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1、贖罪のスピネル

48、ハッピーエンドさ!

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 悪い子だ。
 空王アルブレヒトは、悪い子だ。

 呪術師は愉悦ゆえつの中に、嫌悪をおぼえていた。

 口答えをするじゃないか、この俺に。
 罪を否定するじゃないか、若造が。

 ハルシオンに愛されやがって。
 王様にふさわしいのは、ハルシオンなのだ。
 こんな若造の下について、臣下みたいに尽くすなんて、ハルシオンの格が下がってしまう。冒涜だ。呪術王カントループの転生体に対する、許されざる冒涜だ。

「ここに悪がある。青王クラストスの名において、正義を執行するべきだと主張する!」

 王太子アーサーが紅国を頼ったのは、想定外だった。あまり空国以外の他国とは国交を持たなかったのに、咄嗟とっさに他国を頼ることを思いつくとは。教育を間違ったか。
 二国だけの紛争でおさまっていれば、この段階で青王の絶対権力を振りかざして終わりだったのに。紅国の顔色を気にしないといけないとは。
 
(だが、この盤面はもう覆らないだろう!)
 悪逆非道のアルブレヒトは断頭台に送り、青王クラストスはハルシオンを王にするのだ。
(ハルシオンは国民に慕われる立派な王様になる! 俺がそうする! そこまで見届ける! えっへへ)

 その頃には、自分が過去に英雄からかけられた呪いも解けているだろう。
 英雄にはフィロシュネーを与えた。好きにしていいよって言った。だから、英雄は俺を許してくれる。

 英雄! 英雄!
 俺と酒を飲もうか? 仲直りだ!
 
 ハルシオンを讃えながら飲むんだ。
 酒がまわったら聞いてみようか。英雄、俺が育てた姫はどう? 幸せ? 俺を許してくれたよね? って。

 それで、それで、ハルシオンは、カントループは俺に笑ってくれるんだ。

『オルーサ、よくやった。えらいぞ。いい子だ』
 そんな風にカントループに褒めてもらって、俺はすべてを終わりにする……。
 
 
 えっへへ――ハッピーエンドさ!


「青国のフィロシュネー殿下にお越しいただきました」

 儀典官が声をあげて、呪術師は姫を見た。

 しゃらり、と白銀の髪が流れるさまが美しい。
 清らかで、城の奥で大切に愛でられるだけのお姫様だ。
 何も知らず、恋愛に夢をみて。ただ幸せを享受する――そんな「おばかさん」だ。

 無知で可愛い姫へと、呪術師は近付いた。
 優しい父の声と笑顔で。

「シュネー、元気にしていたかい? パパは心配していたのだよ……もっとゆっくりでもよかったのに」 
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