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1章
29、諸葛老師、曰く
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桜綾は、北方出身。
黒家の派閥である冬家の当主が、使用人に手を出して生まれた婚外子である。
父は「娘は婚姻政策の駒に使える」と言って娘扱いしてくれたが、継母や義理の姉はそれはもう冷たかった。
政策の駒に使えると言われても、納得できぬ。
そう言って継母は桜綾を鞭で打ち、焼きごてを押し付け、消えない傷をつくって傷物にした。
この娘が幸せになるのが嫌だ。
存在が不快だ。許せない。
継母は、そう父に告げた。
父は桜綾を婚姻政策に使うことに消極的になり、後宮の妃付き侍女になるよう手配した。それも、黒家と敵対する白家の姫付きの侍女として。
実家から放し、かつ、敵対派閥の上級妃の情報を探らせることができて、いざとなれば暗殺させられる。
上級妃付きとなれば皇帝とも接触する機会が期待できるので、皇帝を誘惑して見染められる目もある。
そう語る父を見て、桜綾は「自分はやはり愛されているわけではなく、ただの駒なのだ」と思ったものだ。
後宮は、意外と居心地がよかった。
年下同期の雨萱は、奴隷出身なのだとか。今まで勉学に励む余裕がなくて、礼儀作法はなってないし、知識もない。
勉強できて嬉しいとか、出来ないことができるようになるのが楽しいとか、そんなことばかり言う、劣った存在だ。咸白宮の主が優しい彰鈴妃じゃなければ、初日で追い出されるか首を斬られていただろう。
「雨萱、そんなこともできないの。教えてあげる」
「桜綾、すごい」
年下なのに、呼び捨て?
これだから教養のない。でも、許してあげる。
「雨萱、また失敗してるわね。こうやりなさいって言ったじゃない」
「そうだった。ありがとう」
雨萱は、自分を姉のように慕ってきた。
仕事の能力は自分よりも劣る。どんなに厳しく当たっても、笑顔で慕ってくる。お礼と言ってくる。それが、なんだか可愛いと思った。
「同期だし、あなたと私は仲良しよね」
「そうね!」
なのに、雨萱はいつの間にか自分よりも優秀と言われるようになっていた。努力をしたからだ。桜綾が教えたことを全て吸収して、努力して、いつの間にか全て上等にこなせるようになっていた
。
もともと彰鈴妃にも「不憫な生い立ちなのね」と同情されていた雨萱は、努力で生い立ちの不利を跳ねのけるように能力を評価されるようになって、「がんばったのね」と褒められた。
そして、侍女頭になった。大出世だ。
「桜綾のおかげよ」
みんながお祝いをする中、桜綾はなんとか「おめでとう」と言った。けれど、それ以降は咸白宮にいるだけでムカムカして、自分が雨萱に踏み台にされた負け犬のような気がして、みじめだった。
そんな中、恋人と出会った。彼は天涯孤独の身の上で、都で有名な料理屋で働く料理人見習いだった。
金はないが、優しい男だった。
「後宮の侍女なのか。道理で所作が美しいと思った」
彰鈴妃も雨萱も桜綾がねだると後宮の外に出るお使いをさせてくれたり、お休みに外出許可をくれたりした。
彰鈴妃はともかく、雨萱が上司らしく振る舞うとイライラした。
けれど、おかげで桜綾は頻繁に彼と会い、絆を深めていった。
「桜綾の年季が明けたら、夫婦になろう」
「本当に? 嬉しい!」
……けれど、彼は病に倒れてしまった。
病はよくならず、医師も匙を投げた。
苦しむ彼のため、高い薬や栄養のある食材を買った。
桜綾の稼いだ金は九割が実家に流れていたから、残りの一割だけでは足りない。
ゆえに、春をひさいだり、咸白宮の物品を盗んで売ったり、後宮内部で知り得た情報を売ったりと、後ろ暗い仕事に色々と手を染めた。
そうして身を削り、必死に尽くしても、彼は回復せず、着実に死に向かっていく。
苦しむ姿を見ているだけでつらく、助からないのだという現実が心を蝕む。
絶望で思考が塗りつぶされていく。
心労、疲労で、どうにかなってしまいそう。
もう、毎日が辛い。今日という日は最悪で、けれど明日以降もどんどん状況は悪くなるとわかっている。
「苦しい、つらい。もういい。どうせ治らないんだ、楽にしてくれ、殺してくれ」
恋人も、ついにそう訴えるようになっていた。
全身がやせ衰えて、苦痛の印象ばかりの顔となり、むせ返るような死臭を漂わせ。
「殺してくれ」
そう頼むのだ。
その時、桜綾に頼れる者はいなかった。
彰鈴妃に相談すれば、と何度か考えたことはある。
けれど、相談してもどうせ治らないのだ。
彰鈴妃に言えば、彼女が信頼する雨萱にも知られるだろう。
雨萱に同情されるのを想像して、桜綾は髪を掻きむしった。
いやだ。
いやだ。
そんな可哀想な女を見る眼で、私を見るな。
格下を見るような眼で、私を憐れむな。
……許せない!
