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幕間のお話3
223、おぬしらの師匠は、人でなしであった
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外見年齢を進化させたダイロスは、船で数か月を過ごした。
船内は過ごしやすく、生活には不自由がなかった。
アエロカエルスとトール爺さんとは、哲学や倫理、船の今後についての話をする仲となった。
ノルディーニュやエリュタニアは急に加齢したダイロスに戸惑いつつも、変わらぬ友好的な交流をし続けてくれた。
ソルスティスは外見年齢にはあまり関心がないようで、なにも変化していないように接してくれる。
ルエトリーは「前の方がよかった」と言って、残念がっていた。
聞くところによると、加齢する前の「坊や」のダイロスの外見が割とタイプだったらしい。
そんなことを加齢してから言われても、もう遅い。
ダイロスは冷めた気持ちで「さようでしたか」と言葉を返した。ルエトリーとはそれきりだ。
自分たちには、特別な男女の仲に進展するだけの縁がなかったのだ。
何かがほんの少し違っていれば、あるいは進展したのかもしれないが、そうならなかった。
過去にはもう戻れない。
肉体は若返らないし、その必要性も感じない。惹かれる気持ちも、もう冷めた。
だから、もういいのだ――ダイロスは、そう思った。
そして、ダイロスに元の世界からの迎えが来た。
誰が迎えに来たのかというと、弟子たちだった。
迎えに来る側、迎えに来てもらう側、双方に相手への好意がないといけないという決まりだったから、意外だった。
その日、ダイロスはノルディーニュ、エリュタニアの閨特訓を監督していた。
閨特訓とは、ベッドの上で女性と仲良く後継者をつくる練習である。なんと、エリュタニアはその教育を受けずに成人したらしく、友人を頼って学ぼうとしているのだとか。
「俺は何事も優秀でありたい。他者から『さすが、陛下はなんでもお出来になる。傑物です』と言われたいのだ」
エリュタニアは、恐ろしいことを言う。
つまりこの発言から察するに、彼は『陛下』と呼ばれる身分なのだ。
王様だ。王を失った国は、さぞ混乱しているに違いない……。
そして、さらに恐ろしいことに、ノルディーニュの態度はエリュタニアに対して、臣下の接し方ではない。身分の差など存在しないように、対等に接するのだ。
兄弟なのかと聞いてみたところ、違うと言われた。
これ、下手したら「二人そろって王です」という真相があったりするのでは? ――ダイロスは深く考えるのをやめた。
「エリュタニア、この人形を女性だと思うのだ」
「よし」
青年二人は、人形をベッドに寝かせて楽しそうに遊んでいる。
「しかし、人形相手だと盛り上がらないな」
「ふっ、呪術で外見を似せてみようか?」
「ははっ、それも嫌だ」
「ははは!」
特訓というが、これは単に遊んでいるだけではないか、と、ダイロスは感想を抱いた。
肉体を鍛えるにせよ、芸事にせよ、よくあることである。
その道を進み、山の頂きを目指し、究めんと欲する修道者、修行者というわけではない。その道にいる誰かと励まし合い、相談し合う自分を楽しんでいるのだ。
ダイロスは、その心に共感した。
ダイロスとて、哲学や倫理、船の今後について、実はそれほどの熱量を持っていない。
だが、アエロカエルスやトール爺さんに憧憬めいた想いを抱き、彼らと哲学や倫理、船の今後についての話をする自分は、心地いい。
だから「哲学や倫理、船の今後について真剣に考えていますよ、自分はアエロカエルスやトール爺さんの仲間ですよ」という顔をするのだ。
「ほら、照れていないで優しくキスしてみせろ」
