34 / 63
1章
33、玄武の珠、白虎の珠
しおりを挟む
毒殺未遂事件から数日。
紺紺は、風邪と疲労で寝込んでいた。
寝込んでいる間は、夢をよく見ていた。
起きてから思い出せない夢もあれば、思い出せる夢もあった。
楽しい夢もあれば、怖い夢もあった。
その日見たのは、不思議な夢だった。
どこかわからない場所で、血まみれになった悪女の自分が死ぬ夢である。
時間帯は、夜だった。月が出ていた。
近くには霞幽がいて、懸命に呼びかけてきた。
「紫玉公主……!」
必死な声だ。
それに、表情が歪んでいて、人間の青年らしさを感じさせる。
「公主……? きこえますか?」
悲痛な声だ。
紫玉は返事をしてあげたくなった。
けれど、とても眠くて、怠くて、もう、目もあけられない。
少しだけ疲れた。眠りたい。手を握っていてほしい。
唇を動かして、声とも呼べないような微かな囁きを返すと、霞幽は手を握ってくれた。
ひんやりとしていて、冷たい指先だった。
「誓います」
彼は、何かを誓ってくれるようだ。なにを?
「どんなに困難でも、何を失っても……必ず、私があなたを幸せにしてみせましょう」
* * *
……いい匂いがする。
水の中の泥土から伸びて、水面に顔を出して清らかに咲く蓮の花の香りだ。
霞幽の香りだ。
「霞、ふにゅっ!?」
唱えかけた唇に、ぷにっとした肉球があてられる。
ぱちりと目を開けると、白猫の『先見の公子』が顔を覗き込んでいた。
今まで紺紺は眠っていて、たった今目覚めたところなのだ。
今は、毒殺未遂事件の三日後。
紺紺は風邪と疲労で寝込んでいたけれど、だいぶ体調がよくなっている。
……と、数秒の時間をかけて、紺紺は自分の置かれている状況を把握した。
「ふ……、ふにふに」
「にゃあ」
唇にあてられていた猫の手がずらされて、額にあてられる。
肉球が気持ちいい。
白くて清潔感のある臥牀。ぬくぬくのお布団。
ここは、咸白宮にある、自分の部屋だ。
毒殺未遂事件の後、桜綾は処刑された。
恋人の男を抱かせ、生きたまま一緒に埋葬されたのだという。想像するとなんともいえない気分になる処刑方法だ。
そして、雨萱に対しては最期まで「憎らしい。嫌い」と言い続けていたらしい……。雨萱は、それを聞いて悲しそうにしていた。
鍾水宮の処刑場は、「妃の一存で勝手に朕の人材を裁くことは許さぬ」と布告が出され、取り壊しが決まった。
また、『黒貴妃』華蝶妃は要注意処分となり、黒家の家宝『玄武の珠』を没収された。
四大名家には、それぞれ『朱雀』『青龍』『白虎』『玄武』の加護が与えられた珠がある。
その効能は開運招福と世間に伝えられているが、先見の公子が教えてくれた話によると、「そうではない」。
本当の効果は「術師が事前にひとつだけ術を籠めることができる。条件付きだが、珠の所有者は術を引き出して行使できる」。
……『玄武の珠』には、魅了の術が籠められていた。
籠めた術師を尋ねたところ、黒家は「十年前に妖狐と縁があり、術を籠めさせた。その妖狐はもう死んでいる」と回答した。
ちなみに、華蝶妃には、前述の処分以外にも皇帝が直々に折檻もした、というのだが、詳細は不明である。
「後日教えてやろう」という言伝てを先見の公子が微妙に不安そうに教えてくれたので、後日わかるらしい。
もちろん、雨萱と彰鈴妃は無罪となった。
紺紺は療養中だ。
事件の間、後宮中を駆け回っていた点……特に、桜綾を担いだり、断首刀を手で止めたことは、皇帝が『玄武の珠』を使って「そなたらは何も見なかった」と思いこませてくれた。
