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3、変革のシトリン
162、青王の婚約者選定3~ミランダを応援する……?
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船の下層にあるサロンは、空国の呪術による特殊な造りとなっている。
壁には透明な素材を使った円形の窓があって美しい海中景色が望めるし、船体の一部を共鳴させて波の音を増幅させ、心地よくムードのある環境音として室内を波音で浸している。
サロンには華やかに着飾った貴婦人が集っていた。空国、青国、紅国と、色とりどりの花が咲き誇る花園のような室内には、彼女たちにふさわしいアシンメトリーのシルエットの空色レディソファと白塗りの猫脚ローテーブルが優雅に配置されている。
そして、そんな部屋の隅にはホスト国である空国の預言者ネネイがいる。カサンドラは「自分こそホスト」みたいな顔で中央のソファに向かったが、ここでフィロシュネーは微妙な距離を取った。あまり親しいと思われたくなかったので。
「モンテローザ公爵夫人もこちらに……」
「ウィスカ様、このお菓子が美味しいですよ! さあさあ、こちら!」
カサンドラがモンテローザ公爵夫人を引っ張って、隣に座らせる。
(ま、まあ、いいでしょう。この距離なら会話も聞こえるし、変なことを言われてないか気にしておいて、何かあればお助けすればいいのだわ)
少しすると、ネネイがポフンと手を打って注目を集めた。
「ご、ごゆっくり、どうぞ。みなさま、仲良く……が、決まりです……喧嘩をなさいますと、このお部屋の明かりを落とします。真っ暗にします。暗闇は……気持ちが落ち着きますよね……」
白銀の髪を二つに分けて三つ編みしたネネイは、気弱そうな声で不穏なことを言う。
(突然真っ暗になって果たして気持ちが落ち着くかしら)
疑問は口に出してはいけないのだろう。周りの貴婦人たちの顔がみんな同じような感情を浮かべている。
「それでは、おくつろぎください……ご、ご歓談ください?」
ちょこちょこと細やかに手を動かし、呪術で空調を調整する姿には独特の愛嬌がある。
ぺコンと頭を下げて隅っこのソファにぽすんと座る姿は小動物のようで、可愛らしい。
(可愛いけど、要するに監視役よね)
揉め事を起こすな、という軽い脅しまであった。
フィロシュネーはネネイを意識しつつ、ミランダと一緒に空国風のお菓子を楽しんだ。海だからだろうか、貝殻や魚の形をした焼き菓子が並んでいる。
「お久しぶり、ミランダ。そのドレスとってもよく似合っていますわ!」
ミランダのレッグスリット入りのロングドレスは足元に向けて優雅に広がり、切れ込みからしなやかな脚を覗かせている。編み込みアップスタイルの茶色い長い髪を彩るのは金色の縁に彩られて淡い緑の宝石が煌めく植物モチーフのヘアアクセサリーで、活発で優しい印象だ。
「姫殿下も、本日のドレスは爽やかな空を思わせて、穢れなき御身にとてもお似合いでいらっしゃいますね。花飾りの愛らしい白金のティアラも神々しく、ミランダは眼福で目が眩むような心地です」
崇めるような声色で言ってくれると、「わたくしももっと一生懸命に言葉を尽くして褒めてあげたい」という気持ちが湧く。
「ええ、空をイメージしたドレスですの。気に入っているので、褒めていただいて嬉しいですわ。あのね、ミランダは森の妖精さんのよう。妖精の騎士様で、女王様ね。髪の色にドレスの色がぴったりで、奥ゆかしい感じなのだけどミランダらしい活動的な感じもあって、素敵だと思うの」
(わたくしの褒め方、変かしら? でも、ミランダは嬉しそうにしてくれているわね)
「姫殿下が嬉しいお言葉をくださるので、ミランダはそれだけで満たされてしまいそうです。ありがとうございます」
ミランダはお姉さんの温度感でにこにこして、声を潜ませる。
「……私の装いは青王陛下のお好みに合いそうでしょうか?」
(あらっ?)