妄想の中の雨萱に、憎しみが湧きたつ。
そこで、桜綾は自覚した。
自分は雨萱が嫌いで、妬ましく、彼女が自分より幸せである現実が不愉快で我慢ならない。
「くそっ、くそっ、くそっ、なんで、あいつが出世して。なんで、私がこんな人生……」
苦しい。
苦しい。腹立たしい。
「なんで、なんで、なんで。彰鈴妃はなんでわかってくれなかったの。私だって可哀想だったのに。私は自分が可哀想な生い立ちだって言わないだけだったのに。自分の不幸を他人に言わない私の方が、いい子だったのに。私、私、私」
限界ぎりぎりの桜綾に手を差し伸べたのは、黒家の華蝶妃だった。
「あなたは、可哀想ね」
華蝶妃は、そう言って桜綾を抱きしめた。
「よし、よし。わたくしは、あなたの味方ですよ」
優しくて、あたたかくて、頼もしくて……桜綾の目から涙があふれた。
華蝶妃は黒家のお抱え老術師を手配してくれて、病床の恋人を診断させた。『皇帝の九術師』にも選ばれている『水鏡老師』という高名な術師だ。
華蝶妃は、「諸葛老師」と呼んでいたけれど。
諸葛老師、曰く。
「彼は苦しんでおり、とにかく苦しみから解放されたいと願っておる。苦しみを緩和して楽にしてあげよう」
諸葛老師は薬をくれた。高価な薬だ。
その薬を飲むと、彼は「苦しくなくなった」と泣いて喜び、とても気持ちよさそうに眠った。
起きてからは「いい夢を見た」と微笑み、「病はよくなったのではないかな」と希望を語る。
……けれど、それは麻薬だった。
* * *
「私は、逃げ出した。最期を看取るのが嫌で、現実逃避した。そして、そして――――」
桜綾は短刀を首にあて、吠えた。
「何が悪いの? 私はこんなに不幸で、限界で、辛いのよ! もう死んじゃおうと思ったの。こんな人生、終わりにするの。でも……ただ死んだら、私が可哀想な負け犬なだけで終わりよね……?」
怒り。悔しさ。憎しみ。
妬み。敗北感。劣等感。
恨み。絶望。敵意。殺意。
眩暈がするほどの、負の感情。
桜綾の血走った双眸から、金切り声から、全身から、その悪意が伝わってくる。
「……だから、私を踏み台にして成り上がった雨萱を引きずりおろして、泥と血と涙でぐちゃぐちゃにして、尊厳も名誉も踏みにじって、『あなたは勝ってないの、負けたのよ。ざまぁみろ』って笑って死ぬのよ! っあはははは……!」
それは、成功したのだと女は笑い。
勝利の余韻の中で死に、勝ち逃げするのだ、と告げたのだった。
黒家の派閥である冬家の当主が、使用人に手を出して生まれた婚外子である。
父は「娘は婚姻政策の駒に使える」と言って娘扱いしてくれたが、継母や義理の姉はそれはもう冷たかった。
政策の駒に使えると言われても、納得できぬ。
そう言って継母は桜綾を鞭で打ち、焼きごてを押し付け、消えない傷をつくって傷物にした。
この娘が幸せになるのが嫌だ。
存在が不快だ。許せない。
継母は、そう父に告げた。
父は桜綾を婚姻政策に使うことに消極的になり、後宮の妃付き侍女になるよう手配した。それも、黒家と敵対する白家の姫付きの侍女として。
実家から放し、かつ、敵対派閥の上級妃の情報を探らせることができて、いざとなれば暗殺させられる。
上級妃付きとなれば皇帝とも接触する機会が期待できるので、皇帝を誘惑して見染められる目もある。
そう語る父を見て、桜綾は「自分はやはり愛されているわけではなく、ただの駒なのだ」と思ったものだ。
後宮は、意外と居心地がよかった。
年下同期の雨萱は、奴隷出身なのだとか。今まで勉学に励む余裕がなくて、礼儀作法はなってないし、知識もない。