皇帝は「任意で正体を明かして構わぬが、正体を隠したほうがやりやすければ隠したままで継続せよ」と言ってくれたので、紺紺は今後も正体を隠し、咸白宮の侍女として任務をするつもりでいる。
……お見舞いに来てくれる友達もできたことだし。
「あっ、紺ちゃん。おはよう。お邪魔してます」
ぺこんっと頭を下げた小蘭と、青ねぎが散らされたお米の粥を見せて「食べられそう?」と聞いてくる萌萌。
そして、姉と一緒に部屋の観葉植物に水を差してくれている雨春。
彼女たちは「こんなことがあったよ」「あんなことがあったよ」と日常のおすそ分けをして、体調を気遣ってくれた。
「また来るね」
「早く元気になってねえ」
正体を明かしたら、みんなはどんな顔をするだろう。
* * *
「清明節に主上が剣舞を奉納するでしょう? 他国からのお客様もいらっしゃるらしいのですが、なんとその席には『九術師』の方々も参加なさるのですって。わたくしも珠簾ごしの席で参加予定ですの。『傾城』様が見れるかもしれませんわね」
咸白宮の主、彰鈴妃は、自身も心身疲労を抱えているのに、侍女の見舞いにやってくる奇特な人だ。
「友人が集まってお話している雰囲気が癒されるのですわ。お邪魔しませんから、端っこにいさせてください」
上級妃の言葉とは思えないようなことを言い、本当に部屋の端っこで座ってお茶をすすったりしている。時には「わたくしが作りましたの」と言っておやつを配ったりする。
変わり者……あるいは、一種のつらい現実からの逃避行動なのかもしれない。
「紺紺ちゃん。お熱はだいぶ下がりましたのね。よかったですわ」
「彰鈴妃、風邪がうつってしまいます」
そんな彰鈴妃は、今、白猫を抱っこして侍女である紺紺のおでこに自分のおでこを当て、熱を測っている。
「外にお散歩できるようになったら、お庭をみてほしいですわ。実家の兄が梨の花を贈ってきましたの。子なしと仰りたいのかしらお兄様? うふふ。嫌い……いつか傾城様に兄をやっつけてほしいですわ~!」
笑顔が黒い。
そして、そのお兄様はあなたの腕に抱っこされてる猫ちゃんなのですが!
「そのような意味ではなく、きっと単純に妹君への愛情表現なのではないでしょうか? 梨の花言葉は、『愛情』『癒し』『慰め』ですから!」
「うふふ。あのお兄様に『愛情』『癒し』『慰め』なんて、似合いませんわ。たぶん、そういった人情を持ってないと思いますの」
「そんなこと仰らないであげて」
そこにご本人がいるんです。やめてあげて。
「紺紺ちゃんは優しいのね。うふふ。さて、わたくしも長居してしまいましたけど、公務をしてまいります。ゆっくりお休みになって、早くよくなってね、紺紺ちゃん」
彰鈴妃が退室していく。
白猫を臥牀に残して。
扉が閉まって、紺紺は目を閉じた。
じーっと見てくる白猫の視線が痛い。そして、沈黙が怖い。
寝てしまおう。
心の中で羊を数えていると、おでこに何かが当たる感触がした。
「……?」
そっと目を開けてみると、そこには人間姿の先見の公子のご尊顔があった。
妹の真似をしたのか、自分の額を紺紺のそれにくっつけている。
……距離が近い!
「んぎゃっ」
悲鳴をあげると、麗しのご尊顔はサッと離れていった。
「紺紺さん。そんなに嫌がらなくてもいいじゃないか?」
「びっくりしたので」
布団を引っ掴んで顔を隠すようにすると、先見の公子は「おやすみ」と言って布団を撫でた。
「風邪がうつってもいけませんから」
この人、風邪を引いたりするんだろうか?