ミランダの翡翠色の瞳が「青王陛下に特別好まれたい」という感情を浮かべているので、フィロシュネーは意外に思った。
「ミランダはお兄様との婚約に乗り気なの?」
「ええ、姫殿下。それも政略のためだけでなく、恐れながら……女としてお心を射止めたいと考えております」
「ま、まあ……! そ、……そうなの!!」
ミランダはてっきり、ハルシオン様が好きだと思っていたのだけど――とは、流石に言えない。フィロシュネーはおずおずと言葉を返した。
「ミランダは優しくて綺麗で剣も使えて格好良いですし、……お兄様の好みは実はあまり把握していないのですが、お兄様は剣や槍を好む方ですし、剣術の腕がたつというのは好印象じゃないかしら。ミランダが望むなら、わたくしは応援しますわ……?」
思えば、兄アーサーの女性の好みはどんなタイプだろう。
初恋のアレクシア・モンテローザ公爵令嬢は病弱で、今のフィロシュネーよりも幼い容姿だったという。
次に一目ぼれをしたらしき紅国の女王アリアンナ・ローズは華やかで――考えているうちに、気付けば青国のカタリーナ・パーシー=ノーウィッチ公爵令嬢と紅国のアリス・ファイアハート侯爵令嬢が近くに寄って挨拶をしてくる。会話が聞こえて興味津々、という顔だ。
「ご機嫌麗しゅう、フィロシュネー姫様。姫様と海の旅をご一緒できて嬉しいですわ」
「お初にお目にかかります。アリス・ファイアハートと申します」
「カタリーナ、ご機嫌よう。お城以外で会うのは初めてね。アリス様は初めまして。お会いできて嬉しいですわ」
カタリーナはフィロシュネーの学友団の一人でもある。紅国に行くとき、理由をつけて青国に残った令嬢組だ。
二人の眼は「自分達の存在もお忘れなく!」という圧を放っている。ちょっと怖い。
兄の婚約者候補三人に囲まれて、フィロシュネーは神妙な面持ちになった。
(モンテローザ公爵夫人は、アルメイダ侯爵夫人とお話なさってますわね。むむん、あちらも気になるのですけれど……)
同じ既婚の身で話が合うのだろうか。遠巻きに見守っている分には、モンテローザ公爵夫人は少しずつ表情を明るくしていくように見えた。アルメイダ侯爵夫人が面倒見の良い雰囲気で明るく華やかにあれこれと話している。
「紅国では自由恋愛を推奨しているのですよ、夫など気にせず遊んでいいのです! 不倫しましょう!」
――なかなか刺激的な内容を話している!
(ああ、あちらの会話が気になりますわ。でも、こちらの会話も大切ですの!)
「姫様、アーサー陛下は私について何か仰っていましたか?」
「兄は、皆様が素敵な女性だと仰っていましたわ~!」
自分が二人いたらいいのに!
