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エイル エリマス
港に打ち寄せる小波に、船は小さく揺れ続ける。
さざ波を思わせる動きで少しずつ腰を落とし、彼を迎え入れる。
どちらが受け入れるのかで、争うことは滅多にない。本当に慌ただしい時を除けば、一度で終わるほうが珍しいから。けれど今夜、ゲラードは自分が受け入れると言い張った。
自分でも、理由はわからない。何かを求めるためだろうか。自分に確信と、そして力を与える何かを。
「あ……」
彼の一部が、自分の中に入り込んでくる、その感覚。充足感と共に湧き上がる飢餓感。矛盾しているようで、調和している。
フーヴァルの手が腿に食い込み、胸が大きくせり上がる。熱っぽい呻き声。
求めていたのはこれだ、と思う。だが、もっと欲しい。
「……あ、あ」
根元まで、全て自分の中に入り込んだ。肌と肌とが密着する感覚に、安堵を覚える。
今日に限って、なぜ──と、彼は尋ねなかった。時にはそういうこともある。心が疼く夜には、そんな風に癒やすしかないと、二人ともよくわかっていた。
フーヴァルの手が、肌を撫で上げてゆく。彼の手が触れたところから感覚が目覚め、火花のように快感が散る。温かな手が平らな腹を擦り、胸元を包みこむ。荒々しい外見とは裏腹な優しい指が首筋を撫で上げ、唇に届く。ゲラードは、その指先を甘く噛んだ。
「ガル──」
「ん……」
腰を浮かせて、落とす。彼の熱が、内壁を擦る。
汗が飛び散るほどの激しく交わる夜もある。けれど、いまはゆっくりと彼を感じたい。それを察しているのか、フーヴァルもゲラードを急き立てたりはしなかった。
「ああ……」フーヴァルが、ざらつく声で呻く。
唇を噛んで、もう一度腰を揺らす。滑らかに、もっと深く。
「は……あ……」
「ガル、俺も動いていいか?」
ゲラードは頷いた。
フーヴァルの両手が腰を掴む。彼のものが、自分の奥の、さらに奥を優しく拓いた。
鼓動一つ打つごとに、血が熱を帯びてゆくのがわかる。感覚が研ぎ澄まされ、肌が薄くなってゆくような気がする。
「あ、あ……!」
フーヴァルの手に縋り付くと、彼は黙って、握り返してくれた。言葉にならない想いを伝えるためには、そうして繋がるしかなかった。
「ガル」
フーヴァルの声に引き寄せられ、身をかがめる。口の中で蕩けそうな舌を絡ませ、彼を味わう。心地よい疼きに、繋がった場所がきゅうと締まった。
「アー、ヴィ、ン……」
打ち寄せる小波のような抽挿にあわせるように、ゲラードも腰を揺らした。引き抜かれ、また埋め込まれる度に、頭の奥が甘く痺れ、思考が──自分を思い悩ませるものが滲んでゆく。朦朧とする一方で、意識は研ぎ澄まされてゆく。ただ一点、彼と分かち合う瞬間へと。
「あ……──」ゲラードは目を閉じた。「フーヴァル、待ってくれ……」
「どうした」彼は優しく問いかけ、動きを緩めた。
その声に、涙がにじみそうになる。
「待ってくれ」すすり泣くような声が出てしまう。「もう少し、このまま……」
「ガル……」
まるで、溢れる寸前の盃だ。彼の息がたてるさざ波だけで、押しとどめたものが零れそうになる。
「ずっと、こうしていたい」ゲラードは言いながら、目の奥に滲んだ熱を必死で押し戻した。
「ガル……」フーヴァルが身を起こし、繋がったままのゲラードを抱きしめた。「わかってる」
「アーヴィン……」
肩にしがみつき、ぎゅっと力を込める。フーヴァルの手が背中を撫でた。
心と身体は千々に乱れて、泣きたいのか、微笑みたいのかもわからない。だからこそ、確かな存在であるフーヴァルを──彼の想いを感じたかった。
「アーヴィン……来てくれ……」
ゲラードはフーヴァルの肩に腕を回して、身を横たえた。さらに深くへと彼を誘うように、腰を浮かせた。
フーヴァルは呻き、ゲラードの腰を抱いた。
体内にあるフーヴァル自身が、張り詰めていくのがわかる。
終わりたくないと、ゲラードは思う。このまますべてを忘れるまで、こうして二人きりで繋がっていることが出来たらと。
波が大きくなる。もうすぐ、その時が来る。
ゲラードは両足を絡ませ、彼の腰を引き寄せた。寸分の隙間さえ無くなってしまうように、このまま一つに溶けてしまいたい。それが無理なら、心だけでも。
「……あ、あ……!」全ての終わりをもたらす、あの浮遊感が訪れる。「アーヴィン、アーヴィン……!」