疑問を抱きつつ言えば、「気遣いをありがとう」と平坦な声が返ってくる。
「妹を助けてくれてありがとう。心からお礼を申し上げる」
先見の公子はそう言って、ぽふぽふと布団を労った。
「その言い方は自分が霞幽だと言っているようなものでは」と思いつつ、紺紺は「どういたしまして」とだけ返事をしておいた。
「おかげで、妖狐の目星もついたように思う」
「妖狐は……胡月妃? でも、彼女の魅了の術も、紅家の家宝によるものという可能性もありますね」
「妖狐は、そう何人も我が国に関与していない。胡月妃だと考えていいだろう」
穏やかな声に、紺紺は布団にくるまったまま、力を抜いた。そして、布団の端からちょっとだけ顔を出した。
「君は心配せず、休んでいなさい」
先見の公子は木漏れ日のような声で言って、猫に変身した。
変身する一瞬、指に填めた指輪の珠が霊力をあふれさせた気がする。
……指輪は、白家の家宝なのだろうか?
と、見ていると、思いが伝わったらしい。
「白虎の珠という」
「家宝で変身なさっていたんですね」
「その通り。とても優秀な術師のおかげなんだ。さあ、またおやすみ。君には休息が必要だよ」
白猫の先見の公子は、真っ白でふわふわの毛を撫でさせてくれた。
さらっとしていて、もふもふ、ぬくぬくとしていて、暖かい。
「おやすみ、紺紺さん」
「おやすみなさい、先見の公子様」
ふにゃりと笑うと、猫は喉を鳴らして目を細めてくれた。
まるで笑い返してくれたみたい。
紺紺は嬉しくなった。
紺紺は、風邪と疲労で寝込んでいた。
寝込んでいる間は、夢をよく見ていた。
起きてから思い出せない夢もあれば、思い出せる夢もあった。
楽しい夢もあれば、怖い夢もあった。
その日見たのは、不思議な夢だった。
どこかわからない場所で、血まみれになった悪女の自分が死ぬ夢である。
時間帯は、夜だった。月が出ていた。
近くには霞幽がいて、懸命に呼びかけてきた。
「紫玉公主……!」
必死な声だ。
それに、表情が歪んでいて、人間の青年らしさを感じさせる。
「公主……? きこえますか?」
悲痛な声だ。
紫玉は返事をしてあげたくなった。
けれど、とても眠くて、怠くて、もう、目もあけられない。
少しだけ疲れた。眠りたい。手を握っていてほしい。
唇を動かして、声とも呼べないような微かな囁きを返すと、霞幽は手を握ってくれた。
ひんやりとしていて、冷たい指先だった。
「誓います」
彼は、何かを誓ってくれるようだ。なにを?
「どんなに困難でも、何を失っても……必ず、私があなたを幸せにしてみせましょう」
* * *
……いい匂いがする。
水の中の泥土から伸びて、水面に顔を出して清らかに咲く蓮の花の香りだ。
霞幽の香りだ。
「霞、ふにゅっ!?」
唱えかけた唇に、ぷにっとした肉球があてられる。
ぱちりと目を開けると、白猫の『先見の公子』が顔を覗き込んでいた。
今まで紺紺は眠っていて、たった今目覚めたところなのだ。
今は、毒殺未遂事件の三日後。
紺紺は風邪と疲労で寝込んでいたけれど、だいぶ体調がよくなっている。
……と、数秒の時間をかけて、紺紺は自分の置かれている状況を把握した。
「ふ……、ふにふに」
「にゃあ」
唇にあてられていた猫の手がずらされて、額にあてられる。
肉球が気持ちいい。
白くて清潔感のある臥牀。ぬくぬくのお布団。
ここは、咸白宮にある、自分の部屋だ。
毒殺未遂事件の後、桜綾は処刑された。
恋人の男を抱かせ、生きたまま一緒に埋葬されたのだという。想像するとなんともいえない気分になる処刑方法だ。
そして、雨萱に対しては最期まで「憎らしい。嫌い」と言い続けていたらしい……。雨萱は、それを聞いて悲しそうにしていた。
鍾水宮の処刑場は、「妃の一存で勝手に朕の人材を裁くことは許さぬ」と布告が出され、取り壊しが決まった。
また、『黒貴妃』華蝶妃は要注意処分となり、黒家の家宝『玄武の珠』を没収された。
四大名家には、それぞれ『朱雀』『青龍』『白虎』『玄武』の加護が与えられた珠がある。
