上 下
83 / 150

戦略ゲーにおけるユニット説明

しおりを挟む
 サロンに既にエリことエリエアル・ミュラード伯爵家令嬢と、ミエことベルミエッタ・サイランス侯爵家令嬢が顔を出していた。転生者会合……って言っても、この場にはフローラや役に立たない侍女ベル、そしてジュリエッタの5人だけだし、他の別格貴族達も同室には居たりはする。まぁ何にせよ久しぶりに顔を突き合わせる4人だった。ちなみにジュリエッタこと乙女様は転生元が違う世界からの転生者であるため、ゲームの事は知らないので今は別格貴族達と話し合いをしてる。

「ひさしぶりね、フローラ」

「ふん……」

「お久ー、エリさんにミエ」

「おま、エリエアルにはさん付けで私は呼び捨てっておかしいだろ!?」

「敬われたいならそれなりの態度を取れよ」

「ぐっ……」

 相変わらずミエにはキツイ喪女だった。

(いや、こいつ精神年齢ってが実年齢絶対年下なんだよ)

 賭けるか?

(あんたと賭けて何の得が……?)

 損得勘定でしか動かない、現金な喪女であった。

(もうその程度の事だと、怒るのも面倒臭い)

 ああ、俺の喪女さんがすれてしまった。

(あんたのじゃねえよ?)
「あ、そう言えばここらで動物見ない理由知ってました?」

「光魔法の影響で普通の動物が少ないっていう?」

「常識だろう?」

 ぷっ。常識だって。

(うっせーよこんにゃろう)
「……何かすんませんっした」

「そんな事より敵国の情報だ」

 ぷっ。触れられもしねえでやんの。

(じゃきゃあしゃあっ)
「あーそーっすね」

「なあに? えらくなげやりね?」

「マジで何でも無いっす。んでも、敵国の情報っつっても、大して無かったんじゃないっすか?」

「何だよその口調……。こちらに敵国の情報は大して無いとしても、続編をやった私達なら人相や性格位は分かるだろう? 何せ、自分がゲームの世界に生まれ変わってる、と気付く位にはゲームを熟知してるのだから」

「ああ、なるほど確かに。それはそうよね」

「既に人相書きに関しては、ジュリエッタ様に量産してもらうよう手配してもらってるわ」

「さすがミエさん」

「おいこらぁ!? それ思いついたのは、わ・た・し・だ! 手配を頼んだのも、わ・た・し!」

「なん……だと?」

「そこまでか? そこまでなのか? お前の中の私の評価は!!」

「いや、調子こきで思い上がってて知識チートまんせーって叫んでそうなイメージだったから。なんつーか、ガキっぽい?」

「ぬがあああああ!! 否定しきれないのが余計に腹立つ!!」

 否定しきれねえのかよ。

(そっちのがびっくりよ)
「一応実年齢聞いとく?」

「やめろ! 頭が上がらない気がするから嫌だ!」

「学生ね」

「学生だな」

「決めつけんなー!」

 そう言ってミエは頭を掻き毟る。残念な子だな。

(学生の子の中でも、特に頭の中がお子様な子って、すぐ言動に出たりするからねぇ。ある意味特権なのかな?)

 と、経験豊富なおばさんが申しております。

(歳の事は放っとけや)

「ああ、これその写しの一部だから、フローラも持っててくれる?」

「どれどれ……おお、写真みたいですね」

「光魔法の使い手に、記憶の転写魔法が使えるのが居るらしいの。最近光魔法使える人を集めてるらしいのよね? 転生者は大体光魔法使えるから、そこで発覚したんだと思うわ。多分後でジュリエッタ様からお話があると思うわ」

「マジっすか。私光魔法なら殆ど模写できるんですよね。多分転写作業手伝うことになるんだろうなぁ……」

「チッ……チート野郎が」「チッ……主役補正かよ」

 ダブルベルズの意見が合致した! 二人の視線が交差する! 目と目で……睨み合い、僅かに殺気立つ!