フーヴァルの腕に、力が籠もる。
「ガル──!」
絶頂は、同時だった。
快感に張り詰めた弦のような身体。その中に、フーヴァルの温かいものが流れ込んでくる。脈動を、熱を、身の内に刻み込もうとするかのように。
「ああ……」
陶然と滲んだふたつの視線は絡み合い、引き寄せ合う。それから、口づけで混ざり合う荒い呼吸を食み、彼の味を貪る。
この瞬間、言葉は邪魔な雑音に過ぎない。
ゲラードは思った。たったいま、全ての障壁を乗り越えて一つになった二人の心が、ゲラードの想いを──覚悟を、彼に伝えてくれればいいのにと。
だが、わかっていた。それはあまりにも、都合の良すぎる願いだと。
交わった後の気怠い靄も薄れ、いまは幾分目が冴えている。出航を明日の早朝に控えたマリシュナ号の船長室。このこぢんまりとした寝棚で身を寄せ合うのが当たり前のことになって、どれくらい経っただろう。
夜の青い光の下、ゲラードはフーヴァルの裸身を見つめていた。こうしていると、あの島で過ごした時間を思い出す。楽園の残滓、硲の世界で。
いま、あそことは別の『硲』へと漕ぎ出そうとしている。
あれからずっと、自分の役割について考え続けてきた。
いや、物心ついてからずっと考えてきた。王になれない王族として、自分に何が成せるのか。曲がりなりにも、それに答えを出したと思ったところで、今度は自分に神を生み出す力があるということがわかった。少なくとも、理屈では。心の方では、この期に及んでも、まだ納得できていない気がしたが。
リコヴの誕生が、天変地異を引き起こした。彼の誕生が『嘘』を生み、この世界は疑いを知った。
リコヴを生み出したのも、自分と同じ貴銀の族なのだと心から理解するのは難しい。何故、その者は嘘や疑念をもたらす神を世界に招き入れたのだろうか。
これから生まれるのは『暴く神』だという。全てを暴き、さらなる高みへ導く。そのために奔走しているのが『嘘』の神だというのは皮肉な気がした。ブリジット・ゴドフリーが言ったように、隠されていた何かを暴くという行為には、あるがままの世界に鑿を突き立てるような荒々しさを感じる。全ての事柄に意味を見出す一方で、その他は省みない──そんな危うさを感じずにはおれない。一度暴かれたものを再び隠すことはできない。そうして世界は、さらなる高みへと進んでいく。だが高みとは何だろう。ゲラードが知る限り、『高きところ』は神の居場所だった。そこに辿り着いたひとは、一体何を手に入れてしまうのだろうか。
それを阻むのは正しいことなのか……あるいは、この上ない愚行なのだろうか。
考えはじめると……。
「眠れねえか」
ゲラードはハッとしてフーヴァルを見た。夜の暗がりの中で、彼の深い碧眼と目が合う。
「ああ」ゲラードは小さな声で囁き、そっと身を寄せた。
「お前が、これに付き合う必要はないんだぜ」フーヴァルは言った。「妹の傍についててやりゃ、ありがたがられるんじゃねえのか」
不器用な優しさに、胸の奥がじわりと温かくなる。だが、その優しさに感謝されるのを、彼は嫌がる。
「僕がいないと、君は危なっかしいから」ゲラードは言った。「僕が錨の役割を果たさないと」
すると、フーヴァルは笑った。
「お前が俺の錨? 逆だろ」
ゲラードは笑いながらも眉を顰めて、彼を見た。「逆?」
「俺が、お前に振り回されてんだよ」そう言いながらも、まんざらではないと思っているような顔だった。
「君が言うなら、そうかもしれない」ゲラードはクスリと笑った。「これに関わる必要がないのは君のほうじゃないのか」
するとフーヴァルは、ゲラードをじっと見つめた。表情は読みづらい。こちらを馬鹿にしているようにも、怒っているようにも見えた。
「奴はエイルを潰すと言いやがったんだ。大いに関係があるに決まってんだろ。ここは俺の国だ、誰にも手出しはさせねえ」そして、彼はフンと鼻を鳴らした。「ついでに、他の連中を乗せてやるだけだ」
「すまなかった」ゲラードは言った。「そうだね……僕ら全員に関係がある」
フーヴァルは見透かすような目でゲラードを見た。
「なら、何をうじうじ悩んでる?」彼は肘をつき、ゲラードの顔を覗き込んだ。「ずーっと何か思い詰めてやがるだろ。言え」
「敵わないな……君には」
ゲラードは観念したようにため息をついた。
「考えていたんだ。エヴラルドが育てているのが『暴く神』なら、僕の友は……この世に何をもたらす神になり得るのだろうか、と」
