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2、協奏のキャストライト
132、ここにいるのは俺の預言者だが?
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紅国の旗を掲げる第一師団が近づいてくる。
空国の騎士団も一緒だ。
「ノーブルクレスト騎士団第一師団を一時的に預かっているエドウィン・インロップと申します。青王アーサー陛下」
挨拶をするのは、フィロシュネーにも見覚えのある人物だった。
歓迎交流会でサイラスに構ってほしそうにしていた伯爵だ。
「このたびは紅都の防衛に尽力してくださり、ありがとうございます。挨拶もそこそこに失礼いたしますが、そこにいるのは邪悪な呪術師でございますゆえ、引き渡していただきたく存じます」
「インロップ伯爵ではありませんか」
サイラスが呟くと、インロップ伯爵は得意げな顔をした。
「これはこれはノイエスタル準男爵! 我々は先ほどまでフレイムドラゴンと戦っていたのだよ! 紅都を守るために!」
「お疲れ様です」
(前も思ったけど、この人はサイラスに一目置かれたいのね)
フィロシュネーは生暖かい目で見守った。
「シュネー、心配することはない。ダーウッドも……いやお前は心配してないかもしれないが」
アーサーはそう言って、二人を解放して立ち上がった。
「我が国と貴国は友好国。助け合うのは当然であるッ!」
アーサーは声が大きい。
空気をびりびりと震わせるような威風堂々とした声には、「この場で一番偉いのは俺だぞ」という圧があった。
「紅国の騎士団におかれては、先ほどのフレイムドラゴン戦での勇戦ぶり、実に見事であった」
アーサーはそう言って漢気溢れる笑顔を見せた。
「ところで、悪しき呪術師が出たと? フィロシュネーからも話を聞いていたのだが、困惑していたのだ。貴殿らは呪術師を追いかけていたのだとか? 詳しい話を教えてくれぬか」
インロップ伯爵の肩をぽんっと叩くアーサーは、目が笑っていない。
「は……その通りでございます、青王陛下」
インロップ伯爵は、畏まりつつ、説明した。
「陛下もご覧になられたのではないでしょうか? フィロシュネー姫を乗せて飛翔する大きな青い鳥を?」
「うむ。美味そうな鳥であった」
「呪術師は我々の目の前で大きな青い鳥に変身し、フィロシュネー姫を攫っていかれたのです」
「なんと。けしからん蛮行であるな」
「アーサー陛下の暗殺も仄めかしていました! ご無事でなによりです!」
「ふむ」
アーサーが首をかしげる。
「鳥。鳥か……」
「そこにいる預言者の姿をした呪術師です。そいつが鳥に化けて姫を攫ったのですよ。ですから、逃げられる前に拘束させていただきたいのです。……おわかりいただけます……よね……?」
インロップ伯爵が遠慮がちな声に、アーサーは不思議そうに言葉を返した。
「ここにいるのは俺の預言者だが?」
「は」
アーサーはフィロシュネーと手を繋いで様子を見守っているダーウッドへと視線を移した。そして、眉を寄せた。
「お前たちは、なぜ二人で引っ付く? 引っ付くなら二人揃って俺に引っ付け。二人だけで引っ付くな、兄さんをのけ者にするな、シュネー」
「ええっ?」
久しぶりに会った兄は、前より寂しがりやになっているみたい――フィロシュネーは戸惑った。
インロップ伯爵に向けるアーサーの声は、不機嫌になっていく。
「ここにいるダーウッドは俺と一緒に青国からやってきた本物の預言者である。ニセモノがいるなら、そのニセモノを追いかけるがよい」
「は……」
「鳥が呪術師なのだろう? 俺は見ていたが、鳥はあちらに飛んで行ったぞ。追いかけるなら急ぐがよい。卿らは第一師団だったか。インロップ家は紅国の伯爵家だったと記憶しているが?」
「いかにもその通りでございます、青王陛下」
(まあ、お兄様。嘘をついてくださったのね)
兄がハッキリと嘘をついたので、フィロシュネーはドキドキした。
インロップ伯爵は、目に見えて青ざめている。他国の王の気分を害してしまい、家名を出されたのだ。
『これはまずいぞ、機嫌を取り繕わないと我が家門はどうなってしまうかわからないぞ』という内心の慄きが表情にありありと出ていた。
「だ、第一師団はただちに――」
配下に指示を出すインロップ伯爵に、アーサーは凍えるような声を投げかけた。これ見よがしにダーウッドを抱きかかえて。
