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2、協奏のキャストライト

106、おまけ:褒められた後の騎士団さん、台無し

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「褒められたぞ!」
「練習の成果が出たな……!」
 氷雪騎士団が盛り上がっている。

「やっぱこの角度が格好いいよな」
「俺の『博愛!』いい声だっただろ」

(うーん。せっかく決まったのに、ゆるゆるっとした雰囲気になってしまったわね。でも、こういうところもわたくしの騎士団の良さといえるかしら)
 微笑ましいといえば微笑ましいけれど、王族の騎士団としては、品格がやはりイマイチ。
 フィロシュネーは氷雪騎士団の統率を任せているシューエンを見た。
 
 シューエンは、「よしよし」と腕を組んで満足そうにしている。
「さっきのはアーサー陛下がご覧になっても大満足なのでは? 僕の育てた騎士団、誇らしい! さあフィロシュネー殿下、あいつらのボロが出てしまう前に建物の中にお戻り下さい」
「もう出てるんじゃないかしら」
「まだまだこれからでございますからして」
 
(そんなこと言われると気になるじゃない)
 フィロシュネーは騎士団から離れるフリをして物陰に隠れた。

「俺たち、こんなに格好いいし王妹殿下の騎士団って一流のステータスなのに、なんでモテないんだろうな」
 ひとりの騎士がボソッと言う。
 すると、周りにいる騎士たちが「なに言ってんだこいつ」という眼になった。
「お前は自分の剣に『性剣エクスカリバー』って書いてるからモテないんだぞ。字も間違ってるし」
 言われた騎士の剣の鞘には、確かに変な文字が!
「むっ。お前だって、支給された盾に『俺のママ♡』って書いてるだろ、マザコン野郎」
「ママがオレを守ってくれるって思ったら勇気が出るだろうがぁ!」
 
 支給品になにをやっているの!
 ツッコミをこらえて見守っていると、会話はどんどんしょうもないノリになっていく!
 
「この前来た新人だってお前が歓迎会で『よく来たな、まずはオレのウサたんパンツをみてくれ、こいつをどう思う?』とか言ってポロンッてするから翌日には辞めていったんですよ。ウケるとおもったんですか?」
「あー、その新人。ポロンで終わらなかったんですよ。ポロンのあとに『この騎士団に入ったおかげで俺は彼女が三十人もできて毎日つれーわー、取り合いされてマジつれーわー』な絡みがあって」
「しかもそのあと、『キミ、なんで騎士団入ったの? エリート志向? モテたくて? 金目当て? ねえねえなんで?』って五人くらいに囲まれてたんだ」
「かわいそうになあ。心に傷負ったんじゃないか?」 
 
(や、やだぁ……これが、わたくしの騎士団? 品性に欠けますわ)
 
「くらえ~、俺の性剣!」
「ぐわぁーーッ、ママーー!!」
 
 ……低俗!!

「姫殿下」
「あっ、ダーウッド」
 青い小鳥の姿をしたダーウッドが肩に留まる。小鳥のさえずりは、怒りを感じさせた。
「全員クビにするようにアーサー陛下に奏上しましょうかな」

 クビは厳しすぎるのではないかしら。
 フィロシュネーは迷いつつ、シューエンを呼んだ。

「ひあっ!? フィ、フィロシュネー殿下!! で、で、ですから、僕は申し上げたのでございまして。あの、彼らにも仕事モードと休憩モードというものがございまして。ずっと気を張っているというのも、人間なかなかできぬと言いますか」
 
 フィロシュネーはむすりとした。
 
「もうすこし品位や礼節について教育するように。わたくしの騎士であることがわかる格好をしているときは、下ネタではしゃいだりしてはダメ。騎士の制服を着ているときは、常に民の目があると思ってキリッとなさっていてください」

「そ、それはもちろん」
 
「王族の騎士団は国家の名誉を背負っていますの。あなたたちの立派な鎧も剣も盾も、民の血税で立派な品をそろえられています。それは民を守るためという理由があるからですの」

「承知しております! はい!」
 
「民の耳目がある場では特に気を付けるのよ……いい? 新人騎士も辞めたあとで言いふらすお口があるのだから、身内だからと気を緩め過ぎたらだめよ」
   
 フィロシュネーは真剣に言い聞かせて、辞めていった新人に『慰謝料』という名目の『口止め料』を届けさせた。

「さて、お兄様が到着する前に、紅国にはたっぷり恩を売って差し上げます。『もう終わりましたわよお兄様』と申し上げましょうね」
 
 ミストドラゴンの密猟団を捕まえること。
 ドラゴンの石を回収し、解呪の魔導具と一緒にサイラスに渡すこと。
 ドラゴンの石を流通させている商会を調査し、取り締まること。

 情報共有したハルシオンとフィロシュネーは、そんな計画を立てたのだ。
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