寝棚に肘をついて身を起こし、フーヴァルは言った。
「あれを神にする気はねえって言ってただろ」
「ああ、そうだ。でももし……」ゲラードは、可能性を考える度に竦みそうになるのを感じつつ、言った。「世界が僕を目覚めさせたのが、均衡を保たせるためなんだとしたら──何するんだ」
フーヴァルがゲラードの両頬をぎゅっと掴む。
「世界が、世界がって言うけどな、ガル。お前はどうなんだよ」
「僕が?」
彼は手を放し、ため息をついた。
「馬鹿どもがあの人狼──ミラネスにやったことに腹を立ててたのは誰だ? あいつを助けられなくて悔しい思いをしたのは?」
「それは──」
「いろんな国に行ったよな。歯ぁ食いしばって、救えるだけのナドカを船に乗せた。ギリギリの食糧でなんとか行けるとこまで行って、てめえの食い物まで他の奴にくれてやったな。そうまでして、ナドカを助けたのは誰だ?」
心の中で、芯の部分がずっと震え続けていた。その震えがいまゆっくりと、おさまりつつある。
「マタルのことに世話焼いて、あいつを支えてやったのは誰なんだ。マリシュナに乗って、俺らと旅をしてたのは誰なんだ。俺は、お前の言うクソッタレな世界と寝棚を共有してたつもりはねえぞ」
「アーヴィン……」
「お前だ」そう言って、彼はゲラードの胸を突いた。「お前がやりたいことを、お前が決めろ。それで、もし決めたら、絶対に後悔なんかするな」
揺るぎない海原のような瞳が、ゲラードを見つめていた。
彼になら、全てを打ち明けてもいいんだと、ゲラードは思った。
「イヴランと……話をした」
すると、フーヴァルは苛立った声を上げて顔を背けた。
「あの、導者の見習いの彼だ」
「言われなくたって覚えてる」
フーヴァルは不機嫌そうに言い、寝棚を出て立ち上がった。
「貴銀の族は鳥と深い関係があると言っていた」
「お前の友みたいにってことか?」棚から酒を出して、大きな杯になみなみと注ぐ。「それがどうした」
「紋章だ。僕の……本当の家はフォンログ家だろ。紋章は、橉木の枝を咥えた燕。エヴラールのコロンベ家の紋章は鳩だ」ゲラードは身を起こして座った。「オルノアの門に刻まれていた『神の誕生』は、リコヴの誕生を描いたものだった。あの赤ん坊の絵を覚えているだろう?」
「ああ、あの薄気味悪ぃやつか」フーヴァルは唇を歪めた。
「あの赤子は、渡烏に抱かれていた」
フーヴァルはもう一度酒に口をつけてから、長いため息をついた。
「それがどうしたってんだよ」
「鳥の紋章を持つ家は、貴銀の族の中でも、特に力が強い家系なのだと思う」ゲラードは言った。
「だから?」
「止められるのは僕しかいない」
フーヴァルが寝棚に腰を下ろす。「あのなあ、そんなに思い詰めるなよ」
その言葉を聞き入れた振りをして──全てに気付かぬ振りをして、先に進むという道もある。
けれど、ゲラードはそれを選ばなかった。
「貴銀の族は、新しい神が求める最初の供物なんだ」静かに、迷いのない声で、ゲラードは言った。「硲の領域に行けば、僕もこの世に神を生み出せる」
フーヴァルはしばらく黙っていた。ただじっと、ゲラードの目を見つめていた。
「それでか」彼は言った。「ここんところ、何か考えてやがるなと思ったんだ」
ゲラードはうなずいた。フーヴァルはため息をついて、頭をガリガリと掻いた。
「だから、あのイヴランってやつは気に食わなかったんだよ」
「何故? 僕に真実を教えるからか?」
「ろくでもないことを吹き込むからだ!」
「僕はただ──助けになりたいだけだ。それのどこがろくでもないんだ」
「てめえが貧乏くじを引きゃ丸く収まると考えるところが、だよ。お前はいつもそうやって、ろくに考えもしねえで楽な結論に飛びつくよな」
ゲラードは怒りに顔が紅潮するのを感じた。
「考えたさ! 決まっているだろう!」
自分が目覚めた意味を考えた。父と母が惹かれあった意味を。自分が生まれた意味を。フーヴァルと出会った意味を。シドナに呼ばれ、あの硲の島で過ごした時間の意味を。考えて、考えて、それで出した結果が、これだ。
ゲラードは、フーヴァルの顔をまっすぐに見た。
「君は本当に、これが楽な結論だと思うのか?」
彼が押し込めようとしている恐れが、自分には見える。何故なら自分自身、同じ恐れを抱えているから。
フーヴァルはふいと顔を逸らして、笑った。
「ま、その前に奴を止めりゃいいってだけの話だ」
「だが、もし──」
「いいから、余計な心配すんな」
