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5、鬼謀のアイオナイト
368、そんなあなたを、あたたかくしてあげたいと思ったのです。
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「嫌がっても逃げられないのです。俺が悪い男だからです。……運が悪かったですね、聖女様」
男は冷笑するような表情をつくり、首筋に顔を埋めるようにして唇を寄せてくる。
フィロシュネーはドキドキしながら、彼の黒髪を指先で乱した。
「いいですわよ」
「え?」
「嫌ではありません。わたくしは幸運です。あなたは悪い男ではありません」
なぜかびっくりされている。
そこは余裕の態度を貫きましょうよ、と思いつつ、フィロシュネーはくすくすと笑った。
「あなた、わたくしをポンコツっておっしゃいましたけど、ご自分もちょっとポンコツさんなところがありますわよ。ふふっ、……仕方ないから、わたくしがあなたのことを教えてあげますわ」
フィロシュネーは戸惑う男の髪を撫でてから、ゆっくりと手を伸ばして彼が左手に持つ移ろいの石に触れた。そして、石の力で自分の記憶にある風景を二人の周りに映し出した。
「……これは……」
「わたくしは聖女様なので、神鳥様の奇跡に出会う前から前世の記憶を自力で思い出したりしていましたの」
自分の前世の記憶をみせると、男の中でコルテの人格が濃く感情を渦巻かせるのが感じられる。その表情が歪んで、人間らしい呟きが聞こえる。
「フィロソフィア、フィロソフィア――君を守れなかった……」
ぎゅっと抱きしめられ、縋るようにされて、フィロシュネーは彼の背中を撫でた。
服の上からでもわかる逞しい肉体は、少年時代からの苦難と、日々の鍛錬と実戦に磨き上げられた『サイラス』のものだ。
「君は、俺をちゃんと見てくれた。よく誤解されていた俺を怖がることなく、悪く受け止めることなく、親しくしてくれた。慕ってくれた……」
「覚えています、コルテ様」
はっきりと言えば、『コルテ』は嗚咽を洩らした。
――泣いている。
フィロシュネーは感慨深く、やさしく言葉を紡いだ。
「お父様の、人形たちの国を守ってくださって、ありがとう。わたくしをずっと愛してくれて、ありがとう……ずっと、おつらかったでしょう。ごめんなさい」
言っているうちに、自分の目頭も熱くなっていく。
「……見て。わたくし、神鳥様の奇跡でサイラスの過去を覗き見したの。あなたは立派でした。あなたの振る舞いを、わたくしは見ていました」
懺悔のように教えると、男は『サイラス』の人格の困惑を浮上させた。
「わたくし、あなたの過去に心がつらくなりました。つらい中で生きようとしていて、自分だけではなく仲間や妹さんも面倒をみようとしていて、なんて健気で立派なのって思いました。善良な魂を感じました」
少し距離をあけて顔をそむけ、自分のハンカチで涙をぬぐうサイラスの耳が赤い。
……恥ずかしがっているみたい。
フィロシュネーは彼が泣いたことに気づかないふりをした。
「生きていてえらい、と思いました。あなたが生きていてくれる現実が、嬉しかったです」
思い返せば、いつかの夜、バルコニーから落ちて彼の腕におさまった時は、その感情を「あなたは英雄になるのよ」という言葉で表現して伝えたのだった。
その過去を石の力で見せれば、サイラスは「懐かしいですね」と目を細めた。
「あの時の俺は、姫が寝惚けて変なことを仰っているのだと思っていましたよ」
「まあ。残念ね。わたくしは真剣だったのに」
お祭りで演説したのを覚えていますか、と小さく付け足せば、サイラスは「ご立派でしたよ」と言いながらフィロシュネーの体を起こしてソファに座り直させてくれる。
さっきまでの不穏な気配は、もうどこにもない。
