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5、鬼謀のアイオナイト
342、聖女様のとってもすごい回復薬とフェニックスの霊薬
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フィロシュネーの体調が戻った頃、魔法薬の材料を持参したフェリシエンがノイエスタル邸に招かれた。
「姫。面倒でしたら人形でも椅子に置いて『これが姫です』と言ってもよいのですよ」
「それ、国際問題になりません?」
本日は神殿に出かけるというサイラスは、可愛らしい人形を渡してきた。背後では配下の騎士や聖職者たちがなにか騒いで、忙しそうにしている。
「自然神の神殿が不自然に凍り付いているぞー!」
「不自然だ! 不自然きわまりないぞ!」
その騒いでいるセリフがなにより不自然なのでは、とフィロシュネーがツッコミをいれたくなるわざとらしさ。
「わざとね」と確信を抱いたのは、その言葉を向けるターゲットがナチュラだからだ。
「フェニックス様の炎でなんとかなりませんか?」
「ほう、ほう。不自然に、自然神の神殿が……これはわしに対する挑戦、ですか? あるいは戯れか。犯人はルートか、コルテか……」
ナチュラはフットワーク軽く飛翔して、ノイエスタル邸から離れていった。
「……これからお迎えするフェリシエンが『鳥が苦手』だから遠ざけましたの?」
「なんのことでしょう」
「むむ。とぼけるのね」
騎士や聖職者が騒いでいるのだから、犯人はサイラスだろう。フィロシュネーはそう予想した。
「フェリシエンには、わたくしが会いますわ。ハルシオン様からも頼まれていますし」
魔法薬を調合する場所は、ノイエスタル邸の敷地内にある、専用の調薬室だ。
部屋の中央に作業スペースがあり、少し離れたところに休憩用のソファセットがあって、その近くに資料や材料が並ぶ棚がある。
壁際には騎士が何人も並ぶ、微妙に物々しい雰囲気。
そして、大量の鳥が鳥籠に入れられている。
鳥籠は床に置かれていたり、天上から吊るされていたりして、ピイピイとさえずる鳥たちの声が賑やかだ。
騎士たちに囲まれて調薬室に現れたフェリシエンは、「招かれた」というより「連行された」という雰囲気だった。
「いらっしゃいませ。歓迎いたしますわ」
「吾輩は鳥が苦手だと言ったはずだが。この麻縄はなんだね」
「えっ」
言われてみれば、腰のあたりにグルリと麻縄が巻かれて縄の先端を護衛役のギネスが持っている。他国の有力者に対する待遇ではない。
(サイラス。何をしていますのよ)
フィロシュネーはびっくりしたのだが。
「空国の王族の方々は麻縄がお好きなので、おもてなしをさせていただきました!」
ギネスは堂々と言い放ち、麻縄の先端をフィロシュネーに預けた。
「そのような事実は……あるが」
「ありますわね……」
「吾輩は麻縄を好まない」
「お好きだと言われたらどうしようかと思いましたわ」
フェリシエンが求めるので、フィロシュネーは麻縄を解いてあげた。
「この無礼について抗議しても無駄なのだろうな」
「抗議を止めはしませんけれど……」
「ハルシオン陛下は、友好的にするようにと仰せなのだ」
「わたくしも、友好の意思はありますのよ」
ぶつぶつと文句を言いながら、フェリシエンは「とにかく、目的を果たせれば文句は言わない」と結論を提示した。ちょっと気まずい。
「失礼をお詫びしますわ」
「謝罪に感謝する」
麻縄を片付けさせて謝罪すると、フェリシエンは水に流してくれるようだった。よかった。鳥が苦手と言っていたが、見た感じ平気そうだ。
(フェリシエンが苦手なのは、フェニックス?)