「言わせてくれ。もし──」
フーヴァルがゲラードに覆い被さり、頬を掴まえて口づけをした。
噛みつくような口づけが、決意を言葉にしようとした息を奪う。長いこと、孤高の存在と仰ぎ見ていた彼に求められると、また、自分の芯がぐらつきそうになる。
あの硲の世界で過ごしたような日々に逃げ込みたくなる。
でも、僕は……選んだ。
ゲラードはフーヴァルの肩を掴んで、そっと引き剥がした。
「もし、あまりにも危険な神が生まれてしまったら、それに対抗できる神を生み出さなければならない」ゲラードは言った。「その時は……僕がやりとげる。この身を捧げてでも」
フーヴァルの目に、様々な感情が過る。怒り、恐れ、そして悲しみ。直視できないほど剥き出しの感情。だが、ゲラードは目をそらさなかった。
「そんなに、死にてえか」
「手を差し伸べつづける」吐息がかかる距離で、ゲラードは言った。「それが、僕が決めたことだ」
「かわりに、俺を置き去りにするってのか」フーヴァルは吐き捨てた。「ほらな、やっぱり思った通りだ」
「アーヴィン、そうじゃない──」
「その通りだろ!」
波の音しか聞こえない船室の中で、フーヴァルの怒声は大砲の音のように響いた。心を粉々に砕く、大砲の音。
「多くの命を救うために、それが必要なら、僕は……迷わずに行くつもりだ」ゲラードは静かに言った。「その覚悟を、知っておいて欲しかった」
フーヴァルは答えず、再び寝棚を後にした。ゲラードに背を向けて、書き物机に両手をつく。彼の背中は怒りで強ばっていた。
「わかるはずだ。君になら」
フーヴァルは皮肉に満ちた笑いを吐き捨てた。「ああそうかい。物わかりが悪いのはいつだって俺の方だってのか?」
「そういうつもりじゃ──」
「そうだろうが」フーヴァルは振り向き、ぎらつく目をゲラードに向けた。「物わかりが悪いのはどっちだ? 最後の最後まで生き抜く道を捜しつづける。それが本当の覚悟ってやつだ。お前は、戦う前から逃げてんだよ。それだけのことだ」
「違う!」ゲラードも立ち上がった。「生き延びたいに決まっているだろ! 他でもない君と、ずっと一緒に生きていたい!」
「なら、なんで諦める?」
分からず屋。ゲラードは歯を食いしばった。
それを、聞くまで納得しないというなら、聞かせてやる。
「もし生き残れなかったら?」ゲラードは言った。「その可能性を考えないまま、いざその時になって後悔するのは嫌なんだ。恐れを隠したまま強がるばかりでは、本当の気持ちは伝わらない!」
「俺は強がってるわけじゃ──」
「なら、君は馬鹿だ」ゲラードは立ち上がり、フーヴァルに詰め寄った。「恐れるべきだ。これは今までの戦いとは違う。わかっているだろう。無事に帰れる保証などない! 作戦が成功したところで、帰る国が残っているかもわからないんだ!」
「だからって、ここで泣き言並べてりゃなにか変わるのかよ!」フーヴァルの声は咆哮に近かった。「認めろって? ああ、いいさ認めてやる。確かにビビってるよ。いくら俺でも、喜んで死ぬつもりのクソ馬鹿野郎までは救えねえからな!」
「君はいつもそうやって──」
「怖いに決まってんだろ。お前を失うなんて、俺には耐えられねえ。お前こそ……わかってるはずだ」
彼の言葉の最後は、ほとんど消え入るようだった。
「アーヴィン……」
「それでも死ににいくってんなら……お前が決めたことだ。勝手にしやがれ。だが、覚悟などくそくらえだ。そんなもん、どうやったって無理に決まってるだろうが」
彼の痛みは、自分自身の痛みときつく結び合わされている。その結び目が解けることは、永遠に無いだろう。
ゲラードは、静かに言った。
「すまない」
フーヴァルはフンと鼻を鳴らし、目尻を乱暴に拭った。
「もしもの話を、いくら並べたって意味なんかねえ」彼は掠れた声で囁いた。「世界だの運命だの……神だの。いざって時に頼りになるのは、自分自身と、俺だけだぞ。だから俺を信じろ。お前自身を信じろ。生き延びたいって気持ちを」
フーヴァルの手が伸びてきて、ゲラードの頬をぎゅっと掴む。
「お前の覚悟はわかった。だが、俺におんなじもんを求めるな。どうしたって無理なことはある──たとえ俺でもな」
「わかったよ、アーヴィン……わかった」
ゲラードは笑って、フーヴァルを抱きしめた。涙が零れて頬を伝い、フーヴァルの肩に零れた。
「君を信じる」
フーヴァルは囁いた。
「それでいいんだ。クソ馬鹿野郎」