(え? そのフレーズで色っぽしたりしねえの?)

 いや、女同士で色っぽい展開ってなんだよ? あんたそれもイケる口なんだっけ?

(私自信はノーマルだけど、理解はある方だよ)

 ノーマルっつーか、そもそもそっち経験が壊滅的っつーか。

(放っとけや!?)

 何にせよ、こいつらは残念ダブルベルズだからな。色っぽいとかより劇画系の展開しか想像つかん。

(上手いなこんちくしょう……)
「はいはい、そこの残念ダブルベルズは喧嘩しないの」

「「残念ダブルベルズって何だコラぁ!?」」

「……上手いわね」

「「上手くねえし!?」」

 人の命名を掻っ攫いおった。

(あんたもたまには役に立つ)

 じゃあバモンクラッシャーも定着させようぜぇ?

(それは、い・や)

「話は終わったかしら?」

「あ、ジュリエッタ様。終わりましたよー。何でも記憶の転写魔法の持ち主が居るんですって?」

「そうなのよ」

「やっぱり転生者から見つかったんです?」

「それが違うのよね。意外な人物だから後で驚いて頂戴。紹介した後はフローラにも転写魔法を覚えてもらって、作業を手伝ってもらうわねぇ」

「意外な人物ねぇ……誰だろう? 何にしても了解でっす」

「……お前、皇子を除いて最高権力者とも言えるジュリエッタ様相手に気安過ぎんだろ……」

「心の友ですから」

「(クスクス)そうね」

 まだ何か言いたげなミエだったが、それ以上この件で突っ込むことは無かった。

「あ、そーだ。ミエとエリさんはどんな光魔法が使えるの?」

「私は陽炎だな。幻影魔法に近いかも知れん」

「私は物質化って言うのかな? 光の武具が作れるわね」

「おお、どっちも何か凄そうね。ゲームの設定通りなの?」

「いや、ゲームでは指揮官としてプレイするから、部隊の能力の底上げに魔法使ってた描写だったな。まぁその点を考慮すれば、ベルミエッタ・サイランスの指揮能力は回避力向上だったからゲームに沿ってると言えなくはないか」

「エリエアル・ミュラードは攻防力アップなので部隊全体の武具を賄ってたのかもねぇ?」

「ではメイリアは?」

「ゲームでは魔法反射だったはず。魔法を使うユニットには恐ろしく強かった。一方、それ以外の部隊には弱かったから、扱いが難しいって敬遠されてたと思うぞ」

「全く魔法を使わない部隊を作るのは、それはそれで難しい物があったけどね。というのも、3竦みから魔法は外れてるから」

 ここからエリによる続編の、戦花繚乱講座が始まるのだった。

 コスト  魔法兵>>騎兵>弓兵>歩兵
 攻撃力  騎兵>>歩兵=魔法兵>弓兵
 防御力  歩兵>騎兵>弓兵=魔法兵
 攻撃距離 魔法兵>弓兵>>騎兵≒歩兵
 連射性  騎兵=歩兵>弓兵>魔法兵
 相性   騎兵>弓兵>歩兵>騎兵の3竦み 魔法は全てに強い

「ちょっと待って? 騎兵って歩兵より弱い扱い?」

「単純にそうとも言えないの。騎兵は元々の火力が高いけど、歩兵は突っ込んでくる騎兵に対する武器を所持してるから、騎兵に対して火力が上がるってだけなのよ。具体的な例を挙げると分かりやすいかしら? 騎兵は攻撃60防御20としましょう。歩兵は攻撃30防御30とするわね。結果与える損害は騎兵側は30、対する歩兵の与える損害は10である、って事。だから実際には騎兵の方が強いわね」

「ただ、騎兵を作るより歩兵を作る方がコストが倍程低いからな。同じコストで作って相性も考えれば、概ね公式設定を踏襲した結果になるって話だ」

 この場合、数が倍になるから攻撃は倍だが、防御は一緒。数が増えれば殲滅力は上がるが、装備が増える訳では無いので防御までは上がることはない。単純に火力だけが2倍になるだけだ。

