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幕間のお話6「死の神コルテと人形のお姫さま」
319、人類共同国家と、死の神コルテのお話
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呪術王カントループが人形を作っていた頃。
人形にまだ心が宿らなかった時代。
滅んだ世界から逃げた舟人たちは、新天地に降り立ち、この世界に住むことを決めた。
九つの部族がそれぞれの長のもとで集落を作り、『ク(人類)・シャール(共同)国』という国をつくった。
旗の色は赤を基調にしている。
「故郷を忘れるな、流れた血を忘れるな」という意味がこめられているのだ。
その旗を見て、誰かが『紅旗』と呼んだ。
すると、別の誰かが『紅国』と国名を彩って、彼らの国は『ク・シャール紅国』となったのだった。
さて、そんなク・シャール紅国の九つの部族のうちひとつで、族長が死んだ。
のちの時代で『神』と呼ばれるようになる青年コルテは、族長の息子で、まだ普通の人間だった。
年齢は、十九歳。
褐色の肌に艶のある黒髪、黒瑪瑙のような瞳をした美青年である。
『部族長の息子』という特別な身分で容姿も美しく能力も高いが、残念ながらコルテには人望がない。
どうもコルテは表情筋が強張りがちなようで、不愛想で、冷たく怖い印象を与えてしまう。
悪役顔とでもいうのか、他者から見ると「他者を蔑み、悪だくみをしている」というように見えるらしい。
では口角を意識してあげて見ればどうかというと、今度は「悪だくみが成功して『想定通り、しめしめ』とほくそ笑んでいる」ように見えるという。
「そんなことはないですよ」と言っても、その声が冷たく聞こえるらしく、逆効果。
「陰謀を巡らせているぞ」とか「悪だくみしている」と勘違いされる日々なのだ。
……今だってヒソヒソとささやかれている。
「コルテ様は、父君の葬儀の時間だというのに遅刻か」
「他の方だったらおつらいのだろうとご同情申し上げるところだが、あの方だからなあ。時間がもったいないとでも思っておいでなのではないか」
「案外、族長になりたくて父君に毒でも盛ったのでは」
「おい、なんてこと言うんだ。やりかねないとは思うが」
ひどい噂だ。
(誤解されやすい俺が悪い)
若き青年コルテは、部族の民が噂するのを聞きながら天幕に入った。内心は傷ついているが、表情は平然としている。
「コルテ様!」
「い、今のを聞いて……!?」
長身痩躯のコルテは、存在感がある。
平然とした表情は、他者の目からすると凄みがあった。
「し、し、失礼しました!」
「お許しを……!」
天幕の内側にいた人々はすぐに気づいて頭を下げた。
怯えている。
咎めるつもりもないし、怯えさせるつもりはなかった――コルテは気を使った。
「なんの話です? 俺は聞いていませんでしたが」
安心させようと思って口角を持ち上げ、父の棺に近づき、祈りを捧げる。
「ひええ、今の恐ろしい笑みを見たか?」
「お前の言葉は金輪際聞こえなくなるってよ」
「そ、それってどういう」
意図に反した解釈のされ方だ。しかし「そうではありませんが?」と言うと、ますます民は怯えてしまう。
(俺はただ「俺は怖くありませんよ」と言いたいだけなのに)
胸のうちは複雑だった。
物言わぬ躯となった父親の死因が、『自分の許嫁に手を出した挙句の腹上死』であることも、また複雑な気持ちに拍車をかけている。
「父君のご遺体を前にして、悲しむ素振りひとつ見せぬ」
と、そんな声も聞こえてくる……。
(確かに、悲しいとはあまり思わない)
コルテは認めた。
父は、ひとことで言うとクズであった。
コルテが物心ついて初めて聞いた父の言葉は、「酒を飲み過ぎると体に悪い? 民との約束を守れ? 知るか! わしは善人ではない! 善人ではないわしに善を期待するな、命令するな。黙ってろ!」と母をなじる声であった。
記憶に強烈に残っているのは、そのあと母を殴り、蹴り、幼きコルテが母を助けようと駆け寄ると「じゃまをするな!」と怒鳴って壁に投げつけた――という恐怖体験だ。
「ち、父上……」
当時から無表情ぶりで知られていたコルテが心の中で震えあがりながら呼ぶと、父は「お前はこんなときも落ち着き払っていて可愛げがない」と顔をしかめた。
コルテがグッと奥歯をかみしめて目に力を入れると、父はぎょっとした。
幼い息子が殺意あふれる悪鬼のような形相にでも見えたのか、「なんだ、子どものくせに」と青ざめて一歩後退った。
「コルテよ、お前の母に非があるのだ。女のくせに偉ぶってわしに指図したのが悪い。いいか、わしは偉いのだ。お前もわきまえて、そんな風に殺意を向けるのをやめよ。相手に非がなければ、わしは暴力をふるわぬ……聖人君子なのだからな!」