エイル エリマス
港に打ち寄せる小波に、船は小さく揺れ続ける。
さざ波を思わせる動きで少しずつ腰を落とし、彼を迎え入れる。
どちらが受け入れるのかで、争うことは滅多にない。本当に慌ただしい時を除けば、一度で終わるほうが珍しいから。けれど今夜、ゲラードは自分が受け入れると言い張った。
自分でも、理由はわからない。何かを求めるためだろうか。自分に確信と、そして力を与える何かを。
「あ……」
彼の一部が、自分の中に入り込んでくる、その感覚。充足感と共に湧き上がる飢餓感。矛盾しているようで、調和している。
フーヴァルの手が腿に食い込み、胸が大きくせり上がる。熱っぽい呻き声。
求めていたのはこれだ、と思う。だが、もっと欲しい。
「……あ、あ」
根元まで、全て自分の中に入り込んだ。肌と肌とが密着する感覚に、安堵を覚える。
今日に限って、なぜ──と、彼は尋ねなかった。時にはそういうこともある。心が疼く夜には、そんな風に癒やすしかないと、二人ともよくわかっていた。
フーヴァルの手が、肌を撫で上げてゆく。彼の手が触れたところから感覚が目覚め、火花のように快感が散る。温かな手が平らな腹を擦り、胸元を包みこむ。荒々しい外見とは裏腹な優しい指が首筋を撫で上げ、唇に届く。ゲラードは、その指先を甘く噛んだ。
「ガル──」
「ん……」
腰を浮かせて、落とす。彼の熱が、内壁を擦る。
汗が飛び散るほどの激しく交わる夜もある。けれど、いまはゆっくりと彼を感じたい。それを察しているのか、フーヴァルもゲラードを急き立てたりはしなかった。
「ああ……」フーヴァルが、ざらつく声で呻く。
唇を噛んで、もう一度腰を揺らす。滑らかに、もっと深く。
「は……あ……」
「ガル、俺も動いていいか?」
ゲラードは頷いた。
フーヴァルの両手が腰を掴む。彼のものが、自分の奥の、さらに奥を優しく拓いた。
鼓動一つ打つごとに、血が熱を帯びてゆくのがわかる。感覚が研ぎ澄まされ、肌が薄くなってゆくような気がする。
「あ、あ……!」
フーヴァルの手に縋り付くと、彼は黙って、握り返してくれた。言葉にならない想いを伝えるためには、そうして繋がるしかなかった。
「ガル」
フーヴァルの声に引き寄せられ、身をかがめる。口の中で蕩けそうな舌を絡ませ、彼を味わう。心地よい疼きに、繋がった場所がきゅうと締まった。
「アー、ヴィ、ン……」
打ち寄せる小波のような抽挿にあわせるように、ゲラードも腰を揺らした。引き抜かれ、また埋め込まれる度に、頭の奥が甘く痺れ、思考が──自分を思い悩ませるものが滲んでゆく。朦朧とする一方で、意識は研ぎ澄まされてゆく。ただ一点、彼と分かち合う瞬間へと。
「あ……──」ゲラードは目を閉じた。「フーヴァル、待ってくれ……」
「どうした」彼は優しく問いかけ、動きを緩めた。
その声に、涙がにじみそうになる。
「待ってくれ」すすり泣くような声が出てしまう。「もう少し、このまま……」
「ガル……」
まるで、溢れる寸前の盃だ。彼の息がたてるさざ波だけで、押しとどめたものが零れそうになる。
「ずっと、こうしていたい」ゲラードは言いながら、目の奥に滲んだ熱を必死で押し戻した。
「ガル……」フーヴァルが身を起こし、繋がったままのゲラードを抱きしめた。「わかってる」
「アーヴィン……」
肩にしがみつき、ぎゅっと力を込める。フーヴァルの手が背中を撫でた。
心と身体は千々に乱れて、泣きたいのか、微笑みたいのかもわからない。だからこそ、確かな存在であるフーヴァルを──彼の想いを感じたかった。
「アーヴィン……来てくれ……」
ゲラードはフーヴァルの肩に腕を回して、身を横たえた。さらに深くへと彼を誘うように、腰を浮かせた。
フーヴァルは呻き、ゲラードの腰を抱いた。
体内にあるフーヴァル自身が、張り詰めていくのがわかる。
終わりたくないと、ゲラードは思う。このまますべてを忘れるまで、こうして二人きりで繋がっていることが出来たらと。
波が大きくなる。もうすぐ、その時が来る。
ゲラードは両足を絡ませ、彼の腰を引き寄せた。寸分の隙間さえ無くなってしまうように、このまま一つに溶けてしまいたい。それが無理なら、心だけでも。
「……あ、あ……!」全ての終わりをもたらす、あの浮遊感が訪れる。「アーヴィン、アーヴィン……!」
フーヴァルの腕に、力が籠もる。
「ガル──!」
絶頂は、同時だった。
