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103独楽とヤジロベエ
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初回の人が成績が良かっただけで、今回軟化を教えた人たちの中から他には習得できる者は現れなかった。
諦めた者から順に家の見学をして質疑応答という流れで3周しても、諦めきれない人たちが庭先で頑張っていたが、こればかりは感覚的なところが大きいので根を詰めて訓練すれば出来るようになると言うものでもない。
「いっぺんにやっても出来るようになるものでもないので、毎日一回やってみるとか日を置いてみるとかの方が良いかも知れないですよ」
「しかし・・・」
「今まで手に剣を持っていたのを、いきなり足で持てと言っている様なものと思ってみて下さい。そうすぐに使えないのは当たり前におもえませんか?気長にやった方が上手く行くかもしれませんよ。それに日が暮れる中を見れなくなりますけど見なくても良いのですか?」
「そちらは見たい」
「なら今日の所はこのくらいにしましょう」
挑戦していた残りの人たちからは「は~」とため息が洩れるが、長々ここで粘られた上に出来ませんでは悲しすぎるし、迷惑だ。
流石に4周目ともなれば説明も質疑応答も作業のようになっていくが、だからと言って手を抜いた説明はしない。新建築の今後に関わる事なので手は抜かないのだ。
「キミの部屋にあった木工品は今まで見た事の無いモノがたくさんあったのだが、土の入った木箱と丸いのは何なのか教えてくれるかい?」
「木箱の方は実験用の畑です。畑にいきなり実験して上手く行けば良いですけど、失敗して畑が使えない何って事になってしまったら大変ですよね。でもあの木箱の中で試してそれをいくつも試してからなら良いものだけを使えばいい訳です。そのための木箱です。次に丸い物って言うと少し待ってて下さい取ってきますから・・・これですか?」
「そうそれだ木の実かとも思ったんだが、いろんな街から集まっている俺たちでも見た事の無い木の実と言うものもあるのかと思って触ってみたんだ。そうしたら木で出来ているじゃないか、これは何に使うものかと思ってね」
「これはコマと呼んでいるおもちゃです。こうやって回して遊ぶんです」
俺が作った物はヒモ式ではなく心棒を回すタイプのコマだ。ヒモ式は遊んだ経験が無く紐の結び方が分からなかったので心棒を回すタイプにしたのだが、回転時間からしたらハンドスピナーでもなければヒモ式の方が長く楽しめるだろうが、解からないものは作れないのだトホホ。
「これは!!!」
「回っていると倒れないんですよ。作り方も簡単ですし面白くないですか?」
「あぁこれは面白いな。しかし何で倒れないんだ?」
「さぁ~?何でですかね?」
俺は工学部出では無いのだジャイロ効果について説明できるだけの知識は無い。出来たとしても説明しないけど。
「作ったのに解からないのか?」
「まったく。たまたま軟化を掛けた木に棒を指したんですけど、何日か経って回したら回ったんですよ。それはその後形を直した物で、元々はそんな事だったので作ろうと思った訳じゃないので、何でかまでは解かりません」
納得しているような納得していないような顔をされても、本当に隠している訳では無いのだから説明なんか出来ないからな。
「たまたま出来た物と言ったらコマ以外にもありますよ」
「他にもあるのか?」
「それもおもちゃなんですが、ちょっと持ってきますね」
部屋に戻りどこに置いたかな?と木箱の中をガサゴソと探るが見当たらない。ココでは無かったかと棚の上に目をやると、それは棚の上で綺麗にバランスを取った形で鎮座していた。良い形で出来たために棚の上に乗せたのを忘れていたのだ。
それをそっと取り上げると上と下は分けて食堂に戻った。
「お待たせしました。これは面白いですよ」
日本の現代人にとってはハードル上げすぎじゃないか?と言われそうなモノだが、こちらの人にとっては未知の物であって、ハードルを上げておいても問題が無いのだ。
「それかい?」