フィロシュネーは言葉を続けた。
「わたくしはカントループの記憶を見たことがあって、誰もいない世界の寂しさと恐ろしさを垣間見ました。わたくしたちの現在の世界は揉め事がたくさんあるけれど、誰もいない世界よりずっとずっと、よいと思ったのです」
「姫は、いろいろなことを考えておられたのですね」
「そうよ。わたくしは、あなたに、世界を好きだと思ってほしいなと思いましたの。希望を感じてほしいって思いましたの」
――それは、純粋な衝動で、想いだった。
「コルテ様。サイラス。二人とも、わたくしからすると同じですわ。大人の倫理観や善良な心が根底にあって、ちょっと気を使いすぎと思うくらい、わたくしを大切にしてくださるところが、そっくり」
石から手を放して、フィロシュネーは自分からサイラスの胸へと上半身を寄りかからせた。
大きな手は自然な距離感でそれを受け止めてくれる。胸に手をあててみれば、しっかりとした鼓動が感じられた。
「寂しい心があって、傷付いた心があるところも、似ていますわ。我慢強くて、他人に『助けて』と言わなくて、逆に他人を助けようとするのです。やさしいのです。自分が痛かったからといって他者を傷つけるのではなく、『他者が痛くならないように守りたい』と思う心根があるのです」
「……俺を理解してくださったのですね」
あまり内面を暴かれると恥ずかしいですが、と言いながら、サイラスは自然な所作でフィロシュネーの顎に手を添えた。顔が上向きにされて、近い距離で目と目が合う。
「わたくし、前世も今も、ずっとずっと、そんなあなただから好きなのです。大好きなのですわ」
――痛そうで、つらそうで、寒そうで、それなのにやさしいあなた。
そんなあなたを、あたたかくしてあげたいと思ったのです。
そっと睫毛を伏せれば、優しいキスに吐息を奪われる。
そして、甘やかな声が彼の心を伝えてくれる。
「ありがとうございます、俺のフィロソフィア様、俺のフィロシュネー様……聖女様、俺だけのお姫様。俺は、過去も現在も拗らせていて、ねじ曲がった、どうしようもない負の感情を抱える男ですが……」
それは、長い年月の艱難辛苦と、あまりにも深い溺愛を感じさせる声だった。
強い執着と独占欲と、重すぎる情念がこもっていた。
「わたくしのコルテ神様。わたくしの神師伯様。わたくしの騎士様。わたくしの黒の英雄。わたくしの優しい傭兵さん。……わたくしのサイラス」
わたくしたち、お互いに呼び名がいっぱいあって、大変ね。
でも、中身はきっと可愛らしくて、素朴な、ただの人間。
……そうありたい。
「俺は、この世界への恨みが強くて、クソ食らえだと言いたくなるところがあるのです。滅ぼしてやろうと思ったことさえあるのです。ですが……」
彼の声からは、深くて痛々しい心の傷が感じられる。
でも、「ちゃんと光の中にいますよ」と保証してくれるみたいな、幸せな響きがある。
「……こんな世界も、姫がいるなら悪くない。今は、そう思います」
彼が微笑んでくれたから、フィロシュネーは安堵と嬉しさで胸がいっぱいになった。
「よかったですわ」
「俺の姫。俺の、俺の――ずっと、ずっと、……俺だけの……?」
「確認するように問わないでくださる? わたくしは、あなただけのわたくしですわよ」
「そうではないかと思っていました。ええ、ええ。そうですとも」
「う、嬉しそうね」
「嬉しいです」
嬉しさをあふれさせるようにサイラスが頬やこめかみにキスしてくる。
――愛情が伝わってくる。
その感情が熱くて、強烈に心を揺らされて、フィロシュネーは両腕でぎゅっと彼を抱きしめた。
「あなたが嬉しそうだと、わたくしは嬉しいわ」
「……愛しています。大切にします。やさしくします。幸せにします。光の中にいるから、どうかどうか、俺を受け入れてください」
「ずっと前から、受け入れていますわよ」
