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112梃子の認識
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茶葉の配合を終えて軟膏の配合に移ろうとしたら、リードが詰め替えの軟膏を取りに来たところだった。ウチは今日も盛況なようだ。
「エド。これは詰め替えで出して良いのか?」
「ちょっと待って、こっちのから先にお願い」
作った軟膏は必ず二の腕の皮膚が弱い所に塗って反応が出ないか確かめる事にしているが、これはまだ試していないのでそのような物は出す訳にはいかないのだ。
作ったばかりと言う事もあって一番手の出しやすい所においてしまったのが良くない
片付けておこう
「さてそろそろ梃子衆の様子でも見に行くかな」
ウチの作業スペースも空いている場所を使ったり増改築を繰り返しているのだから、いっその事建て直してみるのも良いかもしれない。このままではいつまた足りなくなったと増改築をするかと言う事になり、全うに営業しているのにスラム住宅のようになって行きそうだから。
丁度ウチには建築士たちが10人もいるのだ。流石に彼らの家は先にしてあげるとしても、飯場と彼ら用の家の次はウチを直す事に決めた。まだ無相談だけど。
まげわっぱを作っている納屋に入ると、すでにかなりの数が仕上がっているようだった。その証拠に再硬化させているモノが木箱の中に入れられ積み上がっているのだが、姉が作っていた時や俺が作っていた時に比べて、1/5にしても数が多いのだ。
「こう言うのは慣れていないと思っていましたけど、うん出来もかなり良いですね」
「軟化で木が柔らかいからな、しかしこのような器の作り方はした事が無かったんだが、作ってみると面白い物だなぁ。欲を言えばもう少し薄手の刃があればもっと良くなるのだろうが」
「金の問題だけは僕では何とも出来ませんから。リーガさんであればグレーンさんに教える鏃と同じ作り方で薄い刃を作り事が出来るかも知れませんけど」
「親方が言ってヤツかな?土を焼いた物で金のような硬さの離れた所から魔物を倒せる武器があるとか言ってたけど、本当にそんな物があるのかい?」
「しばらくは家を建てる方が優先なんで後回しになりますけど、そちらが終わったらお教えするつもりですね。リーガさんも興味が有りますか?」
「親方がやりたがってる事だからな、それを一緒にやるのは当然だろ?」
「う~んそうなんですか?僕はやって貰う事以外は好きな事を見つけられたら、それをやってもらって構わないと思っているので。親方さんたちがなんと言うかは分かりませんけど、そのあたりを梃子だから弟子だからと縛るのも違うかなと思ってますけどね」
今まではどうだか解からないが、ウチに来てやりたい事が変わった親方たちに彼らが今まで通りに付く必要があるのだろうか?
リーガさんがグレーンさんと違う建築方面がしたいのであれば、それは親方を替えた方が良いと思うし、興味が無い事を何となくやっていても先があるとも思えないので、彼のためにも是非興味があることをやってもらいたい。
ウェインはどうなんだって?良いんだよ仕方無しにも済し崩しにやる気になってるんだから。多分。
「別にやりたくない訳じゃないから」
「そうですか?それなら良いんですけど、もしいろいろやっていく中でやりたい事があったら言って下さい。リーガさんに限らず皆さんがやりたい事をやるのが、親方さん達のためですし僕の教える事の無駄にもなりませんから」
「そん時は頼むよ」
やりたくも無い事をさせられるのは士気が下がるからな。やりたい事があるのであればそれをやってもらった方が、本人のためだけでなく全体のためにもなる。
「それでじゃまげわっぱの方はかなり余裕が出ましたので別の作業に移りましょう。この軟膏に使われている香草栽培している畑の整備をお願いします。畑はバイオンにお願いしたいけど、姉さんバイオン見た?」
「あんたねぇ。今日は東の草原に行く当番の日でしょ。空の魔石持って草原に行ってるわよ」
うぁっちゃ~、忘れてた。俺が使ったり工房でも使うため数日で魔素が抜けてしまう魔石は、充電池と同じでチャージが必要なのだが、その補給当番がバイオンだったのだ。
いまや畑の筆頭管理者と言っても過言では無いバイオンがいない状態で畑の作業を行う気にはなれない。
「ヘンリーは配達に行っちゃったし、メイリーンは?」
「ドリューどお客さんのお世話が忙しくて無理でしょ。モーガンとウェインはカマドから離れられないわよ」
「うぉ~ウチ忙しいな」
「そんな事言ってる暇があるならエドが行ってらっしゃいよ混ぜるの終わったんでしょ」
そうですね。って事で皆を引き連れ畑にきたのだが、そこはもはや俺が知っている畑とは一線を画す出来となっていた。一般的に使う香草とバイオンが見つけたのであろう新種などが区分けされながら栽培され、生前見た農業試験場の実験圃場のような出来になっていたのである。
「えー、ココではウチで使う軟膏や香草茶の元となる香草を育てています。皆さんには畑の整備と思いましたが、すでに僕でも解からないほど畑の状態が進んでいるので下手に手が出せません。ですので今日のところは畑に入らずあぜからの見学にしたいと思います」