勉強できて嬉しいとか、出来ないことができるようになるのが楽しいとか、そんなことばかり言う、劣った存在だ。咸白宮の主が優しい彰鈴妃じゃなければ、初日で追い出されるか首を斬られていただろう。
「雨萱、そんなこともできないの。教えてあげる」
「桜綾、すごい」
年下なのに、呼び捨て?
これだから教養のない。でも、許してあげる。
「雨萱、また失敗してるわね。こうやりなさいって言ったじゃない」
「そうだった。ありがとう」
雨萱は、自分を姉のように慕ってきた。
仕事の能力は自分よりも劣る。どんなに厳しく当たっても、笑顔で慕ってくる。お礼と言ってくる。それが、なんだか可愛いと思った。
「同期だし、あなたと私は仲良しよね」
「そうね!」
なのに、雨萱はいつの間にか自分よりも優秀と言われるようになっていた。努力をしたからだ。桜綾が教えたことを全て吸収して、努力して、いつの間にか全て上等にこなせるようになっていた
。
もともと彰鈴妃にも「不憫な生い立ちなのね」と同情されていた雨萱は、努力で生い立ちの不利を跳ねのけるように能力を評価されるようになって、「がんばったのね」と褒められた。
そして、侍女頭になった。大出世だ。
「桜綾のおかげよ」
みんながお祝いをする中、桜綾はなんとか「おめでとう」と言った。けれど、それ以降は咸白宮にいるだけでムカムカして、自分が雨萱に踏み台にされた負け犬のような気がして、みじめだった。
そんな中、恋人と出会った。彼は天涯孤独の身の上で、都で有名な料理屋で働く料理人見習いだった。
金はないが、優しい男だった。
「後宮の侍女なのか。道理で所作が美しいと思った」
彰鈴妃も雨萱も桜綾がねだると後宮の外に出るお使いをさせてくれたり、お休みに外出許可をくれたりした。
彰鈴妃はともかく、雨萱が上司らしく振る舞うとイライラした。
けれど、おかげで桜綾は頻繁に彼と会い、絆を深めていった。
「桜綾の年季が明けたら、夫婦になろう」
「本当に? 嬉しい!」
……けれど、彼は病に倒れてしまった。
病はよくならず、医師も匙を投げた。
苦しむ彼のため、高い薬や栄養のある食材を買った。
桜綾の稼いだ金は九割が実家に流れていたから、残りの一割だけでは足りない。
ゆえに、春をひさいだり、咸白宮の物品を盗んで売ったり、後宮内部で知り得た情報を売ったりと、後ろ暗い仕事に色々と手を染めた。
そうして身を削り、必死に尽くしても、彼は回復せず、着実に死に向かっていく。
苦しむ姿を見ているだけでつらく、助からないのだという現実が心を蝕む。
絶望で思考が塗りつぶされていく。
心労、疲労で、どうにかなってしまいそう。
もう、毎日が辛い。今日という日は最悪で、けれど明日以降もどんどん状況は悪くなるとわかっている。
「苦しい、つらい。もういい。どうせ治らないんだ、楽にしてくれ、殺してくれ」
恋人も、ついにそう訴えるようになっていた。
全身がやせ衰えて、苦痛の印象ばかりの顔となり、むせ返るような死臭を漂わせ。
「殺してくれ」
そう頼むのだ。
その時、桜綾に頼れる者はいなかった。
彰鈴妃に相談すれば、と何度か考えたことはある。
けれど、相談してもどうせ治らないのだ。
彰鈴妃に言えば、彼女が信頼する雨萱にも知られるだろう。
雨萱に同情されるのを想像して、桜綾は髪を掻きむしった。
いやだ。
いやだ。
そんな可哀想な女を見る眼で、私を見るな。
格下を見るような眼で、私を憐れむな。
……許せない!