「預言者がおらぬ紅国の者にはわからぬかもしれないが、預言者とは我が国において、紅国でいう聖職者……それも最高位の特別な存在である。国家の支柱である。誇りである。伯爵の肩書きを持ち、騎士団を率いる貴殿は、我が国の聖なる支柱に泥をつけたのだ」
「ひっ」
「これは由々しき問題である」
アーサーの眉間に深く刻まれた皺が、表情が、声が。大問題だ、不快だ、と訴えていた。インロップ伯爵は震えあがった。
「我が国の預言者を悪しき呪術師呼ばわりするとは、不快極まりない」
「し、失礼いたしました。陛下! 呪術師がそっくりに化けていて、本物を殺害したと言っていたものですから。鳥に化けて、その鳥にフィロシュネー姫が乗っていったものですから」
「本物とニセモノの区別がつかぬと言われても、俺を不快にさせた事実に変わりはない。この件については『遺憾』のひとことでは済まさぬぞ」
「申し訳……」
「女王陛下に申し上げる。卿ひとりの謝罪で終わらせる気はない」
インロップ伯爵は今にも倒れてしまいそうな顔色になって、汗をだらだらと流して膝をついた。
その頭を見下ろして、アーサーは底冷えのする声で言い放った。
「汝らの職務を遂行せよ。俺は第二師団に紅都までの案内を頼むゆえ、我が国の預言者に猜疑を向けさせようとした悪しき呪術師を必ず捕えよ」
「はっ……」
インロップ伯爵が必死に頷き、第一師団と共に慌てて移動していく。
(な、なんとかしてしまったわ。さすがお兄様)
フィロシュネーはドキドキしながら遠ざかる第一師団を見届けた。
(でも、ニセモノなんていないのに。インロップ伯爵もちょっと可哀想ね)
アーサーの視線がサイラスに移ると、サイラスは察した様子で膝をついた。
「はっ。友好国の方々は第二師団が責任を持ってご案内申し上げます」
「うむ。世話になるぞ」
アーサーは気配をやわらかくして、ダーウッドを降ろした。
そして、フィロシュネーに手を差し伸べて微笑んだ。
「シュネー、おいで」
手を重ねると、兄は機嫌を良くした様子で手を揺らす。子供のように、無邪気に。
揉め事が終わったのを見計らったように、空王アルブレヒトが寄ってくる。
「やあやあアルブレヒト陛下。置いていってすみませんでしたね」
「いえいえ、アーサー陛下。妹姫がご無事な様子でなによりですよ」
とても親し気な様子だ。
「さて、私はあなたに用事がございます、青国の預言者どの」
アルブレヒトはダーウッドに近づいた。そして、膝を折り、視線を合わせるような姿勢を取ったのだった。
空国の騎士団も一緒だ。
「ノーブルクレスト騎士団第一師団を一時的に預かっているエドウィン・インロップと申します。青王アーサー陛下」
挨拶をするのは、フィロシュネーにも見覚えのある人物だった。
歓迎交流会でサイラスに構ってほしそうにしていた伯爵だ。
「このたびは紅都の防衛に尽力してくださり、ありがとうございます。挨拶もそこそこに失礼いたしますが、そこにいるのは邪悪な呪術師でございますゆえ、引き渡していただきたく存じます」
「インロップ伯爵ではありませんか」
サイラスが呟くと、インロップ伯爵は得意げな顔をした。
「これはこれはノイエスタル準男爵! 我々は先ほどまでフレイムドラゴンと戦っていたのだよ! 紅都を守るために!」
「お疲れ様です」
(前も思ったけど、この人はサイラスに一目置かれたいのね)
フィロシュネーは生暖かい目で見守った。
「シュネー、心配することはない。ダーウッドも……いやお前は心配してないかもしれないが」
アーサーはそう言って、二人を解放して立ち上がった。
「我が国と貴国は友好国。助け合うのは当然であるッ!」
アーサーは声が大きい。
空気をびりびりと震わせるような威風堂々とした声には、「この場で一番偉いのは俺だぞ」という圧があった。
「紅国の騎士団におかれては、先ほどのフレイムドラゴン戦での勇戦ぶり、実に見事であった」
アーサーはそう言って漢気溢れる笑顔を見せた。
「ところで、悪しき呪術師が出たと? フィロシュネーからも話を聞いていたのだが、困惑していたのだ。貴殿らは呪術師を追いかけていたのだとか? 詳しい話を教えてくれぬか」
インロップ伯爵の肩をぽんっと叩くアーサーは、目が笑っていない。
「は……その通りでございます、青王陛下」
インロップ伯爵は、畏まりつつ、説明した。
「陛下もご覧になられたのではないでしょうか? フィロシュネー姫を乗せて飛翔する大きな青い鳥を?」
「うむ。美味そうな鳥であった」
「呪術師は我々の目の前で大きな青い鳥に変身し、フィロシュネー姫を攫っていかれたのです」