快感に張り詰めた弦のような身体。その中に、フーヴァルの温かいものが流れ込んでくる。脈動を、熱を、身の内に刻み込もうとするかのように。
「ああ……」
陶然と滲んだふたつの視線は絡み合い、引き寄せ合う。それから、口づけで混ざり合う荒い呼吸を食み、彼の味を貪る。
この瞬間、言葉は邪魔な雑音に過ぎない。
ゲラードは思った。たったいま、全ての障壁を乗り越えて一つになった二人の心が、ゲラードの想いを──覚悟を、彼に伝えてくれればいいのにと。
だが、わかっていた。それはあまりにも、都合の良すぎる願いだと。
交わった後の気怠い靄も薄れ、いまは幾分目が冴えている。出航を明日の早朝に控えたマリシュナ号の船長室。このこぢんまりとした寝棚で身を寄せ合うのが当たり前のことになって、どれくらい経っただろう。
夜の青い光の下、ゲラードはフーヴァルの裸身を見つめていた。こうしていると、あの島で過ごした時間を思い出す。楽園の残滓、硲の世界で。
いま、あそことは別の『硲』へと漕ぎ出そうとしている。
あれからずっと、自分の役割について考え続けてきた。
いや、物心ついてからずっと考えてきた。王になれない王族として、自分に何が成せるのか。曲がりなりにも、それに答えを出したと思ったところで、今度は自分に神を生み出す力があるということがわかった。少なくとも、理屈では。心の方では、この期に及んでも、まだ納得できていない気がしたが。
リコヴの誕生が、天変地異を引き起こした。彼の誕生が『嘘』を生み、この世界は疑いを知った。
リコヴを生み出したのも、自分と同じ貴銀の族なのだと心から理解するのは難しい。何故、その者は嘘や疑念をもたらす神を世界に招き入れたのだろうか。
これから生まれるのは『暴く神』だという。全てを暴き、さらなる高みへ導く。そのために奔走しているのが『嘘』の神だというのは皮肉な気がした。ブリジット・ゴドフリーが言ったように、隠されていた何かを暴くという行為には、あるがままの世界に鑿を突き立てるような荒々しさを感じる。全ての事柄に意味を見出す一方で、その他は省みない──そんな危うさを感じずにはおれない。一度暴かれたものを再び隠すことはできない。そうして世界は、さらなる高みへと進んでいく。だが高みとは何だろう。ゲラードが知る限り、『高きところ』は神の居場所だった。そこに辿り着いたひとは、一体何を手に入れてしまうのだろうか。
それを阻むのは正しいことなのか……あるいは、この上ない愚行なのだろうか。
考えはじめると……。
「眠れねえか」
ゲラードはハッとしてフーヴァルを見た。夜の暗がりの中で、彼の深い碧眼と目が合う。
「ああ」ゲラードは小さな声で囁き、そっと身を寄せた。
「お前が、これに付き合う必要はないんだぜ」フーヴァルは言った。「妹の傍についててやりゃ、ありがたがられるんじゃねえのか」
不器用な優しさに、胸の奥がじわりと温かくなる。だが、その優しさに感謝されるのを、彼は嫌がる。
「僕がいないと、君は危なっかしいから」ゲラードは言った。「僕が錨の役割を果たさないと」
すると、フーヴァルは笑った。
「お前が俺の錨? 逆だろ」
ゲラードは笑いながらも眉を顰めて、彼を見た。「逆?」
「俺が、お前に振り回されてんだよ」そう言いながらも、まんざらではないと思っているような顔だった。
「君が言うなら、そうかもしれない」ゲラードはクスリと笑った。「これに関わる必要がないのは君のほうじゃないのか」
するとフーヴァルは、ゲラードをじっと見つめた。表情は読みづらい。こちらを馬鹿にしているようにも、怒っているようにも見えた。
「奴はエイルを潰すと言いやがったんだ。大いに関係があるに決まってんだろ。ここは俺の国だ、誰にも手出しはさせねえ」そして、彼はフンと鼻を鳴らした。「ついでに、他の連中を乗せてやるだけだ」
「すまなかった」ゲラードは言った。「そうだね……僕ら全員に関係がある」
フーヴァルは見透かすような目でゲラードを見た。
「なら、何をうじうじ悩んでる?」彼は肘をつき、ゲラードの顔を覗き込んだ。「ずーっと何か思い詰めてやがるだろ。言え」
「敵わないな……君には」
ゲラードは観念したようにため息をついた。
「考えていたんだ。エヴラルドが育てているのが『暴く神』なら、僕の友は……この世に何をもたらす神になり得るのだろうか、と」
寝棚に肘をついて身を起こし、フーヴァルは言った。
「あれを神にする気はねえって言ってただろ」