「はい。これは二つで一つなんですが、この細い芯をこの先端に置いても倒れないんです」
そうやって見せた物はヤジロベエの置物だが、一般的なものと違い重りの形は変えてある。元々はドングリも竹ヒゴも手に入らなかったために全て木材で代用したのが始まりで、重りは釣り秤で計った上で軟化を掛けて形を整えて左右別の形にした。
流石にあまりにも違う形にする事は出来なかったが、丸と四角程度であれば問題なくバランスを取ってくれるヤジロベエとなってくれ、揺らせばフラフラとしながらも傾いて落ちる事もなく不思議を振りまいてくれる。
「お、おぉ?」
「あれ?不思議じゃありません?」
「いや、何で落ちないんだ?」
「それは聞かれても。指に枝を乗せてみたんですが、それが落ちなかった処からこれには何かあるなと思って作ったのがこれの最初で、いろいろ作ってこれは一番出来が良かった物なんです」
「そうか。しかし不思議で面白いが、おもちゃでは何かの役には立ちそうにはないな」
やっぱりこれだけで気付くのは無理があったか?俺だってその後を知っていなければ気付ける訳も無いのだけど、この二つで俺が示したかったのは秤と轆轤であった。
秤はなら釣り秤を直接伝えればと言われるかもしれないが、直接的につり秤を教えてしまうと、いくら何でもそんな物に気付くのは無理があるだろと言う事になりかねない。
同量の重さでバランスが取れる事から、いきなり長さによって重さが変化する事を気付かせるのだから、多少無理でも誰か気が付いてくれると、こちらの世界の人間で気が付くなら俺が気が付いても大丈夫と言う下地になると思うんだよね。
轆轤は軟化が使えない人用の木工補助具としてと、今後陶芸が盛んになれば、手びねりよりも綺麗な成型が可能となると言う事への布石のつもり。
この二つは今後の町の発展に寄与してくれる物になるはずだ。
しかしこれをどう伝えたものか?それが問題だ。
誰か気が付いてほしいな~
「このクルクルとフラフラしたのを見ると、別の何かの役に立ちそうでモヤモヤっとするんですけどね。僕のモヤモヤからこの家や軟膏が出来たので、何も役に立たないとも思えなくて、でも何か思いついた訳では無いので、皆さんにも一緒に考えてもらえたらうれしいです」
諦めた者から順に家の見学をして質疑応答という流れで3周しても、諦めきれない人たちが庭先で頑張っていたが、こればかりは感覚的なところが大きいので根を詰めて訓練すれば出来るようになると言うものでもない。
「いっぺんにやっても出来るようになるものでもないので、毎日一回やってみるとか日を置いてみるとかの方が良いかも知れないですよ」
「しかし・・・」
「今まで手に剣を持っていたのを、いきなり足で持てと言っている様なものと思ってみて下さい。そうすぐに使えないのは当たり前におもえませんか?気長にやった方が上手く行くかもしれませんよ。それに日が暮れる中を見れなくなりますけど見なくても良いのですか?」
「そちらは見たい」
「なら今日の所はこのくらいにしましょう」
挑戦していた残りの人たちからは「は~」とため息が洩れるが、長々ここで粘られた上に出来ませんでは悲しすぎるし、迷惑だ。
流石に4周目ともなれば説明も質疑応答も作業のようになっていくが、だからと言って手を抜いた説明はしない。新建築の今後に関わる事なので手は抜かないのだ。
「キミの部屋にあった木工品は今まで見た事の無いモノがたくさんあったのだが、土の入った木箱と丸いのは何なのか教えてくれるかい?」
「木箱の方は実験用の畑です。畑にいきなり実験して上手く行けば良いですけど、失敗して畑が使えない何って事になってしまったら大変ですよね。でもあの木箱の中で試してそれをいくつも試してからなら良いものだけを使えばいい訳です。そのための木箱です。次に丸い物って言うと少し待ってて下さい取ってきますから・・・これですか?」
「そうそれだ木の実かとも思ったんだが、いろんな街から集まっている俺たちでも見た事の無い木の実と言うものもあるのかと思って触ってみたんだ。そうしたら木で出来ているじゃないか、これは何に使うものかと思ってね」
「これはコマと呼んでいるおもちゃです。こうやって回して遊ぶんです」