さっきは「わしは善人ではない」と言ったのに。
幼心に納得しかねていたが、母は「お父様のおっしゃるとおりです、コルテ。お母様が悪いの」とコルテを抱きしめて落ち着くように背中を撫でてくれた。
そして、数日後に母は死んだ。
父にふるわれた暴力が死因であったが、父はそれを隠して「持病が急に悪化した」などとほざいていた。
さらに、コルテが成長すると父は断りなく一方的にコルテの許嫁を決めた。
政略目的だ。
相手は他部族の族長の娘で性格に難があると評判だった。
実際に会えば、自分の部族の自慢をしつつコルテの部族をそれと比較して貶めたりするような性格で、なるほどと思ったものだ。
「コルテ様は武術に秀でていらして魔獣狩りの武勇伝があるようですけど、あたしの武勇伝も教えてあげます。んっふふ。あたしよりも可愛い娘がいたから、あたしに嫌がらせをしたことにして部族から追放してあげたのです。乙女はこうやって日々戦っているんですよ」
この娘とは、話が合わない。
ただでさえ仕事をしないコルテの表情筋はスンッとなって、凍り付いた。
「コルテ様ってつまらない方」
「……」
接してみればみるほど、嫌になってくる。
愛情などはカケラも生まれなかったが、コルテは義務として許嫁を大切にしようとした。
「すみません、俺は女性に慣れていないのです」
「格好悪い。あなたの父君のほうがよほど話のわかる方ですよ」
ふんっと鼻で笑った許嫁は、後日、とんでもないことをしでかした。
なんと父と関係したのだ。
そして、父は腹上死したのある。
許嫁と父は、相打ちのように首を絞められ、首を絞め、……お互いの首を絞め合って死んでいた。
そういうプレイだったのか、はたまた行為の最中に喧嘩したのかは、謎である。
「うちの娘が! なんてことだ……」
「父が申し訳ありません」
許嫁の娘は他部族の族長の娘だったので、当然、相手部族の長は大激怒である。
その長の名はヴィニュエスといい、有力者であった。
ヴィニュエスは少年のころに部族長になり、現在は壮年。
部族長である期間が長く、発言力が大きい。他の部族長にも顔が利く。
一方、コルテは、評判が最悪で、これから部族長になる新米だ。
「お前か! お前が裏で陰謀が巡らせたのだな! だから評判の悪いコルテの許嫁にするのは気が進まなかったのだ……」
「陰謀など巡らせていません」
ヴィニュエスは、九部族が集まる部族会議で決闘しようと申し込んできた。
……頭の痛い話であった。
人形にまだ心が宿らなかった時代。
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旗の色は赤を基調にしている。
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すると、別の誰かが『紅国』と国名を彩って、彼らの国は『ク・シャール紅国』となったのだった。
さて、そんなク・シャール紅国の九つの部族のうちひとつで、族長が死んだ。
のちの時代で『神』と呼ばれるようになる青年コルテは、族長の息子で、まだ普通の人間だった。
年齢は、十九歳。
褐色の肌に艶のある黒髪、黒瑪瑙のような瞳をした美青年である。
『部族長の息子』という特別な身分で容姿も美しく能力も高いが、残念ながらコルテには人望がない。
どうもコルテは表情筋が強張りがちなようで、不愛想で、冷たく怖い印象を与えてしまう。
悪役顔とでもいうのか、他者から見ると「他者を蔑み、悪だくみをしている」というように見えるらしい。
では口角を意識してあげて見ればどうかというと、今度は「悪だくみが成功して『想定通り、しめしめ』とほくそ笑んでいる」ように見えるという。
「そんなことはないですよ」と言っても、その声が冷たく聞こえるらしく、逆効果。
「陰謀を巡らせているぞ」とか「悪だくみしている」と勘違いされる日々なのだ。
……今だってヒソヒソとささやかれている。
「コルテ様は、父君の葬儀の時間だというのに遅刻か」
「他の方だったらおつらいのだろうとご同情申し上げるところだが、あの方だからなあ。時間がもったいないとでも思っておいでなのではないか」
「案外、族長になりたくて父君に毒でも盛ったのでは」
「おい、なんてこと言うんだ。やりかねないとは思うが」
ひどい噂だ。
(誤解されやすい俺が悪い)
若き青年コルテは、部族の民が噂するのを聞きながら天幕に入った。内心は傷ついているが、表情は平然としている。
「コルテ様!」
「い、今のを聞いて……!?」
長身痩躯のコルテは、存在感がある。
