赤毛頭を垂らし、心配そうに報告をする。
この配下は、以前から彼女を慕っている。
両親を亡くした平民が貴族の養子になり、さらに王子の妃になる、というのは、同じような平民階級にとっては夢のある話だ。
彼女が背伸びして貴族らしく振る舞おうとするのを応援して、「もっと偉そうでいいんです」「もっと強気な態度でいきましょう!」と高飛車な振る舞いを勧めていたという。
それを聞くたびに「メイドを交代させた方が彼女のためなのでは」と悩んだものだ。
だが、必死な感じで周囲に「私は高貴な令嬢で、軽い扱いをされる身分ではないの!」とアピールする彼女は可愛かった。
配下も「わがままお嬢様のお世話係だと諜報の仕事もしやすいですから」と懇願するので、そのまま放置していたのだ。
「何でも知っている、という雰囲気です。それに、以前のご自身を『子どもっぽかった』などと仰り、使用人たちにも優しくなり、ご当主様には甘えるようになられて……使用人たちからの評判もよくなり、ご当主様も甘やかすようになりました」
魔女家内では、愛されお嬢様へとその存在感を変えつつあるらしい。
彼女は可愛いし、愛されて当然だと思う。しかし。
「使用人はともかく、誰に対しても壁を作って取り付く島もない魔女家当主のキルケが養子を甘やかすとは……」
魔女家当主キルケは、養女の変化に違和感を覚えたりはしていないのだろうか。
もともと放置気味の母娘関係だったので、わからない可能性もあるか。
一体、マリンベリーに何があったのだろう?
まるで天からの御使いが彼女の体に憑依したようではないか。
……以前の彼女は、どこに行ってしまったのだろう。
「……引き続き仕事を続けるように」
「承知しました」
俺は配下に命じて、彼女のもとへ向かった。
風に乗って、食欲を刺激する匂いが運ばれてくる。
パン屋の娘を殺した日から、魔女家令嬢マリンベリーの様子がおかしい。
パン屋の娘を殺した日、自分がマリンベリーに抱いたのは親近感と憐憫だった。パン屋の娘が教えてくれたのだ。マリンベリーは自分と同じく「不幸になる」運命なのだと。
マリンベリーを自分が幸せにしてあげたい。
そう思うように、なったのだ。
――『????』
風に乗って、食欲を刺激する匂いが運ばれてくる。
パン屋の娘を殺された日から、魔女家令嬢マリンベリーの様子がおかしい。
パン屋の娘が殺された日、自分がマリンベリーに抱いたのは罪悪感と責任感だった。自分が約束を守らなかったから、彼女はショックで倒れてしまった。自分のせいだ。
マリンベリーを自分が幸せにしてあげたい。
そう思うように、なったのだ。
◆◆◇◇◆◆◇◇◆◆
「お嬢様は、急に変わってしまったのです」
配下が赤毛頭を垂らし、心配そうに報告をする。
この配下は、以前から彼女を慕っている。
両親を亡くした平民が貴族の養子になり、さらに王子の妃になる、というのは、同じような平民階級にとっては夢のある話だ。
彼女が背伸びして貴族らしく振る舞おうとするのを応援して、「もっと偉そうでいいんです」「もっと強気な態度でいきましょう!」と高飛車な振る舞いを勧めていたという。
それを聞くたびに「メイドを交代させた方が彼女のためなのでは」と悩んだものだ。
だが、必死な感じで周囲に「私は高貴な令嬢で、軽い扱いをされる身分ではないの!」とアピールする彼女は可愛かった。
配下も「わがままお嬢様のお世話係だと諜報の仕事もしやすいですから」と懇願するので、そのまま放置していたのだ。
「何でも知っている、という雰囲気です。それに、以前のご自身を『子どもっぽかった』などと仰り、使用人たちにも優しくなり、ご当主様には甘えるようになられて……使用人たちからの評判もよくなり、ご当主様も甘やかすようになりました」
魔女家内では、愛されお嬢様へとその存在感を変えつつあるらしい。
彼女は可愛いし、愛されて当然だと思う。しかし。
「使用人はともかく、誰に対しても壁を作って取り付く島もない魔女家当主のキルケが養子を甘やかすとは……」
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……以前の彼女は、どこに行ってしまったのだろう。
「……引き続き仕事を続けるように」
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俺は配下に命じて、彼女のもとへ向かった。
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