その効能は開運招福と世間に伝えられているが、先見の公子が教えてくれた話によると、「そうではない」。
本当の効果は「術師が事前にひとつだけ術を籠めることができる。条件付きだが、珠の所有者は術を引き出して行使できる」。
……『玄武の珠』には、魅了の術が籠められていた。
籠めた術師を尋ねたところ、黒家は「十年前に妖狐と縁があり、術を籠めさせた。その妖狐はもう死んでいる」と回答した。
ちなみに、華蝶妃には、前述の処分以外にも皇帝が直々に折檻もした、というのだが、詳細は不明である。
「後日教えてやろう」という言伝てを先見の公子が微妙に不安そうに教えてくれたので、後日わかるらしい。
もちろん、雨萱と彰鈴妃は無罪となった。
紺紺は療養中だ。
事件の間、後宮中を駆け回っていた点……特に、桜綾を担いだり、断首刀を手で止めたことは、皇帝が『玄武の珠』を使って「そなたらは何も見なかった」と思いこませてくれた。
皇帝は「任意で正体を明かして構わぬが、正体を隠したほうがやりやすければ隠したままで継続せよ」と言ってくれたので、紺紺は今後も正体を隠し、咸白宮の侍女として任務をするつもりでいる。
……お見舞いに来てくれる友達もできたことだし。
「あっ、紺ちゃん。おはよう。お邪魔してます」
ぺこんっと頭を下げた小蘭と、青ねぎが散らされたお米の粥を見せて「食べられそう?」と聞いてくる萌萌。
そして、姉と一緒に部屋の観葉植物に水を差してくれている雨春。
彼女たちは「こんなことがあったよ」「あんなことがあったよ」と日常のおすそ分けをして、体調を気遣ってくれた。
「また来るね」
「早く元気になってねえ」
正体を明かしたら、みんなはどんな顔をするだろう。
* * *
「清明節に主上が剣舞を奉納するでしょう? 他国からのお客様もいらっしゃるらしいのですが、なんとその席には『九術師』の方々も参加なさるのですって。わたくしも珠簾ごしの席で参加予定ですの。『傾城』様が見れるかもしれませんわね」
咸白宮の主、彰鈴妃は、自身も心身疲労を抱えているのに、侍女の見舞いにやってくる奇特な人だ。
「友人が集まってお話している雰囲気が癒されるのですわ。お邪魔しませんから、端っこにいさせてください」
上級妃の言葉とは思えないようなことを言い、本当に部屋の端っこで座ってお茶をすすったりしている。時には「わたくしが作りましたの」と言っておやつを配ったりする。
変わり者……あるいは、一種のつらい現実からの逃避行動なのかもしれない。
「紺紺ちゃん。お熱はだいぶ下がりましたのね。よかったですわ」
「彰鈴妃、風邪がうつってしまいます」
そんな彰鈴妃は、今、白猫を抱っこして侍女である紺紺のおでこに自分のおでこを当て、熱を測っている。
「外にお散歩できるようになったら、お庭をみてほしいですわ。実家の兄が梨の花を贈ってきましたの。子なしと仰りたいのかしらお兄様? うふふ。嫌い……いつか傾城様に兄をやっつけてほしいですわ~!」
笑顔が黒い。
そして、そのお兄様はあなたの腕に抱っこされてる猫ちゃんなのですが!
「そのような意味ではなく、きっと単純に妹君への愛情表現なのではないでしょうか? 梨の花言葉は、『愛情』『癒し』『慰め』ですから!」
「うふふ。あのお兄様に『愛情』『癒し』『慰め』なんて、似合いませんわ。たぶん、そういった人情を持ってないと思いますの」
「そんなこと仰らないであげて」
そこにご本人がいるんです。やめてあげて。
「紺紺ちゃんは優しいのね。うふふ。さて、わたくしも長居してしまいましたけど、公務をしてまいります。ゆっくりお休みになって、早くよくなってね、紺紺ちゃん」
彰鈴妃が退室していく。
白猫を臥牀に残して。
扉が閉まって、紺紺は目を閉じた。
じーっと見てくる白猫の視線が痛い。そして、沈黙が怖い。
寝てしまおう。
心の中で羊を数えていると、おでこに何かが当たる感触がした。
「……?」
そっと目を開けてみると、そこには人間姿の先見の公子のご尊顔があった。
妹の真似をしたのか、自分の額を紺紺のそれにくっつけている。
……距離が近い!