平然とした表情は、他者の目からすると凄みがあった。
「し、し、失礼しました!」
「お許しを……!」
天幕の内側にいた人々はすぐに気づいて頭を下げた。
怯えている。
咎めるつもりもないし、怯えさせるつもりはなかった――コルテは気を使った。
「なんの話です? 俺は聞いていませんでしたが」
安心させようと思って口角を持ち上げ、父の棺に近づき、祈りを捧げる。
「ひええ、今の恐ろしい笑みを見たか?」
「お前の言葉は金輪際聞こえなくなるってよ」
「そ、それってどういう」
意図に反した解釈のされ方だ。しかし「そうではありませんが?」と言うと、ますます民は怯えてしまう。
(俺はただ「俺は怖くありませんよ」と言いたいだけなのに)
胸のうちは複雑だった。
物言わぬ躯となった父親の死因が、『自分の許嫁に手を出した挙句の腹上死』であることも、また複雑な気持ちに拍車をかけている。
「父君のご遺体を前にして、悲しむ素振りひとつ見せぬ」
と、そんな声も聞こえてくる……。
(確かに、悲しいとはあまり思わない)
コルテは認めた。
父は、ひとことで言うとクズであった。
コルテが物心ついて初めて聞いた父の言葉は、「酒を飲み過ぎると体に悪い? 民との約束を守れ? 知るか! わしは善人ではない! 善人ではないわしに善を期待するな、命令するな。黙ってろ!」と母をなじる声であった。
記憶に強烈に残っているのは、そのあと母を殴り、蹴り、幼きコルテが母を助けようと駆け寄ると「じゃまをするな!」と怒鳴って壁に投げつけた――という恐怖体験だ。
「ち、父上……」
当時から無表情ぶりで知られていたコルテが心の中で震えあがりながら呼ぶと、父は「お前はこんなときも落ち着き払っていて可愛げがない」と顔をしかめた。
コルテがグッと奥歯をかみしめて目に力を入れると、父はぎょっとした。
幼い息子が殺意あふれる悪鬼のような形相にでも見えたのか、「なんだ、子どものくせに」と青ざめて一歩後退った。
「コルテよ、お前の母に非があるのだ。女のくせに偉ぶってわしに指図したのが悪い。いいか、わしは偉いのだ。お前もわきまえて、そんな風に殺意を向けるのをやめよ。相手に非がなければ、わしは暴力をふるわぬ……聖人君子なのだからな!」
さっきは「わしは善人ではない」と言ったのに。
幼心に納得しかねていたが、母は「お父様のおっしゃるとおりです、コルテ。お母様が悪いの」とコルテを抱きしめて落ち着くように背中を撫でてくれた。
そして、数日後に母は死んだ。
父にふるわれた暴力が死因であったが、父はそれを隠して「持病が急に悪化した」などとほざいていた。
さらに、コルテが成長すると父は断りなく一方的にコルテの許嫁を決めた。
政略目的だ。
相手は他部族の族長の娘で性格に難があると評判だった。
実際に会えば、自分の部族の自慢をしつつコルテの部族をそれと比較して貶めたりするような性格で、なるほどと思ったものだ。
「コルテ様は武術に秀でていらして魔獣狩りの武勇伝があるようですけど、あたしの武勇伝も教えてあげます。んっふふ。あたしよりも可愛い娘がいたから、あたしに嫌がらせをしたことにして部族から追放してあげたのです。乙女はこうやって日々戦っているんですよ」
この娘とは、話が合わない。
ただでさえ仕事をしないコルテの表情筋はスンッとなって、凍り付いた。
「コルテ様ってつまらない方」
「……」
接してみればみるほど、嫌になってくる。
愛情などはカケラも生まれなかったが、コルテは義務として許嫁を大切にしようとした。
「すみません、俺は女性に慣れていないのです」
「格好悪い。あなたの父君のほうがよほど話のわかる方ですよ」
ふんっと鼻で笑った許嫁は、後日、とんでもないことをしでかした。
なんと父と関係したのだ。
そして、父は腹上死したのある。
許嫁と父は、相打ちのように首を絞められ、首を絞め、……お互いの首を絞め合って死んでいた。
そういうプレイだったのか、はたまた行為の最中に喧嘩したのかは、謎である。
「うちの娘が! なんてことだ……」
「父が申し訳ありません」
許嫁の娘は他部族の族長の娘だったので、当然、相手部族の長は大激怒である。
その長の名はヴィニュエスといい、有力者であった。
ヴィニュエスは少年のころに部族長になり、現在は壮年。
部族長である期間が長く、発言力が大きい。他の部族長にも顔が利く。
一方、コルテは、評判が最悪で、これから部族長になる新米だ。
「お前か! お前が裏で陰謀が巡らせたのだな! だから評判の悪いコルテの許嫁にするのは気が進まなかったのだ……」
「陰謀など巡らせていません」
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