「魔法は最大攻撃射程を持ち、接敵時に置いて互いに最初の一撃目となるわ。更に防御もできないの」

「え? それ酷すぎない?」

「魔法は魔法部隊によってのみ相殺できるんだ。つまり部隊に魔法兵を置く理由は、相手の魔法攻撃を相殺するためにあるんだよ」

「なるほど……」

「魔法兵を多く取り入れた部隊が相手だと、メイリアさんは初撃を全部跳ね返す事ができるから無双状態よね。でも部隊には指揮官の特性、すなわち補正が入るから普通は強化されてるのよねぇ。魔法兵の無い敵部隊に、メイリアさんが弱いっていう点がここにあるのよ」

 つまり、メイリアは敵方に魔法を跳ね返す事を前提として魔法兵無しの部隊を組むこともできるが、相手も魔法兵無しの部隊だったとすると、メイリアの魔法反射は機能せず、ただ強化された相手部隊と戦うことになるのでキツイ、と。

「運ゲーに近いな。メイリアの存在ってのは、こちらにとってもあちらにとっても」

「ミエはそういうプレイしてそうだったのに?」

「私は搦手の方が得意なんだよ」

「ああ……納得」

「……一応聞こうか? どういう意味だ?」

「性格が現れてんなぁって」

「捻くれてるって言いたいのか!?」

「いや、無駄に頭使って小賢しいプレイが好きそうってだけで……」

「もっと酷ぇだと!?」

 割とミエも毒されてきたよな、喪女さんに。

(ええ? そうかなぁ……)
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

ちょっっっっっと早かった!〜婚約破棄されたらリアクションは慎重に!〜

オリハルコン陸
ファンタジー
王子から婚約破棄を告げられた令嬢。 ちょっっっっっと反応をミスってしまい……

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

悪役令嬢なので舞台である学園に行きません!

神々廻
恋愛
ある日、前世でプレイしていた乙女ゲーに転生した事に気付いたアリサ・モニーク。この乙女ゲーは悪役令嬢にハッピーエンドはない。そして、ことあるイベント事に死んでしまう....... だが、ここは乙女ゲーの世界だが自由に動ける!よし、学園に行かなければ婚約破棄はされても死にはしないのでは!? 全8話完結 完結保証!!

【完結】死がふたりを分かつとも

杜野秋人
恋愛
「捕らえよ!この女は地下牢へでも入れておけ!」  私の命を受けて会場警護の任に就いていた騎士たちが動き出し、またたく間に驚く女を取り押さえる。そうして引っ立てられ連れ出される姿を見ながら、私は心の中だけでそっと安堵の息を吐く。  ああ、やった。  とうとうやり遂げた。  これでもう、彼女を脅かす悪役はいない。  私は晴れて、彼女を輝かしい未来へ進ませることができるんだ。 自分が前世で大ヒットしてTVアニメ化もされた、乙女ゲームの世界に転生していると気づいたのは6歳の時。以来、前世での最推しだった悪役令嬢を救うことが人生の指針になった。 彼女は、悪役令嬢は私の婚約者となる。そして学園の卒業パーティーで断罪され、どのルートを辿っても悲惨な最期を迎えてしまう。 それを回避する方法はただひとつ。本来なら初回クリア後でなければ解放されない“悪役令嬢ルート”に進んで、“逆ざまあ”でクリアするしかない。 やれるかどうか何とも言えない。 だがやらなければ彼女に待っているのは“死”だ。 だから彼女は、メイン攻略対象者の私が、必ず救う⸺! ◆男性(王子)主人公の乙女ゲーもの。主人公は転生者です。 詳しく設定を作ってないので、固有名詞はありません。 ◆全10話で完結予定。毎日1話ずつ投稿します。 1話あたり2000字〜3000字程度でサラッと読めます。 ◆公開初日から恋愛ランキング入りしました!ありがとうございます! ◆この物語は小説家になろうでも同時投稿します。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

処理中です...