「この船には、有名な画家のバルトュス様もいらっしゃるのだそうです。私、実はファンでストーカーしているのですわ」
「アリス様は芸術を好まれるのですね。す、すとーかー?」
丸窓の外で、見たことのない魚が群れをなして泳いでいる。とても綺麗だ。
「ウィスカ様、夫の不満で盛り上がるのは妻の特権ですの。ここは女性だけですから、気にせず一緒に盛り上がりましょう」
「公爵様の不満なんてありませんわ。公爵様は、ご立派な方です。尊敬しております……不満なんて……」
モンテローザ公爵夫人の健気な声が聞こえる。
貴婦人たちのサロンの時間は華やかに平穏に過ぎていき、やがて大きなトラブルもなく平穏に終わった。
「明日以降も、ここは皆様の憩いの場としてずっと使えますから……いつでもお立ち寄りください……本日は、明かりを落とす必要もなく……よかったです」
このサロンは主催者がネネイなのだ。
預言者は特別な存在だと認識している青国と空国の貴族たちは敬意を示してネネイに礼をして退室し、預言者に馴染みのない紅国貴族たちは「この方は紅国でいうところの神師様のような地位らしいですわ」と囁きを交わしながら退室した。
壁には透明な素材を使った円形の窓があって美しい海中景色が望めるし、船体の一部を共鳴させて波の音を増幅させ、心地よくムードのある環境音として室内を波音で浸している。
サロンには華やかに着飾った貴婦人が集っていた。空国、青国、紅国と、色とりどりの花が咲き誇る花園のような室内には、彼女たちにふさわしいアシンメトリーのシルエットの空色レディソファと白塗りの猫脚ローテーブルが優雅に配置されている。
そして、そんな部屋の隅にはホスト国である空国の預言者ネネイがいる。カサンドラは「自分こそホスト」みたいな顔で中央のソファに向かったが、ここでフィロシュネーは微妙な距離を取った。あまり親しいと思われたくなかったので。
「モンテローザ公爵夫人もこちらに……」
「ウィスカ様、このお菓子が美味しいですよ! さあさあ、こちら!」
カサンドラがモンテローザ公爵夫人を引っ張って、隣に座らせる。
(ま、まあ、いいでしょう。この距離なら会話も聞こえるし、変なことを言われてないか気にしておいて、何かあればお助けすればいいのだわ)
少しすると、ネネイがポフンと手を打って注目を集めた。
「ご、ごゆっくり、どうぞ。みなさま、仲良く……が、決まりです……喧嘩をなさいますと、このお部屋の明かりを落とします。真っ暗にします。暗闇は……気持ちが落ち着きますよね……」
白銀の髪を二つに分けて三つ編みしたネネイは、気弱そうな声で不穏なことを言う。
(突然真っ暗になって果たして気持ちが落ち着くかしら)
疑問は口に出してはいけないのだろう。周りの貴婦人たちの顔がみんな同じような感情を浮かべている。
「それでは、おくつろぎください……ご、ご歓談ください?」
ちょこちょこと細やかに手を動かし、呪術で空調を調整する姿には独特の愛嬌がある。
ぺコンと頭を下げて隅っこのソファにぽすんと座る姿は小動物のようで、可愛らしい。
(可愛いけど、要するに監視役よね)
揉め事を起こすな、という軽い脅しまであった。
フィロシュネーはネネイを意識しつつ、ミランダと一緒に空国風のお菓子を楽しんだ。海だからだろうか、貝殻や魚の形をした焼き菓子が並んでいる。
「お久しぶり、ミランダ。そのドレスとってもよく似合っていますわ!」
ミランダのレッグスリット入りのロングドレスは足元に向けて優雅に広がり、切れ込みからしなやかな脚を覗かせている。編み込みアップスタイルの茶色い長い髪を彩るのは金色の縁に彩られて淡い緑の宝石が煌めく植物モチーフのヘアアクセサリーで、活発で優しい印象だ。
「姫殿下も、本日のドレスは爽やかな空を思わせて、穢れなき御身にとてもお似合いでいらっしゃいますね。花飾りの愛らしい白金のティアラも神々しく、ミランダは眼福で目が眩むような心地です」
崇めるような声色で言ってくれると、「わたくしももっと一生懸命に言葉を尽くして褒めてあげたい」という気持ちが湧く。
「ええ、空をイメージしたドレスですの。気に入っているので、褒めていただいて嬉しいですわ。あのね、ミランダは森の妖精さんのよう。妖精の騎士様で、女王様ね。髪の色にドレスの色がぴったりで、奥ゆかしい感じなのだけどミランダらしい活動的な感じもあって、素敵だと思うの」
(わたくしの褒め方、変かしら? でも、ミランダは嬉しそうにしてくれているわね)
「姫殿下が嬉しいお言葉をくださるので、ミランダはそれだけで満たされてしまいそうです。ありがとうございます」
ミランダはお姉さんの温度感でにこにこして、声を潜ませる。
「……私の装いは青王陛下のお好みに合いそうでしょうか?」
(あらっ?)