「なんと。けしからん蛮行であるな」
「アーサー陛下の暗殺も仄めかしていました! ご無事でなによりです!」
「ふむ」
アーサーが首をかしげる。
「鳥。鳥か……」
「そこにいる預言者の姿をした呪術師です。そいつが鳥に化けて姫を攫ったのですよ。ですから、逃げられる前に拘束させていただきたいのです。……おわかりいただけます……よね……?」
インロップ伯爵が遠慮がちな声に、アーサーは不思議そうに言葉を返した。
「ここにいるのは俺の預言者だが?」
「は」
アーサーはフィロシュネーと手を繋いで様子を見守っているダーウッドへと視線を移した。そして、眉を寄せた。
「お前たちは、なぜ二人で引っ付く? 引っ付くなら二人揃って俺に引っ付け。二人だけで引っ付くな、兄さんをのけ者にするな、シュネー」
「ええっ?」
久しぶりに会った兄は、前より寂しがりやになっているみたい――フィロシュネーは戸惑った。
インロップ伯爵に向けるアーサーの声は、不機嫌になっていく。
「ここにいるダーウッドは俺と一緒に青国からやってきた本物の預言者である。ニセモノがいるなら、そのニセモノを追いかけるがよい」
「は……」
「鳥が呪術師なのだろう? 俺は見ていたが、鳥はあちらに飛んで行ったぞ。追いかけるなら急ぐがよい。卿らは第一師団だったか。インロップ家は紅国の伯爵家だったと記憶しているが?」
「いかにもその通りでございます、青王陛下」
(まあ、お兄様。嘘をついてくださったのね)
兄がハッキリと嘘をついたので、フィロシュネーはドキドキした。
インロップ伯爵は、目に見えて青ざめている。他国の王の気分を害してしまい、家名を出されたのだ。
『これはまずいぞ、機嫌を取り繕わないと我が家門はどうなってしまうかわからないぞ』という内心の慄きが表情にありありと出ていた。
「だ、第一師団はただちに――」
配下に指示を出すインロップ伯爵に、アーサーは凍えるような声を投げかけた。これ見よがしにダーウッドを抱きかかえて。
「預言者がおらぬ紅国の者にはわからぬかもしれないが、預言者とは我が国において、紅国でいう聖職者……それも最高位の特別な存在である。国家の支柱である。誇りである。伯爵の肩書きを持ち、騎士団を率いる貴殿は、我が国の聖なる支柱に泥をつけたのだ」
「ひっ」
「これは由々しき問題である」
アーサーの眉間に深く刻まれた皺が、表情が、声が。大問題だ、不快だ、と訴えていた。インロップ伯爵は震えあがった。
「我が国の預言者を悪しき呪術師呼ばわりするとは、不快極まりない」
「し、失礼いたしました。陛下! 呪術師がそっくりに化けていて、本物を殺害したと言っていたものですから。鳥に化けて、その鳥にフィロシュネー姫が乗っていったものですから」
「本物とニセモノの区別がつかぬと言われても、俺を不快にさせた事実に変わりはない。この件については『遺憾』のひとことでは済まさぬぞ」
「申し訳……」
「女王陛下に申し上げる。卿ひとりの謝罪で終わらせる気はない」
インロップ伯爵は今にも倒れてしまいそうな顔色になって、汗をだらだらと流して膝をついた。
その頭を見下ろして、アーサーは底冷えのする声で言い放った。
「汝らの職務を遂行せよ。俺は第二師団に紅都までの案内を頼むゆえ、我が国の預言者に猜疑を向けさせようとした悪しき呪術師を必ず捕えよ」
「はっ……」
インロップ伯爵が必死に頷き、第一師団と共に慌てて移動していく。
(な、なんとかしてしまったわ。さすがお兄様)
フィロシュネーはドキドキしながら遠ざかる第一師団を見届けた。
(でも、ニセモノなんていないのに。インロップ伯爵もちょっと可哀想ね)
アーサーの視線がサイラスに移ると、サイラスは察した様子で膝をついた。
「はっ。友好国の方々は第二師団が責任を持ってご案内申し上げます」
「うむ。世話になるぞ」
アーサーは気配をやわらかくして、ダーウッドを降ろした。
そして、フィロシュネーに手を差し伸べて微笑んだ。
「シュネー、おいで」
手を重ねると、兄は機嫌を良くした様子で手を揺らす。子供のように、無邪気に。
揉め事が終わったのを見計らったように、空王アルブレヒトが寄ってくる。
「やあやあアルブレヒト陛下。置いていってすみませんでしたね」
「いえいえ、アーサー陛下。妹姫がご無事な様子でなによりですよ」
とても親し気な様子だ。
「さて、私はあなたに用事がございます、青国の預言者どの」
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