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5、鬼謀のアイオナイト
353、「……公爵様っ?」
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ドォン、という爆発の音が続いて、青国の王都で悲鳴があがる。
そのとき、ソラベル・モンテローザ公爵は現場にいた。
「きゃああああああああ!」
「ここに魔法の仕掛けが……‼︎」
「いやあああああ!」
「た、たすけ……っ」
広場の一角で悲鳴があがり、その付近にいた人々が一斉に逃げていく。
これまでの生命力吸収事件と異なり、爆発の仕掛けも合わさって、現場には外傷を負った被害者も出て、大混乱だ。
「公爵様! また爆発するかもしれませんし、仕掛けもまだ破壊されていません。この場を離れましょう」
騎士が警戒し、護衛してくれようと動いている。
その動きを頼もしく思いながら、ソラベルは冷静に状況をみた。
「騎士は、負傷者の救命と民の避難誘導を優先するように……」
逃げようとした民が倒れ込み、顔色を蒼白にして喘いでいる。
生命力と魔力を吸われて、弱っていく。
爆発の中心地と思われる広場の隅では、破壊された樹木や建造物の破片が散らばっていた。血まみれで倒れている人々もいる。そんな中、傷ひとつなく立っている像もある。
「広場の隅にカピバラ像があるだろう。あれに仕掛けが施されていると思う。あの像を破壊せよ」
ソラベルはすぐに仕掛けを見つけて、配下に呼びかけた。
すぐに魔力の強い宮廷魔法使いが駆け付けて、数人がかりで仕掛けを破壊してくれるだろう。
「公爵様、仕掛けは宮廷魔法使いが対処します。民の避難はもちろんですが、公爵様も避難してください」
「うんうん。そうしよう」
騎士が避難を促してくる。自分が危険に身を晒すメリットはないので、ソラベルは騎士に同意して避難しかけた。そして、ふと足を止めた。
「わーん、うわああん!」
2歳か、3歳か。
あまり上等ではない服の幼児だ。マフラーを巻いている。幼児の近くには、年配の女性が倒れていた。
老婦人も乳幼児も生命力に乏しいため、生命力吸収事件での死亡率が高い。
……今はまだ息があるようだけど、すぐ助けないと死んでしまうかもしれない。
なぜかその時、ソラベルは過去に自分が実験材料にしてきた何人もの生命を思い出した。
自分の犠牲者というべき人々の影が、周囲にゆらゆらと見えた気がした。もちろん幻だと思うのだが、……その中には過去の妻がいて、子どもがいて、泣いていた。
その嘆く声が、哀れみを誘って胸を締め付けるような響きが――現実の子どもの泣き声と重なった。
「……公爵様っ?」
気づけば、自然と足がそちらへ向いていた。
騒動の中心部、魔法仕掛けに近づくにつれて、魔力と生命力が吸われていくのがわかる。
(私は魔法があまり得意ではないんだよなぁ……)
子どものそばに膝をついて抱き上げたとき、そんなことを思った。
(私は出来損ないなんだ)
そのとき、ソラベル・モンテローザ公爵は現場にいた。
「きゃああああああああ!」
「ここに魔法の仕掛けが……‼︎」
「いやあああああ!」
「た、たすけ……っ」
広場の一角で悲鳴があがり、その付近にいた人々が一斉に逃げていく。
これまでの生命力吸収事件と異なり、爆発の仕掛けも合わさって、現場には外傷を負った被害者も出て、大混乱だ。
「公爵様! また爆発するかもしれませんし、仕掛けもまだ破壊されていません。この場を離れましょう」
騎士が警戒し、護衛してくれようと動いている。
その動きを頼もしく思いながら、ソラベルは冷静に状況をみた。
「騎士は、負傷者の救命と民の避難誘導を優先するように……」
逃げようとした民が倒れ込み、顔色を蒼白にして喘いでいる。
生命力と魔力を吸われて、弱っていく。
爆発の中心地と思われる広場の隅では、破壊された樹木や建造物の破片が散らばっていた。血まみれで倒れている人々もいる。そんな中、傷ひとつなく立っている像もある。
「広場の隅にカピバラ像があるだろう。あれに仕掛けが施されていると思う。あの像を破壊せよ」
ソラベルはすぐに仕掛けを見つけて、配下に呼びかけた。
すぐに魔力の強い宮廷魔法使いが駆け付けて、数人がかりで仕掛けを破壊してくれるだろう。
「公爵様、仕掛けは宮廷魔法使いが対処します。民の避難はもちろんですが、公爵様も避難してください」
「うんうん。そうしよう」
騎士が避難を促してくる。自分が危険に身を晒すメリットはないので、ソラベルは騎士に同意して避難しかけた。そして、ふと足を止めた。
「わーん、うわああん!」
2歳か、3歳か。
あまり上等ではない服の幼児だ。マフラーを巻いている。幼児の近くには、年配の女性が倒れていた。
老婦人も乳幼児も生命力に乏しいため、生命力吸収事件での死亡率が高い。
……今はまだ息があるようだけど、すぐ助けないと死んでしまうかもしれない。
なぜかその時、ソラベルは過去に自分が実験材料にしてきた何人もの生命を思い出した。
自分の犠牲者というべき人々の影が、周囲にゆらゆらと見えた気がした。もちろん幻だと思うのだが、……その中には過去の妻がいて、子どもがいて、泣いていた。
その嘆く声が、哀れみを誘って胸を締め付けるような響きが――現実の子どもの泣き声と重なった。
「……公爵様っ?」
気づけば、自然と足がそちらへ向いていた。
騒動の中心部、魔法仕掛けに近づくにつれて、魔力と生命力が吸われていくのがわかる。
(私は魔法があまり得意ではないんだよなぁ……)
子どものそばに膝をついて抱き上げたとき、そんなことを思った。
(私は出来損ないなんだ)
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