「こいつめ、どんどん遠慮がなくなるな。からかいやがる」
「ふふっ、からかってなど、いないとも。練習なのだから、やってみないと」
ノルディーニュが笑いながらけしかけて、エリュタニアが人形の鎖骨のあたりにキスをしてみせたとき、迎えの知らせが来た。知らせを持ってきたのは、ルエトリーだった。
「……ダイロスに、お迎えよ。獣人が二人」
淋しそうな声で言ってくれるじゃないか。
惜しむような眼差しを向けてくれるじゃないか。
「なんと、わしに。獣人か……弟子たちじゃろうなあ……他に心当たりがないわい」
ダイロスは目を瞬かせ、扉へと向かった。
「やあ、ダイロス殿はおめでとう。それにしても、俺たちの迎えはなかなか来ないな」
「エリュタニア、辛抱強く待とう。焦ってはいけないよ」
エリュタニアとノルディーニュはダイロスの迎えを喜びつつ、寂しそうに笑った。
そして、こっそりと小荷物を託してくれた。
「これを持って行ってくれ」
ひそやかな声に頷いたダイロスの背後で、爆発が起きる。懐かしい。グレイが帰還したときのように、エリュタニアがやったのだ。
「何度も同じ手に引っ掛かると思っているの?」
ルエトリーが不機嫌に言い放ち、素早く爆発を抑えている。
「いい加減、許さないわ。今日は処す……!」
大丈夫だろうか? 背後では争いの音や声が聞こえているが、ダイロスは扉へと駆けた。
背後も気になるが、帰りたい気持ちもある。
弟子を見たい、とも、思う。気になっている。
あいつらは、どんな顔をして迎えに来たのだ。
老いた自分を見て、あいつらはどんな反応をするのか。
とくり、とくりと鼓動が騒ぐ。
扉にたどり着くと、二人の弟子の姿が映っていた。声も聞こえる。
「ほら、あっただろうアロイス。扉だよ。メアリーが言ってたんだ。カサンドラの発見らしいけど」
「この扉がなんだっていうんだ、シェイド」
「月隠に開くんだってば。ぼけるなよ」
「扉が開くからなんだというんだって聞いてるんだろ。お前はいちいち話がズレて伝わるから面倒だよ」
ああ、懐かしい。しょうもないことで喧嘩をしている。変わっていない。
ダイロスの口元に、無意識の笑みが生まれた。
頬がゆるむ。
――なるほど、好意。自分は、弟子を懐かしむ気持ちがある。
慕わしく、微笑ましく、好ましく思う気持ちがある。
「アロイス、シェイド。おぬしら、わしがわかるかの? 扉を開けて、中には入らず、下がるがよい」
声は以前と変わっていたが、弟子たちは一言で「師匠⁉」と察してくれたようだった。
扉が開く。
背後に、船人たちや客人仲間の気配がする。ダイロスは、大きく息を吸った。そして、想いを言葉に変えて、響かせた。
「友よ、友たちよ。大いなる先達らよ。わしは感謝する。わしを人間にしてくれて、ありがとう。さらばじゃ……どうか、皆の今後に幸いがありますように!」
こちらとあちらの境目が、はっきりと知覚できる。
一歩、踏み出して、「ああ、帰るのだ」と感じた。
それは、喜びと淋しさが半々にまざったような感傷だった。
「ありがとう。もう会えぬ皆。ありがとう……」
ダイロスは敬愛と親愛の情を全力で言葉にこめて、船を後にした。
「弟子たちよ。今まで、すまなかった。おぬしらの師匠は、人でなしであった。だが、本日より師匠は人間の情を持ち、おぬしらに親のように愛情深くなろうと思う……そうできると、思うのじゃ」
扉を離れ、一歩、一歩、前に進む。
記憶が一秒、一秒、失われていく。夢から覚めて、夢の内容を忘れていくみたいな感覚だ。
迎えてくれた弟子たちの顔を順に見て、ダイロスは老いた顔に優しい笑顔を浮かべた。
「ありがとう。ありがとう……」
感謝の言葉を言い切ったとき、ダイロスは船で過ごした間の記憶を完全に喪失した。