「ああ、そうだ。でももし……」ゲラードは、可能性を考える度に竦みそうになるのを感じつつ、言った。「世界が僕を目覚めさせたのが、均衡を保たせるためなんだとしたら──何するんだ」
フーヴァルがゲラードの両頬をぎゅっと掴む。
「世界が、世界がって言うけどな、ガル。お前はどうなんだよ」
「僕が?」
彼は手を放し、ため息をついた。
「馬鹿どもがあの人狼──ミラネスにやったことに腹を立ててたのは誰だ? あいつを助けられなくて悔しい思いをしたのは?」
「それは──」
「いろんな国に行ったよな。歯ぁ食いしばって、救えるだけのナドカを船に乗せた。ギリギリの食糧でなんとか行けるとこまで行って、てめえの食い物まで他の奴にくれてやったな。そうまでして、ナドカを助けたのは誰だ?」
心の中で、芯の部分がずっと震え続けていた。その震えがいまゆっくりと、おさまりつつある。
「マタルのことに世話焼いて、あいつを支えてやったのは誰なんだ。マリシュナに乗って、俺らと旅をしてたのは誰なんだ。俺は、お前の言うクソッタレな世界と寝棚を共有してたつもりはねえぞ」
「アーヴィン……」
「お前だ」そう言って、彼はゲラードの胸を突いた。「お前がやりたいことを、お前が決めろ。それで、もし決めたら、絶対に後悔なんかするな」
揺るぎない海原のような瞳が、ゲラードを見つめていた。
彼になら、全てを打ち明けてもいいんだと、ゲラードは思った。
「イヴランと……話をした」
すると、フーヴァルは苛立った声を上げて顔を背けた。
「あの、導者の見習いの彼だ」
「言われなくたって覚えてる」
フーヴァルは不機嫌そうに言い、寝棚を出て立ち上がった。
「貴銀の族は鳥と深い関係があると言っていた」
「お前の友みたいにってことか?」棚から酒を出して、大きな杯になみなみと注ぐ。「それがどうした」
「紋章だ。僕の……本当の家はフォンログ家だろ。紋章は、橉木の枝を咥えた燕。エヴラールのコロンベ家の紋章は鳩だ」ゲラードは身を起こして座った。「オルノアの門に刻まれていた『神の誕生』は、リコヴの誕生を描いたものだった。あの赤ん坊の絵を覚えているだろう?」
「ああ、あの薄気味悪ぃやつか」フーヴァルは唇を歪めた。
「あの赤子は、渡烏に抱かれていた」
フーヴァルはもう一度酒に口をつけてから、長いため息をついた。
「それがどうしたってんだよ」
「鳥の紋章を持つ家は、貴銀の族の中でも、特に力が強い家系なのだと思う」ゲラードは言った。
「だから?」
「止められるのは僕しかいない」
フーヴァルが寝棚に腰を下ろす。「あのなあ、そんなに思い詰めるなよ」
その言葉を聞き入れた振りをして──全てに気付かぬ振りをして、先に進むという道もある。
けれど、ゲラードはそれを選ばなかった。
「貴銀の族は、新しい神が求める最初の供物なんだ」静かに、迷いのない声で、ゲラードは言った。「硲の領域に行けば、僕もこの世に神を生み出せる」
フーヴァルはしばらく黙っていた。ただじっと、ゲラードの目を見つめていた。
「それでか」彼は言った。「ここんところ、何か考えてやがるなと思ったんだ」
ゲラードはうなずいた。フーヴァルはため息をついて、頭をガリガリと掻いた。
「だから、あのイヴランってやつは気に食わなかったんだよ」
「何故? 僕に真実を教えるからか?」
「ろくでもないことを吹き込むからだ!」
「僕はただ──助けになりたいだけだ。それのどこがろくでもないんだ」
「てめえが貧乏くじを引きゃ丸く収まると考えるところが、だよ。お前はいつもそうやって、ろくに考えもしねえで楽な結論に飛びつくよな」
ゲラードは怒りに顔が紅潮するのを感じた。
「考えたさ! 決まっているだろう!」
自分が目覚めた意味を考えた。父と母が惹かれあった意味を。自分が生まれた意味を。フーヴァルと出会った意味を。シドナに呼ばれ、あの硲の島で過ごした時間の意味を。考えて、考えて、それで出した結果が、これだ。
ゲラードは、フーヴァルの顔をまっすぐに見た。
「君は本当に、これが楽な結論だと思うのか?」
彼が押し込めようとしている恐れが、自分には見える。何故なら自分自身、同じ恐れを抱えているから。
フーヴァルはふいと顔を逸らして、笑った。
「ま、その前に奴を止めりゃいいってだけの話だ」
「だが、もし──」
「いいから、余計な心配すんな」
「言わせてくれ。もし──」
フーヴァルがゲラードに覆い被さり、頬を掴まえて口づけをした。