この日、きっと狡猾な邪悪な神様は聖女の光に包まれてどこかへと消えて、彼に滅ぼされるかもしれなかった世界は救われたのかもしれない。
男は冷笑するような表情をつくり、首筋に顔を埋めるようにして唇を寄せてくる。
フィロシュネーはドキドキしながら、彼の黒髪を指先で乱した。
「いいですわよ」
「え?」
「嫌ではありません。わたくしは幸運です。あなたは悪い男ではありません」
なぜかびっくりされている。
そこは余裕の態度を貫きましょうよ、と思いつつ、フィロシュネーはくすくすと笑った。
「あなた、わたくしをポンコツっておっしゃいましたけど、ご自分もちょっとポンコツさんなところがありますわよ。ふふっ、……仕方ないから、わたくしがあなたのことを教えてあげますわ」
フィロシュネーは戸惑う男の髪を撫でてから、ゆっくりと手を伸ばして彼が左手に持つ移ろいの石に触れた。そして、石の力で自分の記憶にある風景を二人の周りに映し出した。
「……これは……」
「わたくしは聖女様なので、神鳥様の奇跡に出会う前から前世の記憶を自力で思い出したりしていましたの」
自分の前世の記憶をみせると、男の中でコルテの人格が濃く感情を渦巻かせるのが感じられる。その表情が歪んで、人間らしい呟きが聞こえる。
「フィロソフィア、フィロソフィア――君を守れなかった……」
ぎゅっと抱きしめられ、縋るようにされて、フィロシュネーは彼の背中を撫でた。
服の上からでもわかる逞しい肉体は、少年時代からの苦難と、日々の鍛錬と実戦に磨き上げられた『サイラス』のものだ。
「君は、俺をちゃんと見てくれた。よく誤解されていた俺を怖がることなく、悪く受け止めることなく、親しくしてくれた。慕ってくれた……」
「覚えています、コルテ様」
はっきりと言えば、『コルテ』は嗚咽を洩らした。
――泣いている。
フィロシュネーは感慨深く、やさしく言葉を紡いだ。
「お父様の、人形たちの国を守ってくださって、ありがとう。わたくしをずっと愛してくれて、ありがとう……ずっと、おつらかったでしょう。ごめんなさい」
言っているうちに、自分の目頭も熱くなっていく。
「……見て。わたくし、神鳥様の奇跡でサイラスの過去を覗き見したの。あなたは立派でした。あなたの振る舞いを、わたくしは見ていました」
懺悔のように教えると、男は『サイラス』の人格の困惑を浮上させた。
「わたくし、あなたの過去に心がつらくなりました。つらい中で生きようとしていて、自分だけではなく仲間や妹さんも面倒をみようとしていて、なんて健気で立派なのって思いました。善良な魂を感じました」
少し距離をあけて顔をそむけ、自分のハンカチで涙をぬぐうサイラスの耳が赤い。
……恥ずかしがっているみたい。
フィロシュネーは彼が泣いたことに気づかないふりをした。
「生きていてえらい、と思いました。あなたが生きていてくれる現実が、嬉しかったです」
思い返せば、いつかの夜、バルコニーから落ちて彼の腕におさまった時は、その感情を「あなたは英雄になるのよ」という言葉で表現して伝えたのだった。
その過去を石の力で見せれば、サイラスは「懐かしいですね」と目を細めた。
「あの時の俺は、姫が寝惚けて変なことを仰っているのだと思っていましたよ」
「まあ。残念ね。わたくしは真剣だったのに」
お祭りで演説したのを覚えていますか、と小さく付け足せば、サイラスは「ご立派でしたよ」と言いながらフィロシュネーの体を起こしてソファに座り直させてくれる。
さっきまでの不穏な気配は、もうどこにもない。
フィロシュネーは言葉を続けた。
「わたくしはカントループの記憶を見たことがあって、誰もいない世界の寂しさと恐ろしさを垣間見ました。わたくしたちの現在の世界は揉め事がたくさんあるけれど、誰もいない世界よりずっとずっと、よいと思ったのです」