フィロシュネーは、そう感じ取った。思えばレクシオ山に登ったときも、聖域の外で魔獣を釣る作戦を申し出たときに違和感があったのだ。
騎士がテーブルの上に材料を運んでくれる。
明るい黄緑色の葉っぱがハート型をしている魔法植物セイセリジ。
ラルム・デュ・フェニックスを砕いた粉末。
ミストドラゴンのヒゲ。魔法植物アルダーマールの果汁。淡く光る粉に、小瓶入りのカラフルな液体――材料費は、空国が負担してくれたらしい。
「フェニックスの霊薬をつくるのでしたわね」
「いかにも」
「わたくし、フェニックスの霊薬というものがどんなお薬なのかも知らないのです。でも、サイラスがレシピを用意してくれていますの」
「……」
レシピを見せると、フェリシエンはそれを持ってソファセットに向かった。
フィロシュネーが向かいのソファに座ると、お茶とお菓子が運ばれてくる。
「レシピが二つある」
フェリシエンは片方をフィロシュネーに渡してきた。
見ると、レシピには「聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~」と書いてある。サイラスの文字だ。
「このお薬は、従来の回復薬よりとってもすごい効能が期待できます。レシピ通りに調合して、材料をまとめたお鍋がぴかぴか光るまで魔力を注いでください。そのあと、材料を煮込みます。煮込むときは、大人に任せましょう」
簡単な言葉で書かれた文と「大人に任せましょう」が、子ども扱いの気配を濃厚に漂わせている。
「ふむ。フィロシュネー姫は春には十七におなりだと記憶しているが。子ども扱いされているのだな」
フェリシエンが意外にも興味を示している。その通り、と頷いてしまいそうな感想まで。
「き、気にしないでくださいます?」
「承知した。さて、こちらが『フェニックスの霊薬』レシピだ」
フェニックスの霊薬レシピを見せてくれるので読んでみると、こちらもサイラスの文字で説明が書いてあった。
「指定した材料を混ぜて三日分の月光を浴びせたあと、『聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~』と混ぜて煮込みましょう」
『聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~』は『フェニックスの霊薬』の材料らしい。
ふむふむ、と続きを読んで、フィロシュネーは目を瞠った。
「フェニックスの霊薬は不老症の人間の身体組織を変質させ、限られた寿命の常人へと変えることが期待できるって書いてありますわ」
フェリシエンを見ると、「いかにも」と頷いた。
知っていたらしい。
「まあ。このお薬、すごいお薬ですのね。不老症で悩んでいる方にとっても喜ばれるお薬ですわ。こういうのを世紀の大発明って言いますの!」
フィロシュネーは大興奮した。
だって、この薬があればダーウッドも普通の人間になれるではないか。
成長が止まっていた体が成長するのだ。
それに、ずーっと生きているのが嫌だ、という悩みを抱いて苦しんでいる世界中の不老症の人々が救われる。
「とってもすごいお薬ですわ!」
目を輝かせてフェリシエンを見れば、血色の瞳は何かもの言いたげだった。
そういえば、サイラスがなにか言っていた気がする。
(欲しいものがあるのでしたっけ、フェリシエン?)
フィロシュネーは記憶を探りつつ、にっこりとした。
「……お薬を開発した功績者は、あなた。わたくしはただのお手伝いさんで構いませんわ」
明るく言ってあげると、血色の瞳がきらきらと輝きを増した気がする。
――嬉しそう。
これは、名誉欲?
功績をあげて、讃えられたい?
……おかしなサイラス。不思議なフェリシエン。
レシピの続きには、気になることも書いてある。
『魔力を集める必要はありますし、若返ることはできないのですが、普通の人間を不老症にする方法もあります。ご参考までに』
(そちらもセットで開発したら、とってもすごいことになるのでは?)
でも、そちらの方法は書かれていない。
「ひとまず、レシピにあるお薬をつくってみましょうか」
フィロシュネーは魔法薬作りに乗り出した。
「姫。面倒でしたら人形でも椅子に置いて『これが姫です』と言ってもよいのですよ」
「それ、国際問題になりません?」
本日は神殿に出かけるというサイラスは、可愛らしい人形を渡してきた。背後では配下の騎士や聖職者たちがなにか騒いで、忙しそうにしている。
「自然神の神殿が不自然に凍り付いているぞー!」
「不自然だ! 不自然きわまりないぞ!」
その騒いでいるセリフがなにより不自然なのでは、とフィロシュネーがツッコミをいれたくなるわざとらしさ。
「わざとね」と確信を抱いたのは、その言葉を向けるターゲットがナチュラだからだ。
「フェニックス様の炎でなんとかなりませんか?」
「ほう、ほう。不自然に、自然神の神殿が……これはわしに対する挑戦、ですか? あるいは戯れか。犯人はルートか、コルテか……」
ナチュラはフットワーク軽く飛翔して、ノイエスタル邸から離れていった。
「……これからお迎えするフェリシエンが『鳥が苦手』だから遠ざけましたの?」
「なんのことでしょう」
「むむ。とぼけるのね」
騎士や聖職者が騒いでいるのだから、犯人はサイラスだろう。フィロシュネーはそう予想した。
「フェリシエンには、わたくしが会いますわ。ハルシオン様からも頼まれていますし」
魔法薬を調合する場所は、ノイエスタル邸の敷地内にある、専用の調薬室だ。
部屋の中央に作業スペースがあり、少し離れたところに休憩用のソファセットがあって、その近くに資料や材料が並ぶ棚がある。
壁際には騎士が何人も並ぶ、微妙に物々しい雰囲気。
そして、大量の鳥が鳥籠に入れられている。
鳥籠は床に置かれていたり、天上から吊るされていたりして、ピイピイとさえずる鳥たちの声が賑やかだ。
騎士たちに囲まれて調薬室に現れたフェリシエンは、「招かれた」というより「連行された」という雰囲気だった。
「いらっしゃいませ。歓迎いたしますわ」
「吾輩は鳥が苦手だと言ったはずだが。この麻縄はなんだね」
「えっ」
言われてみれば、腰のあたりにグルリと麻縄が巻かれて縄の先端を護衛役のギネスが持っている。他国の有力者に対する待遇ではない。
(サイラス。何をしていますのよ)
フィロシュネーはびっくりしたのだが。
「空国の王族の方々は麻縄がお好きなので、おもてなしをさせていただきました!」
ギネスは堂々と言い放ち、麻縄の先端をフィロシュネーに預けた。
「そのような事実は……あるが」
「ありますわね……」
「吾輩は麻縄を好まない」
「お好きだと言われたらどうしようかと思いましたわ」
フェリシエンが求めるので、フィロシュネーは麻縄を解いてあげた。
「この無礼について抗議しても無駄なのだろうな」
「抗議を止めはしませんけれど……」
「ハルシオン陛下は、友好的にするようにと仰せなのだ」
「わたくしも、友好の意思はありますのよ」
ぶつぶつと文句を言いながら、フェリシエンは「とにかく、目的を果たせれば文句は言わない」と結論を提示した。ちょっと気まずい。
「失礼をお詫びしますわ」
「謝罪に感謝する」
麻縄を片付けさせて謝罪すると、フェリシエンは水に流してくれるようだった。よかった。鳥が苦手と言っていたが、見た感じ平気そうだ。
(フェリシエンが苦手なのは、フェニックス?)