妄想の中の雨萱に、憎しみが湧きたつ。
そこで、桜綾は自覚した。
自分は雨萱が嫌いで、妬ましく、彼女が自分より幸せである現実が不愉快で我慢ならない。
「くそっ、くそっ、くそっ、なんで、あいつが出世して。なんで、私がこんな人生……」
苦しい。
苦しい。腹立たしい。
「なんで、なんで、なんで。彰鈴妃はなんでわかってくれなかったの。私だって可哀想だったのに。私は自分が可哀想な生い立ちだって言わないだけだったのに。自分の不幸を他人に言わない私の方が、いい子だったのに。私、私、私」
限界ぎりぎりの桜綾に手を差し伸べたのは、黒家の華蝶妃だった。
「あなたは、可哀想ね」
華蝶妃は、そう言って桜綾を抱きしめた。
「よし、よし。わたくしは、あなたの味方ですよ」
優しくて、あたたかくて、頼もしくて……桜綾の目から涙があふれた。
華蝶妃は黒家のお抱え老術師を手配してくれて、病床の恋人を診断させた。『皇帝の九術師』にも選ばれている『水鏡老師』という高名な術師だ。
華蝶妃は、「諸葛老師」と呼んでいたけれど。
諸葛老師、曰く。
「彼は苦しんでおり、とにかく苦しみから解放されたいと願っておる。苦しみを緩和して楽にしてあげよう」
諸葛老師は薬をくれた。高価な薬だ。
その薬を飲むと、彼は「苦しくなくなった」と泣いて喜び、とても気持ちよさそうに眠った。
起きてからは「いい夢を見た」と微笑み、「病はよくなったのではないかな」と希望を語る。
……けれど、それは麻薬だった。
* * *
「私は、逃げ出した。最期を看取るのが嫌で、現実逃避した。そして、そして――――」
桜綾は短刀を首にあて、吠えた。
「何が悪いの? 私はこんなに不幸で、限界で、辛いのよ! もう死んじゃおうと思ったの。こんな人生、終わりにするの。でも……ただ死んだら、私が可哀想な負け犬なだけで終わりよね……?」
怒り。悔しさ。憎しみ。
妬み。敗北感。劣等感。
恨み。絶望。敵意。殺意。
眩暈がするほどの、負の感情。
桜綾の血走った双眸から、金切り声から、全身から、その悪意が伝わってくる。
「……だから、私を踏み台にして成り上がった雨萱を引きずりおろして、泥と血と涙でぐちゃぐちゃにして、尊厳も名誉も踏みにじって、『あなたは勝ってないの、負けたのよ。ざまぁみろ』って笑って死ぬのよ! っあはははは……!」
それは、成功したのだと女は笑い。
勝利の余韻の中で死に、勝ち逃げするのだ、と告げたのだった。
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