だから、船人たちや、エリュタニアや、ノルディーニュがその後どんな人生を過ごし、どんな結末を迎えたのかは、謎である。
船内は過ごしやすく、生活には不自由がなかった。
アエロカエルスとトール爺さんとは、哲学や倫理、船の今後についての話をする仲となった。
ノルディーニュやエリュタニアは急に加齢したダイロスに戸惑いつつも、変わらぬ友好的な交流をし続けてくれた。
ソルスティスは外見年齢にはあまり関心がないようで、なにも変化していないように接してくれる。
ルエトリーは「前の方がよかった」と言って、残念がっていた。
聞くところによると、加齢する前の「坊や」のダイロスの外見が割とタイプだったらしい。
そんなことを加齢してから言われても、もう遅い。
ダイロスは冷めた気持ちで「さようでしたか」と言葉を返した。ルエトリーとはそれきりだ。
自分たちには、特別な男女の仲に進展するだけの縁がなかったのだ。
何かがほんの少し違っていれば、あるいは進展したのかもしれないが、そうならなかった。
過去にはもう戻れない。
肉体は若返らないし、その必要性も感じない。惹かれる気持ちも、もう冷めた。
だから、もういいのだ――ダイロスは、そう思った。
そして、ダイロスに元の世界からの迎えが来た。
誰が迎えに来たのかというと、弟子たちだった。
迎えに来る側、迎えに来てもらう側、双方に相手への好意がないといけないという決まりだったから、意外だった。
その日、ダイロスはノルディーニュ、エリュタニアの閨特訓を監督していた。
閨特訓とは、ベッドの上で女性と仲良く後継者をつくる練習である。なんと、エリュタニアはその教育を受けずに成人したらしく、友人を頼って学ぼうとしているのだとか。
「俺は何事も優秀でありたい。他者から『さすが、陛下はなんでもお出来になる。傑物です』と言われたいのだ」
エリュタニアは、恐ろしいことを言う。
つまりこの発言から察するに、彼は『陛下』と呼ばれる身分なのだ。
王様だ。王を失った国は、さぞ混乱しているに違いない……。
そして、さらに恐ろしいことに、ノルディーニュの態度はエリュタニアに対して、臣下の接し方ではない。身分の差など存在しないように、対等に接するのだ。
兄弟なのかと聞いてみたところ、違うと言われた。
これ、下手したら「二人そろって王です」という真相があったりするのでは? ――ダイロスは深く考えるのをやめた。
「エリュタニア、この人形を女性だと思うのだ」
「よし」
青年二人は、人形をベッドに寝かせて楽しそうに遊んでいる。
「しかし、人形相手だと盛り上がらないな」
「ふっ、呪術で外見を似せてみようか?」
「ははっ、それも嫌だ」
「ははは!」
特訓というが、これは単に遊んでいるだけではないか、と、ダイロスは感想を抱いた。
肉体を鍛えるにせよ、芸事にせよ、よくあることである。
その道を進み、山の頂きを目指し、究めんと欲する修道者、修行者というわけではない。その道にいる誰かと励まし合い、相談し合う自分を楽しんでいるのだ。
ダイロスは、その心に共感した。
ダイロスとて、哲学や倫理、船の今後について、実はそれほどの熱量を持っていない。
だが、アエロカエルスやトール爺さんに憧憬めいた想いを抱き、彼らと哲学や倫理、船の今後についての話をする自分は、心地いい。
だから「哲学や倫理、船の今後について真剣に考えていますよ、自分はアエロカエルスやトール爺さんの仲間ですよ」という顔をするのだ。
「ほら、照れていないで優しくキスしてみせろ」
「こいつめ、どんどん遠慮がなくなるな。からかいやがる」
「ふふっ、からかってなど、いないとも。練習なのだから、やってみないと」