この場合ダメな指導員で申し訳ないなのか、大企業の社長が現場の細かな事まで把握できていないのと同じなのか、その答えを持ち合わせていなかった。多分ダメな指導員で申し訳ないなんだよな。
「エド。これは詰め替えで出して良いのか?」
「ちょっと待って、こっちのから先にお願い」
作った軟膏は必ず二の腕の皮膚が弱い所に塗って反応が出ないか確かめる事にしているが、これはまだ試していないのでそのような物は出す訳にはいかないのだ。
作ったばかりと言う事もあって一番手の出しやすい所においてしまったのが良くない
片付けておこう
「さてそろそろ梃子衆の様子でも見に行くかな」
ウチの作業スペースも空いている場所を使ったり増改築を繰り返しているのだから、いっその事建て直してみるのも良いかもしれない。このままではいつまた足りなくなったと増改築をするかと言う事になり、全うに営業しているのにスラム住宅のようになって行きそうだから。
丁度ウチには建築士たちが10人もいるのだ。流石に彼らの家は先にしてあげるとしても、飯場と彼ら用の家の次はウチを直す事に決めた。まだ無相談だけど。
まげわっぱを作っている納屋に入ると、すでにかなりの数が仕上がっているようだった。その証拠に再硬化させているモノが木箱の中に入れられ積み上がっているのだが、姉が作っていた時や俺が作っていた時に比べて、1/5にしても数が多いのだ。
「こう言うのは慣れていないと思っていましたけど、うん出来もかなり良いですね」
「軟化で木が柔らかいからな、しかしこのような器の作り方はした事が無かったんだが、作ってみると面白い物だなぁ。欲を言えばもう少し薄手の刃があればもっと良くなるのだろうが」
「金の問題だけは僕では何とも出来ませんから。リーガさんであればグレーンさんに教える鏃と同じ作り方で薄い刃を作り事が出来るかも知れませんけど」
「親方が言ってヤツかな?土を焼いた物で金のような硬さの離れた所から魔物を倒せる武器があるとか言ってたけど、本当にそんな物があるのかい?」
「しばらくは家を建てる方が優先なんで後回しになりますけど、そちらが終わったらお教えするつもりですね。リーガさんも興味が有りますか?」
「親方がやりたがってる事だからな、それを一緒にやるのは当然だろ?」
「う~んそうなんですか?僕はやって貰う事以外は好きな事を見つけられたら、それをやってもらって構わないと思っているので。親方さんたちがなんと言うかは分かりませんけど、そのあたりを梃子だから弟子だからと縛るのも違うかなと思ってますけどね」
今まではどうだか解からないが、ウチに来てやりたい事が変わった親方たちに彼らが今まで通りに付く必要があるのだろうか?
リーガさんがグレーンさんと違う建築方面がしたいのであれば、それは親方を替えた方が良いと思うし、興味が無い事を何となくやっていても先があるとも思えないので、彼のためにも是非興味があることをやってもらいたい。
ウェインはどうなんだって?良いんだよ仕方無しにも済し崩しにやる気になってるんだから。多分。
「別にやりたくない訳じゃないから」
「そうですか?それなら良いんですけど、もしいろいろやっていく中でやりたい事があったら言って下さい。リーガさんに限らず皆さんがやりたい事をやるのが、親方さん達のためですし僕の教える事の無駄にもなりませんから」
「そん時は頼むよ」
やりたくも無い事をさせられるのは士気が下がるからな。やりたい事があるのであればそれをやってもらった方が、本人のためだけでなく全体のためにもなる。
「それでじゃまげわっぱの方はかなり余裕が出ましたので別の作業に移りましょう。この軟膏に使われている香草栽培している畑の整備をお願いします。畑はバイオンにお願いしたいけど、姉さんバイオン見た?」
「あんたねぇ。今日は東の草原に行く当番の日でしょ。空の魔石持って草原に行ってるわよ」
うぁっちゃ~、忘れてた。俺が使ったり工房でも使うため数日で魔素が抜けてしまう魔石は、充電池と同じでチャージが必要なのだが、その補給当番がバイオンだったのだ。
いまや畑の筆頭管理者と言っても過言では無いバイオンがいない状態で畑の作業を行う気にはなれない。
「ヘンリーは配達に行っちゃったし、メイリーンは?」
「ドリューどお客さんのお世話が忙しくて無理でしょ。モーガンとウェインはカマドから離れられないわよ」
「うぉ~ウチ忙しいな」
「そんな事言ってる暇があるならエドが行ってらっしゃいよ混ぜるの終わったんでしょ」
そうですね。って事で皆を引き連れ畑にきたのだが、そこはもはや俺が知っている畑とは一線を画す出来となっていた。一般的に使う香草とバイオンが見つけたのであろう新種などが区分けされながら栽培され、生前見た農業試験場の実験圃場のような出来になっていたのである。
「えー、ココではウチで使う軟膏や香草茶の元となる香草を育てています。皆さんには畑の整備と思いましたが、すでに僕でも解からないほど畑の状態が進んでいるので下手に手が出せません。ですので今日のところは畑に入らずあぜからの見学にしたいと思います」
この場合ダメな指導員で申し訳ないなのか、大企業の社長が現場の細かな事まで把握できていないのと同じなのか、その答えを持ち合わせていなかった。多分ダメな指導員で申し訳ないなんだよな。
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