「姫は、いろいろなことを考えておられたのですね」
「そうよ。わたくしは、あなたに、世界を好きだと思ってほしいなと思いましたの。希望を感じてほしいって思いましたの」
――それは、純粋な衝動で、想いだった。
「コルテ様。サイラス。二人とも、わたくしからすると同じですわ。大人の倫理観や善良な心が根底にあって、ちょっと気を使いすぎと思うくらい、わたくしを大切にしてくださるところが、そっくり」
石から手を放して、フィロシュネーは自分からサイラスの胸へと上半身を寄りかからせた。
大きな手は自然な距離感でそれを受け止めてくれる。胸に手をあててみれば、しっかりとした鼓動が感じられた。
「寂しい心があって、傷付いた心があるところも、似ていますわ。我慢強くて、他人に『助けて』と言わなくて、逆に他人を助けようとするのです。やさしいのです。自分が痛かったからといって他者を傷つけるのではなく、『他者が痛くならないように守りたい』と思う心根があるのです」
「……俺を理解してくださったのですね」
あまり内面を暴かれると恥ずかしいですが、と言いながら、サイラスは自然な所作でフィロシュネーの顎に手を添えた。顔が上向きにされて、近い距離で目と目が合う。
「わたくし、前世も今も、ずっとずっと、そんなあなただから好きなのです。大好きなのですわ」
――痛そうで、つらそうで、寒そうで、それなのにやさしいあなた。
そんなあなたを、あたたかくしてあげたいと思ったのです。
そっと睫毛を伏せれば、優しいキスに吐息を奪われる。
そして、甘やかな声が彼の心を伝えてくれる。
「ありがとうございます、俺のフィロソフィア様、俺のフィロシュネー様……聖女様、俺だけのお姫様。俺は、過去も現在も拗らせていて、ねじ曲がった、どうしようもない負の感情を抱える男ですが……」
それは、長い年月の艱難辛苦と、あまりにも深い溺愛を感じさせる声だった。
強い執着と独占欲と、重すぎる情念がこもっていた。
「わたくしのコルテ神様。わたくしの神師伯様。わたくしの騎士様。わたくしの黒の英雄。わたくしの優しい傭兵さん。……わたくしのサイラス」
わたくしたち、お互いに呼び名がいっぱいあって、大変ね。
でも、中身はきっと可愛らしくて、素朴な、ただの人間。
……そうありたい。
「俺は、この世界への恨みが強くて、クソ食らえだと言いたくなるところがあるのです。滅ぼしてやろうと思ったことさえあるのです。ですが……」
彼の声からは、深くて痛々しい心の傷が感じられる。
でも、「ちゃんと光の中にいますよ」と保証してくれるみたいな、幸せな響きがある。
「……こんな世界も、姫がいるなら悪くない。今は、そう思います」
彼が微笑んでくれたから、フィロシュネーは安堵と嬉しさで胸がいっぱいになった。
「よかったですわ」
「俺の姫。俺の、俺の――ずっと、ずっと、……俺だけの……?」
「確認するように問わないでくださる? わたくしは、あなただけのわたくしですわよ」
「そうではないかと思っていました。ええ、ええ。そうですとも」
「う、嬉しそうね」
「嬉しいです」
嬉しさをあふれさせるようにサイラスが頬やこめかみにキスしてくる。
――愛情が伝わってくる。
その感情が熱くて、強烈に心を揺らされて、フィロシュネーは両腕でぎゅっと彼を抱きしめた。
「あなたが嬉しそうだと、わたくしは嬉しいわ」
「……愛しています。大切にします。やさしくします。幸せにします。光の中にいるから、どうかどうか、俺を受け入れてください」
「ずっと前から、受け入れていますわよ」
この日、きっと狡猾な邪悪な神様は聖女の光に包まれてどこかへと消えて、彼に滅ぼされるかもしれなかった世界は救われたのかもしれない。
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