ノルディーニュが笑いながらけしかけて、エリュタニアが人形の鎖骨のあたりにキスをしてみせたとき、迎えの知らせが来た。知らせを持ってきたのは、ルエトリーだった。
「……ダイロスに、お迎えよ。獣人が二人」
淋しそうな声で言ってくれるじゃないか。
惜しむような眼差しを向けてくれるじゃないか。
「なんと、わしに。獣人か……弟子たちじゃろうなあ……他に心当たりがないわい」
ダイロスは目を瞬かせ、扉へと向かった。
「やあ、ダイロス殿はおめでとう。それにしても、俺たちの迎えはなかなか来ないな」
「エリュタニア、辛抱強く待とう。焦ってはいけないよ」
エリュタニアとノルディーニュはダイロスの迎えを喜びつつ、寂しそうに笑った。
そして、こっそりと小荷物を託してくれた。
「これを持って行ってくれ」
ひそやかな声に頷いたダイロスの背後で、爆発が起きる。懐かしい。グレイが帰還したときのように、エリュタニアがやったのだ。
「何度も同じ手に引っ掛かると思っているの?」
ルエトリーが不機嫌に言い放ち、素早く爆発を抑えている。
「いい加減、許さないわ。今日は処す……!」
大丈夫だろうか? 背後では争いの音や声が聞こえているが、ダイロスは扉へと駆けた。
背後も気になるが、帰りたい気持ちもある。
弟子を見たい、とも、思う。気になっている。
あいつらは、どんな顔をして迎えに来たのだ。
老いた自分を見て、あいつらはどんな反応をするのか。
とくり、とくりと鼓動が騒ぐ。
扉にたどり着くと、二人の弟子の姿が映っていた。声も聞こえる。
「ほら、あっただろうアロイス。扉だよ。メアリーが言ってたんだ。カサンドラの発見らしいけど」
「この扉がなんだっていうんだ、シェイド」
「月隠に開くんだってば。ぼけるなよ」
「扉が開くからなんだというんだって聞いてるんだろ。お前はいちいち話がズレて伝わるから面倒だよ」
ああ、懐かしい。しょうもないことで喧嘩をしている。変わっていない。
ダイロスの口元に、無意識の笑みが生まれた。
頬がゆるむ。
――なるほど、好意。自分は、弟子を懐かしむ気持ちがある。
慕わしく、微笑ましく、好ましく思う気持ちがある。
「アロイス、シェイド。おぬしら、わしがわかるかの? 扉を開けて、中には入らず、下がるがよい」
声は以前と変わっていたが、弟子たちは一言で「師匠⁉」と察してくれたようだった。
扉が開く。
背後に、船人たちや客人仲間の気配がする。ダイロスは、大きく息を吸った。そして、想いを言葉に変えて、響かせた。
「友よ、友たちよ。大いなる先達らよ。わしは感謝する。わしを人間にしてくれて、ありがとう。さらばじゃ……どうか、皆の今後に幸いがありますように!」
こちらとあちらの境目が、はっきりと知覚できる。
一歩、踏み出して、「ああ、帰るのだ」と感じた。
それは、喜びと淋しさが半々にまざったような感傷だった。
「ありがとう。もう会えぬ皆。ありがとう……」
ダイロスは敬愛と親愛の情を全力で言葉にこめて、船を後にした。
「弟子たちよ。今まで、すまなかった。おぬしらの師匠は、人でなしであった。だが、本日より師匠は人間の情を持ち、おぬしらに親のように愛情深くなろうと思う……そうできると、思うのじゃ」
扉を離れ、一歩、一歩、前に進む。
記憶が一秒、一秒、失われていく。夢から覚めて、夢の内容を忘れていくみたいな感覚だ。
迎えてくれた弟子たちの顔を順に見て、ダイロスは老いた顔に優しい笑顔を浮かべた。
「ありがとう。ありがとう……」
感謝の言葉を言い切ったとき、ダイロスは船で過ごした間の記憶を完全に喪失した。
だから、船人たちや、エリュタニアや、ノルディーニュがその後どんな人生を過ごし、どんな結末を迎えたのかは、謎である。
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