ミランダの翡翠色の瞳が「青王陛下に特別好まれたい」という感情を浮かべているので、フィロシュネーは意外に思った。
「ミランダはお兄様との婚約に乗り気なの?」
「ええ、姫殿下。それも政略のためだけでなく、恐れながら……女としてお心を射止めたいと考えております」
「ま、まあ……! そ、……そうなの!!」
ミランダはてっきり、ハルシオン様が好きだと思っていたのだけど――とは、流石に言えない。フィロシュネーはおずおずと言葉を返した。
「ミランダは優しくて綺麗で剣も使えて格好良いですし、……お兄様の好みは実はあまり把握していないのですが、お兄様は剣や槍を好む方ですし、剣術の腕がたつというのは好印象じゃないかしら。ミランダが望むなら、わたくしは応援しますわ……?」
思えば、兄アーサーの女性の好みはどんなタイプだろう。
初恋のアレクシア・モンテローザ公爵令嬢は病弱で、今のフィロシュネーよりも幼い容姿だったという。
次に一目ぼれをしたらしき紅国の女王アリアンナ・ローズは華やかで――考えているうちに、気付けば青国のカタリーナ・パーシー=ノーウィッチ公爵令嬢と紅国のアリス・ファイアハート侯爵令嬢が近くに寄って挨拶をしてくる。会話が聞こえて興味津々、という顔だ。
「ご機嫌麗しゅう、フィロシュネー姫様。姫様と海の旅をご一緒できて嬉しいですわ」
「お初にお目にかかります。アリス・ファイアハートと申します」
「カタリーナ、ご機嫌よう。お城以外で会うのは初めてね。アリス様は初めまして。お会いできて嬉しいですわ」
カタリーナはフィロシュネーの学友団の一人でもある。紅国に行くとき、理由をつけて青国に残った令嬢組だ。
二人の眼は「自分達の存在もお忘れなく!」という圧を放っている。ちょっと怖い。
兄の婚約者候補三人に囲まれて、フィロシュネーは神妙な面持ちになった。
(モンテローザ公爵夫人は、アルメイダ侯爵夫人とお話なさってますわね。むむん、あちらも気になるのですけれど……)
同じ既婚の身で話が合うのだろうか。遠巻きに見守っている分には、モンテローザ公爵夫人は少しずつ表情を明るくしていくように見えた。アルメイダ侯爵夫人が面倒見の良い雰囲気で明るく華やかにあれこれと話している。
「紅国では自由恋愛を推奨しているのですよ、夫など気にせず遊んでいいのです! 不倫しましょう!」
――なかなか刺激的な内容を話している!
(ああ、あちらの会話が気になりますわ。でも、こちらの会話も大切ですの!)
「姫様、アーサー陛下は私について何か仰っていましたか?」
「兄は、皆様が素敵な女性だと仰っていましたわ~!」
自分が二人いたらいいのに!
「この船には、有名な画家のバルトュス様もいらっしゃるのだそうです。私、実はファンでストーカーしているのですわ」
「アリス様は芸術を好まれるのですね。す、すとーかー?」
丸窓の外で、見たことのない魚が群れをなして泳いでいる。とても綺麗だ。
「ウィスカ様、夫の不満で盛り上がるのは妻の特権ですの。ここは女性だけですから、気にせず一緒に盛り上がりましょう」
「公爵様の不満なんてありませんわ。公爵様は、ご立派な方です。尊敬しております……不満なんて……」
モンテローザ公爵夫人の健気な声が聞こえる。
貴婦人たちのサロンの時間は華やかに平穏に過ぎていき、やがて大きなトラブルもなく平穏に終わった。
「明日以降も、ここは皆様の憩いの場としてずっと使えますから……いつでもお立ち寄りください……本日は、明かりを落とす必要もなく……よかったです」
このサロンは主催者がネネイなのだ。
預言者は特別な存在だと認識している青国と空国の貴族たちは敬意を示してネネイに礼をして退室し、預言者に馴染みのない紅国貴族たちは「この方は紅国でいうところの神師様のような地位らしいですわ」と囁きを交わしながら退室した。
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