俺が作った物はヒモ式ではなく心棒を回すタイプのコマだ。ヒモ式は遊んだ経験が無く紐の結び方が分からなかったので心棒を回すタイプにしたのだが、回転時間からしたらハンドスピナーでもなければヒモ式の方が長く楽しめるだろうが、解からないものは作れないのだトホホ。
「これは!!!」
「回っていると倒れないんですよ。作り方も簡単ですし面白くないですか?」
「あぁこれは面白いな。しかし何で倒れないんだ?」
「さぁ~?何でですかね?」
俺は工学部出では無いのだジャイロ効果について説明できるだけの知識は無い。出来たとしても説明しないけど。
「作ったのに解からないのか?」
「まったく。たまたま軟化を掛けた木に棒を指したんですけど、何日か経って回したら回ったんですよ。それはその後形を直した物で、元々はそんな事だったので作ろうと思った訳じゃないので、何でかまでは解かりません」
納得しているような納得していないような顔をされても、本当に隠している訳では無いのだから説明なんか出来ないからな。
「たまたま出来た物と言ったらコマ以外にもありますよ」
「他にもあるのか?」
「それもおもちゃなんですが、ちょっと持ってきますね」
部屋に戻りどこに置いたかな?と木箱の中をガサゴソと探るが見当たらない。ココでは無かったかと棚の上に目をやると、それは棚の上で綺麗にバランスを取った形で鎮座していた。良い形で出来たために棚の上に乗せたのを忘れていたのだ。
それをそっと取り上げると上と下は分けて食堂に戻った。
「お待たせしました。これは面白いですよ」
日本の現代人にとってはハードル上げすぎじゃないか?と言われそうなモノだが、こちらの人にとっては未知の物であって、ハードルを上げておいても問題が無いのだ。
「それかい?」
「はい。これは二つで一つなんですが、この細い芯をこの先端に置いても倒れないんです」
そうやって見せた物はヤジロベエの置物だが、一般的なものと違い重りの形は変えてある。元々はドングリも竹ヒゴも手に入らなかったために全て木材で代用したのが始まりで、重りは釣り秤で計った上で軟化を掛けて形を整えて左右別の形にした。
流石にあまりにも違う形にする事は出来なかったが、丸と四角程度であれば問題なくバランスを取ってくれるヤジロベエとなってくれ、揺らせばフラフラとしながらも傾いて落ちる事もなく不思議を振りまいてくれる。
「お、おぉ?」
「あれ?不思議じゃありません?」
「いや、何で落ちないんだ?」
「それは聞かれても。指に枝を乗せてみたんですが、それが落ちなかった処からこれには何かあるなと思って作ったのがこれの最初で、いろいろ作ってこれは一番出来が良かった物なんです」
「そうか。しかし不思議で面白いが、おもちゃでは何かの役には立ちそうにはないな」
やっぱりこれだけで気付くのは無理があったか?俺だってその後を知っていなければ気付ける訳も無いのだけど、この二つで俺が示したかったのは秤と轆轤であった。
秤はなら釣り秤を直接伝えればと言われるかもしれないが、直接的につり秤を教えてしまうと、いくら何でもそんな物に気付くのは無理があるだろと言う事になりかねない。
同量の重さでバランスが取れる事から、いきなり長さによって重さが変化する事を気付かせるのだから、多少無理でも誰か気が付いてくれると、こちらの世界の人間で気が付くなら俺が気が付いても大丈夫と言う下地になると思うんだよね。
轆轤は軟化が使えない人用の木工補助具としてと、今後陶芸が盛んになれば、手びねりよりも綺麗な成型が可能となると言う事への布石のつもり。
この二つは今後の町の発展に寄与してくれる物になるはずだ。
しかしこれをどう伝えたものか?それが問題だ。
誰か気が付いてほしいな~
「このクルクルとフラフラしたのを見ると、別の何かの役に立ちそうでモヤモヤっとするんですけどね。僕のモヤモヤからこの家や軟膏が出来たので、何も役に立たないとも思えなくて、でも何か思いついた訳では無いので、皆さんにも一緒に考えてもらえたらうれしいです」
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