噛みつくような口づけが、決意を言葉にしようとした息を奪う。長いこと、孤高の存在と仰ぎ見ていた彼に求められると、また、自分の芯がぐらつきそうになる。
あの硲の世界で過ごしたような日々に逃げ込みたくなる。
でも、僕は……選んだ。
ゲラードはフーヴァルの肩を掴んで、そっと引き剥がした。
「もし、あまりにも危険な神が生まれてしまったら、それに対抗できる神を生み出さなければならない」ゲラードは言った。「その時は……僕がやりとげる。この身を捧げてでも」
フーヴァルの目に、様々な感情が過る。怒り、恐れ、そして悲しみ。直視できないほど剥き出しの感情。だが、ゲラードは目をそらさなかった。
「そんなに、死にてえか」
「手を差し伸べつづける」吐息がかかる距離で、ゲラードは言った。「それが、僕が決めたことだ」
「かわりに、俺を置き去りにするってのか」フーヴァルは吐き捨てた。「ほらな、やっぱり思った通りだ」
「アーヴィン、そうじゃない──」
「その通りだろ!」
波の音しか聞こえない船室の中で、フーヴァルの怒声は大砲の音のように響いた。心を粉々に砕く、大砲の音。
「多くの命を救うために、それが必要なら、僕は……迷わずに行くつもりだ」ゲラードは静かに言った。「その覚悟を、知っておいて欲しかった」
フーヴァルは答えず、再び寝棚を後にした。ゲラードに背を向けて、書き物机に両手をつく。彼の背中は怒りで強ばっていた。
「わかるはずだ。君になら」
フーヴァルは皮肉に満ちた笑いを吐き捨てた。「ああそうかい。物わかりが悪いのはいつだって俺の方だってのか?」
「そういうつもりじゃ──」
「そうだろうが」フーヴァルは振り向き、ぎらつく目をゲラードに向けた。「物わかりが悪いのはどっちだ? 最後の最後まで生き抜く道を捜しつづける。それが本当の覚悟ってやつだ。お前は、戦う前から逃げてんだよ。それだけのことだ」
「違う!」ゲラードも立ち上がった。「生き延びたいに決まっているだろ! 他でもない君と、ずっと一緒に生きていたい!」
「なら、なんで諦める?」
分からず屋。ゲラードは歯を食いしばった。
それを、聞くまで納得しないというなら、聞かせてやる。
「もし生き残れなかったら?」ゲラードは言った。「その可能性を考えないまま、いざその時になって後悔するのは嫌なんだ。恐れを隠したまま強がるばかりでは、本当の気持ちは伝わらない!」
「俺は強がってるわけじゃ──」
「なら、君は馬鹿だ」ゲラードは立ち上がり、フーヴァルに詰め寄った。「恐れるべきだ。これは今までの戦いとは違う。わかっているだろう。無事に帰れる保証などない! 作戦が成功したところで、帰る国が残っているかもわからないんだ!」
「だからって、ここで泣き言並べてりゃなにか変わるのかよ!」フーヴァルの声は咆哮に近かった。「認めろって? ああ、いいさ認めてやる。確かにビビってるよ。いくら俺でも、喜んで死ぬつもりのクソ馬鹿野郎までは救えねえからな!」
「君はいつもそうやって──」
「怖いに決まってんだろ。お前を失うなんて、俺には耐えられねえ。お前こそ……わかってるはずだ」
彼の言葉の最後は、ほとんど消え入るようだった。
「アーヴィン……」
「それでも死ににいくってんなら……お前が決めたことだ。勝手にしやがれ。だが、覚悟などくそくらえだ。そんなもん、どうやったって無理に決まってるだろうが」
彼の痛みは、自分自身の痛みときつく結び合わされている。その結び目が解けることは、永遠に無いだろう。
ゲラードは、静かに言った。
「すまない」
フーヴァルはフンと鼻を鳴らし、目尻を乱暴に拭った。
「もしもの話を、いくら並べたって意味なんかねえ」彼は掠れた声で囁いた。「世界だの運命だの……神だの。いざって時に頼りになるのは、自分自身と、俺だけだぞ。だから俺を信じろ。お前自身を信じろ。生き延びたいって気持ちを」
フーヴァルの手が伸びてきて、ゲラードの頬をぎゅっと掴む。
「お前の覚悟はわかった。だが、俺におんなじもんを求めるな。どうしたって無理なことはある──たとえ俺でもな」
「わかったよ、アーヴィン……わかった」
ゲラードは笑って、フーヴァルを抱きしめた。涙が零れて頬を伝い、フーヴァルの肩に零れた。
「君を信じる」
フーヴァルは囁いた。
「それでいいんだ。クソ馬鹿野郎」
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