フィロシュネーは、そう感じ取った。思えばレクシオ山に登ったときも、聖域の外で魔獣を釣る作戦を申し出たときに違和感があったのだ。
騎士がテーブルの上に材料を運んでくれる。
明るい黄緑色の葉っぱがハート型をしている魔法植物セイセリジ。
ラルム・デュ・フェニックスを砕いた粉末。
ミストドラゴンのヒゲ。魔法植物アルダーマールの果汁。淡く光る粉に、小瓶入りのカラフルな液体――材料費は、空国が負担してくれたらしい。
「フェニックスの霊薬をつくるのでしたわね」
「いかにも」
「わたくし、フェニックスの霊薬というものがどんなお薬なのかも知らないのです。でも、サイラスがレシピを用意してくれていますの」
「……」
レシピを見せると、フェリシエンはそれを持ってソファセットに向かった。
フィロシュネーが向かいのソファに座ると、お茶とお菓子が運ばれてくる。
「レシピが二つある」
フェリシエンは片方をフィロシュネーに渡してきた。
見ると、レシピには「聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~」と書いてある。サイラスの文字だ。
「このお薬は、従来の回復薬よりとってもすごい効能が期待できます。レシピ通りに調合して、材料をまとめたお鍋がぴかぴか光るまで魔力を注いでください。そのあと、材料を煮込みます。煮込むときは、大人に任せましょう」
簡単な言葉で書かれた文と「大人に任せましょう」が、子ども扱いの気配を濃厚に漂わせている。
「ふむ。フィロシュネー姫は春には十七におなりだと記憶しているが。子ども扱いされているのだな」
フェリシエンが意外にも興味を示している。その通り、と頷いてしまいそうな感想まで。
「き、気にしないでくださいます?」
「承知した。さて、こちらが『フェニックスの霊薬』レシピだ」
フェニックスの霊薬レシピを見せてくれるので読んでみると、こちらもサイラスの文字で説明が書いてあった。
「指定した材料を混ぜて三日分の月光を浴びせたあと、『聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~』と混ぜて煮込みましょう」
『聖女様のとってもすごい回復薬~セイント・リジェネレイト・ポーション~』は『フェニックスの霊薬』の材料らしい。
ふむふむ、と続きを読んで、フィロシュネーは目を瞠った。
「フェニックスの霊薬は不老症の人間の身体組織を変質させ、限られた寿命の常人へと変えることが期待できるって書いてありますわ」
フェリシエンを見ると、「いかにも」と頷いた。
知っていたらしい。
「まあ。このお薬、すごいお薬ですのね。不老症で悩んでいる方にとっても喜ばれるお薬ですわ。こういうのを世紀の大発明って言いますの!」
フィロシュネーは大興奮した。
だって、この薬があればダーウッドも普通の人間になれるではないか。
成長が止まっていた体が成長するのだ。
それに、ずーっと生きているのが嫌だ、という悩みを抱いて苦しんでいる世界中の不老症の人々が救われる。
「とってもすごいお薬ですわ!」
目を輝かせてフェリシエンを見れば、血色の瞳は何かもの言いたげだった。
そういえば、サイラスがなにか言っていた気がする。
(欲しいものがあるのでしたっけ、フェリシエン?)
フィロシュネーは記憶を探りつつ、にっこりとした。
「……お薬を開発した功績者は、あなた。わたくしはただのお手伝いさんで構いませんわ」
明るく言ってあげると、血色の瞳がきらきらと輝きを増した気がする。
――嬉しそう。
これは、名誉欲?
功績をあげて、讃えられたい?
……おかしなサイラス。不思議なフェリシエン。
レシピの続きには、気になることも書いてある。
『魔力を集める必要はありますし、若返ることはできないのですが、普通の人間を不老症にする方法もあります。ご参考までに』
(そちらもセットで開発したら、とってもすごいことになるのでは?)
でも、そちらの方法は書かれていない。
「ひとまず、レシピにあるお薬をつくってみましょうか」
フィロシュネーは魔法薬作りに乗り出した。
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