「んぎゃっ」
悲鳴をあげると、麗しのご尊顔はサッと離れていった。
「紺紺さん。そんなに嫌がらなくてもいいじゃないか?」
「びっくりしたので」
布団を引っ掴んで顔を隠すようにすると、先見の公子は「おやすみ」と言って布団を撫でた。
「風邪がうつってもいけませんから」
この人、風邪を引いたりするんだろうか?
疑問を抱きつつ言えば、「気遣いをありがとう」と平坦な声が返ってくる。
「妹を助けてくれてありがとう。心からお礼を申し上げる」
先見の公子はそう言って、ぽふぽふと布団を労った。
「その言い方は自分が霞幽だと言っているようなものでは」と思いつつ、紺紺は「どういたしまして」とだけ返事をしておいた。
「おかげで、妖狐の目星もついたように思う」
「妖狐は……胡月妃? でも、彼女の魅了の術も、紅家の家宝によるものという可能性もありますね」
「妖狐は、そう何人も我が国に関与していない。胡月妃だと考えていいだろう」
穏やかな声に、紺紺は布団にくるまったまま、力を抜いた。そして、布団の端からちょっとだけ顔を出した。
「君は心配せず、休んでいなさい」
先見の公子は木漏れ日のような声で言って、猫に変身した。
変身する一瞬、指に填めた指輪の珠が霊力をあふれさせた気がする。
……指輪は、白家の家宝なのだろうか?
と、見ていると、思いが伝わったらしい。
「白虎の珠という」
「家宝で変身なさっていたんですね」
「その通り。とても優秀な術師のおかげなんだ。さあ、またおやすみ。君には休息が必要だよ」
白猫の先見の公子は、真っ白でふわふわの毛を撫でさせてくれた。
さらっとしていて、もふもふ、ぬくぬくとしていて、暖かい。
「おやすみ、紺紺さん」
「おやすみなさい、先見の公子様」
ふにゃりと笑うと、猫は喉を鳴らして目を細めてくれた。
まるで笑い返してくれたみたい。
紺紺は嬉しくなった。
6
お気に入りに追加
75
あなたにおすすめの小説
偽夫婦お家騒動始末記
紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】
故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。
紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。
隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。
江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。
そして、拾った陰間、紫音の正体は。
活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
護国の鳥
凪子
ファンタジー
異世界×士官学校×サスペンス!!
サイクロイド士官学校はエスペラント帝国北西にある、国内最高峰の名門校である。
周囲を海に囲われた孤島を学び舎とするのは、十五歳の選りすぐりの少年達だった。
首席の問題児と呼ばれる美貌の少年ルート、天真爛漫で無邪気な子供フィン、軽薄で余裕綽々のレッド、大貴族の令息ユリシス。
同じ班に編成された彼らは、教官のルベリエや医務官のラグランジュ達と共に、士官候補生としての苛酷な訓練生活を送っていた。
外の世界から厳重に隔離され、治外法権下に置かれているサイクロイドでは、生徒の死すら明るみに出ることはない。
ある日同級生の突然死を目の当たりにし、ユリシスは不審を抱く。
校内に潜む闇と秘められた事実に近づいた四人は、否応なしに事件に巻き込まれていく……!
【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った
Mimi
恋愛
声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。
わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。
今日まで身近だったふたりは。
今日から一番遠いふたりになった。
*****
伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。
徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。
シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。
お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……
* 無自覚の上から目線
* 幼馴染みという特別感
* 失くしてからの後悔
幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。
中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。
本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。
ご了承下さいませ。
他サイトにも公開中です
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、マリアは片田舎で遠いため、会ったことはなかった。でもある時、マリアは、妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは、結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる